コラム

レアアース・クライシス その4 ~国動けど状況変わらず、日本は代替製品に軸足か~

• 2010/09/12

MRBcolumn 2010-09-12 レアアース・クライシスpart4
「日中経済対話でも状況変わらず、日本は代替製品に軸足移すか?」

レアアースの供給危機問題がかなりクローズアップされてきている。時遅しとはいえ、国が本腰あげたことで一般マスコミも例によって過熱気味に騒ぎはじめている。
しかしながら国が動いても中国のスタンスは全く変わらない。9月8日の日中経済討論会でも以下のように中国側の考えはぶれない。

日中経済協会の訪中団は8日、中国商務省を訪問し、陳健(ちん・けん)商務次官らと意見交換を行った。席上、大橋光夫副団長(昭和電工相談役)は中国がレアアース(希土類)の輸出枠を大幅に削減したことに改めて強い懸念を表明し、改善を求めたが、陳次官は「中国政府の政策を変更することはできない」と拒絶した。

 陳次官は「日本企業の懸念はよく承知しているが、中国政府もレアアースの安定供給と環境保全の両面で苦慮している」と説明。包玲(ぱお・れい)対外貿易局副局長は「中国の輸出規制は世界貿易機関(WTO)のルールに基づいた合法的なものだ。代替品の開発をしてはどうか」などと語った。

 中国からのレアアースの輸出枠は7月から前年比で約4割削減され、8月末の「日中ハイレベル経済対話」でも見直しが議題になったが、中国側が拒否していた。日本の経済界は「今後もあらゆる手段やルートで改善を訴える」(大橋副団長)方針だが、日本企業は調達先の見直しといった対応を迫られそうだ。

― 進むか 脱レアアース -
本コラムの1でも記したが、中国がレアアースを出さない、となれば日本側がとれる手段は限られてくる。ひとつはレアアースを要する製品部材は中国現地で作ること、あるいは中国の包玲対外貿易局副局長があえて提言しているようにレアアースを使わない代替品を開発すること、中国以外の調達先を開拓すること。レアアースのリサイクルを進めることも挙げられようが、実際問題としてレアアースのリサイクルはかなり難しい。

著名な経済評論家がレアアースのリサイクルは容易だ、と言いきっていたが、いかにも現場の状況やリサイクルの実態を知らない学者先生の意見である。どのぐらいレアアースのリサイクルが難しいかは次回に述べるとして、簡単に説明すると、各製品に微量に含まれるレアアースを抽出するこ
とはalt、一般的な鉄やアルミのリサイクルと異なり、手間暇、コストが膨大にかかるのである。

コストをかけたリサイクルレアアースがバージン原料以上の高価になることは容易に想像できる。割高なリサイクル材を民間企業がスムーズに使うか、という問題もある。まず現状では何らの補助金なしには民間ではレアアースのリサイクルはできないだろう。ただ、それであってもレアアースの場合はできうる限り、リサイクルを進めたほうがいい、とは個人的に思う。実際、ガラス研磨剤のランタン、セリウムのリサイクルを研究しているリサイクル企業も存在する。国内でレアアースを必要とするモノ作りが残ること前提だが、レアアースについては、多少コストはかかっても研究開発を続けることは必要だと考える。
(ランタンを用いた光学レンズ)