2010年9月30日11時11分
北九州市の病院で2007年、認知症の入院患者2人の足のつめを深く切ってけがをさせたとして一審で傷害罪で有罪判決を受け、控訴審で無罪を言い渡された上田里美看護師(44)について、福岡高検は30日、上告を断念したことを明らかにした。10月1日午前0時の上告期限を過ぎると、上田さんの無罪が確定する。
一審・福岡地裁小倉支部は懲役6カ月執行猶予3年(求刑懲役10カ月)としたが、福岡高裁が今月16日、「看護行為と認められる」として一審判決を破棄し、無罪を言い渡していた。
一審判決によると、上田さんは北九州八幡東病院の看護課長だった07年6月、入院中の当時89歳と70歳の女性2人の足のつめ計3枚をつめ切り用ニッパーで切除したり取り去ったりして、出血を伴うけがをさせたとされていた。
だが高裁判決は、上田さんの捜査段階の供述調書について、誘導や押しつけがあった可能性があるとして「信用できない」と批判した。
そのうえで、上田さんの行為については、3枚のつめのうち1枚はばんそうこうをはがした際に取れたとして傷害罪にあたらないと判断。深く切った2枚については傷害罪の構成要件には該当するものの、「看護行為として必要性がある」として、正当な業務行為にあたり、違法ではないと結論づけていた。
事件をめぐっては、日本看護協会が07年10月、上田さんの行為について、「看護ケアだった」とする見解を発表。高齢患者の伸びたり厚くなったりしたつめはシーツにひっかかる危険や病気の原因となる恐れがあり、切除するのはケアの一環として位置づけられているという。
上田さんは「患者にとって必要なケアだった」と一審の前から一貫して無罪を主張した。だが、一審は捜査段階の供述調書をもとに「患者への配慮を欠き、正当な看護行為ではない」として傷害罪を認定し、有罪としていた。
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