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[20989] MUVーLUV ALTERNATIVE~三度目のループ (お詫びの言葉)
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/09/29 19:28
初めまして、騎士王と言います
初のアルカディアでの投稿に緊張しまくってます
偶に短文になる事もあるかも知れませんが、温かく見守って下さい


この作品は
・タケルちゃんチート…かも
・オリキャラ・オリジナル戦術機
・時々(?)キャラが崩壊、キャラによっては、はっちゃける時や暴走もアリ
・ハーレムルート…になるかもしれない
・時々短文(最低でも二千文字程度)に書く時が有るかもしれません、ご了承を。(作者は回覧数や感想数を稼ぐ為、短文にしてる訳ではありません、御理解お願い致します。)

追記・TEキャラの一部がタケルちゃんの餌食(恋愛原子核的に)になりますので、『○○はユウヤの嫁!!』とか『カップルブレイカーは止めろ!!』と言う方はご遠慮下さい

あと、昨日(2010・9/25)感想掲示板で書きましたが、感想掲示板での荒らしや暴言・読者同士のコメントからコメントをする事(但し間違いを指摘するのはOK)はご遠慮下さい。

もし、読者同士のコメントをする際は、普通の掲示板でお願いします。


しかし、誤字等の報告や応援メッセージは全然とてもありがたいので、ドシドシ書き込みお願いします。


追伸・何やら本作品を『パクリ』と言ってる方がいますが、心外です。

本作品は、原作のネタは使ってはいるものの、他の小説のネタをパクリは決して行ってはいません。

『ありきたりなネタ』とかならばまだしも、『パクリ』はありません(但しカーノンさんの所の小説の『<◎><◎>』だけは、使いました。
もし、この文字が問題になるのならば、削除します。)

この作品のネタは、原作や作者の妄想などで作った作品なので、他の小説からのパクリは行ってません。

などなど…と有りますのでご了承を…嫌いな方は見ない方が良いです
応援のメッセージ受け付けてます…更新の力をオラにわけてくれ…(えっ?)


修正・第四話


タケルちゃんの戸籍改竄の修正をしました。
混乱した読者様スミマセンでした。

あと、少し短い第○話の①・②・③などをまとめました。

修正・①・②・③…などのまとめ。


第八話まで纏めておきました。

修正・第十一話までまとめておきました。


お詫び・この度、sage投稿をしようとした所、間違えてage投稿をしてしまいました。
この度ご迷惑をおかけして、スミマセンでした。
あと、『お詫びの御言葉』と誤って載せた事をお詫び申し上げます



[20989] MUVーLUV ALTERNATIVE~三度目のループ~プロローグ
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/08/27 21:38
1998年・1月-----
仙台・第二帝都城---

「雪か…寒い訳だ。」


白い息を吐きながら、帝都城の渡り廊下を歩く男ーーー帝国斯衛軍大佐・斉御司兼嗣
『五摂家』の一つの現当主で、齢50を超えて尚、未だに戦場を駆ける『武士』の一人

「日本の未来は…一体何処に向かうのだ…」


米国に政権を一時的とは言え、握られ
日本が迷走し、将軍家の存在が『お飾り』とまでされ、今の日本には『幸せな民』は一握りしか居ない現実に嘆く日々ーーー
苦々しく表情を浮かべる斉御司大佐の顔は歯を食いしばりなからも空を見上げる…

「アラ…そなたは…?」
「あ…貴女様は…殿下!?」
声をかけられ、振り向くと、幼いながらも将軍になった『煌武院 悠陽殿下』と、護衛の『月詠 真耶中尉』が歩み寄って来た


「斉御司兼嗣殿ではありませんか…」

「ハッ…殿下に名前を覚えて頂き、至極有り難き幸せで御座います。」


クスクスと笑いながら冗談を言う斉御司大佐
その後、跪いて頭を下げる。


「何をしてたか…聴いて宜しいでしょうか…?」

「ハッ…日本の現状と行く末に頭を悩ませながら、空から降る雪を見ながら考えてました。」


「……スミマセン、私に力が無いばかりに…」


「で、殿下、頭を上げて下さいっ!!」

説明すると悠陽殿下が頭を下げながら謝罪する
それを見て、頭を上げるように説得する真耶中尉。


「……未だに将軍家の威厳は昔のようにありません…


しかし、私には皆さんの力も有って、将軍として力を振るえるのです。」


「勿体無き御言葉…」


悠陽殿下の御言葉を聴き、感動する真耶中尉。

「しかし…あと一手…
あと一手何か『決め手』があれば…!!」

斉御司大佐も、苦痛な表情をしながらも、悩んでいた…。
そして--再び雪降る夜空を見上げると----


「「「-----なっ!!?」」」


突然の目の前に光輝く柱の出現に驚愕する三人。
輝きが徐々に消えていくと、気を失った一人の青年が姿を現れた。


「コレは一体…!?」


余りの出来事に、驚愕を隠せないでいる斉御司大佐。


すると----















「タケル…様…?」

「えっ…?」
「殿下…?」

悠陽殿下の一言に反応する二人だった…。



[20989] MUVーLUV ALTERNATIVE~三度目のループ~第一話
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/09/13 19:28
「う…ん……………ん?」


目を覚ますと、見知らぬ天井が見え、起き上がりながら辺りを見る

「此処は…何処だ…?」

寝ぼけながらも脳をフル回転させるタケル
そして出た結論は---

(…もしかすると『御剣家』の一部屋か…?)

以前、御剣冥夜と御剣悠陽の実家の御剣家に訪ねた時があり、(強制連行だが…)その内の一部屋に似ている記憶があった
(やっぱり、悠陽や冥夜の実家----痛っ!!)
すると、突然の頭痛が襲い、膨大な『記憶』が流れて来る!!


(BETA……横浜基地…?
戦術機…G弾…凄乃皇四型…!?)


徐々に流れて来る『記憶』に少しずつ『理解する』タケル…そして---

(柏木…伊隅大尉…速瀬中尉…涼宮中尉…!!)

そして、尊敬すべき先任達の記憶と悲しき別れの記憶…


(神宮司軍曹…委員長…彩峰…美琴…タマ…)

そして、最も尊敬すべき恩師と苦楽を共にした仲間達の様々な記憶…

(冥夜-----!!
純夏-----!!)


そして、こんな自分の事を最も愛してくれた二人の記憶-----
「ハァ…ハァ…
コレは…もしかして…!!」
今、タケルの脳裏にひとつの『考え』が浮かび上がる

「『帰って来た』…のか…?
『BETAのいる世界』に…?」

『三度目』のループだと答えを見つけるタケル
記憶が『全て』思い出すと同時に涙が溢れてきた

「やった…やったぞ…白銀武…!!」


記憶を思い出したタケルにとって----
『三度目のループ』は…望むべき『願望』だった…

「これで…みんな…みんなを…救える…!!」


納得のいかなかった『一度目と二度目』のループ
一度目は力が無かった----
二度目は覚悟が足りなかった----
だが、今回は違う----!!

「今回こそ…今回こそみんなを救ってみせるっ!!
絶対に…あんな悲劇は二度とゴメンだっ!!!」

右手を拳にし、力強く握り締める。

決意は決まった----
やる事も決まった----
力も覚悟もある----
次する事は----!!

「……まずは情報を集めよう…
ここが『三度目の世界』であるならば、『御剣家』では無い筈…
…という事は----」


記憶を振り絞って出した結論は----

「…帝都…なのか…?」

以前までのループと違い、『白銀家』でのスタートでない事に少し戸惑うタケル。
しかし、このような豪華絢爛な和風な部屋は滅多に有るモノではない
特に『BETAの居る世界』ならば尚更
まず浮かび上がる答えは『帝都城』
帝都城ならば、この作りは納得する
日本を象徴とする帝都城ならば、この豪華絢爛な部屋も当然の事

「…という事は…京都か仙台の帝都城…なのか…?
それとも高位の武家の家なのか…?」


益々わからなくなってきたタケル
混乱しそうだったので、考えを切り替える事にする


(とりあえず…場所は保留にしとこう…
次は…今は何時頃の時代なんだ…?)

普通に考えれば『2001年10月22日』なのだが、今回のループは違う。
目覚める場所が違う為、何か『違う』気がしたタケル。
辺りを見回してみるが、カレンダーは無く、唯一骨董品みたいな古い柱時計があった

(日付は9日…時間は夜中の2時12分か…)

日付は違う
時間帯も違う
年号はわからない
この部屋では情報が全く無い為、難航するタケル
(参ったな~…情報が少な過ぎる)
ボリボリと頭をかきながら寝台から起き上がる事にしたタケル。
すると----!!


「目覚めたようですね…タケル様…」

「悠陽…殿下…?」

知っている『煌武院悠陽殿下』とは少し『幼い感じ』がした為、一瞬戸惑うタケル

「殿下…先に入られては困ります」


「大丈夫ですよ、真耶さん」

すると、悠陽殿下の後ろから真那中尉が現れ、悠陽殿下の前に立ち、タケルを警戒する

(あれは月詠さんの従姉妹の月詠真耶さん…だっけ?)

タケルも数回程度しか合った事が無い為、少し困惑する。

「貴様…白銀武か…?」

「ハイ、オレは白銀武です…。
スミマセンが、今の年号と日付を教えてくれませんか…?」

真耶中尉に質問に正直に答え、タケルも真耶中尉に質問する。

「…今は『1998年1月9日』だ」

「せ、1998年ッ!?」

予想外な年号が出た為戸惑うタケル
「そ、それじゃ、此処は何処ですか!?」

「仙台の第二帝都城の一室だ」

「えっ、ええぇぇえぇぇっ!?」


更なる返答に混乱するタケル

「今度は此方からの質問だ
正直に答えよ」

鋭い眼光を放ちながら、タケルに問いただす


「貴様は何者で何故光と共に現れたのだ?」

「…その時の詳しい状況を教えて下さい…」

タケルの心の中で『やっべー…もしかして大勢の人に見られた…?』と嫌な汗を流しながら真耶中尉の返答を待つ
「数時間前…殿下がその日の作業を終えて、寝室に向かう際、とある渡り廊下で帝国斯衛軍大佐の斉御司兼嗣殿と出逢い、少し話をしてた際、貴様が我等の目の前で光と共に現れたのだ」

「ノゥ…やっちまった…」


目撃者が三人だったのは幸いだが、少なくとも『斉御司大佐』の事は全く知らない人故に焦りが生まれる
「大丈夫ですよ、タケル様…
斉御司大佐には此度の事は内密にと言って起きましたので、他の方には漏れる事はありませんわ」
「ふぃ~…有り難う御座います…殿下…」
少し安心したタケル
そして、真耶中尉の問いに答える

「オレは『この世界』とは違う並列世界から来ました
ただ、以前『BETAのいる世界』に飛ばされた事があり、『二度の結末』を見て『元の世界』に帰りました…」
「違う『並列世界』だと?
詳しく話すのだ」
「良いですけど…眉唾的な話ですよ?」
「それでもだ」
「……わかりました…
これから話す事は…全て『真実』です」
タケルの真っ直ぐな眼を見て『嘘では無い』と悟る悠陽殿下と真耶中尉…
「始まりは…オレん家から始まりました…」
2001年10月22日---
全ての『始まり』は其処から始まった----
『一度目』は何が何だかわからない自分は混乱し、横浜市柊町をうろつき、廃墟とした光景に唖然とした…
幼なじみの家は撃震で破壊され、周りの建物も同じように破壊されていた
辿り着いた場所は『国連軍横浜基地』
その場所は自分の通ってた学校の有った場所だった…
その後、正門前の衛兵に怪しまれ、捕まるが、此処である人物に出逢う。


