【社説】北の権力移行による不安定要因に備えよ

 北朝鮮の労働新聞は9月30日付で、三代世襲の舞台に公式に登場した金正日(キム・ジョンイル)総書記の三男ジョンウン氏の写真を公開した。ジョンウン氏が成人してから、北朝鮮メディアに登場したのは今回が初めてだ。朝鮮労働党代表者会の直後に撮影されたこの記念写真でジョンウン氏は、金総書記の位置から向かって左側、共に党中央軍事委員会副委員長に任命された李英鎬(リ・ヨンホ)総参謀長(韓国の参謀総長に相当)の隣に座った。一方、金総書記から向かって右側には、最高人民会議常任委員長の金永南(キム・ヨンナム)氏と崔永林(チェ・ヨンリム)首相が座った。この写真を見た北朝鮮の住民は、金総書記の息子がわずか27歳という若さで絶対的な権力を握った現実を実感したことだろう。

 ジョンウン氏の権力世襲が正式に決まった先月29日、北朝鮮外務省の朴吉淵(パク・キルヨン)副首相は国連総会での演説で、「米国の原子力空母がわが国領海の周辺をうろついている限り、われわれは核抑止力を絶対に放棄できず、むしろ強化していく」と述べ、核兵器開発を今後も続ける意向を明確にした。金総書記は権力世襲をスタートさせるに当たり、ジョンウン氏にまず朝鮮人民軍大将の地位を与え、さらに朝鮮労働党と軍のパイプ役となる党中央軍事委員会副委員長に選出した。これは、北朝鮮で最大の権力を持つとされる軍を権力世襲の後ろ盾とするためとみられ、今後も、軍の影響力がさらに強まることは間違いない。北朝鮮は通常兵器では韓国よりも劣勢との判断から、核兵器やミサイル、さらにはゲリラ部隊など非対称戦力を強化しており、金総書記とジョンウン氏親子も、このような軍の意向に逆らうことはできないはずだ。そのため、核廃棄を進めるための6カ国協議が再開されたとしても、当分は大きな成果は見出せないだろう。

 北朝鮮は、金総書記が9月初めに中国を訪問した直後、しばらくは中国の経済改革と開放の成果を持ち上げたが、今回の党代表者会では、改革・開放を担当する実務者が権力の中心から徹底して遠のけられた。これは現在、北朝鮮権力の政治的、政策的最優先課題が経済の活性化や食糧不足の解決といった生活関連ではなく、権力世襲の安定化にあることを改めて示したものだ。そのため南北関係の正常化は、食糧支援など緊急の問題を除けば、後回しにされることは間違いない。哨戒艦「天安」沈没を主導したとされる人民武力部偵察総局長の金英徹(キム・ヨンチョル)氏に党中央軍事委員会委員という要職を与えたことからも、このような北朝鮮の意向を読み取ることができる。

 北朝鮮のような専制的一人独裁体制における権力移行期には、後継者が権力内部で力量を発揮し、国民に自らのイメージを植え付けるため、対外的に無謀な行動に出る可能性が高い。1983年のラングーン事件(全斗煥〈チョン・ドゥファン〉当時に大統領の一行がミャンマーを訪問した際、アウン・サン国立墓地で北朝鮮の工作員が起こした爆破テロ)や、87年の大韓航空機爆破事件なども、金総書記が金日成(キム・イルソン)主席の権力を段階的に継承する過程で発生した。そのため韓国は、北朝鮮のこのような動向を徹底的に監視し、有事の際の対応策をあらかじめ取りまとめておかなければならない。その上で、金総書記の国からジョンウン氏の国へと変わりゆく北朝鮮が国際的な枠組みから外れないよう、各国との協力体制を築き上げる必要がある。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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