2010-10-01
■[陸水学・水環境] アサザを植えてトキなんて、本気じゃないでしょう
山階鳥類研究所名誉所長で、現在、新潟大学 朱鷺・自然再生学研究センター長の山岸哲先生の講演を拝聴しました。
いま日本にいるトキは中国から連れてきた番から生まれたものですが、その中国でも一時は絶滅したと考えられ,再発見された1981年当時は7羽しかいなかったそうです。それが現在では野生600羽、飼育は5箇所で490羽。ここまで回復する上で、政府の強烈なバックアップがあったようです。陝西省石仏村では、巣が見つかったら住民を担当者に任命し補助金を出したそうです。その出し方が、卵を産むといくら、孵化するといくら、巣立つといくらと、イベントに分けて後に進むほど単価を高くしていたそうです。「まさにトキは金なり」なんてジョークをはさんでのお話はとても楽しく、あっというまの90分でした。
講演後に、「霞ヶ浦ではアサザを植えることで100年後にはトキが舞うようになると学校で教えているようですが、どう思われますか?特に浮葉植物であるアサザが一面に湖を覆うと酸欠で魚は減るので、トキにとってはよくない気がするのですが。」という趣旨の質問をしました。「わかりやすいのでシンボリックにコウノトリやトキを使っているだけで、鷲谷さんも本気で戻ってくると思っていないのではないですか」とのお答えでした。
鷲谷・飯島共編「よみがえれアサザ咲く水辺」によれば、飯島氏は小学校でアサザ基金の活動を説明するときに、この「100年後にはトキ」という図を見せて説明するそうです。本気じゃないとしたら、少なくとも小学校の教育としてやっていいことではないですね。本気だというのならば、山岸先生のような専門家の意見を聞きに行ったことが、なぜ一度もないのでしょう。お二人とも、実は本気でないからだと思わざるを得ないです。
追伸:本はホームページと違って取り消しが効かないので貴重です。上記の本には、鷲谷・飯島両氏がとんでもなく無知で不勉強だったゆえにアサザプロジェクトを始めてしまった経緯が分かる記載が、至る所にあって楽しめました。
2010-09-30
■[情報] 公募情報:自然環境学専攻准教授
1. 採用人員 自然環境学専攻 陸域環境学講座 生物圏機能学分野 准教授 1 名
2. 公募の趣旨
新領域創成科学研究科自然環境学専攻では、フィールド調査を通して、幅広く自然環境を理解し、環境問題の解決に貢献する人材の育成を目指しています。生物圏機能学分野は、生物圏を構成する生態系の機能を解明し、さらに生物圏と人間社会との関わりを研究する分野です。
本専攻の大学院教育はフィールドワークを通して、実体としての自然を体感し、学融合の理念の元に、幅広い視野から自らの力で研究をデザインすることのできる能力の養成をめざしています。
本公募では、自然環境学専攻生物圏機能学分野准教授として大学院教育に熱意を持って取り組むとともに、自然環境学専攻を構成するすべての研究分野の教員と協力しながら、自然環境の動態ならびに人間活動が自然環境に与える影響について、幅広い興味をもって探求できる方を希望します。特に、大学における教育活動に対する強い熱意を持ち、国内外の多様なフィールド調査に幅広い視野から積極的に取り組んでいただける方を求めます。また、学部教育に関わっていただく場合もあります。
東京大学は男女共同参画を加速するため、女性研究者の応募を歓迎しています。
http://kyodo-sankaku.u-tokyo.ac.jp/UT/History/declaration/acceleration.html
3. 専門分野
陸域生物圏の構造と機能の解析は専攻の基盤をなす研究分野であります。生物圏機能学分野は日本を含むモンスーン地域の生態系の動態を群落の組成と構造、群落構成種の生理生態的機能、生物圏と気圏・水圏・地圏との相互作用という視点から解明するとともに、農林業などの人為や都市化・温暖化等の環境変化が生態系に与える影響、生態系と人間の相互作用が人間社会に与える影響を明らかにするための研究・教育を目指しています。本公募では、特に、陸上の生態系を対象とした教育および研究を意欲的に進めることのできる人材を求めます。
以下、下記URLを参照してください。
2010-09-29
■[つぶやき] 東大に入ると嫁に行けない
28日は本郷で開催された「男女共同参画室進学促進部会」に出席しました。8月4日に開催された 「オープンキャンパス女子学生コース」でのアンケート結果が紹介されました。
それまでの会合でも、東大の女子学生比率が伸び悩む理由として、保護者の意識の影響が大きいのではないかと指摘されていました。今回のアンケートにも
「理系進学、そのうえ東大、というと、多くの保護者は「女だてらに。。。」「嫁に行けない」「親の面倒を見てほしいのに田舎には帰ってこない」などと考え、反対する保護者が多い。まずは保護者の説得が最も大切なように思う。」との意見がありました。
この意見から見える「親の考え方」は、女の子は結婚して実家近くで家庭を築き、そこで旦那さんに養われつつ、年老いた実家の両親の世話をする、でしょうか。この厳しい社会情勢で、親もそこまで人任せ(=将来の旦那さん任せ)でやっていけるとは思っていないでしょうから、親と冷静に将来を話し合うことで、違った方向が見えてくるのではないかと期待したいところです。
2010-09-27
■[つぶやき] 公害病発生は民主党議員への献金が決定打だった?