『国連軍横浜基地副司令・香月夕呼』
皮肉にも、『元の世界』での知ってる人物であり、お互いに切っても切れない『縁』である彼女に出逢い、拾われたのだ

「…あの『魔女』の知り合いとは…」

「確かに先生は他の人にしてみれば『油断出来ない人物』ですが、『中身』を見れば『優しくて頼りがいのある人物』なんですよ
堅い考えと偏見な見方を止めて、よ~く中身を見れば理解出来ますよ
…ただし、それまでにどんな理不尽な『イタズラ』が待ち受けてますけどね…」

「な、何故泣く!?」

夕呼の事を理解してるタケルが真耶中尉に『香月夕呼』の事を説明するが、その最中に『悲しき記憶』が蘇り、るーるー…と涙を流す

…それからタケルに『生きる術』を教える為に『訓練兵』として学ぶ事になった
その際、『元の世界の恩師』である神宮司まりもに出逢い、『207B分隊』に配置される。
そして、其処でかけがえの無い仲間達と出逢う----
榊千鶴
彩峰慧
鎧衣美琴
珠瀬壬姫
そして…『御剣冥夜』

『元の世界』でも仲の良かった友でもあり、『BETAのいる世界』では大切な仲間だった。
「冥夜…様だと…?」
この事に驚愕する真耶中尉だが、冷静に話を聴く悠陽殿下…

それから、悪戦苦闘の毎日が続いた。
みんなの足を引っ張りながらも、『総戦技演習』をクリアし、衛士になるべく戦術機の訓練をしていた。


その際、『元の世界』でのゲームが役に立ち、戦術機の腕前では『天才衛士』と言われるまでに評価された
しかし、様々な事件が起こり出す
群馬・新潟沖に佐渡島のBETAが上陸し、『新潟沖BETA襲撃』が発生
横浜基地を目標とし、突撃するが、なんとか最終防衛線にて阻止する
爆薬満載なHSSTによる『横浜基地強襲』
この時は訓練兵でありながら『極東一のスナイパー』である珠瀬壬姫が『1200mmOTHキャノン』を使い、撃墜に成功
噴火目前の天元山による『災害救出活動』
この時は冥夜と二人で力を合わせ、『第3世代機高等練習機・吹雪』にて天狗岩を両断し、マグマの進路を変えて麓の村を救う事に成功する----
だが…しかし…『12月25日』----
オルタネイティヴ4は失速し、オルタネイティヴ5が発動。
選ばれた10万人だけ宇宙の何処かにある惑星に逃げ、地球は残った全人類によるG弾による殲滅作戦が始まった。

「そんな…!?」

「ふっ、ふざけてるっ!!
G弾による殲滅作戦だとっ!?」

「…その後の結果はオレにはわかりません…
途中で死んで『二度目のループ』に行った為、『人類の勝利』か『滅亡』かは知りません…
けど、『対応』をするBETAの事を考えれば…『滅亡』の可能性の方が遥かに高いでしょう…」

タケルの言葉を聞き、絶句する二人だった…

「そして、次に『2度目の世界』です…」

『二度目の世界』はオルタネイティヴ5を避ける為、『未来を変更する』手段を取った
普通ならば絶対に不可能だが、タケルだけは違った
『未来』を唯一知る人物---
だからこそ『未来の変更』が可能になった


幸いな事に『一度目』で鍛えた肉体と知識、そして衛士としての腕前は継承していた為、多少の日にちを早め、少しずつ『未来を変更』していた。

『新潟沖BETA襲撃』も香月夕呼の力を使い、帝国軍をBETAが上陸する付近に配置し、前回より被害の少ない未来に変更した---
HSSTによる『横浜基地強襲事件』も、前もって監視と脅しを入れ、阻止する
天元山の『災害救出活動』も、強引な手段とは言え、民間人の救出に成功する
そして、タケルの機動特性を元に作った新OS・『XM3』を開発
後に『全衛士の半数を救うOS』とまで呼ばれる事になる


…だが…予期せぬ事態が起きた…

帝都でのクーデター事件
煌武院悠陽殿下をも巻き込んでの大事件を始めとして、横浜基地に現れたBETAの『トライアル襲撃事件』
そして、佐渡島を消滅という結果になったが、『佐渡島ハイヴ攻略』に成功する
その3日後にBETA達が陽動などを使い、『横浜基地防衛戦』を発生
そして…息を吹き返したオルタネイティヴ5の危機を回避する為-----
『桜花作戦』を開始する--

「…桜花作戦とは…何だ…?」
緊張感が張り詰める中、質問する真耶中尉…
「桜花作戦の作戦内容は…
『オリジナルハイヴ攻略戦』です…
そして…多大な犠牲がある中…桜花作戦は成功しました…。」

「「------ッ!?」」

人類の念願の夢のひとつである『オリジナルハイヴ攻略』
それが現実になったと知り、衝撃が二人を襲う!!

ーーーしかし…タケルの表情は暗いまま。

『オリジナルハイヴ攻略』を成功したというのに『笑顔』が消えた…

「しかし…桜花作戦で…かけがえの無い仲間達を失いました。
委員長に彩峰に美琴にタマ…
そして----
幼なじみの純夏や…冥夜まで、オレを生かす為に……戦い…二度と逢うことは叶いませんでした…」

「-----ッ!?」

「冥…夜……が……?」

『御剣冥夜の死』を知り、衝撃を受ける二人…


タケルの説明を終えて言葉を失う悠陽殿下と真耶中尉
「…結論を言うと…半信半疑だな…
いきなり佐渡島ハイヴだの…未来だの言われても、貴様の言う通り『眉唾的』な話ばかりだ…」


「それは仕方ない事ですよ
『証拠』を出せと言われても『物』として有る訳でないから出せませんし…」
「そうですわね…」
流石に証明するモノが無く、決定的な実証が出来なかったタケル
「…だが、貴様が嘘を言ってる節は見えなかった…
だから、とりあえず『話を聞いておく程度』にしておく…
…でなければ…私は貴様を『殺して』しまいそうだ…
冥夜様が…死ぬなど…許されるハズが無い!!」


内心怒り心頭の真耶中尉…
やはり『御剣冥夜死亡』の話はかなり揺らいだようだ…


だが…


「月詠中尉、頼みが有ります…」
「…なんだ…?」
「オレをーーーー気が済むまで殴って下さい」
「「なっ!?」」
タケルの突拍子も無い言葉に驚愕してしまう真耶中尉と悠陽殿下
「何故…と聞いて良いか?」
「オレは…自分が許せません…
仲間達を救えずに…逆に守られる身だった自分に…
そしてーーー冥夜の命を……この手で『奪った』自分が許せません…」

「…えっ?」

予想外な返答に唖然とする悠陽殿下
そしてーー!!
「グハッ!!」
「貴様ーーーッ!!!!!」
一気に怒りが爆発した真耶中尉が渾身の一撃をタケルの顔面に叩き込む!!
「貴様が…貴様が…冥夜様を……ッ!!!!!」
タケルの首筋を左手で鷲掴みにし、狂ったようにタケルの顔面を殴り続ける真耶中尉

「や…やめなさいっ!!
止めるのです、真耶さん!!」
「貴様のせいで……貴様のせいで…冥夜様は…!!!」


悠陽殿下の言葉すら届かず、『殺意』を持ってタケルを殴り続ける真耶中尉

「駄目ですっ!!このままではタケル様が……死んでしまいますっ!!」

「殿…下…?」
身体を張って真耶中尉を止める悠陽殿下
その際に正気に戻る真耶中尉…
「良いんだ……止めなくても良いんだ……」
「しかし、このままでは…」
『死んでしまう』---
そう口にする前にタケルに頭を優しく撫でられる悠陽殿下

「オレは許せない---
幾ら『元の世界』に帰り、記憶を失っていても……
こんな自分を『愛してくれた』冥夜を…殺し…その罪を『忘れた事』を……」


「えっ…冥夜様が……貴様を…?」
タケルの言葉を聞き、ピタリと反応する真耶中尉

目の前の男は少なくとも--
自分の利益や保身の為に仲間を裏切る者ではない
むしろ、自分が何でも背負い込むタイプに見えなくも無い
「………白銀武
『冥夜様の死』を詳しく教えろ…」
「ハイ…」

タケルは機密情報(凄乃皇等)の事は伏せながら話す……





桜花作戦時---
遂に『あ号標的』のいる間まで辿り着いたタケル
だが、しかし…『あ号標的』の攻撃により、『決戦兵器(凄乃皇)』の行動を封じ込め、幼なじみの純夏や同じ搭乗者の霞まで『あ号標的』により、気を失っていた

だが、タケル達の瞬間に、『紫の武御雷』に搭乗していた冥夜がタケル達を救い出すものの、『あ号標的』には適わず、触手攻撃により、武御雷ごと、決戦兵器に貼り付けられる
S11の自害も封じられ、冥夜の全身に『あ号標的』の触手攻撃により『乗っ取られてしまう』のだった



「そん…な…」
絶句する真耶中尉
あまりの絶望的状況に言葉すら発する事が出来ない悠陽殿下
「そして…冥夜は……オレに『自分ごと、あ号標的にトドメを刺せ』と言ったんです……」


「ーーーーーッ!!」

なんて残酷な選択を選ばされたのだ
自分を愛してくれた人物を『殺せ』と言われる絶望
自分ならば……どうするのだろう…
真耶中尉は…残酷な選択に判断が出来ないでいた…
「そして……冥夜は言ったんです……
『御剣冥夜は最も愛したソナタの手で……殺して欲しい…のだ』…と…」


ガタリと跪いて戦意喪失になる真耶中尉…
あまりの真実に絶望し…力が抜けてしまう
「冥夜…様…」
「だから……オレは自分を許せないんです……
冥夜を……みんなの『幸せ』を守れず…自分だけ生き残った事に……」
涙をこらえながら、食いしばって語るタケル…
初めてタケルの『苦しみ』を理解する二人…
「…………」
言葉を発する事が出来ない状況になり、無言の時間が経つ……
「……………殿下…
話の続きはまた今度にしましょう…
時間ももう遅い……お休み下さい……」
「ハイ…わかりましたわ…」
苦痛な程空気が重くなる……
それから逃れるように話を中断する三人…
「…白銀武よ…しばらく待っておれ
殿下を寝室まで送って来る」

「ハイ…わかりました」部屋を出て、悠陽殿下を寝室まで送る……



そして……時間がしばらく経ち----
「失礼する…白銀武?」

再び部屋に入る真耶中尉
しかしタケルからは言葉が出てこなかった
「白銀武…気を失っていたか……」
真耶中尉の怒りの猛攻に気を失っていたタケル…
気を失っていたタケルの顔に『塗り薬』を塗り、湿布薬や絆創膏を貼り、治療する
「私は---
この者の『苦しみ』を理解出来なかった…」
先程の出来事に深い反省をする
「この者とて---苦しみながらも戦い続けたのだ…
なのに…私は…怒り任せに暴れるだけ…」
タケルの『覚悟と贖罪』を知った真耶中尉…

ボコボコに腫れ上がるまで殴り続けた自分に深い後悔が真耶中尉の背中にのしかかって来た…


「月詠…さん…?」


腫れの痛みで起き出すタケル、そして---

「ん………」
「!!!?」

優しくタケルの唇に触れ合う真耶中尉の唇
予想外の出来事にタケルも驚愕する


「済まなかった…やり過ぎた…
コレは…私なりの『償い方』だ…だからと言って勘違いするなよ!?
…別に『恋愛感情』で唇を合わせた訳ではないぞっ!!」
顔を真っ赤にしながらも誤魔化す真耶中尉…


