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きょうの社説 2010年10月1日
◎北陸の医師不足深刻 地域ぐるみで医療充実を
全国の医療機関側が必要と考えている医師の数は現在の1・14倍に上り、医師不足の
深刻な実態が厚生労働省の調査で分かった。石川県は1・11倍、富山県1・17倍で、医師の地域偏在が大きな課題となっている。医師不足を背景に全国各地で医師確保に向けた動きが強まるなか、県内でも行政と大学、医療機関が連携を深めて地域医療の充実を図ってほしい。石川県では県の助成を受け、金大と金沢医科大が寄付講座を実施し、医師不足が深刻化 する「能登北部」や「南加賀」の医師確保を図る取り組みが進む。富山県でも富大が県の寄付講座として地域医療支援学講座を開設し、県内の医療に貢献できる人材育成を目指している。医療の人材供給源である大学が地域医療に果たす役割は大きく、取り組みの成果を期待したい。 今回の厚労省の調査では、全国の医療機関で働く医師数が計約166万7千人なのに対 し、医療機関側はさらに計2万4千人が必要と考えていることが分かった。現在の医師数に対する倍率が最も高かったのは岩手1・4倍で、次いで青森1・32倍。逆に倍率が低いのが東京1・08倍、大阪1・09倍など大都市圏が中心だった。 医師不足と地域偏在の解消に向けては、研修医の都市部への集中が問題となっている臨 床研修制度の見直しや大学医学部が「地域枠」を設けるなどして、地域に医師が定着するような取り組みが行われている。臨床研修医については、石川、富山両県とも各病院が研修プログラムの改善やPRに努め、昨年の「マッチング」結果では臨床研修医の確保が前年を上回る結果となった。診療科の偏在も課題であり、充足率を高めて継続的に医師を確保するために研修医の声や研修内容などを検証し、研修プログラムや職場環境の改善などを重ねる必要がある。 「即戦力」としては、離職した女性医師の現場復帰や県外の医師のUIターンの促進も 欠かせない。医師と地元住民が互いの理解を深める機会も設けるなどして、地域ぐるみで医療を支える体制を整え、地元に定着する優秀な人材を育てていきたい。
◎尖閣集中審議 主張したい領土の根拠
沖縄県・尖閣諸島周辺での中国漁船衝突事件に関する衆院予算委員会の集中審議で、共
産党議員から重要な指摘があった。尖閣諸島の領有権について、歴史的にも国際法的にも明確な根拠があるにもかかわらず、政府が国際社会に対し具体的に説明してこなかったことへの反省と、積極的な広報活動の重要性である。中国は今回の衝突事件で、「尖閣諸島は中国の固有の領土」という主張を繰り返してい る。これに対し、日本は「尖閣諸島をめぐる領土問題は存在しない」との立場で、領有の根拠についての説明をほとんどしてこなかった。国際社会から見れば「中国固有の領土」という根拠のない主張だけが記憶に残ってしまう、という共産党の指摘はもっともだ。 嘘も100回言えば真実になるという。中国の嘘に対抗していくは、国際世論に訴え、 賛同を得ていく戦略が欠かせない。「領土問題は存在しない」という従来からの立場を堅持することと、尖閣諸島が日本領となった歴史的経緯を積極的に説明し、中国の主張には全く根拠がないことを広く知らしめる努力は決して矛盾しない。 先日の国連総会で、中国の温家宝首相は「主権や領土保全といった核心的利益について は、中国は決して妥協しない」と演説した。一方、菅直人首相はといえば、持論である「最小不幸社会」の説明に時間を費やし、衝突事件にはなぜか一言も触れなかった。中国の一方的な発言を許したのは、外交的敗北と言ってよい。 菅首相は4、5日にブリュッセルで開かれるアジア欧州会議(ASEM)首脳会議に出 席の意向を示している。このときこそ尖閣諸島が日本の領土である明確な根拠を詳細に説明してほしい。 衝突事件のあおりを受け、中国当局に拘束されていた建設会社フジタの日本人社員のう ち3人が釈放された。残る1人の拘束は続いているが、これは日本側が中国人船長を1人残し、取り調べを続けたことへの意趣返しだろう。このやっかいなチャイナ・リスクとどう向き合っていくのか、国民的な論議を深めていく必要がある。
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