歩行者用の信号が青に変わるのを見ると、人々が一斉に歩き出す。 もう夜も近いか。日がオレンジ色に変わり、次第に暗くもなってくるだろう。 心地よい秋風がビルの間を通り、少し強めに通っていく。肌寒くもあったが、心地よくもあった。 …前までは、随分とモヤモヤしていたんだと思う。…『日々の生活がつまらない』なんて嘆いていた時期が、まるで遠い昔のように思えた。 …この機械を手にしてからどれくらい経ったんだろう。 考えてみれば、まだ一ヶ月も経っていないのだから驚きだ。俺の生活は、常に『コレ』の使い方を考えるのに埋め尽くされていた。 …今はやりたい事だけに使っている。…それも、随分とまあ、最低の行為を、だ。 しかし…やりようによっては…『人を操る』という事はもっと大きな事もできるんじゃないか、なんて最近では考えてきた。 金。名誉。女。 あらゆる欲望に、人間との関係は必須条件となる。 その必須の条件を、よりスムーズにクリアする事が出来る。…人を操るという事は、それだけ大きな難題を簡単にクリア出来てしまうわけなのだから。 他人の考えが分からないからこそ、人は悩む。そして関係はこじれ、欲望は小さくなり、やがて消滅していく。 …だが、その他人を自在に操れるのであれば? …逆に…。果たせない事が存在するのか?という疑問すら湧いてしまう。 …ハート・ハック・クラッシャーの…使い方。 もっと考えていきたいところだ。 …この世界を、もっと面白可笑しくするために。 俺はデパートに来ていた。 別に、買いたいものがあって来たわけではない。 家に帰るには早い時間だったので、暇でも潰せれば…と、中に入っているゲームセンターに行くのが目的だった。 ゲームコーナーは4階の奥。婦人服売り場の脇を通って、その先の角にある。 …夕方の時間帯。 主婦層や学生の客が、そろそろ目立つ頃でもあった。 …ふと足を止める。そして、鞄に仕舞い込んであるハート・ハック・クラッシャーの存在を思い出す。 …ふふ、そうだ…。 何も、暇潰しの方法はゲームをするだけとは限らないじゃないか。 たまには、突発的に『物色』するのもいい。 婦人服売り場…。 いるのは数人の学生や、若い女。 …好都合じゃないか…。少しずつ、心臓の鼓動が早まってくるのが分かってくる。 ハート・ハック・クラッシャーの弱点はなるべく消しておきたい。 鞄から取り出し、機械を起動させる。画面には数人の女性の名前。 俺が少し移動すると、消える名前、新たに入ってくる名前が現れてくる。 …大体、この機械の有効範囲は10〜20mってところか。だから、ある一定の人物を特定するのは難しいが、無作為であれば問題は消える。 その『人を特定する』方法の一つがコレ。 春香の時は混んでる電車で出来なかった方法だが、歩き回る事によって消える名前、現れる名前を徐々に見極めていく。 そうする事で、遠くに見える人物の名前が消え、進んだ方向にいる人物の名前が入ってくる事で、人物の特定が次第に出来る。 …とは言え、あまり大胆に動くと怪しまれるので…なるべく自然に。携帯の画面を見ているように、さりげなく…。 行ったり戻ったりを繰り返すわけではなく…ごく自然に歩き回るようにするのは中々難しくて疲れるのだが、我慢我慢…。 男が婦人服売り場を歩き回るのも怪しいので、なるべくゲームコーナー付近で、ゲームを物色する感じで歩かなくてはいけない。 …段々と人を把握出来てきた。 名前と、目で見ている人物の顔が一致してくる。 そして、俺は一人の女をターゲットに決めた。 恐らく、このフロアを見てきて一番レベルの高い女性だ。 …えーと、名前は…『古木薫(ふるきかおる)』 背は俺と同じくらい、女性にしては大分高い。 