(3/26)トステム、アントラーズと蜜月続く・「宣伝効果は年30億円強」
 サッカーのJリーグが10日開幕した。優勝候補との呼び声が高いのが昨シーズン3冠を成し遂げた鹿島アントラーズだ。筆頭スポンサーとして支えてきた住宅機器大手のトステムは、2年間で約4億円をスポンサー料として投じ、同社の試算では年間30億円強の宣伝効果を獲得。アントラーズを応援する他のスポンサー企業からの受注増というメリットもあるという。リストラでプロスポーツから手を引く企業が目立つなか、チームと蜜月(みつげつ)が続くトステムの例を検証してみた。

 アントラーズは今でこそ毎年のように優勝戦線に絡む強豪チーム。だがJリーグ発足の1992年当初は出場する10チーム枠の最後に滑り込み、「知名度がなく、資金を募るスポンサー獲得にも苦労した」(鹿島アントラーズの鈴木秀樹事業部次長)。

  • 士気向上にプラス

     トステムがアントラーズのスポンサーになったのは93年。92年に旧社名のトーヨーサッシから変更した新社名を広く浸透させるのが狙いだった。アントラーズがホームタウンを置く茨城県には「自社工場が5つあり、社員の士気向上にもプラス」(トステムの潮田健次郎会長)ということもあって支援に踏み切ることにした。

     スポンサー料を負担する見返りとして、新社名である「TOSTEM」のロゴマークが球場の看板や選手のユニホームに踊ることになった。Jリーグが開幕した当初は、ヴェルディ川崎や横浜マリノスなどの老舗チームに人気が集中したが、アントラーズは96年以降に頭角をあらわし、リーグ戦や冠大会での優勝を繰り返していく。

     トステムは毎年社内でスポンサー効果を調査する。毎試合のテレビ放映や結果を通じ、どれだけユニホームの胸に付いているロゴが放映されたかを試算するわけだ。放映時間は時間帯による視聴率などを加味してはじき出し、テレビCMなどを流す費用に置き換えてみる。

  • 社名が広く浸透

     その結果、アントラーズの戦績に比例する形でトステムの出資額に対する宣伝効果は飛躍的に上昇したという。無冠に終わった94年は宣伝効果は約15億円。だが96年にはTOSTEMの文字がユニホームの背中から胸の部分に変わったうえ、リーグ優勝した相乗効果も伴って約30億円に跳ね上がったという。「社名が広く浸透したと同時に、自社を宣伝する基盤活動となっている」(トステム宣伝室の杉山健二室長)。

     企業は宣伝効果を狙いスポーツビジネスに参入するが、大抵は資金を出資するだけでチームとスポンサー企業間に緊密な関係をつくれずじまいに終わる。98年には横浜フリューゲルスが有力株主だった佐藤工業の経営不振を受け、横浜マリノスに吸収合併された。トステムと同業者の住建産業がサンフレッチェ広島にスポンサー支援をしているが、宣伝効果を思うようにあげられずにいるという。

  • 交流会で絆を深める

     トステムの場合は、年4回の頻度でアントラーズの選手やスポンサー企業のトップを含めた交流会を開催。そうした絆(きずな)が強みとなって、95年から現在まで、同じスポンサー企業から約15億円の発注があったという。プロスポーツへの参加は決して近視眼的な対応では成功しない。継続した支援と長期的な投資効果を判断する“余裕”が欠かせないようだ。(馬場燃)


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