杉並病同様の公害が発生する可能性があったのに、住宅地に隣接して廃プラスチック処理施設が建設されたことを、8月22日記事で紹介しました。
こんな施設をこんな所にという、まるで尖閣諸島の結末みたいなおかしなこの建設に、何と、民主党代議士への献金があったからかもという、呆れ果てる報道がありました。
本日毎日新聞記事から
「民主党の樽床伸二衆院議員側への迂回献金の疑いが浮上した。05年8月、物流会社「ワールド・ロジ」(大阪市、ワ社)会長(当時社長)からの上限2000万円寄付と同じ時期に行われた、関係2社による計1500万円の寄付。当時、ワ社子会社の進めるリサイクル工場に対して環境被害を訴える住民から反対運動が起きていた。」
以下、下記をご覧ください。
http://mainichi.jp/select/today/news/20100927k0000m040123000c.html
2010-09-26
■[つぶやき] ヒガンバナ拡散メカニズム
23日のお彼岸は札幌出張からの帰りが夜で、ヒガンバナの様子は確認できず。24日は久しぶりに熱を出してダウン。25日の夕方ようやくジョギングできて、洞峰公園のヒガンバナを確認できました。いつも咲いている一角は株数が随分減りましたが、やっぱりお彼岸にでてきた感じで咲いていました。そこから池ひとつ隔てた、昨年まで気づかなかった所に咲いていて、どうやってそこまで広がったのか不思議。
不思議と言えば、お彼岸になって突然我が家の庭の至るところに、白いヒガンバナが出てきました。一昨年にタキイから買った球根数個が咲いていた記憶はあるのですが、昨年6月に庭を改装したらその秋はどこからも出なかったので、掘り返したせいで消えてしまったのだと思っていました。それが翌年、20カ所以上から突然でてくるメカニズムって、いったい何なんでしょう。。。
2010-09-25
■[情報] NGO国際水銀シンポジウム(2010 年12 月4 日㈯)
国連環境計画(UNEP)は世界の水銀汚染を削減するために、2013 年の水銀条約制定に向けて、政府間交渉委員会会合(INC)を5 回開催する予定であり、その第2 回目の会合が2011 年1 月に千葉・幕張で開催されます。このUNEP の取り組みに世界のNGO も参加しており、幕張での第2 回会合に世界から多くのNGO の参加が予定されています。
世界のNGO は、水俣の経験を学び、このような悲劇を二度と起こさないよう、強い水銀条約にすることを望んでいます。
原田正純先生、水俣病被害者/支援者、水銀問題に取り組む海外のNGO を招聘し水俣病の経験と世界の水銀問題を明らかにしていただき、それらを織り込んだ強い水銀条約を求めたいと思います。
※ 事前申し込みがなくても、余席があれば参加できますが、資料準備のために事前にメール/ FAX / TEL で参加の連絡をいただければ幸いです。
主催: 化学物質問題市民研究会
〒136-0071 東京都江東区亀戸7-10-1 Z ビル4 階
TEL/FAX 03-5836-4358 syasuma@tc4.so-net.ne.jp
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
支援: 欧州環境事務局(EEB)、国際POPs 廃絶ネットワーク(IPEN)
化学物質問題市民研究会は、このシンポジウムに欧州環境事務局(EEB)を通じてガーフィールド基金及び欧州委員会からの資金支援、及び国際POPs廃絶ネットワーク(IPEN)からの資金支援を得ました。
2010 年12 月4 日㈯13:00〜17:15(12:30 開場)
はじめに 13 : 00 〜 13 : 30
◆ 「開会挨拶」藤原寿和(化学物質問題市民研究会代表)
◆ 「水銀条約と日本の水銀問題の概要」安間武(化学物質問題市民研究会)
第1部 水俣病から学ぶ(司会:藤原寿和) 13 : 30 〜 15 : 20
◆ 「水俣病被害者の闘いと今後の課題」谷洋一さん (NPO 法人水俣病協働センター理事)
◆ 「水俣病被害者の報告」佐藤英樹さん(水俣病被害者互助会会長)
◆ 「水俣から学ぶ」原田正純先生(元熊本学園大学教授)
第2部 世界の水銀問題(司会:安間武) 15 : 35 〜 17 : 05
◆ 「事例に基づく世界の水銀問題とNGO 活動」
ジョセフ・ディガンギ博士(米)(IPEN 上席科学顧問)
リチャード・グティエレスさん(比)(バン・トクシックス代表)
閉会 17 : 05 〜 17 : 15
◆ 「まとめと閉会挨拶」 安間武 ( 化学物質問題市民研究会)
2010-09-24
■[つぶやき] この時期、教授がやってること
来年進学予定の学生さんの過半数と、相談終了。それぞれにやりたいことができるように、予算申請しなくちゃ。現M1の来年度研究資金の申請も。これらはそれぞれ、単年度100万円単位の申請が3本くらい。来年度まで科研費基盤Bがあるから、新規申請3本のうち2本が通れば何とかなるでしょう。
研究室をあげて取り組んでいる窒素飽和は、そろそろFSから本格研究に移行すべし。3年物総額1000万円クラスの助成を見つけてきて、申請書執筆中。
大変なのは、代表役がいきなり降ってきた大規模予算のとりまとめ。この総額って、私がこれまでにやってきたプロジェクト総額の2倍を超えそう。こんな巨額予算のとりまとめを、秘書さんなしでやるのはきついなぁ。しかも平行して、フィリピンの共同研究者と国際機関に申請して一次審査を通過した、海草藻場研究の最終申請書も書かなくちゃいけない(英語だ。。。)。
10月末までは、大小取り混ぜて6種類の新規予算申請にかかりきりになりそうです。せっかく論文書くコツを思い出しつつあって、たまった数十のネタにとりかかりたかったのに。やれやれ。10年かかった「貧酸素水塊」がようやく形になりつつあるのが、せめてもです。
2010-09-23
■[つぶやき] やっぱり走りにくい札幌
応用生態工学会で札幌に来ました。2年前の陸水学会以来です。
