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<尖閣衝突>首相、船長釈放「早く」…対中国、いら立つ官邸

毎日新聞 10月1日(金)2時34分配信

<尖閣衝突>首相、船長釈放「早く」…対中国、いら立つ官邸
釈放後、中国河北省石家荘から上海浦東国際空港に到着した佐々木善郎さん(右)ら。中央奥は橋本博貴さん、左奥は井口準一さん=中国上海で2010年9月30日、鈴木玲子撮影
 沖縄県・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で逮捕・送検された中国人船長が処分保留のまま釈放されて1週間。30日に建設会社「フジタ」の社員ら4人のうち3人が釈放されるなど、中国側は軟化の動きを見せ始めたが、「対中弱腰外交」「検察への政治介入」批判に菅政権は揺れている。

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 ◇パイプ細く、情報入らず

 「早く釈放できないのか」。国連総会出席のため22日にニューヨークに出発するのを前に菅直人首相は首相官邸スタッフに語った。民主党政権は中国指導部とのパイプが細く、情報が十分に入ってこない。中国側が威圧的な対抗措置を次々と打ち出し、日中の緊張が高まるなか、首相は「何でもたついているんだ」「もっと機敏に対応できないのか」といった態度をあらわにし、「いらいらして『イラ菅』の状態だった」(官邸筋)という。

 首相は船長釈放について政治介入を全面否定するが、実は解決を促すような発言をしていたのだ。船長釈放を決めた24日の検察首脳による会議がセットされたのは22日午前。首相が同日午後にニューヨークに出発する前に、同会議開催を知っていたのは間違いない。

 首相不在の首相官邸で「釈放」の調整に当たったのは仙谷由人官房長官だった。同じころ、ニューヨークでは前原誠司外相が環境整備に動いた。強固な日米同盟を演出し、中国にプレッシャーをかけた。仙谷氏は民主党が野党時代、台湾・民進党とのパイプを築いた「台湾派」で知られ、中国人船長の逮捕後も「中国とはいずれこうした問題に直面する。日本は危機感が乏しいから、今回はいいテストケースだ」として「国内法に基づき粛々と対応」路線をとっていた。しかし、中国が強硬姿勢をエスカレートさせ、姿勢を転換。釈放決定当日の24日も柳田稔法相と2回にわたり協議したが、記者会見では「全くの別件」とけむに巻いた。

 仙谷氏は船長の釈放後、首相官邸筋に「情報不足はあった。中国とは外務省だけに頼らないルートが必要になっている」と反省の言葉を漏らしている。

 ニューヨーク滞在中の首相の耳に那覇地検の釈放決定の一報が入ったのは、現地時間24日午前1時(日本時間24日午後2時)ごろ。首相秘書官が外務省から「那覇地検が午後2時半ごろ会見する。首相に伝えてくれ」との連絡を受け、ベッドで休んでいた首相を起こして報告すると、首相は「ああ、そうか」と短く答えただけだった。

 事件を巡り日中関係がこじれた一因として、政府が中国側のメッセージを読み違えたとの指摘も出ている。事件直後、中国側の対応は抑制されたものだったが、中国側が丹羽宇一郎駐中国大使を繰り返し呼んで抗議したのに対し、日本側は立場を変えなかった。

 12日未明には、外交を統括する副首相級の戴秉国・国務委員が丹羽氏に「情勢の判断を誤らないように賢明な政治判断を求める」と求めた。未明の呼び出しに対する批判が日本で噴出した。「外相より高位の戴秉国・国務委員が出てくることで中国側は解決を図ろうとしたのに日本が反発し戴氏はメンツをつぶされた」(外務省幹部)との見方だ。中国側は態度を硬化させ、日本側は翻弄(ほんろう)された。

 「要するに菅首相が慌て、仙谷氏が動いて失敗した。しかも、首相は『釈放』と言い残して米国に向かったのに、釈放は司法判断だなんて国民に見え見えのうそをついた」と外務省幹部は首相や仙谷氏の対応を批判する。

 「仙谷長官が辞めるという責任の取り方もあるかもしれない」。30日の衆院予算委員会で塩崎恭久元官房長官(自民)からこう指摘されると、仙谷氏は閣僚席でうなずいた。【犬飼直幸、大貫智子】


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最終更新:10月1日(金)2時41分

毎日新聞

 

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