こんばんは。ライターのTASKです。
私は今アメリカをふらふらしているのですが、アップル本社内で四名のアップル本社社員の方々とお話するという貴重な経験を得ました。デザイン等のことについては機密なので口外できませんが、それ以外についてはブログに掲載してもよいとの許可を頂いたので、書いていきます。
アップル本社はまるで大学のキャンパスのように広く、非常に美しい場所でした。社員の方もシャツにジーンズであったり、キックボードやスケボーで移動していたりとかなりフリーダムです。そういう場所であるからこそ、クリエイティブな製品が次々に生まれていくのかもしれません。
お話は非常に刺激的でした。以下、インタビューです。
―iPhone4やiPad等の製品がここで開発されているんですね・・・。まず、アップルという環境について、どう思われているかお聞かせください。
◆アップルは私たちエンジニアにとって最高といっても過言ではない環境だと思っているよ。内容によっては、時間やコストを日本では考えられないほど自分のプロジェクトにかけることができる。これは非常に大きな幸せだね。また、他の社員が強いこだわりと誇りを持って仕事をしている。そういう人たちと一緒に仕事ができ、その結果作った製品が世界中で使われているのを見ると、本当に幸せだね。雰囲気も非常にいい。社員全員がひとつのファミリーのように思えるね。
また、仕事の裁量が非常に広い。「ここからここまでがあなたの仕事ですよ」ということは全く決まっていないから、とことんまでできる。「このパーツにはこの材質を使いたいな」と思ったとする。そのコストが高かった場合、予算オーバーなので使えないという場合が往々にしてある。しかしアップルだったら必要とあらば自分で関連部署に交渉に行き、取引先を巻き込んで製造プロセス等まで踏み込んでそのパーツのコストを下げ、その材質の採用を実現することができる。とことん自分のこだわりを追求できて本当に楽しいね。これは一例だけれども、自分の守備範囲外を一歩越えて仕事ができる人が求められているかな。
―素晴らしい会社ですね。
◆そうだね。職場環境がここまで良い会社はなかなかないと思うよ。日本の会社で働いていた時は鳥籠の中にいる様に感じたんだよね。「こういうことがしたい!」と思っても外に行きにくい。食べ物は与えられるので不安感はないけど、自由は少ない。そういう環境にずっといることは僕にはできなかったんだ。今アップルで仕事ができて非常に満足しているよ。
―アップルの待遇は具体的にはどのようなものですか?
◆まず労働時間からいおうか。労働時間は一般的なアメリカ企業よりは長いかな。自分の場合は大体9時~21時ぐらいだし、たまに土曜日も出勤する。もちろん嫌々やっているわけではなくて、本当に楽しいから問題はないかな。給料も非常に良く、シリコンバレーだけに日本と比べればやはりエンジニアの待遇は段違いにいい。休暇もかなり自由に取れる。日本は「休暇を取る=迷惑」という考えがあるけど、アメリカでは「休暇を取るのはお互いさまで、その間の仕事は助け合ってやっていこう」という考え方。だから上司も数週間の休暇を取るときは取るし、誰もそれを批判したりしない。それが本来あるべき姿だと思うんだけど、日本のサラリーマンが有給を全く消化できないっていう話を聞くと、どうかなーと思ってしまうね。
―日本の職業事情を就活時に聞いた身からすると、アップルの待遇は素晴らしいですね。逆に、こうすればもっといいのになと思う点はありませんか?
◆まだまだ英語が不得意なので、マネージャーとの意思疎通にいまでも困る事があるけど、これは自分の問題だね(笑) 会社自体に不満は本当にないんだよね。たぶんほとんどの社員がそうだと思う。エンジニア、クリエイターとして最高の環境を用意してもらってその中で存分に仕事ができているから、不満はないかな。アップルは規則がほとんどなく、アウトプットを出していれば何をやっていても自由なんだ。大きなベンチャーって感じ。しかも全くギスギスしてなくて、フリーにいろんな人と話したり仕事をしたり出来るからねー。
―会社に不満が見つからない、というのは凄いですね。アップルが凄い会社だとは思っていましたが、その秘密は社員が心から楽しんで働ける環境があるからなのかもなと思いました。そういう環境は、マネージメント層が作り出しているものなのでしょうか?
◆いや、そうじゃないんだ。本当にひとりひとりが本気で仕事に取り組み、楽しんでいるからこそ出せる空気だと思う。そこに役職の差などは介入していないと僕は思うな。入社一年目の社員も、20年目の社員も、同等に良い環境を作り出していると思うよ。
―技術力や思考力はもちろん、そういう人と関わる力も非常に重視されるんですね。そのような人材を選ぶのは並大抵のことではないと思うのですが、アップルの採用プロセスはどうなっているのでしょうか?