今回の宿は札幌駅近くの三井ガーデンホテル。2年前に泊まった所よりは北大に近いので、北大方向に行くか植物園か迷った末、植物園→大通公園→北海道庁旧本庁舎コースとしました。3.6km。
北海道庁旧本庁舎
前回、碁盤目の道路の交差点にイチイチ信号があってうざかったので、今回は大通公園の中を通っている道に期待してました。少なくとも地図には信号がなかったので。でもやっぱり信号があって、走る速度だと調度全部赤にひっかかる感じで、やむなくいくつかは信号無視でした。今度来たらおとなしく北大の中を走ろう。。。
今回のマルは、ホテル。往復の航空機代付き35900円で泊まった三井ガーデンホテルは、宿泊階に行くエレベーターに鍵カードが必要と、セキュリティー面で安心。2階に大浴場があって朝は6時から9時まで入れるのも、ジョギング後のリラックスには最適でした。部屋も広くて、デザインが洒落ています。
バスルームには洗濯物を干すワイヤーも使えるなど、気配りも感じられます。朝食バイキングには、ハスカップのジャムなど地元産のものが多少はあって、2,3泊くらいなら飽きないと思います。
3月の水環境学会のときも、このパックがあったらお勧めです。
2010-09-22
■[陸水学・水環境] 中海で行われている「?」なこと
島根県と鳥取県に位置する中海は、日本で初めて大型公共事業が中止された湖沼です。その中海で、自然再生事業として「?」なことが行われています。
ひとつはコアマモという海草を植栽する事業。日本の海草藻場生態系の権威である向井宏先生は、海草を植栽する事業は自然再生にはならないと、断言されています(たとえば向井 宏:「里海」という言葉への警告, シンポジウム「『周防の生命圏』から日本の里海を考える」 月刊「むすぶ −自治・ひと・くらし−」,ロシナンテ社 454, 24-28, 2008年)。島根県には海草の専門家がおられませんので、間違った説が流布しているのかもしれません。しかも、もともとコアマモが生えていなかったところに植栽するのが、なぜ自然再生になるのか。コアマモを植栽しようとしている浅場は、水産サイドはアサリの増加を期待しているところです。コアマモは海外では侵略的外来種として悪名高い種で、生息できる動物を変えてしまうとされています(例えばGlobal Invasive Speciesのhttp://www.issg.org/database/species/search.asp?sts=sss&st=sss&fr=1&sn=Zostera+japonica&rn=&hci=-1&ei=-1&lang=EN)。総合的な議論が必要だと思われます。
もうひとつは、公共工事で造られた堤防を開削すれば、自然が元の状態に戻るという幻想。私たちのグループは、それはあり得ないと主張していました。しかし、見えるところが元に戻れば見えないところも元に戻るだろうとの分かりやすいイメージに押されたのか、開削してしまいました。その結果、私たちが危惧していたように、堤防のおかげで貧酸素化しにくかったところが貧酸素化するようになりました。
このように物理的な現象は明確にでていますが、それが生物にどのような影響を及ぼすかは、3年以上は様子を見る必要があると思っています。
熊本大学(有明海)と島根大学(中海)が、合同シンポジウムを開くそうです。私は有明海問題に関して環境省の委員を務めたことがあります。有明海の場合、諫早湾の締め切りによって、潮流にどのような影響を与えたかが問題になりました。その有明海の締め切りと、干満差のほとんどない中海の堤防とでは、物理的な影響が全く異なります。潮汐差が大きい有明海で堤防が大きな影響を与えたとしても、中海でもそうだとはなりません。イメージだけの議論にならないよう期待したいと思います。
2010-09-21
■[陸水学・水環境] ヒシの繁茂
9月18日に行われた陸水学会のポスターセッションに、ヒシと水環境をテーマにした発表が2つありました。
ひとつは、印旛沼ではオニビシによる栄養塩吸収効果は無視できない量であることを計算したもの。ただし、オニビシは葉や水中根から栄養塩を吸収しているとの前提が必要です。
もうひとつは、三方湖ではハスの繁茂により、溶存酸素量の低下と光量の減少というマイナスの影響が生じているとするもの。
これらのポスターの前で、ヒシの繁茂がアオコの発生と交代していることについて議論が始まりました。アオコが発生できないような環境になったからヒシが生えてきたのか、ヒシが生えたからアオコが減ったのか。
ヒシの繁茂が広範囲に及んでいる水域として、諏訪湖が有名です。その諏訪湖に10月23日に,少し立ち寄れそうです。ヒシがそれまでに枯れているかもしれないとのことで、枯れていなければどんな状況か見てきたいと思っています。
2010-09-18
■[つぶやき] 出張先ジョグ弘前編
陸水学会で弘前に来ています。
弘前駅近くの「弘前プラザホテル」から、弘前城までジョギングしてきました。
ホテルからお城までは約1.5km。ゆるやかな上り坂で歩道も広いのですが、信号が多いのがちょっと難。お城の堀まで来ると、ゆったりとした光景をノンストップで走れます。お堀を回って追手門から城址公園に入り、天守閣前を抜けて北門をでて、再びぐるっとお堀を回る周回コースで約3km。内堀・外堀ともに、アオコは全くありませんでしたが、ヒシやハスなどの浮葉植物群落にところどころ覆われていました。
ホテルは決して広くはないのですが、食事が二重丸。地元の野菜や魚を使った朝食バイキングは和洋ともにメニューが充実して、半分以上の品目が毎日変わるので飽きません。今日のイチオシは八戸産イカと食用菊の南蛮和えと、杏の紫蘇巻き。青森県産リンゴのジャムとジャム入りマーガリン、リンゴジュースは毎朝でも飽きないおいしさで、せっかく走ったのに、食べ過ぎで太ってしまいそうです。。。
2010-09-17
■[つぶやき] アミノ酸服用方法のバリエーション
このブログには脳脊髄液減少症や化学物質過敏症の読者もおられて、その両方を発症している方から、お便りを頂きました。
