【コラム】韓国が目指すべき「先進国」とは(下)

 世宗市計画修正法案否決や地方選挙敗北により、国政運営の動力を大きく欠いた政府が、韓国社会の機会不平等を正そうと「公正」を担ぎ上げてきたのは理解できる。2年半前、李大統領は就任のあいさつで「大韓民国先進化元年」を宣言、「(切れてしまった)発展のエンジンを再びかける」と国民に約束した。その政府としては、多少苦し紛れに見えるが、「公正」に多くの国民が共感しているという点では成功だろう。「公正な社会こそ先進国化の倫理的・実践的インフラ」という自身の認識同様、残りの任期中に本格的な先進国化の礎を築くことができれば、「自らの役割は果たした」と後に評価されることだろう。

 しかし、将来の大統領候補が全員「福祉国家」に飛びつくようなことが望ましいのかといえば、それは疑わしい。先進国入りできるかどうかの岐路に立つ韓国で、今最も重要かつ緊要な課題とは、福祉と分配なのだろうか。しかも、進歩系左派では、「朴槿恵元代表の『福祉』スローガンは中道や中道左派を取り込む可能性がある」との懸念がささやかれ、「我々はもう少し左に寄るべきだ」と主張する声もある。この調子では、まかり間違えば次期大統領選挙では「福祉国家の建設に関し、より明確に適任なのは誰か」をめぐり、与野党の候補者が「明確さ」を競い合うポピュリズム(大衆迎合主義)的状況になる可能性も捨てきれない。

 こうした懸念を現実のものにしないためには、韓国人が直面する時代的な課題に対し、さまざまな政治スローガンやアウトライン作りを提示し、論争を展開しなければならない。特に、ハンナラ党の将来の大統領選挙候補者や保守系右派知識人は、自分たちが考える先進国像をより明確な青写真にして示すべきだ。そうすることで、次期大統領選挙を、先進国のビジョンに関し理念的スペクトラムを異にする候補たちが自由かつ活発に議論できる「百家争鳴」の場にしてほしい。

李先敏(イ・ソンミン)文化部長

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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