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【主張】中国人船長釈放 喚問で不透明さをぬぐえ
菅直人首相と全閣僚が出席し、尖閣諸島沖の日本領海内で起きた中国漁船衝突事件に対する衆院予算委員会の集中審議が行われた。
焦点の中国人船長が処分保留で釈放された点について首相は「検察は自主的に判断しており、適切だった」と述べたが、政治的関与の有無を含め事実関係は不透明なままだ。
日本の領海を侵犯し、海上保安庁の巡視船に体当たりした違法行為を処罰せず、釈放したことは日本の主権を否定したも同然だ。
しかも、中国の揺さぶりを受けて厳正な法律の適用・執行を取りやめたのは国家の恥辱といえる。1日召集の臨時国会では、これらの経緯と事実関係が明らかにされなければならない。
那覇地検の決定理由に日中関係への影響が挙げられたことなどから、自民党は大林宏検事総長と上野友慈・那覇地検検事正の証人喚問を要求した。致命的な外交判断の誤りに至った検証作業を最優先すべきである。
審議後、同予算委理事会は中国漁船の衝突の状況を海保側が撮影したビデオ映像の国会提出を要請した。政府はこのビデオが中国漁船の意図的な衝突を示す決め手になると説明してきた。早急に公開手続きを進め、中国側に非があることを内外に効果的に示し、外交失態を取り戻す必要がある。
首相は「わが国の固有の領土に関しては一歩も引かないというのが私の最大の責任だ」と語った。同時に「国民にいろいろ心配をかけたことをおわびしたい」とも述べた。いったい何をわびるというのだろうか。船長釈放により主権を守り抜く責任を放棄した誤りを明確に認めるのが先だろう。
首相はビデオを見ていないことも認めた。「必要に応じて仙谷由人官房長官から報告をもらっている」との人任せの態度は残念だ。船長釈放の連絡を滞在先のニューヨークで現地時間の24日未明に受けた際も、とくに問題ないと判断したようだ。主権侵害という問題意識があったとは言い難い。
一方、中国河北省で身柄を拘束された中堅ゼネコン「フジタ」社員4人のうち3人が解放されたが、なお1人の拘束が解かれていない。そもそもなぜ4人が拘束されたのかもよく分からない。中国に強く説明を求め、残る1人の早期解放が実現できなければ新たな対応を取る必要がある。