保険適用ではないブラッドパッチ手術はとても高額で、容易に受けられない方もおられます。その方もそうで、ここでご紹介しているアミノ酸の効果を参考に、豆製品を中心としたたんぱく質を多く取り、いよいよの時にはアミノ酸飲料を集中してとることで、主婦として何とか暮らせる状態までは回復しているそうです。
そう言えば私の学生さんも脳脊髄液減少症なのですが、手術後は疲れたときにアミノ酸を服用することで、見違えるように元気になりました。アミノ酸も決して安いサプリではありませんので、毎日朝晩の服用が難しい方には、そういう方法も効果があるかもしれません。
ただし過去の調査で、毎日2回アミノバイタル服用していたところを1回だけとか、もう少しアミノ酸含量が低いのに変えたら効果がなくなったという方もおられましたので、様子を見て対処を変える必要がありそうです。どういう状態でどのように服用すればよいのか。これがアミノ酸プロジェクトの次の課題です。
話が戻って、お便りを下さった方は化学物質過敏症患者として農薬の感想も書いて下さいました。患者の感覚として、国産の野菜の方が安全でないように感じ、道の駅や直売所などの野菜はそのものから異臭を感じるものもあるそうです。見た目が綺麗=虫も食わない野菜を「国産だから安心」と安易に思わない方がよいのかもしれません。
2010-09-16
■[陸水学・水環境] 花や緑を育てる側の盲点
陸上植物の保全生態学を専門にしていながら、バラを育てるのが趣味という人がいるそうです。その方が農薬を全く使っていない可能性は非常に少ないと思います。
概して、保全生態を専門にする研究者や、自然再生を目指す市民団体の方々は、化学物質が人間に与える影響について、関心さえ持っていないことが多いと感じています。
特に農薬は、人間を対象にしているのではなく、人間以外の有害とされる動植物です。それが人間にまで影響するのですから、対象としていない同植物にも悪影響を与えているであろうことは、十分予測されます。そういうものに関心を持たない、そして平気で使ってしまう人々による保全生態とか自然再生って、物事の上っ面しか考えていない気がします。
2010年6月9日、化学物質過敏症の患者団体の方が、「予防原則に則り、化学物質汚染で苦しむことの無い国づくりを進めることが、物言えぬ胎児や全ての国民の生命と安全・暮らしを守ることにつながります。各省庁が、一丸となり横断的な対策がとられますよう重ねてお願い申し上げます。」と結んだ要望書を菅直人総理大臣に提出し、各省庁との交渉を行いました。そのうち農林水産省と交渉された方は、下記のように感想を書かれています。化学物資問題は、保全生態とか自然再生がよく出してくる「破壊を行う行政VS自然を守る・再生する市民」ではなく、市民そのものの姿勢であることをよく表しています。
#交渉内容が報告書としてまとめられています。PDFで送付できますので、関心のある方はメールください。
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私たちは今回、主に住宅地での農薬散布を問題として挙げた。ホームセンター等での安易な農薬販売の規制を求めた回答の中で、農水省は「農薬は病害虫を防除するために購入し、必要以上に撒いているとは思えない。いかに周囲の人に配慮して使うかが抜けているんだと思う」というもので、非常に落胆した。
その言葉は、「バラや植木、芝生の健康は、人の健康よりも優先される」と、私たちには聞こえる。私たちは、近隣住民やマンションの「バラや植木への病害虫への散布や、芝生への除草剤使用」で日々暴露し苦しみ、日常生活に甚大な支障をきたしているが、農水省には全然伝わっていないのでは?と、思った。
医薬品と、農薬には大きな違いがある。医薬品は病気を治すことによる利益を得る人と、副作用を受ける人が同一だが、農薬散布の場合は、利益を受ける人と、副作用を受ける人は同一ではない。農薬は開放して使用され、利益を受けない人に甚大な被害を与えるのだから、もっと規制されるべきだ。 いくら飛散しないよう配慮していただいても、とにかく農薬を散布されれば、わたしたち発症者はのたうちまわるほど苦しい。タバコの受動喫煙は、多くの人々に健康被害を起こす問題として認識されている。しかし、タバコの場合は、近隣で喫煙されても、2週間以上もそこに煙が残留することはない。農薬は、はっきりと2週間以上は残留し、散布2週間後でも心臓発作を起こさせる。
2010-09-14
■[情報] 講演録「水から考える環境と暮らし」
つくばにある300の研究機関と企業、1万3000人の研究者と生活者をつなぐ「ジオネットワークつくば」の後援で、ご近所にある菜食レストラン「りっつん」の夜学で講演しました。自分では「研究と生活をつなく」というジオネットワークの趣旨に沿った内容になったと満足していたところ、スタッフの方が聞き取ってホームページで公開されました。
講演のタイトルは「『水』から考える環境と暮らし 〜水の行方に思考を走らせる〜」。
99枚のスライドを使って90分で早口にしゃべったのでうまく伝わらなかったらしく、私が意図したものではない内容も多少ありますが、概ねはこの通りです。とても分かりやすくまとめられているので、私の講義が聞き取れなかった学生さんには重宝しそうです。
2010-09-13
■[つぶやき] 早咲きヒガンバナ
昨年は8月11日に開花した我が家のヒガンバナ、今年は毎日観察していたところ、9月11日17時から12日14時の間に、写真のようにスッと伸びていました。
そこで、昨年に我が家のヒガンバナと同時期に開花していた赤塚公園に12日17時に行ったところ、3日前には確かに咲いていなかったのに、出たばかりという感じのお花畑になっていました。また昨年の8月17日付記事で紹介したように、赤塚公園より1km北にある洞峰公園では、やはりまだヒガンバナはでていませんでした。
8月下旬に咲いた一昨年、8月中旬に咲いた昨年と今年の違いは、なんと言っても暑さ。過去二年はどちらかというと涼しい夏でした。それで今年は開花が遅れた?