◆新卒はあんまり取らないね。僕も中途だし。新卒を取るのは、ほぼインターンを通してかな。工学系の優秀な学生が3カ月~一年ぐらいのスパンでインターンをして、その中で使えそうな学生をほんのちょっと取るって感じ。残念ながら日本の学生でアップル本社でインターンをしている人は見たことがない。中途の場合は、履歴書を提出して、15~6人ぐらいにインタビューをされて、それでオファーレターを貰ったよ。英語が苦手だったからきつかった。今アップル本社にいる日本人は60人ぐらいじゃないかな。
―狭き門であることは間違いないですね。ちょっと話が変わるんですが、ジョブズと会ったりしますか?
◆うん、よくそこらへんを歩いてるよ。今日もこのカフェで何か食べてたし。
―ジョブズが普通に歩いてるんですね(笑) 日本のジョブズファンにはたまらない環境でしょうね。アップルもそうですが、「この企業に行きたい!」と強く思っても就職できずに挫折してしまう大学生が日本では最近非常に多いです。就職活動を考えるときに、私たち学生は何を考えていくべきでしょうか。
◆何よりも大事なのは、入りたい会社の役員もしくは人事権を握っている人に「ぜひ来てほしい」と思われるような経験を積むことじゃないかと僕は思ってるよ。ただ普通に日々を過ごしているだけじゃ決まらないのはある意味当たり前だよね。ただ勉強して、ただサークル活動をして、飲んで、・・・というだけの学生は、まぁいらない。現時点で能力は求められてはいないけれど、どのぐらい働くことについて考えて行動しているかはどの会社も絶対に見るはず。そこをどれだけ妥協せずにできるかがキモだね。「アップルに入りたい!」と本気で思うのならば、「アップルはどのような経験を持った人を求めていて、どういうプロセスを踏めば入れるのか」ということを徹底的に調べ、考え、行動してみる。そうすればアップルだろうがグーグルだろうが、入るのは難しくないと思うよ。「やりたい!」と思ったのならば、まず行動してみて欲しいね。そうすることで興味も広がって、それに付随して魅力的な人材になっていくんではないかと思うよ。
―勉強になります。「こういうことがしたくて、こういう会社に入りたい!」と明確化している学生に対しては上記のアドバイスが非常に参考になると思うのですが、「やりたいことが特になくて、モチベーションも上がらない」という学生も中にはいるはずです。そういう学生はどうすればいいでしょうか。
◆「やりたいことがない」ってことは本質的にはありえないと僕は思ってる。「やりたいことなんてない・・・」と思っていたって、好きなことは絶対にあるはず。テレビゲームをやるでもおいしいごはん食べるでも漫画を読むでも、好きだからこそやっているわけだよね。だったら、「テレビゲームをやることでお金を生み出せないか」「おいしいごはんを食べることをビジネスにできないか」ということを考えてみるのも一つじゃないかな。そういう仕事、実はあるしね。「やりたいことがない」→「だから動かない」だといつまでたっても何も変わらない。とにかくいろんなことに手を出して、いろんな経験をどんどん積んでみる。そうすることで、見えてくるものは必ずあるよ。
―ありがとうございました。
いかがだったでしょうか。
アップルの方々はとてもはつらつとしていて、心から楽しそうに仕事をしていました。アメリカにわたり、そちらで就活をするというのも選択肢のひとつとして入れてみてもいいのではないかと私は考えています。(下記追記も参照のこと)「外資系」という括りは完全に日本視点ですから、真にグローバルな人材を目指すのであれば、アメリカの一流企業を本気で狙ってみるのも一つの手ではないでしょうか。外資系はこれから選考も本格化しますが、真に満足いく就職活動を行うためにも、広い視野で考えてみることが大事です。
頑張ってください!(ライターTASK)
追記
Appleインターンを実際にやっておられたmamorukさんから補足記事を頂きました!ありがとうございます。
重要な箇所を抜粋させていただきました。
ただ、数百人いるインターンの中で、日本人はたぶん(直接日本から来た人だけではなく、日本からアメリカに留学している人を含めても)1人だったように思うので、見かけることは確かに少ないとは思う……。
新卒でアメリカの大企業に就職するたった一つの方法
潜り込むためには論文をたくさん書いたりとか、もしくはオープンソース開発活動で名を馳せたりとか、あるいは学会・勉強会や開発者の集まりなどで社員の人と仲良くなるとか、そういう努力が必要である。
新卒でアメリカの大企業に就職するたった一つの方法
以上の通り、新卒でアップルに入社するためにはエンジニアとして十分な経験とコネでインターンに潜り込むことが必須とのことです。日本人にとっては英語力・高度なプログラミングスキル・現地でのコネを作るといった、とてもハードルの高いお話かもしれません。
しかし、最先端テクノロジーの現場経験はとてもエキサイティングかと思いますし、これから海外インターンを経験して日本に還元するような方々が、どんどん増えてもいいのにと個人的には思っております。
この記事読者の中からインターンに参加する猛者があらわれることを期待して、筆を置きたいと思います。
頑張ってください!
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