コラム

レアアース・クライシス その4 ~国動けど状況変わらず、日本は代替製品に軸足か~ - 脱レアアース製品開発進む

• 2010/09/12


そんななか
家電、自動車メーカー業界でレアアースレスの代替製品開発が急速に進んできている。
例えば、日立製作所は同じ永久磁石のアイテムである「フェライト磁石」を用いたモータを開発。帝人は鉄と窒素から成る新材料で磁石を作る技術を開発した。日立製作所のフェライト磁石は回転部分の構造を工夫し、レアアース磁石と遜色ない磁力を出すことに成功。レアアース磁石に比べて約1割少ない電力でレアアース磁石と同等の力が得られる性能を確認した、という。実用化のメドが立ったため、今後2年程度でエアコンなどへの応用を目指し、将来的には電気自動車にも用いていきたいという。
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ダイキン工業と大阪府立大学は鉄とフェライト磁石を組み合わせた高出力モータを開発。鉄の回転子のなかにフェライト磁石を埋め込む独自の構造。現状HEV(ハイブリッド車)に使われているモータの10分の1ほどの大きさで、出力が5kwの小型モータを試作。来年度中に出力20kwの実用的な大型モータを作り、製品化につなげる。

帝人と東北大学は鉄と窒素の新材料で強力な磁石を作る技術を開発。材料を約10ナノの粒子状にすることに成功。磁石としての性能を高める工夫をしたうえで、粒子を樹脂に混ぜて成型すれば、様々な形の永久磁石が作れる、としている。
NEDOで開発されている磁石レスのモータ
他にもレアアース磁石を用いないモータ、リラクタンスモータの開発も官民で進んでいる。リラクタンスモータは電気自動車にも十分応用できる。実際に米国の自動車メーカーではこのリラクタンスモータを採用してい電気自動車もある。ただ小型軽量化とは逆でシステムは大型になり重量も増す。

これらの代替製品開発は今後ともあらゆるレアアース使用製品分野で広がっていくことが考えられ、日本の高性能なモノ作りに有益であることは間違いない。しかし、いずれの代替製品でもその実用化は今すぐではなく、少なくとも2年~3年を要する。レアアース・クライシスはすでに起きている。来年前半の輸出枠は現状よりもさらに減るとの予想が大勢である。切迫したレアアース調達難が継続するなかで、どこまで日本の企業が「国内生産」にこだわり続けられるかがポイントになってくるだろう。