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【社会】司法修習生優遇に異論多く… 『給費制』存続険し2010年9月30日 朝刊
司法試験に合格後、法廷実務を学ぶ司法修習生に国が給与を払う「給費制」が、十一月から「貸与制」に切り替わる。「金持ちしか法律家になれなくなる」と反対する日本弁護士連合会(日弁連)は、給与存続のための立法措置を求め、国会議員に猛攻勢。施行まで一カ月に迫る中、二十九日には議員会館で今月二度目の院内集会を開いた。弁護士や裁判官、検察官の卵の“特別扱い”復活には異論も多く、最高裁は「修習生の金銭負担はそんなに過酷なのか」と日弁連の動きをけん制している。 (小嶋麻友美) 給費制は修習生を技能習得に専念させ、質の高い法律家を育てることを目的とし、仕事をせずに給与がもらえる特殊な制度。今年の新修習生約二千人に給費を続けるには、年間九十億円余り必要になる。 司法制度改革の一環で、司法試験合格者を年間三千人規模に増やすのに合わせ、財務当局から給費制の見直しを迫られた。二年間の議論を経て、二〇〇四年に法改正。しかし今年四月、「貸与制阻止」を掲げた宇都宮健児氏が日弁連会長に当選し、消費者団体や労働組合を巻き込んだ全国運動が始まった。 日弁連のアンケートでは、法科大学院で奨学金や教育ローンを利用した人は五割以上で、借入額は平均三百十八万円。修習を終えて二カ月後に就職が確認できない人は、〇八年が二十七人(1・2%)、昨年が六十人(2・6%)で、就職難も拡大傾向だ。こうした事情から「経済的不安を抱く人が法曹を断念し、質が低下する」と主張する。 しかし、法曹界の足並みはそろわない。修習を担う最高裁は、二度にわたる日弁連への質問状で「奨学金などの返済負担は修習生全体に給与を支給しなければ解決しないほど苛烈(かれつ)なのか」「四分の三の弁護士は初任給で五百万円を超えている」などとただした。 最高裁の担当者は「返済が始まる六年後までに、個別に免除する制度づくりもできるはずだ」と話す。法務省も「六年前に決まった話を今さら蒸し返すのか」(幹部)と再改正には反対の立場。だが両者とも「立法府が決めれば従うだけ」と口をそろえる。 国会の行方は−。二十九日の院内集会で、弁護士でもある辻恵・民主党法務部門会議座長は「給費制でしっかり法曹を養成しなければ。全力で議員立法に取り組む」と力を込めた。同党は給費制存続の方針を決め、審議時間が短い委員長提案でのスピード法改正を目指す。 だが、それには与野党全会派の事前合意が必要だ。最大野党でカギを握る自民党は態度を決めておらず、三十日の法務部会で最高裁と法務省の意見を聴く予定。平沢勝栄部会長は「年間九十億円は『大した額』だし、十分返済できる弁護士がいるのも事実。法曹界だけの特別扱いを、国民が理解するだろうか」と疑問を挟む。 修習生を指導している司法研修所のある教官は、貸与制について「大手事務所で千五百万円の年収が約束されている上位層はいいが下位の弁護士に対しては貸し倒れになるだろう」とみる。一方で給費制維持の前提として、「修習生のレベル低下は著しく法曹人口も減らすべきだ」と話している。
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