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らせんの真実−冤罪・足利事件− <第9章・警告>
<11>「遺族」 2幼児事件、未解決に懸念 再捜査への思い強く(6月23日 05:00)「これで娘の事件もすべて終わりになってしまうのだろうか」 6月中旬、足利市郊外の住宅地。福島譲さん(56)は自宅の居間で4月1日に最高検と警察庁が公表した足利事件の内部検証結果報告書を手につぶやいた。 足利事件発生の11年前の1979年8月、福島さんの長女万弥ちゃん(5)は自宅近くで行方不明となり、6日後に渡良瀬川河川敷でリュックサックに入った状態の遺体で発見された。 県警は91年12月、足利事件で逮捕した菅家利和さん(63)=再審無罪判決確定=を万弥ちゃん殺害も「自白」したとして再逮捕。ところが翌92年1月、宇都宮地検は「物証が得られない」などを理由に処分保留とし、93年2月に証拠不十分で不起訴処分とした。 最高検、警察庁の内部検証は「『自白』の吟味が不十分だった」と万弥ちゃん事件などの捜査の問題点に言及したが、分量は1ページにも満たない。 「万弥がいなくなった時、知人や職場にお世話になりながら捜査に協力した。不起訴の時は『証拠がないだけであいつ(菅家さん)が犯人だ』と言う捜査員もいた」 福島さんはテーブルに置いた万弥ちゃんの写真を見つめた。 「あの捜査員の言葉は何だったんだろうか…」。検証結果報告書は新聞記者から届けられた。捜査当局側からの報告は、まだない。 ■ ■ 「菅家さんは気の毒だったと思う」。福島さんは気遣いをみせながら、「遺族としては何とも気持ちの整理がつかない」と率直に打ち明ける。 「菅家さんが無罪になったということは、真犯人は今も逃げ続けていることになる。一体、どこで何をしているのか。真犯人を捜し治安を守るのが警察、検察の仕事のはず」 菅家さんがDNA型再鑑定の不一致で釈放後の2009年7月、福島さんは遺留品のリュックサックなどでDNA型鑑定をしてほしいと県警本部長に嘆願した。 「県警がやらなければ、自費で大学に鑑定を頼むことも考えた」。県警は遺族感情なども考慮し、異例のDNA型鑑定を実施。しかし結果は「DNAは検出されず」だった。 「警察や検察、裁判所が菅家さんを誤って有罪にしたため、娘の事件の捜査も打ち切られた。その結果、時効になってしまった」 刑事事件の時効をめぐり今春、改正刑事訴訟法、改正刑法が施行され、最高刑が死刑となる殺人罪などの公訴時効は廃止された。しかし万弥ちゃん事件は法改正前の94年に時効(当時の殺人罪は15年)が成立しているとみられる。 それでも福島さんはいちるの望みを抱く。 「再審公判で真犯人のDNA型が明らかになった。証拠があるのだから、再捜査を検討してほしい」 ■ ■ 「もし真犯人が今も普通に生活しているのなら、娘は浮かばれない」 84年に同市内のパチンコ店で行方不明となり、1年4カ月後にパチンコ店近くの畑の中から遺体で見つかった同市の長谷部有美ちゃん(5)の父秀夫さん(66)も、再捜査に期待を寄せる。 万弥ちゃん事件で菅家さんを再逮捕後、県警は92年2月に有美ちゃん殺害も「自白」したとして殺害容疑で菅家さんを書類送検。が、地検はやはり証拠不十分で不起訴処分とした。事件は既に時効を迎えているという。 福島さんと同様、長谷部さんも女児連続殺人の未解決に強い懸念の声を上げる。 「子どもを狙った残酷な事件。真犯人が逮捕されなければ、また同じことを繰り返すかもしれない」 一覧
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