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きょうの社説 2010年9月30日
◎日銀の「北陸短観」 地方の中小企業に円高の重し
足元の業績は確かに良くなっているものの、3カ月後はどうなるか分らない。北陸企業
363社の経営者による景気の体感温度は、数字以上に低く、先行きの不透明さに足をすくませている姿が浮かび上がる。最大の懸念材料は80円半ばに張り付いた円高であり、エコカー購入補助金の打ち切りなど政策効果の息切れも経営者心理を冷やしている。日銀金沢支店が発表した「北陸短観」は、景気に暗雲が垂れ込めてきている実態を物語 る。調査時期の半ばに、政府・日銀は円売り・ドル買いの為替介入に踏み切った。介入効果が調査にどこまで反映されたかは不明だが、円高は三大都市圏以上に地方経済に大きなダメージを与えた。 海外生産の進展で、円高の打撃をかなり回避できる大企業に比べると、地方の中小企業 は円高の影響をもろに受ける。想定為替レートも1ドル=90円を切る大企業より、円安の設定が多く、さらなる円高は、地方経済をますます疲弊させるだろう。 政府・日銀の為替介入を恐れ、投機筋などが仕掛けをしにくい状況にもかかわらず、円 相場は29日、1ドル=83円60銭まで上昇し、為替介入を実施して以降の最高値を更新した。米国の追加金融緩和観測を背景に、ドル売りが優勢となっているのに加え、9月中間決算期末に向けて企業が手持ちのドルを売って円を買う実需の動きも円高の一因という。 介入の期待から日経平均株価は前日比プラスで引けるなど、市場は比較的落ち着いてい るが、市場関係者の間では、「今後、円は上値を試す展開になる」との見方が根強く、介入のタイミングはより難しくなるだろう。政府・日銀は投機的な動きに目を光らせると同時に、景気の下振れリスクにしっかりと対応してほしい。 日銀は来月4、5日の金融政策決定会合に向けて追加金融緩和のメニューを検討する時 期に来ている。政府は閣議決定した追加経済対策に続き、補正予算の編成を急ぐ必要がある。民主党政権と日銀はともに政策決定が遅く、しかも「小だし」という印象がある。円高圧力が増すなか、これまでのような鈍い対応は許されない。
◎小松−静岡便運休 日航の路線継承も影響
フジドリームエアラインズ(FDA)が運航する小松―静岡便が、就航から2年もたた
ずに来春運休になるのは大変残念である。搭乗率が30%を切る状態が続くようでは定期路線の維持は困難であり、航空会社としてやむを得ぬ経営判断と受け入れるほかないが、その背景には、経営破たんで廃止された日本航空の地方路線を引き継ぎ、そこに経営資源を投入するFDAの経営戦略の変化もある。日航の経営再建に伴う地方路線再編の動きが、小松―静岡便の運休決定を早め、定期便 開設で高まりを見せ始めた地域間の交流・連携に水を差したかたちでもある。しかし、定期便の運航が止まったとしても、地方空港同士の連携の手を緩めてはなるまい。 たとえば石川、富山、静岡、長野、山梨の5県は広域の国際観光振興のため、小松空港 ないし富山空港から入国し、静岡空港から帰国する「小松・富山イン静岡アウト」、またはその逆コースの旅行商品を企画し、韓国などへの売り込みに本腰を入れ始めたところである。こうした地方空港の広域連携は、生き残り戦略としてますます重要になる。そのために地元自治体が積極的に交流・連携活動を続けていけば、定期便再開の道を広げることにもなろう。 昨年7月に1日2便で就航したFDAの小松―静岡便は、今年6月に1日1便となった 。減便の理由は搭乗率の伸び悩みもあるが、FDAが静岡―札幌・福岡線、松本―札幌・福岡線など日航の撤退路線を相次いで継承し、限られた機材をこれらマーケットの大きい路線に投入する必要があったからである。長野県がまとめた松本空港の8月の利用実績によると、FDAの札幌、福岡線の利用率は合わせて71%に達し、目標(65%)を上回っているという。 新興の地域航空会社が路線のスクラップ・アンド・ビルドを進め、収益の見込める路線 に力を注ぐのは当然といえる。小松―静岡便の復活を望むとしても、FDAの存続、安定が大前提であり、日航の破たんを機に路線拡大を図る同社の経営を注視したい。
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