厚生労働省は29日、全国の病院と分娩(ぶんべん)を扱う診療所を対象に実施した「必要医師数実態調査」の結果を正式に発表した。特に不足が深刻な分娩を扱う医師は1124人足りず、現在の1・15倍が必要と判明した。全体(不足数約2万4000人)でみても、都市部さえ充足しておらず、医師不足が深刻な実態が改めて裏付けられた。
回答した施設で分娩を取り扱う医師は7312人。各施設が機能維持に必要とした医師数の合計は8436人で、1000人以上不足していた。
全診療科合計で、現在の医師数に対する必要医師数の倍率を都道府県別でみると、最も低い東京でも1・08倍で、医師が足りている地域はない。診療科別でも、1倍以下の科はなかった。
求人を出している施設に理由を聞いたところ「入院や外来患者が多く、医師の負担軽減のため」が28%で最も多く、「退職医師の補充」が18%で続く。一方、不足しているのに求人していない施設の理由は、「求人しても確保が見込めない」が30%、「経営的理由」が20%に達し、医師確保の困難さが浮き彫りになった。
厚労省は「今後の医師の養成数は文部科学省と検討する。地域や診療科の偏りの是正については、臨床研修や専門医研修の地域や病院ごとの定員調整といった対応を検討したい」と話している。【佐々木洋】
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◆必要医師数の現在医師数に対する倍率◆
現在医師数 倍率
内科 27558 1.14
呼吸器内科 4002 1.20
循環器内科 8261 1.13
消化器内科 7690 1.14
腎臓内科 2155 1.20
神経内科 3528 1.20
糖尿病内科 1898 1.18
血液内科 1709 1.15
皮膚科 3347 1.10
アレルギー科 258 1.09
リウマチ科 608 1.16
感染症内科 260 1.13
小児科 8537 1.16
精神科 10843 1.11
心療内科 341 1.20
外科 15202 1.09
呼吸器外科 1408 1.14
循環器外科 1986 1.12
乳腺外科 714 1.14
気管食道外科 105 1.10
消化器外科 3046 1.09
泌尿器科 4790 1.13
こう門外科 228 1.09
脳神経外科 5754 1.17
整形外科 12373 1.16
形成外科 1780 1.07
美容外科 59 1.08
眼科 4621 1.14
耳鼻いんこう科 3601 1.15
小児外科 726 1.08
産婦人科 7450 1.18
産科 452 1.24
婦人科 1084 1.12
リハビリ科 1750 1.29
放射線科 5101 1.12
麻酔科 7421 1.16
病理診断科 1283 1.20
臨床検査科 676 1.09
救急科 2610 1.28
全科 1829 1.12
※「全科」は複数の科の診療をする医師
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◆必要医師数の現在医師数に対する倍率◆
現在医師数 倍率
北海道 7567 1.13
青森 1520 1.32
岩手 1600 1.40
宮城 2408 1.15
秋田 1482 1.20
山形 1513 1.24
福島 2397 1.23
茨城 3292 1.15
栃木 2836 1.17
群馬 2490 1.19
埼玉 6757 1.10
千葉 6812 1.12
東京 20161 1.08
神奈川 7527 1.10
新潟 2698 1.22
山梨 1047 1.29
長野 2718 1.18
富山 1736 1.17
石川 2119 1.11
岐阜 2314 1.24
静岡 4149 1.21
愛知 8267 1.11
三重 1982 1.20
福井 1233 1.18
滋賀 1892 1.22
京都 4260 1.12
大阪 13008 1.09
兵庫 7393 1.13
奈良 2115 1.16
和歌山 1812 1.15
鳥取 1037 1.19
島根 1133 1.28
岡山 3358 1.12
広島 3971 1.15
山口 2132 1.14
徳島 1268 1.22
香川 1637 1.19
愛媛 2128 1.17
高知 1501 1.24
福岡 7976 1.11
佐賀 1378 1.12
長崎 1944 1.12
熊本 2839 1.13
大分 1812 1.26
宮崎 1566 1.18
鹿児島 2483 1.21
沖縄 1776 1.18
毎日新聞 2010年9月30日 東京朝刊
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