2010年9月24日3時1分
一方、名目実効レートでは、10年8月は120.91。95年4月(112.12)を8%上回る円高水準で、史上最高値になる。国際通貨研究所の西村陽造経済調査部長は「実質実効レートが示す以上に、日本の輸出企業は厳しい価格競争に置かれている可能性がある」と話す。
実質実効レートは慢性的なデフレが続く日本に対し、貿易相手国の物価が大幅に上昇している影響を調整し、取り除いている。だが、これが日本企業の実態とのずれを生んでいる恐れがある。
米国をみると、実質実効レートの計算で使用される消費者物価は、10年8月は95年4月に比べると4割も上昇した。だが、日本企業が輸出する主力製品の価格は下落しているものも少なくない。例えば、10年8月の米市場で乗用車の新車価格は95年4月に比べて0.6%下落した。テレビの価格はほぼ9分の1だ。
これらの製品は米国の物価上昇と同じように上がっていないので、米国の物価上昇分を取り除いた実質実効レートでは、本来より円安に見える可能性がある。
実際、最近の円高を嘆く企業は多い。経済産業省が今年8月に実施したアンケートでは、1ドル=85円が続けば、製造業の企業の4割が工場や開発拠点を海外に移転、6割が海外での生産比率を拡大すると答えた。みずほコーポレート銀行の唐鎌大輔マーケット・エコノミストは「『実質実効レートで見れば円安』という論理は、日本の輸出企業の肌感覚に到底合うものではない」と指摘する。(大日向寛文)