――指導部交代と言えば、北朝鮮で金正日総書記の三男ジョンウン氏が事実上の後継に指名された。中国は、この北朝鮮を外交カードとしてどのように利用しようとしているのか。
中国は、北朝鮮との関係でふたつの目標を持っている。ひとつは核保有を制限すること。もうひとつは国家崩壊を防ぐことだ。
北朝鮮が崩壊すると、難民が中国になだれ込む。中国はこのふたつの目標を並行して達成しようとしてきたが、北朝鮮の指導部と何らかの対立問題が生じると、後者を重視せざるを得なかった。つまり、北朝鮮に対して、中国は完全に厳格な態度に出てこられなかったということだ。逆説的だが、北朝鮮はその弱者的な立場を国家パワーとして利用しており、それを中国に対して行使しているのだ。
中国は、北朝鮮が国家崩壊を免れるためには中国的な経済改革を推進することが必要だと見ているが、北朝鮮にはその意思がないという状態だ。
――話を領土問題に戻せば、中国が近隣諸国に対して融和的姿勢に転じる可能性はあると思うか。
2002年~2003年にさかのぼれば、じつは中国はASEAN諸国に対して、南シナ海の領土問題でより穏やかな立場で臨むというソフトパワーを使っていた。ところが、ここ数年で態度が硬化してしまった。経済的な成功を背景に、若い共産党員の態度も強気になり、近隣諸国が中国の言い分を聞き入れるべきだと考えるようになったのだろう。
だが、中国は元の路線に戻るべきだ。アメリカは、アジア地域で中国が融和的姿勢を保つことは、中国、アメリカ、日本を含めたすべての国の経済発展にとっていいことだと見ている。
――現状を見ていると、その声が届くのかは分からない。
こう答えよう。ゲームには、双方が負けるものと、どちらも勝つものがあるが、われわれは後者を探求すべきだ。対立状態は何も生産しない。外交交渉こそ何物にも勝る。中国にもそう考えてもらうしかない。