いずれにしても、尖閣諸島問題への対応が迷走し続けている原因を政府内の幹部に聞いたところ、「意思決定のプロセスがメチャクチャになっている。その中で、民主党の人たちは自分の体面だけを考えたその場しのぎの判断をするので、混乱しないはずがない」とあきらめ顔で言っていました。「尖閣だけではなく、すべての政策でそうなっている」とのことです。
その結果が外交史に残る今回の失態であり、それが北方領土問題でのロシアの悪乗りまで惹起したのです。私自身、国際機関で北朝鮮問題に携わった経験から、外交・国際政治はビジネス以上に生き馬の目を抜く厳しい世界だと思います。そこで情けない対応をしてしまったのですから、“池に落ちた犬は叩かないと”とばかりにロシアが動くのは当然です。
経済財政運営の司令塔を巡る混乱
そして、留意すべきは、尖閣諸島問題の陰に隠れてしまってあまり報道されていませんが、官邸の“その場しのぎの判断”による混乱が経済財政運営の司令塔を巡っても生じているということです。
民主党政権になった段階では、国家戦略局(現在は室)が政治主導の要になることが想定されていました。ところが菅政権になって、国家戦略室の位置づけが総理への助言機関に格下げされ、政治主導のエンジン不在となりました。それを憂いていたら、代表選の最中に新成長戦略実現会議が官邸に突然設置され、“これが政治主導のエンジンになるか”と期待していたのですが、また混乱が始まっています。
官邸は、国家戦略室の格下げに対する世論の厳しい批判を気にしてか、いったん下した格下げの判断を覆して、国家戦略室に助言機関の機能と経済財政運営の総合調整の機能の両方を持たせようとしているのです。
新成長戦略実現会議の突然の設置、国家戦略室の復活という“その場しのぎの政策決定”二連発の結果生じているのは、国家戦略室と新成長戦略実現会議のどちらが経済財政運営の司令塔となるのか、二つの組織の間でのデマケ(役割分担)はどうなるのか、という点を巡っての混乱です(ついでに言えば、国家戦略担当大臣と経済財政担当大臣のどちらが経済財政運営の司令塔となるのかも不明確ですよね)。