かたや、毎年お彼岸の頃に律儀に咲く洞峰公園のヒガンバナが、今年はいつ咲き出すか。。。
2010-09-12
■[つぶやき] 脳のリハビリDSソフト「絵心教室DS」
昨日ご紹介したアミノ酸仮説に加え、「指を繊細に動かすことは失われた脳神経のネットワークの再構築に効く」という仮説を持っています。
10月から日本で50周年記念講演を行うピアニストの舘野泉さんは、平成14年に脳出血になり、体も動かせず、言葉も話せない状態でした。しかしピアノを弾くことで体も心も生き返ったと語っています(9月12日付産経新聞)。
とはいえ、脳脊髄液減少症は体がだるくて、寝たきり状態もしばしばです。寝ていても指を使って脳の刺激になるグッズはないか。思いついたのが任天堂DS Lite。以前に「DS陰山メソッド 正しい漢字かきとりくん 今度は漢検対策だよ!」をお勧めしましたが、今回は「絵心教室DS」。スタイラスペンが鉛筆にも筆にもなり、立てたタッチや寝かせたタッチにも使い分けることができ、解説に沿って自らの絵を描き進めます。ほんのちょっとしたコツで見違える絵になるのも楽しい。解説の文字が老眼にはちょっときついですが、図解があるので大体想像がつきます。
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2010-09-11
■[つぶやき] 第二弾無事終了:アミノ酸サプリによる脳脊髄液減少症の症状緩和効果の検討プロジェクト
10名の患者様に2ヶ月間、朝晩アミノサプリを飲んでいただいた結果がまとまりました。
今回はブラッドパッチを2回以上行っても症状が緩和されなかった患者様だけを対象にしましたが、アミノ酸服用の効果が全くなかった患者様は2割だけで、8割の患者様が効果を感じておられました。
このように効果があることは確かと思われるのですが、なぜ効果があるのか、メカニズムがわかりません。逆にメカニズムが分かれば、他の緩和効果策の開発が可能になるかもしれません。
いまだ正式に厚生労働省から保険適用登録がされていない(少なくとも厚生労働省のホームページではそのような発表がない)、脳脊髄液減少症。水俣病のように患者を実態より極端に減らすような定義をすると、メカニズムの解明にも影響します。その点も考慮して認定が進むことを願います。
2010-09-10
■[つぶやき] メタ生物学 本質を問い直す(村瀬雅俊・京都大基礎物理学研究所)
8月17日付け、表記京都新聞の記事を村瀬先生から送って頂きました。
下記に写真として貼り付けますが、読みにくいと思いますので、要所を抜粋します。
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村瀬准教授は、東京大薬学部と大学院で清水博教授(現名誉教授)の指導を受け、計算機を使って生命現象を説明する最先端の研究に取り組んだ。東京都老人総合研究所では老化をテーマにした。世界ではDNA末端の「テロメア」の短縮による「細胞老化」など新たな展開があったが、「いろいろなメカニズムがある老化を、どのように表現したら
よいのか悩んだ」という。
1992年に京都大基礎物理学研究所に赴任し、ダーウィンの「種の起源」をはじめ、さまざまな進化論を読み込み、細胞や分子レベルにも進化論が展開できることを思いついた。「進化も老化もがんも同じ指導原理で説明できるのでは。それが生命の本質ではないか」と考え、多様で複髄な生命現象を包括的に記述する「メタ生物学」に挑んだ。2000年には、生命のとらえ方を自らの思索の軌跡とともに論考した著書「歴史としての生命-自己・非自己循環理論の構築」(京都大学出版会)を出版した.
もう一つの研究の転機が、21世紀に入ったころに訪れた。自宅の新建材が原因でかかった「シックハウス症候群だ。人体に影響ないはずの低濃度の化学物質で体を壊し、
精神的にも追い込まれた。現代科学の限界を身を持って体験し、以来、現代科学の「思い込み」から脱し、化学物質や電磁波の生体影響など「不確かな」事象にも切り込んでいく。
「ユングも精神障害を克服して精神を研究した。薬学を学び、化学物質を扱うプロで
あるはずの私もシックハウス症候群になるのが現代科学。科学者の責任として、自らの体験を基に生命や科学の本質を伝えていきたい」
新しい方法論を探る取り組みとして、来年1 0月に京大国際フォーラム「新たな統合の世紀に向けて」を開く。
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文中にはさらっと「精神的にも追い込まれた」とありますが、研究者として様々な可能性がようやく開かれた頃に、「気のせい」とされてしまう病気にかかってしまったことの悔しさは、言葉で書き尽くされるものではありません。
そんな村瀬先生が主宰される国際フォーラムには、是非勉強に行きたいと思っています。
2010-09-09
■[つぶやき] NHK首都圏ニュース845へのクレーム
7日夜に何気なく見ていたNHK首都圏ニュース845。ニュースとニュースの間に無音で流されたシーンに驚き、電話とメール(400字以内の制限付き)で誤解を招きかねない部分を指摘しました。
不思議でたまらないのは、自然に咲いているアサザの群落を映していたのに、わざわざ字幕で「植えている」という趣旨の説明が入っていたこと。税金を費やしたアサザ植栽事業失敗の事実が広まらないように、どなたかがNHKを誘導したのではないかと思うのは、勘ぐり過ぎでしょうか。。。
以下はメール全文です。
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電話で指摘したように、7日に放映されたのは長年自然に維持されているアサザ群落です。アサザ基金という団体が国の予算も使い、本来それほど生えていなかった所に植栽したアサザは壊滅し、お花見ができる所はありません。然るに自然植生を映し、正確には覚えていませんが「植え込む運動(活動?)が行われている」との字幕を見た方は、植栽されたお花畑を見ていると誤解します。
アサザは葉が水面を覆うタイプの植物で、このタイプの植物が増えると酸欠になりやすく、環境が悪化します。そのような植物を、本来それほど生えていなかった所で増やす事業に対しては、地元市民団体や科学者などから根強い反対があります。私は水環境が専門なので、不明な点があれば問い合わせてください。
特定の団体による失敗した事業をあたかも成功したかのように、かつ美しい花により「自然によいことをしている」と誤解させるような放映は、公共放送として慎んで下さい。
2010-09-08
■[柏の葉便り] カメノテの刺身
6日の陸水ゼミは、M2による陸水学会の発表練習。2日前に屋久島の樹林化調査から帰ったばかりなので、きっとM1へのおみやげを持ち込んでるだろうなと思っていたら、案の定。でもちょっと様子が変。
「これ本当に食べれるんですかぁ?」
M1のN君が不安そうに見ているのは、カメノテ。
そうだよねぇ、初めてだと不気味だよねぇと思いつつよく見たら。
「え?これ、もしかして生じゃない?」
「そうなんですか?現地でこうやって売ってたんで。」
違います!カメノテはゆでたてがおいしいんです!
