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【経済】

免許返納・破綻… ラジオ苦境

2010年9月30日 朝刊

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 ラジオ放送局の苦境が続いている。景気低迷で広告費が減る中、音楽をダウンロードできるインターネットの普及により若者のラジオ離れが進行。これが一段の広告費の減少を招いているためだ。名古屋市では外国語放送のFM局が九月末で放送を停止し総務省に免許を返納する見通し。神戸市では別のFM局が経営破綻(はたん)し、十月一日に他局へ事業を譲渡する。 (上田融)

 今月で放送を停止するのは愛知国際放送(名古屋市)。二〇〇五年の愛・地球博(愛知万博)開催を前に地域の国際化に対応しようと二〇〇〇年に外国語主体の放送を開始した。しかし業績は振るわず、一〇年三月期に二億一千七百万円の純損失を計上。累積赤字は二十八億円に達した。

 放送免許の返納は、小規模なコミュニティーFMを除くと全国で初めて。担当者は「リーマン・ショック後、テレビ局の広告費は回復傾向だが、ラジオは戻らなかった」と無念そうに話す。

 「Kiss−FM KOBE」(神戸市)も四月に民事再生法の適用を申請し破綻。事業は十月一日付で兵庫エフエム放送(同)に譲渡する。兵庫エフエムは「Kiss−FM」の愛称を継続使用するが、会社としてのKiss−FMは清算される見込み。「九州国際エフエム」(福岡市)も地元企業と事業譲渡の交渉中だ。

 ラジオ放送を手掛ける全国計百の放送局でみると、二〇〇〇年に二千七十一億円あった広告費は〇九年に千三百七十億円に減少。これに伴い放送局の経営は悪化した。〇八年度の純損益の合計はAM、FM、テレビ・AM兼営局ともそろって赤字。テレビ兼営局はやや持ち直したが、〇九年度もAM、FM局は赤字だ。

 音質の高い音楽や番組を瞬時に入手できるデジタル音声が普及し、音質が劣るラジオは敬遠されている。総務省によると〇九年度、一週間に五分以上、ラジオを聴いた十〜二十代の若者は44・7%にとどまり、十年前より約20ポイントも減少した。

 業界も手をこまねいているわけではない。首都圏と関西の放送局はパソコンでAM、FMラジオを聴取できる「ラジコ」というサービスを試験的に実施している。ラジコのホームページに接続すれば、一部のパソコンなどで、ラジオ放送を楽しむことができる仕組みだ。総務省の研究会は一三年をめどにラジオをデジタル化。携帯端末でデータ情報を受信できる環境を整える方針を示している。

 日本民間放送連盟の広瀬道貞会長(テレビ朝日顧問)は「デジタル化でラジオ局の収入が増えれば」と期待する。だが、中継局の整備費は各局の分担になる見通しで、経営難の放送局がこの負担に耐えられるのかという問題がある。デジタル化がラジオ局の収益増に直結するかはどうかは、まだ不透明だ。

 

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