茶に染めたショートカットの髪が照明に当たってキラキラと輝く。 ジーンズ生地のジャケットに、ミニスカート。しかし、ショートカットのせいだろうか、随分ボーイッシュにも見える。何かスポーツでもやってるのかな。 間違いはないと思うが…念のため。 【咳をする】を実行…と。 「…けほっ」 …間違いない。この一連の動作にも随分と慣れたものだ。 この機械の不便さにも、どんどんと慣れてきている。一心同体、とは言いすぎだが、弱点を把握してこの機会を操れてきている。 …使い込んできた証拠だ。 …さてと、特定が出来たところで…どうするかな。 漠然と可愛い女の子を物色したわけだが、次の行動を考えていたわけではない。 チラ、とハート・ハック・クラッシャーの画面を見る。 (んー…どの服にしようかな…) (今度の日曜のデート…勝負服決めないとね…。んー、迷うなあ…。) …なるほどね。 随分と服を買うのに悩んでいる様子だ。 …そうだな。 なんとなくシチュレーションが掴めてきた。 …くく、これで行ってみるか…。 …俺と薫は、試着室にいた。 なるべく人目につかないように二人で中に入り、俺の靴だけ隠しておいた。 …おもむろに、薫は服を脱いでいく。 ジャケット、スカート、シャツ…下着にも何故か手をかけ… やがて、白い肌が剥き出し、小ぶりな乳や陰毛の生えた秘所まで露になる。 …ま、俺がそういう風に操ってるんだけどね。 「…ねえ、店員さん…この服、どう思う?」 薫が俺の耳元で囁く。 【話す声は全て小声で、耳元で囁く】 …本当の店員にバレないようにするための配慮だ。 「…そうですね…。スリムなお客様にはとても似合っていると思いますよ…」 「ふふ…ありがとう。お上手なのね…」 …薫は裸のままだ。 しかし、薫は服を着ている『つもり』になっている。 【服を全て脱いだ瞬間、裸の姿をとても綺麗で美しい服を着ているものと同解釈する】 …薫は、裸の自分を、自分の眼で、とても満足そうに見つめている。 彼女の眼にはきっと、自分の思い描く最高の服が映っているのだろう。 …しかしそれは、誰の目にも一糸乱れぬ裸にしか見えない。悲しいことに、ね…ふふ。 「…でもちょっと派手すぎないかな…?」 「…いえいえ。そんな事はありませんよ」 一応、裸っていう認識は心の隅に残ってるのかな。 …派手、というよりもはや…っていう感じだけどね。 それでも薫は、その『服』を随分気に入った様子で、少し顔を赤らめながらも自分の身体を終始見つめている。 そりゃそうか、彼女にとって最も『綺麗で美しい服』なのだもんね。 「…へへ。 店員さん、実はね… この服着て、私、憧れの人に告白しようと思ってるの。…勝負服、ってヤツ…かな」 「…それはそれは」 思わず噴出しそうになる。 裸で告白…面白いかもしれないな。憧れの人はどんな反応をするのかな…。 …ま、流石に大事になりすぎるだろうから、それはやめておくが。 … さて、と。 いい加減、裸ばかり眺めてるのにも飽きた。 盗撮じゃあるまいし… 目の前に女がいるんだ。もっと大胆にいってみるか。 「あ、ッ…!」 「…どうしました…?お客様」 どうしたも何もない。 俺が、薫の秘所を弄繰り回し始めたから自然に出た喘ぎ声だった。 焦らすように、奥には決して指を入れない。 段々と愛液で濡れてくる秘所の周りをゆっくりと弱く、刺激してやる。 「ッ、う…。う、うんっ…!」 「…お客様、具合でも…?」 「あ、あっ…!な、んでもない… 何でもない、のぉ…!!」 …クク。 薫はあくまで『何も起きていない事』を俺にアピールする。 事前にしておいた命令が効いている様子だ。 【目の前の男性は店員である】 【店員の行う行為は絶対であり、当たり前の事である。疑問を抱くのは恥ずべき行為である】 …こんな感じだ。 