「…だから……自分を…許してやれ…」
優しくタケルの頭を抱え込んで慰めれる
優しく……豊満な胸にタケルの顔を少し埋める
「休むが良い……話は後日またしよう…」
「………ハイ…
スミマセン…でした……」
そのまま再び深い眠りにつくタケル…
今度はゆっくりと眠りにつけれるように…そっと休息を与える真耶中尉だった…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第二話①
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/09/13 19:37
1998年・1月9日
「モグモグ……イチチッ…」


目が覚め、すっかり『朝・昼飯兼晩ご飯』になってしまったタケル
傷がチクチク痛みを感じながらも根性で食べる

「すっかり外が暗くなってやがる…
オレ…鈍ってるのかな…」


ちょっと不甲斐ない自分に反省するタケル
身体を鍛え直そうと考えたりする


(けど…1998年って事は…『光州作戦』や佐渡島や横浜にハイヴを建設した年だよな…)

モグモグと食事しながら考えこむタケル

(つー事は、この時はまだオレや純夏は無事に柊町で暮らしてるんだよな…)

この時『まだ生きてる自分や鑑純夏』を心配するが、『何か良い手無いかなぁ~…』と脳をフル回転させる


(…やっぱり『先生』に逢わないと始まらないか…悠陽に頼んでみるか…)


『歴史を変える』には『香月夕呼』という人物が必要だと考えを改めて思う

すると、丁度食事が終わると同時にドアからノックする音が聞こえて来る
「ハイ、どちら様ですか?」

「私だ」

すると真耶中尉が部屋に入って来た
「随分と寝坊助だな、もう晩だぞ?」
「グッ…面目無いです…」

反論が出来ないでいるタケルを見てクスリと笑う真耶中尉

「さて、今夜は殿下と斉御司様と密会をしてもらう
良かったな、白銀
まだ眠っていたら『拳』が飛んでいたかも知れぬぞ?」
「アハハハ…」
冗談には見えなかったタケルは苦笑いをしながら嫌な冷や汗をダラダラと滝のように流す…

「斉御司様には、一通りの話はした
勿論斉御司様は『半信半疑』で聞いてたがな」

「…『半信半疑』って事は『少し』は『信じた』って事ですよね…?」

タケルの問に『ああ、そうだ』と返答が帰って来る

「まず白銀の話の内容だが…
『嘘』にしては、内容が『突拍子過ぎる』
『嘘』をつくならば、もっと上手い『嘘』をつく
次に『妄言』の可能性だが…
『妄言』を言う奴が『俺を殴って下さい』などと言うのも変だしな…
それに『妄言』にしては内容が弱い
それに話の内容も『出来事と結果だけ』で『中身』を喋ってない…
これは『機密情報を隠蔽』を意味する事から『真実味』が有ると私は思う
…ついでに言えば、白銀がスパイや暗殺者の可能性も皆無
もし、白銀がスパイや暗殺者の類いならば…貴様はどうしようも無い程の『莫迦でマヌケな奴』だ…
故にこの案も消える」


「……なんか酷い言われようですね…」

素直に喜べないでいるタケルを見て『良かったな、死罪は免れたぞ?』と冗談を言う真耶中尉

「それに我々の目の前で『光と共に現れる』のだ…普通に考えれば有り得ない出来事だ
『未来から来ました』なんて事を言えば『多少』は信じてしまうぞ?」
「なんか複雑な気持ちですね…」


真耶中尉の説明を聞いて、だんだん落ち込んで来るタケル
「その真意を知る為に今回の密談が有るのだ
お二方に信用して貰うかは白銀次第だ」

「ハイ、わかりました…」

真耶中尉の言葉を聞き、覚悟を決めるタケル
その真っ直ぐなタケルの表情を見て、『フッ…』と笑みを浮かべる真耶中尉…

「さて、話も此処までだ
いい加減、服を着替えるんだ」
「服って……………………まさか…コレデスカ?」


ベットから離れた場所の小さな机の上に『斯衛軍の軍服(黒)』が用意されていた

「他に服が有るか?」

「ソウデスヨネー…」
仕方無しに服を着替えると……

「グハッ……似合わねー…」
鏡を見て素直な感想を言うタケル
「『馬子にも衣装』だな」
「んがっ!?」
真耶中尉の一言にショックを受けるタケル
「ホラ、さっさと行くぞっ!!」
そのままタケルの腕を掴み、悠陽殿下達の居る部屋へと向かって行った…


部屋を出て十数分後…
殿下達が待つ部屋の前に到着するタケル達

「ここだ、失礼無いようにな」

「ハイ」

「では行くぞ…
失礼します殿下、月詠真那中尉只今参りました」

頭を下げながら入室するタケル達
中では、殿下と斉御司大佐が待っていた
「ご苦労様です、真耶さん
ようこそいらっしゃいました、『タケル様』」
「…………?」

なんとなく悠陽殿下のセリフに違和感を感じるタケル

「此方に居る御方が、五摂家の一人である斉御司兼嗣様だ」


「私が斉御司家現当主であり、斯衛軍陸軍大佐の斉御司兼嗣だ
済まないが君の自己紹介をしてくれないかね?」

「ハッ、オレの名は白銀武と申します
歳は18です」

「ウム、元気の良い若者だ」

はっきりと返答するタケルに好印象を感じる斉御司大佐

「あと、此処には居ませんが、『もう一人』お呼びしてます
少々遅れますが直に来るでしょう」

「ハッ、わかりました」
悠陽殿下の会話に返答を返すタケル
すると斉御司大佐からタケルに話しかけて来る

「…ところで、月詠中尉からは話を一通り聞いたが…はっきり言えば突拍子過ぎて困惑してる状態だ…」
「…スミマセンでした」

困惑している斉御司大佐に申し訳無い気分になり、素直に謝るタケル

「あの…質問の前にスミマセンが…こちらからひとつ殿下に質問して宜しいでしょうか…?」


「私にですか?
…勿論宜しいですが…兼嗣殿…宜しいでしょうか…?」

「ハッ、殿下にお任せします」

「有り難う御座います」
殿下と斉御司大佐に深々と頭を下げるタケル

「殿下…何故オレの事を『タケル様』とお呼びになるのでしょうか…?」

「…そうですな、その事に関しては、私も月詠中尉も気になる所です」

「殿下は…過去に白銀に会った事が有るのですか…?」



タケルの質問…
『タケル様』と呼ぶ事に違和感を感じていたタケル達
「オレの事を『タケル様』と呼ぶのは元の世界の殿下…御剣悠陽とメイド長の月詠真那さんと月詠真耶さん
…あとは3バカの巴・戎・神代の三人…
この六名のみがオレの事を『タケル様』と呼んでました
…しかし、二度目の世界では、殿下はオレの事を『白銀』とお呼びになってました
この世界で出逢って間もないオレに『タケル様』と呼ぶのは何故でしょうか…?」

先程の違和感---
悠陽殿下の『タケル様』が気になっていたタケル
何故出逢ったばかりなのに『タケル様』と呼ばれるのか…悠陽殿下に問いただす


「そうですね…わかりました
実はタケル様と出逢ったあの時---
光と一緒に現れたタケル様を見た瞬間---
私の頭の中に見覚えの無い『記憶』が流れて来ました…」


「記憶…ですか…?」

「ハイ…
見覚えの無い公園で『幼い姿の私と冥夜とタケル様』が砂場で遊んでた記憶と…
今ぐらいのタケル様と同じように成長した私が仲の良い関係になりながら、冥夜や御親友達に囲まれてる記憶が流れて来ました…
その際、私が『タケル様』と呼ぶシーンが流れてきて、あの時はつい呟いたのです…」

「記憶の流出…もしかして…」

悠陽殿下の説明を聞き、ある仮説が浮かぶ

(もしかすると…元の世界の悠陽の記憶がループの際流出して、この世界の悠陽に記憶が流れて来たのか…?)

「白銀、何かわかったのか?」

考え込むタケルに真耶中尉が訪ねてくる
「いや、恐らくは『元の世界の御剣悠陽の記憶』が流出して、この世界の殿下に流れて来たんでしょう
原因は…恐らくはオレのループによる事だと思います」


「そうか…
では、殿下のお身体には影響は…?」

「無いでしょう
ただ、莫大な量の記憶が流れて来たのなら、強い頭痛は来ますが、今の内容だけの記憶量ならば、頭痛も無いでしょう
有ってもチクッとする程度です」
「そうか…それを聞いて安心した」
タケルの説明を聞いて一安心する真耶中尉

「なる程…
しかし、何故今でも『タケル様』とお呼びになるのでしょうか、殿下?」
ふと、疑問に思った事を質問する斉御司大佐
するとーーー
「…何故だが、『タケル様』と呼びたい気持ちになりましたので、つい…」

「「「えっ?」」」

「大丈夫です、他の者が居る時は『白銀』と呼びますのでご安心を
それ以外の時は『タケル様』とお呼びますので…」

「「「ええっ!?」」」

悠陽殿下の反応に思わずハモる三人

「で、では斉御司大佐
な、何かご質問が有りませんか?」

「ウ、ウム……では…」
なんとかこのビミョーな空気から出ようと話題を変えるタケル
斉御司大佐も戸惑いながら、タケルに質問をする

「白銀武よ、貴殿は『未来』から来たと聞いたが…
済まないが、何か『納得出来る証明』を提示してくれないかな…?」
「…と、言いますと…?」

「君が『別の世界』から来たという話は信じよう…
現に我等の目の前でいきなり光と共に現れたのだ…その事に関しては信じよう
だが、『未来から来た』というならば、我々が信ずるに値する事を教えて欲しいのだ…」

「信じる事に値する内容か…」


うーん……と腕を組ながら考えるタケル
すると…ふとある事を思い出す

「そういえば…
『光州作戦』って聞いた事ありますか…?」

「聞いた事も何も、今現在『光州作戦』は発動してるぞ?」

「ええっ!?」

斉御司大佐の一言で驚愕するタケル

「大変だっ!!
今すぐ手を打たないと大変な事に…!!」

「どういう事だね…!?」
「実は、この光州作戦は、後に『光州作戦の悲劇』と呼ばれる事になり、結果…『彩峰中将』が死罪となり、後に起きる帝都での『12・5事件』のクーデター事件の引き金にもなるんです!!」

「な…なんだとっ!!」
タケルの語る『歴史』を聞き驚愕する三人



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第二話②
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/09/13 19:46
「し、白銀…詳しい話をしてくれないかね…?」
「ハッ、何時起きたかは俺はわかりませんが、光州作戦の撤退支援として帝国軍も参加してましたが
脱出を拒む現地住民の避難救助を優先する大東亜連合軍に彩峰中将が協力した為
その隙を突かれた国連軍司令部は陥落し、指揮系統に大混乱が起き、国連軍は甚大な被害を負い、日本政府に猛抗議し、彩峰中将の国際軍事法廷への引き渡しを要求しました
そして内閣総理大臣の『榊是親』殿は『国連に従えば軍部の反発』と『逆らえば、オルタネイティヴ4が失速する』という辛い選択肢に悩み苦しみました…
結果、榊首相は苦汁の選択として、最前線を預かる国家の政情安定を人質にし、国内法による厳重な処罰という案で国連を納得させました」


「なんと…」
「彩峰中将が…そのような事に…」
タケルの衝撃的な『歴史』に驚愕するしかなかった悠陽殿下達

「…これは後に聞いた話ですが…
榊首相が彩峰中将の下に一人で訪ね、日本の未来を説き、土下座をしたそうです
その姿を見て彩峰中将が人身御供を快諾し、後に死罪となりました…」

