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性暴力被害、体験を歌に
愛知県を中心に活動するアマチュアの音楽デュオ「PANSAKU(パンサク)」のボーカル、山本恵子さん(30)が10月1日、中野区で開かれるライブで、自らの性暴力被害の体験を語るとともに、体験をもとに作ったオリジナル曲を披露する。
「自分を責めないで あなたは悪くはない」。歌詞に込めた思いを過去の自分と同じように苦しんでいる人に届けるため、山本さんはステージから歌いかける。
山本さんは6年前の夏、性的被害に遭った。車に突然乗り込んできた男に暴行され、「殺すぞ」と殴られ、恐怖と絶望で抵抗できなかった。さらに警察で被害届などの書類を作成するため、何度も詳しく事件のことを話さなければならなかったことが追い打ちをかけた。
心身の苦痛に加え、つらさを受け止めてほしかった相手に「前を向いていかなきゃ」と言われたことで孤独感にも苦しんだ。1年以上たっても、突然、事件の記憶がよみがえり、涙があふれ出た。今はPANSAKUでコンビを組む永吉明香さん(31)ら友人に支えられている。
男はいまだに逮捕されていないが、昨年春、警察から事件の際に着ていた服が返却された。改めて事件に向き合うと、涙は出たものの、「同じようなつらさを体験した誰かの心に届いたらいいな」と体験を明らかにすることを思いついた。
音楽活動に悪影響が出るのではと永吉さんにも相談したが、「いいよ」と快諾。思い切ってブログで被害の体験を公表した。
衝撃的な内容に、励ましの声も寄せられたが、「イメージが変わった」と離れていった人もいた。それでも、今年の春には、メロディーと歌詞が頭に浮かび、体験をもとに「STAND」という曲を作り上げ、ステージで歌い始めた。
震えて泣いている導入部分から、「あの日の傷跡が 強さに変わる」と、前向きな気持ちに立ち上がっていく内容に、曲を聞いた被害者から多くのメールなどが寄せられている。
「被害者を責めるような社会の価値観を私たちの歌で少しずつでも変えていけたら」。山本さんは、そんな思いを歌に込めた。
ライブ当日は、山本さんが自身の体験や被害者を取り巻く環境について語るほか、永吉さんも身近な人が被害にあった時、どのように接すればいいか語る。
午後7時開演。中野区野方5の野方区民ホール。入場料500円。問い合わせは、中野区の犯罪被害者等相談支援窓口(03・3228・8951)へ。(福士由佳子)
(2010年9月30日 読売新聞)
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