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▲己斐の主要道、県道伴広島線。歩道はなく、大型車のスムースな離合も困難
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2002(平成14)年11月、広島市は新交通システム「アストラムライン」のJR西広島駅への接続ルート案(約1.85km)を正式決定した。1999(同11)年11月に市が「西風新都線」として同駅へ連結する意向を示して以来、3年の期間を経て市が構想する「広域的な軌道交通網の拡大と機能強化」実現に向け、新たな一歩を踏み出すことになる。併せて、アストラムラインの高架の受け皿となる新たな幹線道路「己斐中央線(仮称)」の建設が決定した。同幹線路の実現は延伸計画の前提だ。
「西風新都線」と「己斐中央線(仮称)」
西風新都線は高架方式を基本に、広島市佐伯区の5月が丘団地の南側から同市西区己斐の広電団地の南斜面までの約6.2kmをトンネルでつなぐ。駅の数は広域公園前駅からトンネルまでは未定(12月24日現在)、トンネルからJR西広島駅までは3カ所設ける。事業費は約700億円。1日に約2万人の利用者数を見込む。
「広島市の西の玄関」にあたる同地区。アストラムラインが連絡すれば、同市内では類を見ない、JR・広電と同社の三路線駅が集中する地区となり、一気に軌道交通の要衝となる。
一方、地元の交通渋滞解消と交通事故減少への期待が掛かる己斐中央線は、西区己斐上四丁目の沼田分かれ交差点から同区己斐本町一丁目のJR西広島駅北口までの約1.85kmの長さ。道幅は22mから27mで片側一車線の計二車線。停車帯や植樹帯、自転車歩行者道を設ける。
同駅北口には、面積3900平方メートルの北口交通広場を設け、バス乗降場、タクシー乗降場、自家用車乗降場、自動車駐車場などを設ける。南口駅前広場とは佐伯区の五日市駅のように上空自由通路で連絡する。
まちづくりの動き
「市が言うには、住民はおおむね、アストラムラインの延伸とまちの再開発に賛成らしい」と市民グループ「二十一世紀の己斐を創る会」の桜井親会長はいう。念願だった再開発が濃厚となり、新たなまちづくりへ懸ける思いは強い。
己斐地区は、1965(昭和40)年ごろから、古いまち並みの周辺に新しい住宅団地が次々に開発されていった。「道路も整備せずに(建物を)次々建てていったため、車社会に順応できなくなった」と桜井会長は、後先考えないかつての開発に怒りの声を上げる。
狭い道路は緊急車両の通行を阻み、高齢化した住民の生活に不安を投げ掛ける。現在の主要道路、県道伴広島線の慢性的な渋滞、子どもの通学路の問題や月に2件程度発生している交通事故など、住民の我慢は限界にきている。
同会は4年前に「己斐地区まちづくり協議会」から改名発足。市と共に勉強会を設けてきた。アストラムラインと己斐中央線のルート案が決定したことで、「次はまちづくり」と気を引き締める。「お茶を飲もうと思っても、喫茶店すらない。広電宮島線も乗り換えがなくなり、“通過するまち”になってしまった」と同会の辻本弘北口地区会長は自ちょう気味に話す。「この機会に、若者もお年寄りも住めるまちをつくりたい」と桜井会長と声を合わせる。己斐中央線を中心に、広い範囲が再開発の対象となりそうだ。
一方で、立ち退きなどの話も具体化してくる。「再開発に賛成の住民も、いざ立ち退きとなると不満が出てくるだろう」と同会幹部は言う。独居のお年寄りは己斐中地区だけで約42人。お年寄り夫婦のみの家庭は約二十一所帯だという。「高齢者は住み慣れた場所からの引越しを嫌がるし、実際に難しいだろう」と面を曇らせる。
これまで何度もあったという再開発の構想がすべて流れた経緯からも「この機会を逃すと次はない。50年先をにらんだまちづくりをしていきたい」と後悔のないまちづくりを目指す。今後も活発に勉強会などを重ね、詳細を煮詰めていく予定だ。
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