刺身状態で食べてしまったN君、しばら〜く不安そうでした。
ゼミの後、M2のY君達がゆであげた物を持って来てくれました。
「先生、やっぱりゆでるとおいしいです」
本当に。屋久島のカメノテって、スペインのシーフードレストランで頂いたのと同じくらい大きくて、かつ、味は格段においしい。屋久島にはあまり長い間滞在してなかったので、鹿肉をごちそうになる機会はあったのですが、カメノテはチャンスがなかったのでした。さすがグルメのM2、目の付け所が違う。
「この味、例えると何だと思う?」
「そうですねぇ、エビやカニに似てる一方で、貝にも似てるし」
まさにそうですね。手の形に似ている部分は、同じ節足動物であるカニに似た味。一方で付け根に近い部分は、貝の筋肉や、一部、サザエの内臓のような味がします。屋久島に行かれたら、是非ご賞味あれ。
写真は、スペインのシーフードのお総菜屋さんのショーウィンドウに並んでいたカメノテです。
2010-09-07
■[読書記録] ザリガニ ニホン・アメリカ・ウチダ
B6版117頁とコンパクトながら、日本に住むザリガニの全てが扱われています。
表題の「ニホン・アメリカ・ウチダ」は日本に生息するザリガニ3種の名前です。もともと日本にいたのはニホンザリガニだけ。残りの二種は外来種です。これら3種も含め世界のザリガニ類の分布から始まり、生息場所や餌など生態の基本や、江戸時代には胃石が漢方薬として利用され珍重されていたなどの人との関わりが紹介されています。また、野菜が不足すると「青いザリガニ」になり、それが続くとやがては白くなるとか、口の脇から尿を排泄し、その尿が警戒信号としてコミュニケーションツールになっているなど、トリビア的知識も満載です。
読み進めるうちに、人と身近な動物との関わり、その関わりの変化、そしてこれからをどう考えるかなど、筆者のいう「環境に対しての実体験」の基本を、ザリガニとともに考えてみたくなる1冊です。
これからも変わり続ける水環境に対して次世代を担う子供達が、「種多様性」とか「保全」とか言葉だけに踊らされず、現実に対応できる能力を身につけてもらいたいと思っている親世代にお勧めです。何と言っても、子供達とザリガニで遊ぶのは楽しいですし。
ザリガニ―ニホン・アメリカ・ウチダ (岩波科学ライブラリー)
- 作者: 川井唯史
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2009/09
- メディア: 単行本
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(追伸)陸水研では2年前の卒業生、現在のM2と、ザリガニを扱っている学生が続きました。来年度もザリガニ研究が継がれそうなので、この機会に川井唯史氏のザリガニ関連著作3冊を買って、勉強し直すことにしました。今回はその第一弾です。
2010-09-06
■[陸水学・水環境] 浴室のトリハロメタン
9月2日に第16回バイオアッセイ研究会・日本環境毒性学会合同研究発表会で講演した際に、私の家では浴室が発がん性VOCであるクロロホルム(トリハロメタンの1種)の発生源だったことを紹介しました。その調査は2000年代半ば頃に行って頂いたもので、当時は浴室が発生源であるとの論文報告は見あたらなかったので、「あくまで仮説ですが。。。」と5年以上講義などで紹介し続けてきました。
その日の懇親会で、浴室がトリハロメタンの発生源であるとの論文が近年でていると教えていただき検索したところ、専門家の間でも関心が高まってきたようで、下記の文献を見つけました。
温浴施設におけるトリハロメタンの実態と暴露量
鎌田 素之 , 長谷川 駿
用水と廃水 50(12), 1012-1019, 2008-12
気相曝露量の実態調査に基づいた水道水中トリハロメタンの曝露量と飲用寄与率の評価
柳橋 泰生 , 権 大維 , 武藤 輝生 [他]
水道協会雑誌 79(3), 3-15, 2010-03
2日の講演では、全国的に原因不明の肺がんが増えているとの「ためしてガッテン」2009年11月25日の放映内容を紹介し、その一因が残留塩素や水道水の塩素処理で発生する複製物ではないかとの私の仮説を紹介しました。排気ガスや農薬が原因だったら、地域差が出ると考えられます(例えば米どころの新潟県で水田除草剤CNPやPCPの混入物が原因でガンが増加したように)。これに対して水道水は残留塩素を0.1mg/l以上残すよう一律に義務づけられています。またトリハロメタンは上記の論文のように、水道水起源で気相に移ります。たばこを吸う人もおらず大気汚染とは無縁と、思い当たることがないのに肺がんになる人が全国的に増える理由として、あり得ないことではない気がします。
上記のうち「気相曝露量の実態調査」はまだ入手できていないのですが、気相曝露の影響がどのように評価されているか興味が持たれるところです。
(追伸)なんで日本の論文だけなのだと、一部の方から顰蹙を買いそうなので弁解。日本のように高い残留塩素を義務づけている先進国は稀なのです。例えばドイツでは塩素を一切添加しない水道施設もあります。信州大学の中本先生は、塩素によって細菌による感染を防ぐやりかたは野戦で即席の安全の水をつくる方法で、敗戦時にやってきたアメリカの進駐軍による塩素消毒の強制をいまだに引きずっているに過ぎないと指摘されています。
2010-09-05
■[読書記録]「流系の科学」
宇野木早苗先生からご高著「流系の科学」を贈っていただきました。
宇野木先生は1924年生まれなので、現在86歳。長良川河口堰問題では、同年齢の西條八束先生(故人)、奥田節夫先生とご一緒に広範に活動されて、そのパワーに圧倒されたものでした。