だから、『俺がアソコを弄っている』という認識は薫にはある。 しかしながら、それは『常識』として薫の中に根付いているのだ。 だからとても恥ずかしい事でも薫は、嫌でもそれを受け入れようとする。 「… これは、お客様が服を着こなせるように行うサービスでございます。そう、その表情を忘れないで…。その表情で迫れば、男性はイチコロですよ…?」 「ん、ああッ…!そ、そう…ねっ…!あ… 当たり前のッ…!んんっ!サービス…だ、けどッ…!大切… んああっ!大切なぁッ…!コト、よね、ぇ…っ!!」 …ふふ。 こんなサービスを他でやる店があったら、教えてもらいたいね。 周りを弄くり焦らしていた指を、段々と進めていく。 秘所内の肉の壁を押し進めて、人差し指、中指をいっぱいまで入れてやる。 「うあああッ…!!つぅ…っ、くゥん…!!」 「…お客様…?」 「ご… ごめんな、さい…!何でも、ないからぁ…!何でもないから…」 必死に弁解する薫。 別に、ココを弄られれば自然と声は出ちゃうと思うけどね。 まるで声を出すのがイケナイ事みたいに反応してくれる。 薫自身、『当たり前の事だから、声を荒げてはいけない』なんて勝手にルールを作っているのだろう。 「そうですか…。それなら… 良かった…!」 そう言いながら、俺は二本の指を出し入れしてやる。 まるで行為をしているように、激しく、奥まで出し入れするように。 「あああああんッ!!??ふぁ…い、ああああああッ!!!!」 急激に動き出す指に驚いたように声を荒げる薫。 …少し声が大きいな…。バレやしないかとヒヤヒヤしているが…しかし、それでも…こんな楽しい事やめられるか。 「んっ、んんんぅっ…!もっとぉ…もっと激しくしてぇ…!」 …おいおい。そっちから求めてきてどうするんだよ。 俺の指の出し入れに合わせるように薫は腰を、上に、下へと動かして指が奥まで入り込むようにしている。 すっかり趣旨が変わってしまっている。人間、快楽に身を任せればこんなものか。 「ああっ、いい、いいよぉ…!気持ちいいよぉ…!…っ、あ、あ…!!」 ビクビク、と薫の身体が震える。 …軽くイったか?一瞬動きが止まる。 …ま、丁度いいや。指だけ動かすのにも飽きたところだし。 ズボ、と勢いよく俺は薫の秘所から指を引き抜く。 「くああっ…!」 …さあて、どうするかな。 そろそろ別のシチュレーションで遊びたいところだが…。 「お客様?…あの、大丈夫ですか?」 …ちっ。やっぱり店員に聞こえていたか。…ま、あれだけ大声出してれば気付くか。 一応保険として女店員の名前はさっきの物色で把握しておいたから、まあどうにでもなるのだが…。 …ん? …それなら、丁度いいじゃないか。 「…それでは、お客様のお身体のサイズを測らせていただきます。」 女店員がそう言うと、店員は薫の乳房の前に口を近づける。 試着室には俺と、薫と、店員の三人。 俺の存在は『見えない』事にしておいた。 薫は先ほどの裸の状態のまま。試着室だからって裸でいるわけはないが、女店員はそれを全く気にしない。そうさせた。 店員は薫の乳首に口を近づけ…そして、吸い始める。 「ひゃあっ…!あ、あっ…!」 「んふ、ん…!」 …この女店員も悪くないな。 セミロングの茶髪に清楚な制服が似合う。薫がややボーイッシュな事もあって、女性的な店員と薫はなんだかお似合いのような気がした。 …薫は耐え切れないといった感じで、乳首に吸い付く店員の頭を手で軽く抑える。 それも気にせず、店員は一心不乱に乳首を吸う。厭らしい唾液の音がするほどに。 「じゅるっ、んちゅっ…。…ん…!」 「あ、あ、あ、やぁぁ…!声、でちゃうぅ…!」 「んむぅ…。申し訳ありませんお客様…、これも正確なサイズを測る為ですので…。」 