ライタープロフィール

ミネナユカ

峰なゆか

1984年うまれ。
元AV女優ライター。
恋のから○ぎ11期生としてAVデビュー。
引退後、エロ、サブカル、文学についていろいろ書いてます。
ツイッターは@minenayukaでやってます。

公式ブログ
[峰なゆかのひみつの赤ちゃんルーム]

http://d.hatena.ne.jp/minenayuka/

はだかのりれきしょ
【鮎川なお・後編】

<<【鮎川なお・前編】はこちら

 山田詠美の小説の中で、何度も何度も執拗に、魅力的に描かれる種類の人間がいる。
『ひざまずいて足をお舐め』から引用してみよう。

<世の中には本を読まなくていい人たちっていうのがいるんだ。私、忍姉さんも、その中のひとりだと思う。存在してるってこと自体が文学してる人は、もう、それで充分。私の男たちも、そう。本なんか読まない奴らばっかだったけど、もしも、文章が書けたら、すごい小説を沢山書いただろうなあっていう人間が沢山いた。そういう人たちは、字を書かなくっても、字を読まなくても、文学をたれ流して歩いてるってわけ。>

 ああ分かる分かる。いるよね、そういう人って。さらに引用すれば「自分の内側で、最初から、ものをあふれさせて」いて、「絶対的な音楽があるとして、そういう人たちは体から、その音楽を流していて」、赤面しちゃう言葉を使えば、「文学をするのではなくて、その人自体が文学だって」、そういう人。
 私はそういう人にはなれないけど、でもそういう人を発見する嗅覚だけは優れていると自負しているところはあって、鮎川なおさんも、山田詠美の言うところのそういう人だと思っていて、だからその、「知的な話」っていうのをしようとしなくたっていいと思うんだけど、そういうと怒られそうなので言いませんでした。

鮎川 やっぱ知的な話がしようよ!!

―あ、はい。

鮎川 私まだ下半身の話しかしてないし。ちんことかまんことかさー、下世話な話ばっかじゃん。

― 今までの生い立ちとかはどうでしょうか? 知的な話題的に。

鮎川 おいたちー? 普通ですよ私。普通に学校行って普通に卒業して、みたいな。

― 特に思い出深いできごととかはなかったんですね。では月並みな質問ですけども、初体験とかは?

鮎川 えっ、だってそれはちんこ入った話になっちゃうから。

― えーと、じゃあ初恋は?

鮎川 えー、初恋はねー……。んー、もういいですよちんこの話で。初エッチは19歳です、19歳。

― あっ、意外と遅めなのですね。高校生のときとかは?

鮎川 彼氏できなかった。

― 初体験の感想は?

鮎川 ヤッター! みたいな。これで私も…♡ みたいな。

― これで私も非処女♡ みたいな?

鮎川 非処女! みたいな。

― ふふふふふ。

鮎川 好きな人ができてね、一目惚れして。で、手紙を書いて渡してメル友になって、その人彼女いたんだけど、ラブホに誘ったの。

― 処女なのに?

鮎川 処女なのに!! でもそんなね、「ラブホ行こうよ!」とか言って誘ったわけじゃなくて、それとなくですよ。

― 「休憩したいな♡」みたいな?

鮎川 「ラブホ行きたくない?」みたいな!!

― 全然それとなくないよ!!

鮎川 私もだけど彼もラブホ行ったことなかったから。だから「ちょっとものは試しに行ってみようよ」って感じで。

― 処女なのに?

鮎川 処女なのに!!

― えろい!!

鮎川 岸和田の「もしもしピエロ」ってとこでね。

― 知ってる知ってる「もしもしピエロ」!!(安いラブホチェーン店)