「榊首相が…それ程苦汁の選択を…」

榊首相と彩峰中将の二人を思ってか、つらそうな表情になってしまう悠陽殿下

「…そして、それが引き金となり、2001年・12月5日にクーデター事件が起きてしまいます…
首謀者達の中には彩峰中将を慕う者達が居て、彩峰中将の死後以来、日本政府に不満を持ち、結果、クーデターは起きて…榊首相を始めとした閣僚達は…『暗殺』されました…」

「「!!!!!」」
「榊…首相が…暗殺…?」
再び衝撃的な歴史を知り、言葉を失う斉御司大佐と真耶中尉
唯一悠陽殿下だけが、声を震わせながら呟く

「そして、このクーデター事件には、裏で『米軍』が動いてるようで、事実クーデター事件時にクーデター側に居た米軍のスパイが帝都に攻撃し、帝都での戦闘が開始しました
その際、殿下は帝都での戦闘を避ける為に帝都城から逃げ、自らを『囮』となりました
これは殿下自らの案で、城内省にも知らせず、殿下と帝国情報省・外務二課の鎧衣左近課長と侍従長一人の三人のみで帝都を離れ、箱根の離城に繋がる秘密の地下鉄道で到着した際
当時訓練兵だった俺達『第207衛士訓練小隊B分隊』が配置され、休憩の際に外に出てたオレが殿下達を発見し、鎧衣課長の提案もあって、オレが搭乗していた第三世代機の『97式戦術歩行高等練習機・吹雪』に複座して貰い、『国連太平洋方面第11軍・横浜基地』へと退却戦が始まりました…」

「なっ…訓練兵だけで殿下の護衛だと…!?」

『殿下の護衛が訓練兵』という事に戸惑う斉御司大佐にタケルが…

「それはちょっと違います、斉御司大佐
俺達訓練兵以外にも、教官一人と、斯衛軍であり、冥夜の護衛である『第19独立小隊』の月詠真那中尉とその部下の巴・戎・神代少尉達も殿下の護衛に入ってます」
「…そうか…真那が居たか…なら安心だ」
従姉妹である真那中尉が悠陽殿下の護衛に廻ったと聞き、安心する真耶中尉
「退却をする際、途中で米軍の『第66戦術機甲大隊』が援軍に来て、我々の援護をしてくれました
彼等は純粋に祖国の命に従い、我々を助けてくれましたが…中に彼等も知らなかったスパイが居た為、戦況は悪化しました…」
「悪化…とは…どの様な…?」
不安をしながらタケルに問うと…

「首謀者である帝国本土防衛軍・帝都守備連隊の『沙霧尚哉大尉』に説得を試みた冥夜は殿下に変装し、沙霧大尉との対話をなさいました…
しかし、あと一歩という所で米軍に潜んでいたスパイが攻撃、結果説得は失敗し、再び退却戦が始まりました」

「なんという事だ…」

「結果、米軍は壊滅的な被害を受け、クーデター軍は撃退し、首謀者である沙霧大尉は月詠真那中尉により、殉職しました…
他のクーデター軍も帝国軍により鎮圧され、事件は終わりました…」

余りの悲劇の連鎖に言葉が出て来ない悠陽殿下達…

「ですから…追加の軍でも命令でも何でも良いです…
彩峰中将に現地民族を救助に向かわなければ…光州作戦の悲劇も…クーデター事件も防げるかもしれないんです…!!」


強い気持ちで殿下達に進言するタケル
その強い気持ちが真実と知り、驚きながらもタケルを注目する斉御司大佐
「この悲劇を回避しないと…オレの大切な仲間が…彩峰と委員長が父親の死や大切な人の死で再び悲しむ姿をオレは見たくないんですっ!!」

「ーーーーーッ!!」

先の話で聞いていた訓練部隊のメンバーに彩峰慧と榊千鶴の名前を思い出す悠陽殿下達


「どうか…どうか…お願いしますっ!!」


悠陽殿下達の前で深々と土下座をするタケル
その姿を見て『嘘』と思う者は居なかった…

『…気持ちはわからんでも無いけど、土下座は止しなさい、白銀
殿下達だって困ってるでしょう?』
「えっ……?」
突然の声に全員が注目する
カツカツと足音をたてながら姿を現す


『その件に関しては私が先手を打ったから安心なさい、白銀
…あと、遅ればせながら失礼致します殿下
国連軍所属・『香月夕呼』…只今参りました』


突然の香月夕呼博士の訪問に驚きを隠せないでいるタケル

「せっ、先生!?
何故此処に……っていうか…先生も『記憶』が有るんですかっ!?」

アワアワと慌てるタケル
知っている『香月夕呼』とは少し若返った姿での再会とタケルの存在を知っていた事に困惑していた

「……アンタも相変わらずね~…
ちゃんと順番に説明するから落ち着きなさい」

「ハイ…」

慌てるタケルを落ち着かせて、順番に説明する香月博士


「私が此処に居る理由は、殿下にお呼びがかかったからよ
何の用なのかはわからなかったけど…アンタを見て納得したわ」

相変わらずの鋭い洞察力で全てを悟る香月博士
『流石は先生だ…』と感心するしかないタケル

「次にアンタの事を何故知っていたか…
そんなの簡単よ…私は『二度目の世界』の香月夕呼だもの
私もアンタと同じように『ループ』したんだからね…
まあ…私の場合は『今回限り』だけどね…」

「ハァアァァァァァッ!!!???」

衝撃的な事実に驚きを隠せないでいるタケル
思わず開いた口を閉じる事すら忘れる程の衝撃だった

「アンタ、『転移装置』を覚えてる?
アンタが元の世界に一時的に帰還して、『並列処理装置の根本理論』の数式を『元の世界の私』から貰いに行ったあの装置よ」

「ハイ…覚えてます」
「なら話を進めるわよ
アナタが『二度目の世界』から立ち去ってから10年後…
ハイヴも残り数が10まで減り、人類に希望が広がってた頃
一度は離れたけど、殿下達の計らいもあって再び横浜基地に着任した私は様々な新開発などをしてたの
そんな時ーーー
2012年・4月28日に横浜基地にテロ事件が合ったの
そして、丁度転移装置のある部屋に居た私は、突然の転移装置の『暴走』に巻き込まれたのよ」

意外な事実を知り、驚きながらも香月博士に質問するタケル

「暴走…ですか…?」

「そっ、暴走
テロリストが、どうやら基地の発電所を爆破したみたいでね、その際に暴走した電力が転移装置に流れて暴走し、『高エネルギー体』が私を襲ったのよ…
流石に死んだと思ったわよ~…
けど、目覚めて見れば、『14歳の頃』にタイムスリップしてた事にしばらくは呆然としてたわ
アンタがループした時の気持ち…今ならわかるわ…」

流石の香月博士も複雑な気持ちになっていた…

「なんでまた転移装置を処分しなかったんですか?」


「…なんとなくだけどね…
アンタにまた『逢えそうな気』がしたのよ…
そんな気持ちもあって10年間残していたら暴走して…
しまいにはループしたこの世界で…今アンタと再会したのよ」

「…ホンット先生とは『腐れ縁』ですね…」

「まったくよ」

皮肉を言うタケルに賛同する香月博士
しかし…ここにひとつの『縁』に再会して喜び合う


「あ…あの……
話についていけないのですが…」

「あっ」

「スミマセン殿下
まあ『白銀と同じ存在』とお考え下さい」

「は、ハァ…」

余りの突然の話について来れなかった悠陽殿下達…


「ーーーーーさて、話を戻しますがーー
香月博士、先程の『手を打った』とはどういう事か説明して貰えませんでしょうか?」
「ハイ、実は光州作戦開始時に私の特殊任務部隊『A-01連隊』に『現地住民の避難救助と護衛』を命じておきました
もし、国連軍司令部の防衛する部隊が救助活動に参加した場合は、
代わりにA-01が国連軍司令部を防衛するようにと言ってありますから、万が一に彩峰中将が救助活動に向かってもカバー出来るように先手を打っておきました」

「さ、流石は先生!!」

香月博士の先手を聞いて安心するタケル

「そうですか…油断は出来ませんが、手を打った事に感謝致しますわ、香月博士」
「いえ、恐縮です殿下」
「彩峰中将は私にとっても『恩師』となる方…
あのような方を失う事は、日本にとっても大きな損失となるでしょう…」
「後は…朗報を待つのみです…」

香月博士の行動に感謝する悠陽殿下
そして謙遜しながら後はA-01連隊の活躍を信じるしかないと無事の帰還を心の中で祈る香月博士

「さて白銀…今までの貴殿の話の真意だが…
私は信ずるモノと判断する事にした」


「あ、ありがとうございますっ!!」


斉御司大佐の決断の結果に感謝するタケル

「まず話を信じる決め手だが…
貴殿は我々しか知らない情報を知っていた事が決め手となった」

「決め手…?」

「ウム、クーデター事件の件の話だが…
貴殿は将軍家及び五摂家やほんの一部の上位の者しか知らない『地下鉄道』の事を知っていた
しかも箱根までのルートまで知っているとなると、疑いようの無い事だ
…次に鎧衣課長の事だ…
彼は情報省というスパイ活動が主な活動故に、その存在を知っているのは一部の人間のみだ
我々や香月博士のような地位の高い者ならば兎も角、貴殿が鎧衣課長の存在を知っていた事も決め手のひとつだ
そして…最後にーー御剣冥夜殿の事ーー
貴殿は御剣冥夜殿がどのような立場の方か…知っておるな?」

「ハイ…冥夜は…殿下の『双子の妹』です…」

「「!!!!」」

機密である『双子の妹』を知っていたタケルに驚く悠陽殿下と真耶中尉

「殿下の『紫』の武御雷を冥夜の為に用意してくれた事…
悠陽殿下と冥夜の容姿と性格があまりにも似ている事…
そして、その推測の結果を殿下本人に問いただした時にーー冥夜が『双子の妹』と告白してくれました…」

「そう…でしたか…」

タケルの話を聞き理解する悠陽殿下達


「その事もあって、私は白銀武が『未来から来た事』を信じる事にする
歴史云々の話はこれから証明される事だ…その事に関しては、その時に証明された場合に信用しよう」


「それだけでも…有り難いです!!」
斉御司大佐からある程度信用された事に感謝するタケル

「では…次にタケル様の身分ですが…
私としては、帝国軍が斯衛軍に属して貰いたいのですが…
兼嗣殿と香月博士の意見はどうでしょうか…?」
次の話題として、『タケルの身分』の事について話し合う事になった
「私は別に帝国軍でも斯衛軍でも国連軍でも構いません
ただ、オルタネイティヴ4が本格的に活動する際には白銀を国連軍に『一時的に配属』してくれると助かります
此方にとっても、白銀はオルタネイティヴ4の『重要人物』でありますからね…彼が居ないと先に進みません
ですが…そうですね…
白銀の更なるレベルアップを考えるのならば、帝都で『最強』の二文字を持っている『紅蓮大将』と『神野大将』に鍛え上げて貰うのも良いかと…」

「ほう…紅蓮大将と神野大将とは…香月博士もなかなかのスパルタだ」

香月博士の提案を聞いて関心する斉御司大佐
不安感タップリのタケルはコッソリと真耶中尉に質問する


(あの…月詠中尉…
紅蓮大将と神野大将とはどんな方で…?)
(私や真那を始め、殿下や冥夜様の『師』である方である
そして、この日本を守る最古参の二人でな…
前将軍の『煌武院雷電』様と三人で『最強』を欲しいままにした生きた武人だ…)
(…月詠中尉はどなたか勝った事ありますか…?)

(有るわけ無かろう!!
あの武人一人だけでも、精鋭を集めた『一個師団』をぶつけても全滅は必至だっ!!)

(んがっ!?)

