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【社会】

南宋時代の幻の盆見つかる 名古屋の興正寺

2010年9月30日 09時04分

新発見の中国・南宋時代の彫彩漆の盆。多色の漆を15層塗り重ねて、蓮の花文様に彫り込んである=興正寺所蔵

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 尾張藩2代藩主の徳川光友(1625〜1700年)が晩年に創建した八事山興正寺(名古屋市昭和区)の蔵から、光友が寺に寄進した中国・南宋時代(12〜13世紀)製の「彫彩漆(ちょうさいしつ)」の盆が見つかった。漆芸が全盛を極めた南宋時代の彫彩漆は世界的にも希少で専門家は「国重要文化財級の世界的な名品」としている。

 この盆は高さ2・8センチ、直径18・1センチ。茶、黒、赤、黄、緑の発色鮮やかな五色の漆を15層に塗り重ねてから、蓮(はす)の花文様に彫り込んである。箱のふた表に「大納言光友公御寄附(きふ)」と墨書きされ、寺の記録では蓮花文の香合も一対で寄進されたことが分かっているが、香合は明治初めの記録を最後に所在不明になっている。

 漆器研究の権威、徳川美術館(同市東区)企画情報部長の小池富雄氏が数年前、所蔵品を調べた際、僧侶が取り違えて蔵から出し、新発見につながった。梅村正昭住職は「たくさんある殿様拝領品の一つで、貴重な物と分からず、300年余眠っていた。くしくも名古屋開府400年の今年、日の目を見ることになった」と喜んでいる。

 小池氏は「このデザインの彫漆は香合と盆が一対。室町時代には『帰花(かえりはな)薬器』と呼び、将軍邸の座敷飾りの最高品とされた。時代が下る元、明時代の模倣作は多いが、これぞ帰花薬器の幻の本作と確信している。重文級の逸品だ」と評価。「尾張徳川家伝来の中国漆器コレクションを誇る徳川美術館に、なぜか帰花薬器がなかった。2代藩主が寄進したことが分かり、その謎が解けた」と話している。

 同美術館「尾張徳川家の名宝」展で10月2日から初公開される。

 ■多くの漆工品の修復・復元模造に携わる人間国宝、北村昭斎氏の話 傷みや修復跡もなく、保存状態が非常にいい。形、色彩、文様、とりわけ彫り面の美しさは格別だ。近年研究が進み彫彩漆が堆朱(ついしゅ)、堆黒より古い南宋製と分かった。中国の渡来僧が持ち込んだ彫彩漆がまだ埋もれているかもしれない。

(中日新聞)

 

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