鮎川 そこ行ってー、やってー、ヤッター! みたいな。やっぱ女の子だから初体験はすごい好きな人と、って思ってたし。だから「コイツと絶対やろう」って思って。 

 今はもう復帰するつもりはないし、一生AVやらないでいれば幸せになんだろうなって思うけど、例えばもし生活ができなくなったら、って考えると、最悪の場合、復帰してもいっかって。AVやるっていう選択肢が念頭にあるっていうか。それって普通の子はそうじゃないんだろうなって思うし、それってやっぱ普通じゃないのかな、って。
 3年間ばーってAVやってたときはなんも思ってなくてね、それがいいことなのか悪いことなのかも分かんないし、まあ、お金も儲かるし、別に不幸とも幸せとも思わなかったのね。  なんか、やってるときはAV業界の常識で考えてるじゃん。
 AVって、売れると喜ばれるし、女優としての技術があがっていくと私も嬉しいし、スタッフもがんばって作ってるのだと撮影終わった時は充実感もあるし、周りの人もAV関係の人ばっかりだからイヤなことも言われないし、自分がいる世界が一番いいって思うじゃないですか。私、東京の友達AV女優しかいないんですよ。
 でも辞めてから、ちょっと離れて見ると、私のいた場所が一番いい世界じゃなかったんだな、って。AVの世界が楽しかったわけじゃないんだなって思ったの。なんで「AVに女優みんないい人!」って錯覚してたんだろう。「障害者みんないい人!」みたいなもんだよね。
 でも楽しいって思いたいじゃん。でも楽しいわけないじゃんねー。
「うんこ食べるの楽しい!」とかさ、そんなん楽しくねえよ! 
 楽しいって思ってないとキツいことってあるだろうけど、私はたぶん思い込めないから作品によって浮き沈みあったんだと思う。
 でも、たまに、ちらっと思いません? 女優さんとかとAVやってたときの思い出話とかしたりすると、ちょっと、一瞬だけ戻りたいなって。思ったことないですか?
 また悪いアレがね、もわーんときてね。「やっちゃいなよ」みたいな。「復帰しちゃいなよ」って。ねえ、私、知的な話できてる?

― 最後に写真撮りますね。

鮎川 あたし写真撮られるの嫌いなんですよ。

―あっ、私もですー。よし、じゃあとりあえず壁を背景にとかで撮ろう。撮りますよー。

鮎川 はーい。(棒立ち)

― えっ、もうちょっとポーズとかそういうのはないんですか?

鮎川 ないです。

― あっ、そうですか……。じゃあ撮ります。パシャ。

鮎川 (無視)

― あっ、ワンピかわいいねえ。

鮎川 (無視)

― あっ、靴もかわいいんだねえ!!

鮎川 そうですか。

― 鮎川さんは褒められると不機嫌になる系?

鮎川 なんかね、女の人に褒められると馬鹿にしてんのかなって思っちゃうの。

― 私ね、写真撮ってると心のままに褒めちゃう系。

鮎川 私ね、ポーズの指示とかされるのもイヤなの。なんでこいつに指示されなきゃなんねーの、とか思うの。

―そうなんだあ。じゃあ次は椅子に座って目線はずしてください。

鮎川 「膝立ちしてください」とか言われてるとさー「えっ、だってここ地べたじゃん」とか思わない?

―屋外で全裸なのにアヒル座りとか求められたりするよね。まんこに! 砂が! 入りますけど!! みたいな。でも私小心者だから黙ってやるけど。

鮎川 はーん、ぜったい嘘だよねー。

― じゃあ次は全身の写真撮りましょうか。

鮎川 峰さんは男友達の方が多いですか?

― どうだろー。今は半々くらいかな。昔は女友達ばっかりだったけど。

鮎川 ほんとに?

― なんで?

鮎川 なんか、なんかさー…。

― なになに?

鮎川 なんでもないです。

― 鮎川さんはサディストですよね!

鮎川 違うよ! はい、もう写真いいですよね。

― えっ、もうちょっとだけ……!!

鮎川 もう似顔絵とかでいいじゃん。

― に、似顔絵……描きます?

鮎川 ううん、いいです。

― じゃあもうちょっと撮ります。次も目線ナシでお願いします。

鮎川 (無言でふくれっつらをする)

― かわいいー! なにそれかわいすぎるー。ツンデレって初めて見た!

鮎川 峰さんにデレは見せてないはずですけど。

― ふふふふ、ほんとだあ。

鮎川 そのさ、キャラは素なの?

― え? 今の状態ですか? だいたいこうだけど…。

鮎川 そうなんだ。作ってるのかと思って。なんかほら、喋り方とかかわいいじゃないですか。

― あ、ありがとうございます。声高いだけかと。

鮎川 ふーん。

― あっ、鮎川さん、横顔すっごいキレイ。

鮎川 ふーん。

― よし、これで写真終わりです!