真耶中尉からの死刑宣告に近い言葉を聞いて、『あっ…オレ…もう此処で逝くのかな…?』と遠い目になるタケル

そんなタケルの気持ちを無視して話は進む

「階級は以前は少尉でしたが、短い期間ですが小隊長も経験してますし
最終的なポジションも『突撃前衛長』ストームバンカード・ワンでした
ですから今回は『中尉』からでも大丈夫かと…」
「ほう…突撃前衛長とは…なかなかの腕前と見た」

その時、斉御司大佐はある案を浮かぶ

「スミマセンが殿下
白銀をシミュレーター訓練で衛士としての腕前を見たいのですが…宜しいですか?」
「名案ですわ、私もタケル様の腕前を見てみたいですわ」
すっかりタケルの機動特性を見せる事になってしまった
「真耶さん、スミマセンが…タケル様の相手になってくれないでしょうか…?」

「ハッ、承知致しました」

「ええっ!?」
一方的に話が進められて、相変わらず選択の権利が無いタケル…
「では早速行きましょう!!」

ズルズルとタケルを引きずりながら、シミュレーター訓練に向かうのだった…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第三話①
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/09/19 19:09
「ハァ…なんでまたこんな事になるのかな…」


溜め息を吐きながら、更衣室で斯衛軍の強化装備(黒)を装備するタケル


「…まあ、先生から色々話も聞けたし…良しとするか…」


香月博士から色々な話を教えて貰った

まずは『鑑純夏』の処遇
現在鑑純夏を監視をしながら保護していた香月博士
この世界の白銀武もそうだったが、今日白銀武の姿が消えたと聞いた時は焦ったらしいが、先程『ループした白銀武』に再会して納得したらしい(どうやら『この世界の白銀武』と『ループした白銀武』が同化したのが原因らしい)

鑑純夏については、ループする以前から『人間として生きた状態で00ユニット』として起動出来るかを研究してたらしい
ループしてからも研究を続け、合計20年以上の歳月の結果、『可能』になった
現在、強化装備にも似た装備を00ユニットの適合者が着用する事で『00ユニット』として起動出来るように着々と進んでるらしい
それを教えてくれた時に香月博士が--
『鑑純夏を幸せにしたいんでしょ?
アンタには『二度目の世界』でオルタネイティヴ4の完遂やオリジナルハイヴを攻略してもらったからね…その『ご褒美』よ』
香月博士なりの『優しさ』
それを受けたタケルは香月博士の手を握り、涙を流しながら感謝した

「ホンット…先生には適わないな…」
思い出して、思わず再び泣きそうになったが、堪えるタケル
心の底から香月博士に感謝していた


次に光州作戦に参加したA-01連隊の事

現在、連隊の数はやはり減っている状態だが、少なくとも『二個中隊』は健在してるらしい

まずは、タケルも知っている『ヴァルキリーズ』
現在は8名と少ないが、伊隅大尉を隊長として健在らしい
次に『オーディン隊』
メンバーこそ4名少ないが、実は連隊の中で一番強い中隊だったらしいが、厳しい特殊任務や戦闘で減り続け、結果『二度目の世界』では『明星作戦』のG弾で全員死亡したらしい
メンバーの補強も考えたが、単に人数を揃えるだけでは駄目なため、徐々に減っていく状態だったらしい
だがーー95年、『霞』を貰う際、他の『第三計画』のメンバーを追加したらしい
香月博士の言う事によると---

『アンタ、『紅の姉妹』スカーレット・ツインって聞いた事ある?
実はね、『二度目の世界』で凄腕の衛士の噂が流れててね~…
実は霞と同じ『第三計画』の奴らでね…リーディングしながら邪魔な『敵』を始末する『死神』みたいな事させられてたの…
それで、過去にループした私は、霞の他にこの『紅の姉妹』スカーレット・ツインも引き抜いたのよ
…勿論あの手この手使ってね…
あっ、この子達は光州作戦には参加してないわ
今頃基地で訓練しながらお留守番してるわよ---って白銀…アンタ何震えているのよ?』

『あの手この手』と言っていた時の香月博士の表情を見て思わず恐怖して、部屋の隅っこでガクガクブルブルと震えていたタケル
余りにも素敵な『笑顔』で黒いオーラを放っていたのだ…
タケルじゃなくても、泣きながら逃げる事は間違いない

「…あん時の先生の笑顔…怖がったなぁ…」

ブルブルと震えながら更衣室から出るタケル


「さて…と…頑張りますか…」


カツカツと足音を響かせながらシミュレーターデッキの中に入り、シミュレーター訓練の準備をする



「先生、準備完了です
何時でも良いですよ」

『そう、わかったわ
月詠中尉も準備完了してるし…始めるわよ』


「ハイ!!」
『了解』

タケルと真耶中尉の返答を聞いてからシミュレーター訓練を開始する
「…ステージは…市街地か…
機体は…斯衛軍だけあって瑞鶴か…」


辺りにはビルなどの建物が沢山ある市街地に設定されたステージ
機体も乗った事の無い瑞鶴での搭乗に少しぎこちなさを感じるタケル
(仕方ないか…吹雪や不知火に慣れすぎてるせいもあるな…)

この辺は『慣れるしかない』と気持ちを切り替えるタケル

そして---
離れた場所の真耶中尉は---
「天才衛士…か…
その実力…見せて貰うぞ…白銀!!」
鋭い眼をしながら、冷静にタケルの動きを待つ真耶中尉
すると----
「むっ…来たな…」

前方にタケルの機体を発見
長刀を装備し、待ち構える真耶中尉
「奇妙な動きだな…連続噴射跳躍だと…!?」

姿を現したタケルは、目の前のビルを連続噴射跳躍でビルの屋上に登り、屋上を左右に移動するように噴射跳躍を繰り返す

「何を誘ってる…?」
まるで『撃って来い』と挑発するように噴射跳躍を繰り返しながら接近するタケル

「…良いだろう…
お望み通りに蜂の巣にしてやる」


武器を長刀から突撃砲に変え、挑発するタケルを狙撃する

「来たっ!!」

『待ってました』とばかりに、屋上からの移動を止めて、地上に降りて匍匐飛行で接近するタケル

「フン、それがどうしたっ!!」

地上に降りたタケルを狙撃する真耶中尉
しかし----この時、真耶中尉を始めとして、モニターで眺めてる斉御司大佐と悠陽殿下は驚愕する!!

『『なっ!!?』』

「なん…だと…!?」

狙撃した弾丸を横へ回避し、ビルを蹴り上げて、『倒立反転』しながら突撃砲で反撃するタケル
そのあと、着地と同時にしゃがみながら左右に水平噴射跳躍で移動しながら接近して来る!!

「クッ…なんだこの動きは…!?」

タケルの突撃砲の弾を回避しながら長刀に再び切り替える真耶中尉
タケルの機動に戸惑いながらも斬り込む!!

「喰らうかっ!!」
再び噴射跳躍で攻撃を回避するタケル
再び倒立反転しながら背後から攻撃をする時に
「させるかっ!!」

倒立反撃している最中に斬撃を入れる真耶中尉
普通ならば、これで『勝負あり』だが---

「おっと危ない」
「なーーーーーっ!?」

反転途中からの回避
噴射跳躍で方向転換し、斬撃した長刀の峰部分に手を当てて回避する

回避した後突撃砲で狙撃し、真耶中尉との間合いを少し離し、タケルも長刀に切り替えると同時に再び噴射跳躍でビルを利用した三角飛びをして、真耶中尉に斬り込む!!

「グゥ…!?
なんだ…この動きは…!?」

全てがデタラメ---
自分が見た事も体験した事も無い事を、白銀武は平然としてやっている
本当に同じ機体かと思う程、動きが違う
正に『翼』を得た状態になり、タケルの瑞鶴はアクロバットを繰り返しながら、真耶中尉の瑞鶴を追い込む


「----惑わされるな、真耶」

しかし真耶中尉も黙ってはいない
静かに動きを見ながら…ただ、ジッと長刀を構える…
確かに凄い機動だ…それは認めよう。
だが、攻撃する術は同じ
狙撃さえ、気をつければ、接近戦は我に勝機有り
我が間合いに飛び込めば、一閃の下に斬り裂くのみ


「やべっ…」

タケルも真耶中尉の行動に気づき、警戒する

今、真耶中尉の居る場所は、交差点のかなり広い場所で周りに目立った障害物は無い
それは、タケルの『変態機動(後に夕呼が命名)』が制限され、尚且つ狙撃に関しても、回避し易い場所
皮肉にも、『狙われ易い』広場が『回避し易い』場所に姿を変える
本来ならば、建物の影から狙撃という手もあったが、今回は『XM3の有効性』も見せる意味もある為、却下
大体にして、タケルの性格上その戦闘方法は無い

仕留めるならば、接近戦がアクロバットをしながらの狙撃かのどちらか
しかし、タケルの取った手段は----
「ウオォォォッ!!」

「ほう…接近戦か…良い覚悟だ…」


長刀を装備しながらの接近戦を選んだタケル
真耶中尉もタケルの攻撃に備えて『居合い』の構えをしながら集中する



「ハァァァッ!!」
「フンッ!!」


タケルが攻撃をする直前---
真耶中尉の一閃がタケルの瑞鶴の胴を斬り裂かんと放たれていた

「やべぇっ!!」
咄嗟に回避行動に切り替えるタケル
真耶中尉の一閃の『下』を潜り抜けるように機体を倒して回避するが、その際、タケルの長刀が弾かれて、飛ばされる
「負けるかよっ!!」
「何っ!?」
タケルは長刀を弾かれると同時に、収納していた短刀を取り出して、斬撃を放っていた右腕を斬り込む!!


「チィッ!!」
「うわっ!?」
しかし、右腕を切り落とされる寸前で、強引に蹴りを放ち、タケルを弾いた長刀の方へと蹴り飛ばす



「やるな…今のは危なかったぞ…」

「いたた…あ~あ…背中の担架が壊れたか…」


先程の蹴りでタケル機体の担架が破壊される
それと同時に突撃砲も一緒に失う
タケルに残された武器は、先程弾かれた長刀が運良くそばに有った為回収
短刀は残り一本
先程の短刀は蹴られた際に落としてしまった
(さて…どうする…)

攻撃する手段は接近戦のみしか許されてない



(接近戦か……………待てよ?)
この時、タケルにある『奇策』が浮かんできた

「よぉし…この手で行こうか…」
フッフッフッ…と少し黒くなるタケル
不気味な笑みを浮かべてレバーを倒し、突撃する


「玉砕覚悟か…?」


最早勝負は見えたと判断する真耶中尉は再び居合いの構えをとる



「ウオォォォッ!!」

再び長刀を構えながら突撃するタケル
「…喰らえ!!」

そして、再び放たれる居合いの一閃---!!




「ターーックル!!!」
「はっ…?
うわあぁぁぁっ!!?」
突然の奇襲攻撃
真耶中尉の居合いの一閃を長刀でガードし、その隙を突いて、柔道で言う『双手刈り』をして真耶機を背中から転倒させる!!

「フッフッフッ…長刀を離しましたね…?」

「しっ、しまった!?」

「転倒の際に『受け身』をとりますからね~♪
もう…怖い居合い斬りは出来ませんよ…?」

ズルズルと引きずりながら後退して長刀から離れるタケル
しかも、オープンチャンネルで通信しながら恐怖心を煽る
そして---
「チィィタァァァ……ボム!!!」
「キャアァァァッ!!!!」

何を思ったか、真耶機にプロレス技の『パワーボム』を炸裂させる
その際、真耶機の担架と頭部を破損させる

タケルの案---
それは、『元の世界』でやりこんでいたゲーム…
『銅拳3』を思い出した事
そして、使い手のひとつである『チーターマスクマン』を思い出し、プロレス技で奇襲攻撃しようと考えたのだ

この世界の者ならば…まさか戦術機でプロレス技をしようと思う奴は…彩峰慧以外には居ないだろう…


正に『常識』を打ち破った行動に真耶中尉は虚を突かれ、奇襲攻撃は成功する!!