海がご専門の先生が、そのお歳で新たに川の最上流から勉強し直されているご様子に、再び圧倒されました。何となれば、私も沿岸域ばかり研究してきたのに「陸水学をやるように」とのことで今の職場に移り、さて、陸水学的観点から何をすべきかと考えたときに、上流の窒素飽和、中流の樹林化を見いだしたのでした。そして本書で先生が「第3章 森林山地からの水の流出」で書かれていることなどを、ひぃひぃ言いながら必死で勉強したのに、このお歳の先生がそれをまとめているのには、正直がっくりです。私だったら80歳過ぎたら、こんなしんどいこと一切やめて、スイセンとボタンとユリを眺めて人生楽しんでいたいです。
発見もありました。
「まえがき」で宇野木先生は、河川に関して「2つの名著」をあげています。ひとつは「新河川学」そしてもうひとつは阪口豊・高橋裕・大森博雄「日本の川」。
阪口豊先生は、当時、東大文科三類から唯一進学できる理学部地理学教室に私を拾ってくださり、「地理とは考え方の学問だ。大いに他流試合しなさい」「花粉をしたいの?いいよ。けれど僕は一切指導しないからね」「けれど世話になった先生の名前くらいは伝えるように」という「指導」をしてくださった最初の指導教員でした。
他流試合をモットーにされていた阪口先生は、東大海洋研究所の堀越先生と親しかったり、工学部土木学科の高橋裕先生を地理の兼担にお願いするなど、当時の地理学教室を真に学際的にされていました。修士入試の面接で高橋先生から「君は帰国子女なのに、どうしてこんなに英語の点が悪いんだ?」とたしなめられらたことは、今でも覚えています。阪口先生には、陸水学はあらゆる理学だけでなく土木とも連携し、この国の基礎を造る学問と考えておられたのだと思います。
西條八束先生も、長良川河口堰運用開始後は建設省のモニタリング調査の委員になって、自然科学の立場から是非を問われ続けました。陸水学会そのものも、山本(1996)に「有名な生物教室の先生方は皆会員になっていたが、このほか当時超一流の地球物理、地質、地理の先生方が入会していた。(中略)名簿によれば、これら理学部の先生方だけでなく工学部関係の阿部謙夫(水文学・土木)、神原信一郎(土木)らの名前もみえ、学部・学科をこえた広い交流のあったこと、現在の生態学優勢とは異なりIHP、IAHS的な集合協同体であったことがわかる。」とあります。そして「生態学優勢」が何をもたらしてしまったか。たとえば、近年は自然再生事業において生態学者が関わることが多いですが、霞ヶ浦のアサザ植栽に見られるように、自分が得意とする生物群にとらわれすぎて場全体を見る観点が欠如し、問題を起こしているように思います。
地理学と土木の日常的な交流から、他分野の方が「名著」と賞賛される成果が刊行されていたことは、この国の自然を考える上で、陸水学が今後どのような方向を目指すべきかのヒントになるように思います。
- 作者: 宇野木早苗
- 出版社/メーカー: 築地書館
- 発売日: 2010/09/02
- メディア: 単行本
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2010-09-04
■[陸水学・水環境] いまどきの淀川
8月22日に行われた水草研究会の淀川巡検では、子供の頃に遊んでいた場所がポイントになっていました。
1970年前後の寝屋川市太間付近の淀川では、堤防から下はグズグズのヨシ原とワンドでした。今の川岸はすっかり樹林化して、地面は乾燥しています。
ワンドにはミズヒマワリが咲いていました。今の子供達がセイヨウタンポポに慣れきっていて、白いタンポポを見ると逆に外来種と思ってしまうかもしれないように、こんな変な川と外来種が原風景になってしまうのでしょうね。
実家近くの枚方の水路では、日本では今のところ関西にだけ侵入しているヒロハオモダカが群落を作っていました。この水草が繁茂する様子も、いつのまにか日本の風景になってしまいそうです。
2010-09-03
■[つぶやき] 寝屋川市における廃プラ公害の差止め裁判 署名並びにカンパのお願い
(以下は事務局からいただいた表記の文書を私が少し短くしたものです)
寝屋川の廃プラ処理施設の操業差止めをもとめた裁判は、さる7月23日に結審となり、判決は来年1月25日に行われます。
平成16年3月、二つの廃プラリサイクル処理施設の建設計画が突如として明らかになりました。私たちは、廃プラ処理により健康被害が起きた東京の杉並病のような健康障害が起きることを危惧し、寝屋川市、大阪府にその建設、操業を中止するよう訴えました。この予防原則を踏まえた私たちの切なる願いを寝屋川市、大阪府をはじめ行政が全く聞き入れないために、平成16年7月、私たちは大阪地方裁判所に建設と操業の停止を求める仮処分裁判を提訴しました。平成17年3月に下された仮処分の決定は、有害化学物質の発生と排出を認めたものの、100mで1000倍に薄まるとする被告側の言い分をそのまま取り入れて訴えを却下しました。
私たちはやむなく、平成17年8月、本裁判を起こしました。平成20年9月に下された1審判決は、専門家が有害化学物質が発生していること、その化学物質が住民の生活圏に到達していることを明らかにした意見、立証や2つの施設の操業による健康被害が発生していること(疫学調査結果)をことごとく認めず、挙句は国策たる循環型社会形成のため、この二つの施設は、「公共性、公益性がある有益なものであるから住民は受忍せよ」との判決でした。
そのため、私たちは平成20年10月に控訴し、専門家の熱心な協力を得て、1審での立証に加え、健康被害の実情、有害化学物質の排出、有害物質が生活圏に到達しやすい地形、気象条件等の立証など、1審で掘り下げが不充分な争点につき、調査、研究、実験を綿密に行なってきました。
