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社説:第三国定住難民 「受け入れ」定着と拡大を

 タイ北西部のメラ難民キャンプで暮らしていたミャンマー難民3家族18人が来日した。軍事政権下の母国で迫害され、逃れた人たちである。

 避難先の国でも定住できない難民を別の国に移して定住させるのが「第三国定住」だ。日本はこれまで、母国以外の国を経由した難民は認定してこなかった。

 難民の救済策として、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が「第三国定住」制度を呼びかけ、欧米や南米などで受け入れが進む中、試験的に導入したものだ。

 今年度から3年間で90人のミャンマー難民を迎え、状況をみながら増やすという。

 そもそも、難民の受け入れは人道問題である。「難民条約」に基づき、年間数千~数万人を難民認定する欧米先進国に比べ、日本の昨年の認定者は30人だ。存在感は極めて薄い。その意味で、難民問題で積極的に国際貢献するというメッセージを世界に送ったことは、評価したい。

 来日したのは、少数民族「カレン族」の人たちである。政府担当者が現地で面接をして選んだ。到着した際、口々に「うれしい」「農業の仕事につきたい」などと語った。

 まず半年間かけて、日本語や生活習慣などの研修を受ける。だが、定住先は決まっておらず、心中には不安もあるだろう。

 かつて日本は1万人以上のインドシナ難民を受け入れた。だが、言葉の問題が壁になり、進学や就職ができず困窮する人が多かった。

 そのてつを踏んではならない。そのためには、継続的な行政の支援とともに、難民を受け入れる国民の意識改革も必要だ。

 UNHCR前駐日代表が長野県出身という縁で、今回来日したミャンマー難民について、同県松本市の市民らが定住先候補として手を挙げ、有志で支援方法の勉強会や住宅探しをしているという。

 日本語が不自由なまま、初めての地で生活するのである。どんな形であれ、支援の動きは心強い。

 来日したミャンマー難民の人たちは、将来的に永住資格や日本国籍を得ることも可能だ。少子高齢化が進む中で、難民たちが社会に根づいて働き、生活できる環境を整えるのは、日本の将来のためでもある。

 タイに逃れたミャンマー難民は約15万人と言われる。さらに「第三国定住」難民の受け入れを進めるのは当然だろう。

 一方で、タイを経由せずミャンマーから直接来日し、「条約難民」として難民申請した人が、昨年だけで568人に上る。こちらの門戸も一層広げることが、国際社会の要請に応えることになる。

毎日新聞 2010年10月1日 2時30分

 

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