東芝 二次電池システム技師長
本多啓三氏
東芝・二次電池システム技師長本多啓三氏に
自動車用リチウムイオン電池の開発戦略を聞く
「自動車メーカーは、現状のリチウムイオン電池の性能に決して満足していません。」そう語るのは東芝電力流通・産業システム社の二次電池システム技師長の本多啓三氏。今後普及が期待されるHEVやEVの性能は、電池の性能に大きく左右されるため、自動車用リチウム電池は熾烈な開発競争の渦中にある。そのなかに切り込みをかけるのが、東芝の新型二次電池「SCiBTM」である。本多氏に、東芝のリチウムイオン電池の開発戦略について聞いた。(聞き手 白石泰基=テクノアソシエーツ)
SCiBTMの低温性能について、出力面と入力面の2つに分けて説明したいと思います。まず、出力面についてですが、SCiBTMは低温での放電容量の劣化が少ないことがあります。環境温度が−10℃程度に低下した場合、一般のリチウムイオン電池では放電容量が大幅に低下してしまいますが、SCiBTMでは95%以上が維持されます(図1)。
次に入力面についてですが、実は一般のリチウムイオン電池では、低温で急速充電を行うと電池が壊れてしまいます。しかし、SCiBTMは低温で充電を繰り返しても電池へのダメージがなく、電池の性能が失われることがありません(図2)。
これが、HEVやEVにとってどういう意味を持つかというと、一般のリチウムイオン電池を積んだHEVやEVが寒冷地に行くと、放電容量が大きく低下する上に、電池をダメージから保護するために回生に制約が生じるということになります。
電池の容量を考えるときに大切な要素の一つに、SOC(State of Charge)という考え方があります。これは満充電の状態を100%、完全放電を0%としたとき、そのなかのどれだけの幅で電池を実際に使えるかということです。実は、一般のリチウムイオン電池の場合、満充電近くやSOCレベルの高い領域で使用すると、安全性の問題や電池寿命に影響を与えるので使用する幅を制限する設定になっています。これに対して、SCiBTMは十分に広い幅で使用することができます(図3)。ですから、SCiBTMは一般のリチウムイオン電池と比べてSOCが広い分だけ、セルを小さく軽くすることができるのです。
セルのスペックを見て、重量当りエネルギー密度(Wh/kg)であるとか、重量当り出力密度(W/kg)だとかを取り上げると確かにわかりやすいのですが、これは議論の一面にしか過ぎません。同じようにクルマに電池を積んでも、使用できるSOC幅が違うのです。実際に、私たちが自動車メーカーのところに行って、電池に対する要求をお聞きし、SCiBTMだとこれくらいのパッケージになりますと提示すると、かなり小さくなり驚かれることがあります。
HEV用の電池は既に開発を終えています。容量は3.3Ahで、出力密度、入力密度共に約3,900W/kgです(図4)。この電池は、広いSOC範囲にわたって高い出入力が得られるのが特長です。一般のリチウムイオン電池は、使用できるSOCの幅が狭い上に、SOCの両端のところでは出入力が落ちこみます(図3)。しかし、自動車のように常に運転状態が変化する用途では、必ずしも電池にとって都合のよいSOCのところだけで使われるとは限りませんから、SCiBTMの広い範囲にわたりフラットな出入力特性は大きなメリットです(図5)。
EV用としては、容量が20Ahで、エネルギー密度が100Wh/kg級のものを今年の秋からサンプル出荷します。小型車のEVならこれで十分ですが、さらに大型車を動かそうとするとエネルギー密度を150Wh/kgくらいに上げる必要があります。こちらについても現在、研究を進めており、EV用電池として開発に注力しています(図6)。
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