「東レ・パンパシフィックOP第3日」(28日、東京有明テニスの森公園)
シングルス2回戦で、世界ランキング67位のクルム伊達公子(40)=エステティックTBC=が、同29位のダニエラ・ハンチュコバ(27)=スロバキア=と対戦。第3セット第5ゲーム途中の右肩痛による相手の棄権で、優勝した95年以来の16強進出を決めた。この日迎えた40歳の誕生日を、前日のマリア・シャラポワ(23)=ロシア=戦に続く2日連続の金星で飾った。29日は8強進出をかけて今年の全仏OPを制したフランチェスカ・スキアボーネ(30)=イタリア=と対戦する。
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40歳の険しい勝負師の顔は、突然の試合終了とともに緩んだ。第3セット、伊達の4‐0で迎えた第5ゲーム。15‐0からファーストサーブを外したハンチュコバが首を横に振って棄権を宣言。手にした勝利に「40歳最初にいいスタートを切れた」と満足そうだった。
「きょうは自分の誕生日」。勝利者インタビューでのこの言葉を合図に、場内はハッピーバースデーの大合唱。「40歳でここまで祝ってもらえる人もそういない。チームのみんなに『おめでとう』って言われて、出てきた言葉が『これで怖いものなしね』だった」と無敵の40歳は笑った。
第1セットを2‐6と圧倒されて「何をやってもダメ」。そこから第2セット以降は驚異の10ゲーム連取。「サーブのスピードを落としたり、スローな展開にすることでリズムを変えた。彼女のミスを誘って自分のリズムを作った」。力でも技でもない、ベテランならではの試合運びが、勝因の1つだった。
前日はシャラポワと大熱戦を演じた。「朝は顔が腫れぼったかった。ギリギリまで寝たいのに、目覚ましの前に目が覚めてしまう。そういう年齢になった」と衰えは感じている。それでも「タフな試合だった割にはいい状態。神様が味方してくれたかな」と回復力に胸を張った。
夫のカーレーサー、ミハエル・クルム(40)はウイニングボールを手に興奮。「毎日厳しいトレーニングをやっている。年齢を重ねてダメになるのではなく、やればできるというメッセージを発信している」と愛妻の努力を証言した。
次は全仏覇者のスキアボーネ戦。さらにダブルスの負担も増える。「やりやすい選手じゃないし、メンタル的にも楽じゃない」と言いながらも、「東京のファンの力を借りて力を振り絞って走りたい」。怖いものなしの40歳。惑いはない。