後継者問題:肉付きの良い「平壌の皇太子」

容姿や人民服姿、拍手をする姿勢も故・金日成主席そっくり

「後継を十分に準備した痕跡あり」

30代の金日成(キム・イルソン)主席:1949年1月、最高人民会議第2次会議で演説する、若かりしころの金主席。ジョンウン氏と雰囲気が似ている。
 北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記の後継者、三男ジョンウン氏の姿が9月30日、北朝鮮国営メディアを通じ初めて公開された。労働党の機関紙「労働新聞」による同日朝の報道を皮切りに、午後2時30分には朝鮮中央通信が写真を、午後5時からは朝鮮中央テレビが動画を放送した。ほおが厚ぼったい27歳の後継者は、濃い色の人民服を着て、父やその忠臣たちに挟まれて座っていた。

 世界に例のない権力の三代世襲を目指すジョンウン氏の公式舞台デビューショーは、3段階からなっていた。9月28日の「大将」任命で幕が開き、翌29日には「党中央軍事委員会副委員長」に選任、フィナーレは写真の公開だった。昨年6月に国家情報院が国会報告で初めてその名を挙げて以来、すべてが推測に包まれていたが、ついに姿を現したジョンウン氏は、韓国でいえば軍での服務を終えた社会人1年生程度の年齢だ。2008年に脳卒中で倒れた金総書記は、国際社会の支援なしには住民が食べていくことすらできない、人口2400万人の北朝鮮を、このジョンウン氏に任せることにしたわけだ。

 ジョンウン氏は、父・金総書記にも似ているが、祖父の故・金日成(キム・イルソン)主席によく似ている。本紙が入手した1年4カ月前の写真と比較してみると、金日成主席と似た雰囲気を出すため髪型を変えるなど、努力した痕跡が見られる。軍人を除くほかの出席者たちは皆、スーツにネクタイ姿だったが、ジョンウン氏だけは人民服を着ていた。幹部クラスの脱北者は、「北で“チュメル洋服”と呼ばれるこの服は、1950年代後半に金日成主席が人民の前に顔を出すときに着たことで有名になった。まだ若いジョンウン氏には、とりたてて言うべき経歴も業績もないため、祖父に似ているという声でも聞いてみたい、という意図ではないか」と語った。

 北朝鮮に詳しい消息筋は、「ジョンウン氏が会議場で拍手をする場面に注目すべき」と語った。ほかの出席者たちは、姿勢を真っすぐにして両手を高く掲げ拍手をしたが、ジョンウン氏は片腕をいすのひじ掛けに置き、姿勢をやや斜めにして、片手を下に置き、もう片方の手だけを動かして拍手をしていた。金日成主席や金正日総書記が拍手をするときの姿そのものだ。

 北朝鮮は、ジョンウン氏の写真の公開をより「ドラマチック」にするため、29日に公開した会議場の写真にジョンウン氏が入らないよう、巧妙に編集した。ジョンウン氏のすぐ横に座っていた金元弘(キム・ウォンホン)保衛司令官までしか映らないよう処理したわけだ。安全保障部局の当局者は、「緻密(ちみつ)な脚本に従って、後継構築作業を着々と進めてきたが、何か焦っているような感じ」と語った。

 金日成総合大学の教授を務めた経験を持つ趙明哲(チョ・ミョンチョル)博士(対外経済政策研究院所属)は、「金正日総書記も、80年の第6回党大会で公式に登場した際、金日成主席と並んで座る写真を住民たちに初めて公開した。ジョンウン氏の写真の公開過程は、金総書記のときと同じ」と語った。

李竜洙(イ・ヨンス)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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