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北朝鮮:「家族国家」強まる…金日成直系に権力集中

北朝鮮の党代表者会を前に平壌市内をパレードする子どもたち=2010年9月27日、AP
北朝鮮の党代表者会を前に平壌市内をパレードする子どもたち=2010年9月27日、AP

 【ソウル大澤文護】北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記の実妹、金慶喜(キム・ギョンヒ)氏(64)が、28日発表された朝鮮人民軍人事で、大将の称号を得たとみられることで、今後、明らかになる可能性が高い正銀(ジョンウン)氏の後継体制は、建国者・金日成主席の直系親族らに権力が集中する「家族国家」の色彩を一層、強めることになろう。

 金慶喜氏は、金総書記と同じ母(金日成主席の最初の妻、金正淑=キム・ジョンスク=氏、1949年死去)を持つ実妹だ。

 金総書記が異母弟らを「海外追放」したり、重要職責を与えなかったのに比べ、金慶喜氏は、長く金総書記の意思を国家指導部のメンバーに伝える役割を果たしてきた。金慶喜氏の国家指導部への登場は87年の党軽工業部長就任と、90年の最高人民会議代議員選出だった。しかし、95年10月に北朝鮮の公式メディアの報道に登場して以後、動静が伝えられなくなった。

 14年後の09年6月8日、朝鮮中央放送などが金総書記の平壌音楽大学視察に、金総書記の腹心である夫の張成沢(チャン・ソンテク)氏(64)と共に同行したことが伝えられ健在が確認された。

 北朝鮮ではこの間、08年8月、金総書記の動静報道が途絶えた。金総書記の重病説が流れ、権力継承の動きが早まった。

 金慶喜氏は当初、張氏と共に金総書記の長男正男(ジョンナム)氏(39)を後継者として推していた。しかし、正男氏が後継者レースから脱落した後、正銀氏の後見人として活動を開始し、次男正哲(ジョンチョル)氏(29)を推す勢力との権力闘争があったと想像される。

 その闘争を勝ち抜いたことで、金慶喜氏の影響力は強まり、張氏も最高指導機関である国防委員会の副委員長の要職に就いたとみられる。

 北朝鮮の体制に詳しい、韓国・世宗研究所の鄭成長(チョン・ソンジャン)首席研究委員は「金総書記が健康不安を抱えてから、金総書記に接近できる幹部は、ごく少数に限られるようになった。その中でも金慶喜氏は最も金総書記に近づきやすい立場だった」と分析している。

 金慶喜氏は、正銀氏の後継体制作りの中で、金総書記の指示を公式・非公式に正銀氏らに伝達する役割に専念するとみられる。

 さらに健康不安を抱える金総書記の病状が悪化すれば「革命の継承」を見守る国家の中心人物となり、張氏と共に政策決定や指導部人事への直接的な影響力を行使する可能性も強まってくる。

 ◇大将昇格の崔竜海氏…側近グループの一員

 【北京・米村耕一】北朝鮮の今回の軍人事で大将に昇格した崔竜海(チェ・リョンヘ)氏は、張成沢(チャン・ソンテク)国防委員会副委員長の側近。8月末の金正日(キム・ジョンイル)総書記訪中にも同行するなど、金ファミリーの側近グループを構成する一員だとされる。

 朝鮮通信によると、父親は抗日パルチザン第1世代の一員、故崔賢(チェ・ヒョン)・元人民武力相で、最近になって解任が判明するまで黄海北道の朝鮮労働党トップを務めていた。

 黄海北道でも「党首脳部との強いつながりで権勢をふるっていた」(北朝鮮住民)とされる。韓国の報道では、今回の党代表者会で要職である組織指導部第1副部長に就任するとの観測が出ていた。

 ◇米国務次官補「展開を注視」

 【ニューヨーク山科武司】北朝鮮の金正日総書記の三男、正銀氏が大将に昇格したと報じられたことについて、キャンベル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)は27日、記者会見で「米国は北朝鮮の展開を注視している。関係各国と連携して北朝鮮から伝わる情報を分析している」と述べた。ただ、「率直に言って、北朝鮮の指導者間で何が起きているのかに言及するのは早すぎる」とした。

 北朝鮮の核開発を巡る6カ国協議の再開について同次官補は「北朝鮮が韓国との関係改善などに向かうのが先決」と話した。

毎日新聞 2010年9月28日 13時14分(最終更新 9月28日 15時42分)

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