「さぁ~て…トドメだっ!!」

「やめろ、貴様…うわあぁぁぁっ!!!」


真耶機の背中に回り込んで、腰を抱えるように持ち----
「フィニッシュッ!!!」
「ガハッ!!!」


見事な『バックドロップ』を決めるタケル
頭部は愚か、胸部もかなり潰れる判定を貰い戦闘不能になる真耶機

「…えーと…?」

「………うーん…これは…」

「アッハッハッハッハッ♪
さ…流石は白銀…ね…」
あまりの出来事に困惑する悠陽殿下
なんともビミョーな決着で表現が出来ないで困っている斉御司大佐
お腹を抱えながら爆笑する香月博士

後に真耶中尉が『貴様………私に無様な敗北を…許せんっ!!』とブチ切られ、お仕置きにタケルをマウンドポジションにとり、愛のベア攻撃にフルボッコされるのだった…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第三話②
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/08/14 17:08
「真耶さん…其処までにしないと…『白銀』が本当に死んでしまいますよ…?」

「ハァ…ハァ…
ハッ…殿下が望むのであれば…」

流石にこれ以上はマズイと判断した悠陽殿下は真耶中尉を止める
周りに人がいた為『タケル様』ではなく『白銀』と呼び変える
タケルはというと…屍と化していた…
「殿下や斉御司様の目の前で…無様な敗北を見せてしまった…」
「けど、あれは月詠中尉が『悪い』わよ?」
「何…?」
落ち込んでいた真耶中尉に追い討ちをかけるように香月博士が語ってくる
「先程の白銀の奇襲攻撃だけど…あれは別に白銀は悪くはないわよ?
むしろ『油断』していた真耶中尉が悪いわ
だって、戦いはいつ何時何が起きるかはわからないわ…そしてそれは戦術機の戦闘方法も同じ事よ?」

「ぐっ…」

香月博士の言葉に反論出来ない真耶中尉
香月博士の言っている事がわかるからだ

戦術機の戦闘方法が『銃火器類で撃つか』『刀剣類で斬るか』の2つだけではない
場合によっては殴ったり、先程の真耶中尉のように蹴ったりもする
戦術機は人間が出来る行動は全て出来、人間が出来ない事を戦術機は出来るのだ…勿論『投げ技』や『関節技』だって出来る
ただ、『やらないだけ』だ
戦術機は基本、BETAとの戦闘を基本とする
時には人間同士の戦いで、戦術機とも戦う事もある
だが、『素手による打撃』や『投げ技』や『関節技』は確かにBETAには有効ではない
しかし、戦術機にはどうだろう?

人間の兵士だって格闘訓練はする
幾ら銃火器での戦闘が最も有効とはいえ、弾数には制限がある
接近戦に持ち込めば、銃火器も場合によっては邪魔になる事もある
接近戦して投げ技で動きを鈍らせたりする事も出来る
締め技で窒息死や首の骨を折る事も出来る
関節技に持ち込んで折れば、戦力を削ぐ事も出来るし、場合によっては『殺害』しないで『捕獲』する事も出来るのだ
…そして、それは戦術機にも言える事
投げ技で地面に叩き落とす事が出来れば、機体に大きな損傷を与える事も出来る
関節技で手足を折れば戦力を削ぐ事も中で操縦する衛士を捕獲する事も出来るのだ
ただ、実戦でする事は無いだけ
相手は大軍で攻めて来るから実用的では無いからた
「…………」
「今回のアナタの敗因は勝手な思い込みによる『油断』よ
そして、白銀の奇襲攻撃は成功し、アナタを撃破する事に繋がったわ
これが本当の『殺し合い』ならば『捕獲』されてるか………死んでるわよ?」

「クッ…!!」
流石にグウの音も言えない程香月博士に正論を言われてKOされる真耶中尉
『恥ずかしい気持ちは分からんでもないけどね~♪』と呟きながらイイ感じに笑顔になる香月博士である…うん、あくまだ

「月詠中尉…反論はあるかな?」

「…ありません
つい…恥ずかしい場面を殿下と斉御司様に見せて、頭に血が上ってました…」
斉御司大佐の問いに素直に答える真耶中尉…
香月博士に諭されて、血の気がかなり下がったが……既に遅かった
「これは『罰』を与えなければいけませんね
なんせ勝利者の白銀に八つ当たりでボコボコにしてるんだから~♪」
イイ感じに笑顔で『でびるふぇいす』になる香月博士
弱みをヅケヅケと突かれて真耶中尉のライフポイントがゴリゴリと削られていく

そしてーーーー香月博士が下した『罰』はーーー

「月詠真耶中尉、罰として白銀の住居場所を『アナタの家』にしてもらうわ
期間は2001年頃に白銀を国連軍に転属するまでよ?
それまで白銀と『同棲』して貰うわよ~♪」

あくまの宣告を受けてパタリと倒れる真耶中尉
「そ…そんな事…受け入れられるか…」

「香月博士…それは幾ら何でも…」

流石にマズイと感じた悠陽殿下だがーーーーー

「殿下…ちょっとお耳を…」

「ハイ?」

ゴニョゴニョ…と殿下の耳元で呟く香月博士…
次第に悠陽殿下の表情が明るくなり、最終的に笑顔になるほどだ
「真耶さん」

「ハイ…」
「香月博士の提案した罰…私も賛同致しますわ♪」
『バタリ』
「つ、月詠中尉っ!?」
ライフポイントが0になり、バタリと気を失い倒れる真耶中尉…
そんな倒れた真耶中尉を心配してか、心配しながら抱える斉御司大佐

ーーーーちなみに、悠陽殿下が香月博士から聞いた話はーーーー

『殿下…私の目から見ても白銀は『ウブ』な奴でどうしようも無い程の『鈍感』です…
このままでは、殿下の好意も気付く事も無く、尚且つ殿下のアタックからも逃げてしまい無念する事になります…
それを避ける為に月詠中尉と『同棲』させる事で『乙女心』や『好意』に気付き易くなるように『荒治療』をする必要がありますわ…
あとは…殿下が『一夫多妻制』でも法律を改正すれば、月詠中尉とも衝突する事もありませんし…
上手くいけば、妹君の御剣冥夜殿との『姉妹としての生活』も可能になるかも知れません』

ーーーそのあくまの囁きに悠陽殿下は陥落したのであった
(フフフ…恋愛原子核か……面白そうだから、まりもにも参加してもらおうかしら♪)

以前聞いた『恋愛原子核』という言葉を思い出す香月博士…
どうやら、タケルをハーレムにしたいらしい……

「……さて、斉御司大佐、先程の白銀の機動特性はどうでしたか?」

「う、うむ……確かに驚くべき機動特性だ…
あのような機動…思いつく事すらしなかった…」
「そうですか、なによりです
…ところで、もし…あの機動が誰にでも出来るようになったら……どうします?」

「それは戦力も生存率も…………………まさか…」
この時、香月博士の『企み』に気付く斉御司大佐
「そうですわ、斉御司大佐
あれ以上の機動を誰にでも可能にするのがーーーー『XM3』ですわ
『奇跡のOS』とまで呼ばれ、世界中の衛士の死亡率を半分にまで減らし、幾多のハイヴを攻略に貢献した新OS…それがXM3ですわ」
「ーーーーーッ!!!」

話に聞いていたXM3が予想以上の効果になる事を知り、ゴクリと息を呑む斉御司大佐
それが可能ならばーーー
日本の…いや世界中の衛士達の命を救う事になる

そして、日本を侵略せんとするBETAや米軍からも守る事も大幅に可能になったのだ

「殿下…そして斉御司大佐…
帝国軍…そして極東国連軍による共同開発を提案しますわ
それはXM3に限らず、様々な部門に関しての共同開発を意味します」
「「!!!!」」
香月博士の言葉に衝撃が走る悠陽殿下と斉御司大佐

「国連軍の開発したデータは問題の無いモノであれば、そちらに提出します
そして、それらの開発データを見て『純国産製』を飛躍させるのも良し
ですが、代わりにそちらの開発したデータを問題の無いモノで宜しいので提出してください
場合によっては、それらを改良したモノなどや要求して来たモノを製作し、そちらに渡す事もありますのでご了承下さい」

「…………」
腕を組み考え込む斉御司大佐…
確かに美味しい話だ
勿論向こうも『何か』を狙っての事だろうが、それにしても、此方側にすれば良い話になる

ーー今問題になっている『不知火の改良』の問題についても、恐らくは大幅に改善する可能があるだろう
国連軍から寄越してくる開発データを元にして純国産製の底上げに貢献すれば、飛躍的に上がる可能もあるのだ
そうすれば『純国産製の戦術機』も可能になるし、場合によっては頭の固い連中を説得させる事も可能なのかも知れない
…いや、先程の機動特性を見て作られるXM3を創り、見せつければ本当に説得させる事が出来るかもしれない
それ程インパクトのあるモノなのだ…
「…香月博士…貴殿の狙いは何なのだ…?」
香月博士にソレを問いただすとーーーーー
「政治的な事を言うならば…米国の計画を木っ端微塵に粉砕する事
そしてーー個人的の意見を言うならーーーーー」
一旦目を閉じて言葉を止める
そして再び目を開くと同時にーーーー純粋な笑顔で答える
「『ガキ臭い英雄さん』の望みを叶える為に後押しする為ですわ」
クサいセリフを口にしながらも、思わず笑ってしまう香月博士
そして心の中で呟く
(私もーーーーー誰かさんのおかげで甘くなったわね)
そんな事を考えながら少し苦笑してしまう香月博士
(まりもーーー
今度は死なせないわよーーー)
二度と友を死なせない為に心に誓う
そしてーーーーー

「斉御司殿…」
「…仰せのままに…」
全ての決断を悠陽殿下に託す斉御司大佐
斉御司大佐の考えも悠陽殿下と同じようだ
「…香月博士…そなたの提案…お受け致しますわ…」
「ハッ、有り難き幸せで御座います…」


こうして、この日帝国軍と極東国連軍との共同開発計画が始まったのである…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第四話
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/09/24 19:23
1998年1月12日
京都・帝都ーーーー

「着いたぞ、白銀」
「ハア…予想はしてだけど…すげぇ」


京都・帝都に到着したタケルと真耶
仙台・第二帝都城で職務をしていた悠陽殿下の護衛をしながら京都・帝都城に帰ってきた
その際、護衛の任を解かれ、今日は休日となった二人

そして今、到着した場所は『月詠邸』だった

「これでもか……ってぐらい…無駄にデカいな…」

「失礼な
それに我が月詠家は五摂家に近い程位の高い名家なのだ
その存在を示す意味もあって、このように大きいのだ」

「そっかぁ~…けど、一般人のオレには理解出来ないかも…」


「仕方ない事だ
貴様と頭の固い連中の考えでは、このように違うのだ」


「はうあうあ~…
オレ…ここの生活に慣れる事出来るのかな…」


これからここが『住居』となる為、少し不安気味のタケル
緊張しながら月詠邸の中に入る



「ーーーーお帰りなさいませ、真耶様」


待ち構えていたのは、真耶中尉の帰りを待っていた若い侍従
玄関で我が主に頭を下げて礼をし、真耶中尉の荷物を持つ
「白銀、この者が我が家の侍従の『月島やちる』だ
この家のわからない事があったら、聞くと良い」