鮎川 はーい、ありがとうございます。すみません、今日はまとまりのない話をしてしまって。

― いえ!! すごい知的な話が聞けました!!

鮎川 ハッ! 絶対思ってないよね。そういう薄暗いとこ垣間見えるの良くないと思う。

― えっ、えっ。

鮎川 峰さん女友達少なそうだもんね。

― あっ、さっきの質問はこの布石だったのですね。ええと、私わりといいヤツですよ!

鮎川 あっそう。

― 鮎川さん、インタビュー最初のうちはわりと優しかったのに、なんかどんどん冷たくなってきてるよね…。私、Mだから嬉しくなってしまいますよ…。

鮎川 えっ、何が?

― あれっ、違う? 私普通に嫌われてる? どっち?

鮎川 ああ、うん。どっちだろうね。

― ま、またご飯とかいっしょに食べよう、ね…?

鮎川 あー、そうだねー。(遠い目)

 AVは出て良かったって思うよ。悪い仕事ではないし、やったこと後悔してはないけど、でも絶対人に勧められないし、胸張って言えないし。もう辞めてるのに飲み屋でAVの話されるのちょっと不快なときとかもあるし。
 けど、「ううわ、なんでやったんだろう」とか「やんなきゃよかった」とか思うときが来るかもしれないし、そのときどうなるのかな自分は。
 私やらなきゃいけない理由もなく、なんとなく始めたから、一回「やんなきゃよかった」って思うともう、あれじゃん。
「やんなきゃよかった」って思いたくないけど、今のとこやって良かったって思います。うん。あと辞めなきゃ良かったって思うときもある。私ね、ころころ考えが変わるの。
 これからはVシネとかグラビアとか、エッチしない仕事でできるやつをやろうと思ってて。目標とかがあるわけではないけど。なんか私、自分の事を商品にしないとイヤなんです。自分で儲けてないとイヤ。自分が商品になってないとヤダ。
 目立ちたいとかそういうのがあるわけじゃなくって。AVを足がかりにして芸能界へ、とかでもなくて。アイドルにはなれないですよ。AV出たんだからアイドルになんてなれるわけないじゃないですか。ねえ。でも別に次にやることもないし。やりたいこともないし。
 だからって普通に会社勤めする自分とかは想像がつかないでしょ? 自分探しとかじゃないですよ。イヤじゃん、自分探しとか、薄ら寒くないですか?
 やれることがあればやるし、楽しかったらまたやるし、楽しくなかったら二度とやらないしそれだけ。ああ、難しいなインタビューって。二度とやらない。

<<【鮎川なお・前編】はこちら

NEW 更新日:2010-10-01
更新日:2010-09-15
NEW 更新日:2010-09-27
ライター9人によコラムナウ

新着ライターコラム

NEW 更新日:2010-09-30

【安田理央】

安田理央の「いい大人」
第四回 生の女体をネタに贅沢なオナニーをする【後編】
>> 続きはこちら
更新日:2010-09-27

【大坪ケムタ】

This is not a lovesong,too∗∗
第4回
>> 続きはこちら
更新日:2010-09-23

【沢木毅彦&伊東美和】

世相みねうち
第4回
>> 続きはこちら
更新日:2010-09-21

【遠藤遊佐】

実家暮らしのAVライター遠藤遊佐のうしろ向き人生相談
第4回
>> 続きはこちら
更新日:2010-09-17

【宮良一美】

for Adult Video Children
〜あなたの人(エロ)生を変えた一本〜
第4回 補足:地上波テレビとAV
>> 続きはこちら
更新日:2010-09-09

【藤木TDC】

映画はAVをめざす
第三回 川崎軍二の「ザ・種馬」(86年)
>> 続きはこちら
更新日:2010-09-06

【本橋信宏】

新・AV時代
第3話 AVにノックアウトされた男
>> 続きはこちら
更新日:2010-09-02

【猪口貴裕】

アワーミュージック
シングルマザーの選択〜華蝶楓月の場合
>> 続きはこちら
更新日:2010-08-12

【雨宮まみ】

AV監督への33の質問
第2回 ゴールドマン監督
>> 続きはこちら