今回、店員には薫の服のコーディネートを任せる事にした。 その際、衣類のサイズの正確な寸法を測る為には… 【正確なサイズを測る為には、勃起した乳首、クリトリスのサイズも測らなければならない。】 とした。 …変化する身体の部分もあるものね。そういうのは慎重にやらないと。 …ま、そんなに細かくやってどうなるんだって話だけどね。 今の2人にはそれが常識。 店員は乳首に吸い付きながら、手を薫の秘所に伸ばす。 陰毛を通り、焦らすようにゆっくりと指先をクリトリスの方へ…。 「うあああっ…!下っ…!下気持ちいいぃ…!!」 「…ふふ…お客様、可愛い…。」 …おいおいおいおい。俺はそんな指示してないぞ。 …この店員、レズっ気でもあるのか。 店員の指先は撫でるような形から徐々に押すように、捏ねるように陰部の豆を転がしていく。 「んあああっ!!うああああっ…!」 「…お客様、随分と感じやすいのですね…。ふふ、もっと立たせてから測定しないと駄目みたいです…。」 そう言って店員は微笑みを薫に向けると、更に口と、指の動きを激しくしていく。 口は勢いよく吸い付き、指は勢いよく動かす。 上と下の同時の攻めを受けて、薫の秘所からはどんどんと愛液が漏れる。 「ひぃぃっ!!激しい、激しいよぉぉ!!らめぇ、ああっ…やあああっ!!」 「じゅるっ…!ん、ん、ん…!!」 「うあああああああああああ!!!」 「ん、ああっ…お客様ぁ…!」 店員はその場に優しく、薫を押し倒す。 身体を厭らしく絡ませ、更に薫の身体を興奮させ、勃起させるように…。 「あああぁっ…だめぇ、イっちゃうぅ…イっちゃうよぉぉ…!」 「…どうぞ…!存分におイきになってくださいっ…!」 店員の指はいつの間にか、豆から手を移動させて中に突っ込まれていた。 だから…目的が違うだろって。 絶頂に達しそうな薫により一層快楽を味わってもらいたいが為か、店員の口は薫の首筋に、手は激しく中を攻める。 「くる…くるぅぅあああ!!イくうううううう!!!!」 薫が思い切り身体を仰け反らせると 「あはああああああああああああ!!!!!!!」 ビク、ビクと身体を痙攣のように震わせる。 それと同時に、薫の秘所からは尿が漏れる。…失禁までするか。 「…ふふ…これで正確なサイズが測れるわ…。」 その様子をとても嬉しそうに店員は見つめる。 いい仕事が出来れば、それだけ満足感も大きい。店員の鏡だな、うん。 俺はその場を離れた。 勿論、大事になるのを避けるために2人の記憶を消し、店員には『普通』に薫の服をコーディネートさせる。 …試着室には尿が染みこんじゃったけど、ま、薫も、店員も誰のものか分からないだろう。 …2人には、そんな事をしていたなんて記憶はないのだから。 たまには、突発的にこういう事をするのもいい。 …何せ俺は…誰でも操れるのだから…。 「…ふむ、順調にMCMPは作動してるみたいね…。」 少女はニヤと笑う。 『彼』が機械を発動させるたび、その内容分はしっかりと目の前のモニターに転送され、閲覧できるようになっていた。 順調に更新される文章を見ながら、少女は満足そうに頷いていた。 「…さあて、そろそろボクの出番かな…。」 椅子からよいしょと腰を上げると、大きく背伸びをして深呼吸する。 白衣から携帯電話を取り出すと、発信をする。 「…うん、アレ。もう正式作動できるでしょ?テストしてみたいからさ、ボクに一週間だけ貸してくれる?」 …答えはOKだったのか、少女からは笑顔が尽きない。 満足そうに電話を切ると、少女は再びモニターに向き直った。 「…待っててね…。お兄ちゃん。」
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