とりわけ、当初、危惧していたシックハウス症候群類似の症状、すなわち、眼、鼻、喉、呼吸器などの粘膜刺激症状や皮膚症状などの有病者が集団発生していることに加え、化学物質過敏症の権威である宮田幹夫・北里大学名誉教授による神経学的検診において脳神経障害が広く生じている可能性があるとの診断結果が裁判所に提出され、事態の深刻さがいっそう明らかになりました。
つきましては、裁判所に多くの人々が、公正な判決を望んでいることの証しの署名をお届けいたしたいと思います。どうぞ署名にご協力をよろしくお願いいたします。
また、運動を続けるための資金の確保のため、カンパ活動にご協力をお願い申し上げます。
平成22年9月吉日
廃プラ処理による公害から健康と環境を守る会
代表 牧 隆 三
参考:意見書等による立証や証拠を提出していただいた先生方
柳沢幸雄東京大学大学院教授(環境システム工学、空気汚染化学物質の分析)
津田敏秀岡山大学大学院教授(環境疫学、健康アンケートを使った疫学調査)
西川榮一神戸商船大学名誉教授(煙の実験、温度測定による接地逆転層形成を立証)
真鍋穣医師、原田佳明小松病院院長、宮田幹夫北里大学名誉教授
樋口泰一大阪市立大学元教授(高分子化学)、楠田貢典大阪市立大学元教授(化学、故人)
植田和弘京都大学大学院教授(環境経済学)には柳沢幸雄教授とともに、北河内4市リサイクル施設組合の専門委員会の住民推薦委員としてご尽力いただきました。
*署名は、第一次締め切りを10月15日とします(裁判所への第一回提出を10月末とします)。
連絡先、署名送り先は、
〒572-0843 寝屋川市太秦中町29−23 長野 晃方 「守る会」事務局
電話・ファックス 072-824-5963 Eメール:inokan14960アットnifty.com
* ご寄付、カンパは お手数ですが、
郵便振替口座番号:00910−7−93521 加入者名:守る会 宛お願いいたします。
* パンフレット「新しい公害 寝屋川廃プラ公害病とは」を謹呈として1部同封させていただいております。
さらにご希望の方には頒布しております(頒価300円)のでご希望の方は上記、「守る会」事務局までご注文下さい。
2010-09-02
■[陸水学・水環境] アサザはミジンコの敵かも
第16回バイオアッセイ研究会・日本環境毒性学会合同研究発表会のポスター発表「オオミジンコを用いた湖水の水質評価−沿岸帯の毒性要因−」は、とても興味深い内容でした。
目的は「オオミジンコを使って天然物質(水草)の毒性評価を試みた」です。対象となった水草は浮葉植物のヒシ、アサザ、そして沈水植物のエビモ。実験の結果、「エビモ抽出物からは顕著な遊泳阻害は確認されなかったが、アサザからは遊泳阻害が確認された」そうです。ヒシについては、密度が低下した時期にオオミジンコの遊泳阻害率が上昇したことから、ヒシが食害を受けて枯死するときに有害物質が出ているのではないか、としています。
中国・雲南省に、急速に富栄養化が進んでアオコで覆われてしまったデン池という湖があります。ここでは富栄養化が進んだときにアサザが急激に増えるにつれて沈水植物が壊滅し、その直後、アオコの異常増殖が始まったそうです。沈水植物が減ることでそれが使っていた栄養塩がアオコに回ったことに加え、アサザによりアオコなどの植物プランクトンを食べてくれるミジンコが減って急激にアオコが増えたのかもしれないと、このポスターを見て思いました。
このブログでたびたび指摘しているように、浮葉植物に覆われると酸欠で動物が住めなくなります。それに加え、アサザは酸素が豊富な表層でも一部の動物の生息を困難にしている可能性が浮上してきたわけです。この研究の今後の展開に注目したいと思います。
それにしても、アサザの大群落を作ることで虫や魚も増えると唱えているアサザ基金の方々は、これまでまともに自然を観察されてきたのでしょうか?自然の大切さを子供達に教える上でまずやらねばならないのは、ビオトープにアサザを植え、それを湖で増殖させれば自然再生だと、まるで造園で自然を作れると誤解させることではありません。霞ヶ浦という湖沼がどういう湖沼なのか、先入観を持たせずに謙虚に観察させることが基本ではないでしょうか。
(なので、総合学習などをアサザ基金にお願いしている学校の先生方には、本当にそれが子供達にとってよいことなのか再検討いただければと思います)
アサザ基金のホームページによりますと、子供達と湖岸を1年間(だけ!)観察した結果、アサザの再生が自然の再生になると「閃いた」とあります。かくも根拠レスなことが閃くような観察とはいったいどんな観察だったのか、そこから問い直されるべきでしょう。また、絶滅危惧種であるというだけでこの植物を危険なまでに増殖させようとした生態学者の方は、動物については全くのシロウトだったのではと思わざるを得ません。霞ヶ浦(北浦)ではイシガイが全滅し、タナゴも消えてしまいました。その原因が粗朶消波施設ではないかとの指摘もあります。もしそうだったら、保全生態学者であるご自身も遠因ということになりますね。
逆に、アサザ基金のプロジェクトとは今では一線を画していて、一時は共著も書いたけれど今はアサザの植栽が保全とは思っていない、消波施設も必要とは考えていないのならば、一般市民に分かる形で(例えばもう一度本を書き直すなど)、お立場を明らかにすべきだと思います。
(追伸)屋久島で樹林化調査をしているM2から、予定していた作業を無事終了したと電話がありました。お疲れ様。帰路も事故のないように。また、堆砂量の計算完了までがdutyですよ^^