「あっ、ハイ
白銀武です、これから御世話になります
オレの事は『白銀』でも『タケル』でも呼び捨てで結構ですよ」

「わかりました、タケルさん
呼び捨ては…ちょっと苦手なので『さん付け』しますね」


お互いに軽い自己紹介をするタケルとやちる


「やちる、白銀の部屋の用意は出来たか?」

「ハイ、ご要望通りに『一番狭い部屋』をご用意致しました」


実は『住居』が決まった際、真耶に『デカくない部屋』を頼んでいたタケル
理由は簡単…
『広過ぎたら落ち着かない』だそうだ




「此方です、タケルさん」

「うわぁ…」


やちるの案内に着いて行くタケルと真耶
すると『タタミ30畳程』の広い部屋に到着する

「…ここ…広いね…」

「これでも一番『小さい部屋』ですよ?
真耶様の部屋なんて『50畳』はありますよ?」

「こ、コラやちるっ!?」

真耶の部屋の大きさを暴露するやちる
思わず慌ててしまう真耶


「ゴホン…白銀、貴様の身分が先程決まったぞ」

「ハイ」


「貴様は明日から『帝国斯衛軍第17大隊』の第1中隊に所属される事になった
階級は中尉、貴様の中隊の隊長は大隊の隊長でもある『九條椿少佐』だ
名前から聞いてわかる通り、九條様は五摂家の一人だ
21歳という若いでありながらも、少佐になった御方だ、失礼の無いようにするのだぞ」


「ハッ!!」


タケルの身分と所属が公開される
それに伴い、注意事項を説明されて、真耶に敬礼するタケル


「そうだ…先程光州作戦の報が入ってな…
現在退却戦に異常は無しだそうだ」


「ありがとうございます」

光州作戦の報告を教えてもらい、少しホッとするタケル


「さてと…これから一休みをしたら街を案内するが、何処に寄りたい?」

「まずは…服が欲しいな…」

現在着ている斯衛軍の軍服以外には、この世界に渡った時の白陵学園の制服しか無い為、衣服が欲しかったタケル


「そうだな…わかった、連れてってやる」

「ありがとうございます」

真耶に服屋に案内してもらう事に感謝する

「ヤレヤレ…私は『赤』の家系だぞ?
その私に『運転手』をさせるのは貴様ぐらいだぞ?」

「アレ、家の運転手って居ないんですか?」

「…一応居るが、既に出てる
それに…私は自分で運転したい性分でな…よほどの事で無い限り、運転手を使わん」

「成る程…」

『あはは~…』と苦笑いしながら複雑な気持ちになるタケル


それから小休止をした後に街へ買い物に向かうタケルと真耶

「ふぅ…結構買ったなぁ…」

服や下着を大量に購入したタケル
『給料入ったら返します』という事で真耶中尉の支払いになった
(うーん…カッコワリィな…今度お礼の品でも買っておくか…)

ちょっとお礼をしようと考えていたタケルだが、後に騒ぎになる事はまだ知らない

「随分と早い買い物だな…
量の割りには一時間以内とは…」

「…俺からしたら、女性が時間かけ過ぎです…
ひとつの買い物に数時間って…良くそんな長い時間かけれますね…?」


『そうか?』と返答する真耶に軽く溜め息を吐くタケル


『アラ、貴女は月詠真耶中尉?』

「えっ……貴女様はッ!?」


すると、背後から声を掛けられ振り向くと、長い黒髪をした綺麗な女性がいた


「これは『九條様』!!!
気がつかなくてスミマセンでしたっ!!」


「良いのよ、今日は休日で暫く振りのプライベートを楽しんでるのだから」


ビシッと敬礼する真耶
タケルも慌てて敬礼するが、その姿を見られてクスクス笑う九條


「君は…確か白銀武中尉ね
私は貴方の上官になる、帝国斯衛軍第17大隊所属の『九條椿少佐』よ
私の中隊に入るとは…ついて無いわね♪」

「ハッ?」


いきなり『運が無い』と言われてポカンとするタケル


「私の中隊の副隊長はね…私の妹に当たる『九條沙耶大尉』が居るの
沙耶は規律に厳しいから大変よ」


「丁度良い機会だ、白銀…その貴様の『馴れ馴れしい』性格を直して貰うと良い」


「酷っ!?」


真耶にいじくられるタケル
その姿を見て再びクスクスと笑う椿


「白銀中尉、貴方の事は聞いてるわ
特殊任務で極東国連軍と帝国軍の共同開発計画に参加してると聞いてます
そして衛士としても優秀で、あの『極東の魔女』とまで呼ばれてる香月夕呼博士に『天才衛士』と呼ばれてるみたいですね」

「め、滅相も御座いませんっ!?」


なんかベタ誉めされてる事に戸惑うタケル
心の中で『先生の仕業だな…』と悟る



「ところで……白銀中尉」


「なっ、なんでしょうか!?」


ジロジロと椿に見られて戸惑うタケル



「貴方…………………
月詠真耶中尉の……『彼氏』?
それとも『婚約者』?」

「「………………………………………………………………………ハイ?」」


椿の質問にフリーズするタケルと真耶
そして、早くに復活するタケル
「ななななななな…………なんですか、イキナリッ!?」

「えっ?
だって、月詠真耶中尉の家に『同棲』してるのでしょう?
『彼氏』とか『婚約者』って噂が我が大隊の中で広まってますよ?」

「だだだ…誰から聞きました?」

復活した真耶が椿に質問するとーーーー


「私は沙耶からだけど…
噂を流したのは誰かは知らないわ」


「…間違い無く先生だ……」


噂を流した人物を断定したタケル
タケルの頭の中では、香月博士がステキな笑みを浮かべながら親指をビシッと立ててる姿を想像する
そして、後に犯人が誰か分かったが、タケルの予想通り香月博士が噂を流した張本人だったりする
「アラ、違うの?」
「違います……ただの居候です」
「残念だなぁ…明日白銀中尉の『お祝い』の為に買い物したのに……」

「ええっ!?」

椿の一言に驚愕するタケルと真耶
『冗談よ冗談♪』と二人をからかう椿

「とりあえず私はこれから買い物の続きがあるからお邪魔するわ
明日から頑張りましょう、白銀中尉」

「ハ、ハイ…」


手を振りながら椿と別れるタケル達…


「月詠中尉…帰りませんか……?」

「……………そうだな…帰ろう」


車に乗って月詠邸に帰る二人…
家に帰ってからも、ずーん…と落ち込んでいた二人だった…


「お帰りなさい…………どうなさいましたか、お二方?」

玄関で二人の帰りを迎えるやちるだが、うなだれてるタケルと真耶の姿を見て『どうしたのかしら?』と首を横に傾げる


「違う意味で疲れた……」

「ああ……そうだな…」

先程の『婚約者事件』でどっと疲れが襲ってきた二人

「白銀…貴様が香月博士の事を言った意味が…今になって……よ~くわかったぞ…」

「そうですか……
けどまだ甘いですよ…
このまま終わらせる先生な訳が無いですから…」

「……………………………そうか…」

ガクリと力が抜ける真耶
その身をもって、香月博士の『イタズラ』の恐ろしさを理解する

「白銀…心の底から尊敬する…
このような事を毎度被害にあっても、香月博士に着いて行ける貴様を凄いと思う…」

「ハハハ…慣れましたから…ハァ…」


深い溜め息を吐くタケル
事情を知らないやちるは『何の事でしょうか…?』と益々困惑する


「月詠中尉、スミマセンが電話を貸して下さい」

「ん…良いが、何処にかけるのだ?」

「自分ちですよ
多分純夏とか親が心配してるだろうし……
先生からも許可は貰ってますから大丈夫ですよ」

「む…そうか、わかった
やちる、電話の場所まで案内してやってくれ」

「わかりました
ささっ、此方ですタケルさん」


やちるに電話機の場所まで案内して貰う


「ありがとうございます、やちるさん」


「はい、それではごゆっくり…」


電話機の場所まで案内すると、真耶の場所まで戻るやちる



「さてと…」


ポチポチと自分の家の番号を押していくタケル…




するとーーー


『…モシモシ………』

「純夏か?」

『タケルちゃん!?
今何処に居るのっ!?』

受話器を取ったのは純夏で、タケルの声を聴いた途端元気が出て来る


「今京都の帝都だ」

『え、ええぇぇぇっ!?
な…なんでまた京都に……?』

「いや、ちょっと厄介事に巻き込まれてな…
その際、斯衛軍の人に助けられたんだ」

『嘘は言ってないぞ…』と心の中で呟くタケル…
けどやはり、純夏に対して罪悪感があった


『もっ、もう大丈夫なの…?』

「大丈夫だ
けど、ちょっと機密事項の事知ってしまったから、そのまま斯衛軍に入隊する事になっちまった」
『ええぇぇぇっ!?
けどタケルちゃんまだ16歳になってないじゃん!?』

「まあな、だから訓練兵として学んでから斯衛軍に入る事になってるんだ
だから、暫くは帰れないんだ」

『そ、そんなぁ…』

帰れない事が知ると、テンションが下がる純夏


「安心しろって…
任務とかで近くへ来たら、寄るからよ」

『…うん、手紙や電話も頂戴ね…』


「わかった、だから元気だせよ、元気無い純夏なんて『純夏らしく無い』ぞ?」


『…うんっ!!』


少し元気を取り戻した純夏にホッとするタケル


「そういえば、オヤジ達は俺が居なくなった事知ってるのか?」


『うん…知ってるよ
おばさんなんて、凄い心配してたよ?』

「そうか…それで、オヤジと母さんは今何処に?」

『今は基地の『帝国陸軍白陵基地』に戻ってるよ?』


「白陵基地に?(オヤジ達…帝国軍だったのか…)」


純夏から重要な情報を得て、少し考えるタケル

「そうか…わかった
オヤジ達にはオレが元気にしてる事言ってくれな」

『うん、わかったよ
…元気でね、タケルちゃん』


「ああ、純夏もな」


受話器を置いて電話を切るタケル
そして、直ぐに電話をかけ直す


『こちら『帝国陸軍白陵基地』ですが…』

「スミマセン、そちらにいる香月博士に連絡をしたいのですが…」

『お名前を教えて下さい』


「帝国斯衛軍の白銀武中尉です」


『わかりました、暫くお待ち下さい』



帝国陸軍白陵基地に居る香月博士に連絡を入れるタケル…
すると、香月博士に電話が繋がる



『モシモシ、何の用?』

「先生、スミマセンが…」

タケルは香月博士に事情を話す…


『成る程…アンタの両親がこの基地に所属してるのね…』

「ハイ…それで先生に話が有るんですけど…」


『何?』


「オヤジ達に『説明』してくれませんか…?」

『…成る程…そういう事ね…』


タケルの言いたい事を悟る香月博士


『確かにこのままでいたら怪しまれるし、アンタに逢っても怪しまれる…
会っても会わなくても何かしらと厄介事になる可能性があるか…』

「ハイ、ですから…オヤジ達には説明して欲しいんです」


『…それは『此方側』に入れるって事よね…?』


「…ハイ」


言葉を重くしながらも返答を返すタケル


『…そうね、今は不安要素を増やしたくは無いわ…
こちらから説明しておくけど…その時はアンタも立ち会いなさい
じゃないと説明が出来ないわ
あと、アンタの戸籍だけど、アンタの生まれた年数と年齢を改竄しておいたわ
勿論、城内省のデータベースも殿下に頼んで、改竄したわ』


