「復興の弾みになれば」-。宮崎県の家畜伝染病「口蹄疫(こうていえき)」に伴い、同県内で最後まで中止されていた児湯(こゆ)地域家畜市場(新富町)の子牛の競りが30日、再開された。その約7カ月ぶりの記念の日に遠路はるばる買い付けに訪れた山形県の男性が、再開後の県内最高値で競り落とした子牛を、口蹄疫で家畜を失った県立高鍋農業高(高鍋町)にプレゼントした。
山形県米沢市の畜産会社社長佐藤秀彌さん(55)で、落札価格は259万円(税込み)。競り再開後に都城で付いた169万円の最高値を90万円も上回る高値に、会場にどよめきが起きた。
江戸時代、高鍋秋月家から米沢藩(現山形県)に養子に出た名君上杉鷹山(ようざん)の縁で、米沢市と高鍋町は姉妹市町の関係。佐藤さんは5年前から子牛を買い付けに訪れており、自社農場で飼う半数近い約550頭は児湯市場で購入した牛だ。
プレゼントの理由を「口蹄疫で沈んだ宮崎を盛り上げたかった」と佐藤さん。「高鍋農業高の生徒たちは、将来の宮崎の畜産を背負う人材。彼らにいい牛を育ててほしい。『なせばなる。なさねばならぬ何事も』ですよ」と、鷹山公の名言を引用しエールを送った。
同校の岩下英樹校長は「生徒たちにはこれから伝えたい。地域の財産として育てます」。牛は当面、同市場内の畜舎に預けられ、11月にも同校に引き渡される。
=2010/10/01付 西日本新聞朝刊=