「HEV・EV用電池として、SCiBTMは自動車メーカーの有力な選択肢に」(前編) 〜東芝・二次電池システム技師長本多啓三氏に自動車用リチウムイオン電池の開発戦略を聞く〜

東芝 二次電池システム技師長本多啓三氏

東芝 二次電池システム技師長
本多啓三氏

「HEV・EV用電池として、SCiBTMは自動車メーカーの有力な選択肢に」(前編)

東芝・二次電池システム技師長本多啓三氏に
自動車用リチウムイオン電池の開発戦略を聞く

「私たちは次世代二次電池として登場したばかり。しかし、自動車メーカーからのSCiBTMの評価には、十分な手ごたえを感じています。」そう語るのは、東芝電力流通・産業システム社の二次電池システム技師長の本多啓三氏である。東芝は、チタン酸リチウムを負極に使用したリチウムイオン二次電池「SCiBTM」で産業用二次電池事業に参入。昨年春から量産を開始し、電動自転車や工場内自動搬送車などで着実に実績を積み重ねている。その東芝が次に狙いを定めているのが、ハイブリッド自動車や電気自動車用のリチウムイオン電池。一般産業用のセルをベースに、出力性能を高めたHEV用のタイプの開発を既に完了している(関連記事)。さらに、今年秋からは、高エネルギータイプのEV用リチウムイオン電池のサンプル出荷を開始する。本多氏に、東芝の自動車用リチウムイオン電池の開発指針や特長を聞いた。(聞き手 白石泰基=テクノアソシエーツ)

SCiBTMと従来のリチウムイオン電池の違いについて教えて下さい。

SCiB<sup>TM</sup>の特長

図1:SCiBTMの特長

SCiBTMと従来のリチウムイオン電池の大きな違いは、従来の電池は負極に炭素系の材料を使用しているのに対し、SCiBTMはチタン酸リチウムを使用していることです。主成分の酸化チタンというのは、絵の具や塗料などに使用されているセラミックスの一種です。そういうものをナノレベルの非常に微細な粉体に加工し電極材料に使用しています。負極材にチタン酸リチウムを使用することにより、正極材や電解液などの選択の幅も大きく広がりました。そうして、従来のリチウムイオン電池では困難であった各種の効果が生まれたのです。

SCiBTMの特長についてお聞かせ下さい。

SCiBTMには、従来のリチウムイオン二次電池にはない様々な特長があります。その中で最も重要な特長は安全性です(図1)。私たちが今回二次電池のビジネスに参入するにあたって、まず考えたことは、現在のリチウムイオン電池は、安全上の課題を抱えているということです。携帯電話やパソコンにリチウムイオン電池が使われていて、自動車になかなか採用されないのは、一つには安全性の課題があるからです。私たちの電池に関する基本的な考え方は、安全性を最優先するということです。SCiBTMは、外部から力が加わり電池が押し潰されたり、電池内部を金属片が貫通したりするような事故が起きたとしても、破裂や発火することはありません(図2⇒東芝サイト)。

SCiBTMは、このような安全性に加えて、長寿命、急速充電、低温性能など、リチウムイオン電池をHEVやEVなど自動車に使用する上で求められる各種の要素においても、高い性能を兼ね備えています。自動車メーカーからは、そういったSCiBTMの性能に関して高い評価をいただいています。

SCiB<sup>TM</sup>の充電サイクル性能

図3:SCiBTMの充電サイクル性能

SCiBTMの寿命についてお聞かせ下さい。

一般的に二次電池は、充放電の繰り返しに伴い電池容量が低下していきます。従来のリチウムイオン電池の寿命は、充放電の繰り返しサイクルで長くても1,000回です。これを越えると交換が必要になります。しかし、SCiBでは6,000回は十分に使用できます。SCiBTMで6,000回通常の充放電サイクルを繰り返した後の容量維持率は90%以上です。急速充放電を繰り返し電池に高い負荷をかけた場合でも、6,000サイクル後に80%以上の容量が維持されます(図3)。

自動車のように長期間使用される耐久消費材にとって、電池の寿命が長いということはコストの点で、非常に大きいメリットです。電池の寿命が1,000回だとすると、ほぼ毎日充電した場合だいたい3年に一回は電池の交換が必要です。一方で、6,000回の寿命というのは、約20年になります。こうなると、自動車の寿命より電池の寿命の方が長いことになります。

SCiB<sup>TM</sup>の充電特性

図4:SCiBTMの充電特性

充電性能について教えて下さい。

SCiBTMの特長の一つである急速充電性能は、SCiBTMの安全性とコインの裏表の関係にあります。一般のリチウムイオン電池では急速に充電したくても安全性の問題から限界があるのに対し、SCiBTMは安全性が高いから急速に充電しても問題がないのです。

現在出荷している産業用のSCiBTMセルは、約5分で電池容量の90%を充電することができますが、今回開発したHEV用セルでは、これを約1分半に短縮しました(図4)。急速充電性能は、SCiBTMの高入力性能と言い換えることができますが、HEVの燃費改善の貢献に重要です。短時間で多くの電力を電池に取り込める性能があるということは、HEVの減速時に発生する回生エネルギーを多く取り込めることにつながるからです。



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