2010年10月1日
ウロボロス [作]神崎裕也
「週刊コミックバンチ」が終わっちまったぁーっ!!
創刊は2001年5月。伝説の653万部をたたき出した「少年ジャンプ」5代目編集長の堀江信彦が初代編集長となり、原哲夫『蒼天の拳』と北条司『エンジェル・ハート』の二本柱で注目された。だが、いつしか若手マンガ家による『北斗の拳』(武論尊・原哲夫)の外伝ばかり乱立し、なんだか同人誌みたいに! かなり前から噂(うわさ)はあったが、今年8月いっぱいでついに休刊となった。
とはいえ、もちろん面白い作品だってあった。中でも末期の看板作品と呼べる人気を誇ったのが神崎裕也の『ウロボロス』だ。
警視庁新宿第二警察署(後に本庁捜査一課)の刑事・龍崎イクオと我孫子会系松尾組の若頭・段野竜哉。ふたりは15年前、親代わりの結子先生を殺した犯人を目撃したが、その証言は金時計をした刑事に握りつぶされた。やがてふたりは刑事とヤクザになり、警察の中枢にいる「金時計の男」への復讐(ふくしゅう)を誓う。ちなみにタイトルの「ウロボロス」とは、「自分の尾をくわえて円形になった蛇」や「お互いの尾を呑(の)みこんだ2匹の龍」のこと。本作では「切っても切れない絆(きずな)で結ばれた2匹の龍(龍崎と竜哉)」という意味だろう。
刑事とヤクザ――。相容(あいい)れないはずの“光”と“闇”が裏でつながっているというアイデアに、『サンクチュアリ』(史村翔・池上遼一)の影響があるのはまちがいない。地獄のカンボジアで少年時代を過ごした北条彰と浅見千秋は、それぞれヤクザと政治家になり、腐った日本を変えようとする。バブル期ならではの上昇志向、男気あふれる名台詞(せりふ)の数々が、胸を熱くさせた。考えてみれば、史村翔は武論尊と同一人物。「コミックバンチ」とは縁も深い。
ただし、似ているのは主人公コンビだけで、『ウロボロス』は“警察の闇”と“リベンジ”をテーマにしたハード・サスペンスだ。童顔のイクオでさえ、ひそかに多くの凶悪犯を射殺してきた黒さを持つ。基本的に暗く、ヘビーな設定なのだが、ストーリーのテンポやキャラクターの明るさがカバーしており、あまり抵抗はない。
なお、来年1月に創刊される後継誌「月刊コミック@バンチ」では、『ウロボロス』を含めた5本の人気作が引き続き連載されることに。“リベンジ”を期待したい!
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史村翔・池上遼一『サンクチュアリ』全8巻(小学館文庫)1990年開始
神崎裕也『ウロボロス―警察ヲ裁クハ我ニアリ―』既刊6巻(新潮社)2009年開始
1967年、新潟県生まれ。新潟大学法学部卒業。編集プロダクション勤務を経てフリーライターに。99年から朝日新聞「コミック・ブレーク」で、インタビューと作品解説を担当する。好きな四字熟語は「臥薪嘗胆」。
著者:神崎 裕也
出版社:新潮社 価格:¥ 540
著者:原 哲夫・武論尊
出版社:新潮社 価格:¥ 530
著者:北条 司
出版社:新潮社 価格:¥ 530
著者:原 哲夫
出版社:集英社 価格:¥ 650
著者:史村 翔・池上 遼一
出版社:小学館 価格:¥ 509
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