「わかりました
ありがとうございます、先生」


礼を言うタケルだが、『その代わり、借り一つよ?』と不安な一言を言う香月博士


「そういえば…先生…まだ変な噂流しましたね…」


『フフフッ…何の事かしらねぇ~♪』


『このあくまめっ!!』と心の中で叫ぶタケル
しかし、そんな心の叫びは届かないまま『ぢゃあねぇ~♪』と通話を切られる


「………先生め」


静かに受話器を置くタケル…

「終わったようだな」

「あ、ありがとうございます」


すると、私服に着替えた真耶が近づいて来た


「これから食事になるから、着替えたら来ると良い」


「わかりました」


先程教えて貰った部屋に移動して、買ったばかりの私服に着替えるタケル


「これからだな…頑張るぞっ!!」


窓から見える夕陽に決意を決めるタケルだった…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第五話①
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/09/24 12:35
1998年・1月13日
帝都・シミュレータールーム
椿side

「何だコレは…!?」


目の前に映る光景に驚愕する私
私の自慢の中隊のみんなが、悉く撃墜されていく光景にただ唖然とするしかなかった
相手は一機
しかも今日から配属になったばかりの新人一人にだ

「天才衛士…」
その言葉の意味を示すように、見た事の無い機動を操り、我々の予想を覆す行動ばかりをする事に言葉を失う私

白銀武中尉ーーーー
急遽我が大隊の一員になる事になり、少し驚きはしたものの、正直有り難い事だった


時折部隊の中から帝国軍に転属や一時的に所属し、大陸の戦いで散って帰らずの身となり、私の指揮する大隊の第一中隊は人手がやや不足していた

他の中隊も減ってはいたが、まだ一中隊に一人程度
しかし、私の指揮する第一中隊は三人も失い、正直困っていた
補充要員を頼んでも今の時期は居る筈もなく、補充要員は諦めていた
すると、一昨日突然帝国斯衛軍大将・紅蓮大将直々の報告で補充要員一人が増えるとの事だった
ポジションは突撃前衛、一番欲しいポジションが来た事もあり、正直嬉しかった
噂を聞けば、あの月詠真耶中尉をも撃墜させる程の腕前と聞き、期待してたと同時に、その月詠真耶中尉の『彼氏』とも『婚約者』という噂も聞き、少し驚く


そして昨日、休日で街に出て買い物を楽しんでいると、噂の月詠真耶中尉が男性と一緒に買い物をしていた
男性の方は誰かは直ぐに気づいた
一昨日に書類上の写真で見た男性・白銀武中尉
声をかけて話してみると、斯衛軍には居ないタイプの人物だった
悪く言えば、馴れ馴れしい
良く言えば、周りの人達を惹きつけ易い雰囲気を持つ人物だった
噂の『婚約者』の話をすると、二人して固まり、否定する
どうやらこの噂は違ったらしい
そして今日、白銀武中尉の入隊を歓迎し、同時に『婚約者』ネタでいじくり、楽しい一時になった
あの規律に厳しい義妹の沙耶もその時は楽しそうに笑ってた程だ
ウン、彼は入隊して正解だった
そして、歓迎の意味を込めて、『シミュレーター訓練での歓迎』をしようとの提案があり、採用
白銀武中尉は話を聞き、驚いて落ち込んでいた

内容は簡単…というか、可哀想な内容
『1対9』の対戦だった
流石に可哀想なので、私と沙耶は後方で見学
それでも7名もの相手が居るのだ…イジメみたいなものだと私は思っていた…
だがーーーー現実は違う
目の前の光景は、こちらの部隊が次々と撃破されるシーン
ある者は見た事の無いアクロバットで背後に廻られて、短刀の一突きで機関部を破壊
ある者は予想外な機動に翻弄されて、踏み台にされた後に突撃砲にて撃破される
そしてある者は、イキナリ『踵落とし』を喰らい、頭部を大破され、視界を封じられた所を長刀により撃破される


そして、気づいた時には、9機も居た此方の部隊は、私と沙耶の2機のみとなった



「油断したッ…!!」

そうだ、相手はあの月詠真耶中尉を撃破したと噂されてるのだ
噂が本当ならば、油断ならぬ相手に決まってる


「椿様…」

「沙耶…迎え討つわよ」

残りは我等二人のみ
相手は一機だけだが、我等精鋭の中隊の衛士7人がいとも簡単に撃破する程の兵(つわもの)
気を引き締めて、『敵』を討つ為に武器を構える

「ハァ…椿様…」
「何かしら、沙耶」

すると義妹の沙耶が声をかける
「また悪い『癖』が出ましたよ
顔が笑ってますよ」


「あら…」


悪い『癖』ーーーー
強者を見ると、挑みたくなる癖が出てたようだ

しかし…仕方無い事だ、目の前に未知の強さを持つ者が居るのだ…血が騒ぐなと言う方が無理だ



「済まない、血は抑る事は出来ない」

「わかってますよ」


やれやれ…と苦笑する沙耶
さあーー挑もうではないか


二人して長刀を装備して白銀中尉を迎え討つ


「アルファ2、行くぞっ!!」

「アルファ2、了解!!」

水平噴射跳躍をしながら突撃する私達


さあ…白銀中尉よーー
私を楽しませてくれーーーー!!!

sideend



「ふむぅ…なかなか面白い訓練ですな…紅蓮大将」


「ウム、確かに『天才衛士』に恥じない腕ですな、神野大将」


シミュレータールームのモニターを観戦する帝国斯衛軍の偉大なる武人
『三強』とまで呼ばれる二人がタケル達のシミュレーター訓練を見て関心する


「あの若者…なかなか筋が良い
まだ荒削りだが、独特の機動で九條少佐達を翻弄してるぞ」


「だが、椿様も沙耶殿も我が『無現鬼道流』を教えた愛弟子達
このまま終わる二人ではない」


「カカカッ!!
そうか…それではどちらが勝つか見守ろうぞっ!!」


「ウム」



三人の対戦に期待しながら観戦する紅蓮大将と神野大将だった…




「いくぜっ!!
アアァァァッ!!」


水平噴射跳躍を全力噴射しながら、建物の間を飛び回るタケル
特攻隊のような突撃に戸惑いながらも、椿機と沙耶機で白銀機を迎え討つ。

「このような全力噴射では、我等の剣はかわす事など出来るかっ!!」

「我等が剣…無現鬼道流の剣を受けるがいいっ!!」

お互いの息を合わせながら、放つ長刀
しかも、ワザとに沙耶機の剣閃が僅かに遅れるようにタイミングをズラす。

「「ハアァアァァッ!!」」

2つの剣閃が×字に放たれ、白銀機を捉えるが----

「喰らうかよっ!!!」

機体を捻るように動かし、椿機の剣閃の上に回避し
沙耶機の剣閃を白銀機の長刀で防ぎ、沙耶機を蹴り飛ばす!!

「キャアァァァァッ!!」

「沙耶!?」

蹴り飛ばされた沙耶機に『一瞬』視線を向いてしまう椿
しかし…その『一瞬』が『油断』と判断した時には遅かった。


「オオォォォォッ!!」


「しま…ッ!!」


沙耶機を蹴り飛ばした白銀機は、其処から椿機に向かって噴射跳躍し、椿機の頭部を白銀機の左腕で鷲掴みにし、そばに有る建物に叩きつける。


「ヨシ、今---」
「させるかァァァァッ!!」

椿機に長刀でトドメを刺そうとすると、体制を立て直した沙耶機が、突撃砲で阻止する。


「危なっ!?
ふぅ…体制立て直すの早いよ…」

沙耶機による突撃砲の攻撃を、寸前で回避に成功するタケル
いつもとは、ちょっと違う戦い方で、相手の意表を突く事に成功する。

1対9と聞かされた当初は『入隊早々イジメ喰らってる?もしかして?』と嘆いたタケルだが、
冷静に考えてみると、『チャンス』だという事に気付く。

1対9という設定に油断している向こうの部隊
現に、隊長機と副隊長機は様子見という『油断』しまくっていると判断したタケルは、最初っから全力で戦闘をする事にした。

結果は大成功
他の機体はタケルの機動について行けず、翻弄され続け、結果『7機撃破』に繋がった。

残るは隊長機達二機のみ、
しかし、そう簡単には撃破は出来ないと考えていたタケルは『奇襲』をかける事にした。

まずは挑発気味な全力噴射での水平噴射跳躍をし、長刀を装備する白銀機
すると、タケルの予想通りに隊長機達は長刀装備をしながら、突撃してきた。

ここまでは想定通り、あとは自分が二人の攻撃を回避する事に専念するだけ。


ドキドキと緊張感を高め、その時を待つタケル
最初の攻撃をギリギリで回避するが、あとから来る沙耶機の回避は不可能と判断し、長刀で沙耶機の攻撃を防ぎ、蹴り飛ばす。

そして、沙耶機を蹴り飛ばしたお蔭で、全力噴射した勢いをある程度殺す事が出来、再び噴射跳躍をして椿機に突撃する。

椿機の頭部を鷲掴みにして、そのまま建物に叩きつけるタケル
そのままトドメを刺そうとしたが、予想以上に早い沙耶機の反撃に戸惑いながらも、回避するタケル。


(けど---
これで、隊長達は困惑しながら戦う事になる)

タケルの考えでは、普通の衛士達ではしない攻撃をする事で、本来するであろう行動を、ある程度『封じる』事に成功するタケル。

椿機と沙耶機の二機は、迂闊に行動をする訳にはいかず、消極的な戦い方になると踏まえたタケルは一気に勝負を決めに行く!!

---だが…
ここで、タケルの計画に『想定外』なる出来事が起きる

「フフッ…やるな…白銀中尉。
だが…このままで終わる私ではないぞっ!!!」

「え゛っ?」

なんと、あれだけの事をされたにも関わらず、積極的に突撃して来る椿機。
流石のタケルも、その行動に驚く。

(予想外だ…
…もしかして、椿隊長って、速瀬中尉や冥夜達みたいなタイプなのかっ!?)

『しまったぁぁ…』と少し後悔するタケル
もし、予想通りに、速瀬中尉・彩峰・冥夜みたいなタイプの人物ならば、逆に火が付き、動きが良くなる為、作戦が半分失敗になってしまった事に嘆くタケル。

(けど…どうやら、沙耶大尉には効いたようだな。)

そして、先程とは少し動きが悪くなった沙耶機には効いた事を悟るタケル。
事実、多少のフェイントを入れると、回避行動をとる沙耶機を見て、少し安心するタケル。

(良かったぁ…沙耶大尉も速瀬中尉みたいなタイプだったらヒヤヒヤしたぜ…)

(クッ…白銀中尉の策にかかったか…不覚!!)

タケルの作戦に気付く沙耶大尉だが、少しでもタケルの行動に不安感を植え付けられた為、未だに本来の戦いが出来ないでいた沙耶大尉。
自分の未熟さに反省しながら、椿機をサポートする


そして、椿機や沙耶機と鍔迫り合いを繰り返す際、タケルは『ある事』に気付く。


(あれ…?
もしかして冥夜と同じ剣術か…?)

多少の違いはあるものの、二人の長刀の扱いに冥夜の剣と被りだす。

(試してみるか…)


そう思ったタケルは、二人を『冥夜が二人いる』と思いながら、長刀で戦い続ける。


(…ヤッパリそうだ…
癖とかは違うけど、殆ど同じだ…
…という事は同じ流派なのか?)

冥夜と同じ無現鬼道流と悟るタケル
そして、冥夜との模擬戦を思い出しながら、椿機や沙耶機を相手に戦う。

(何故だ!?
最早我等の剣を見切ったとでも言うのかっ!?)

自分達の剣が悉く防がれ、回避される事に驚く沙耶だが…

「フフフッ…凄いわ…
まさか此処まで凄いとは…嬉しいわよ、白銀中尉ッ!!」

戦いに酔いしれてる椿
沙耶大尉とは真逆に士気が高まり、益々バトルジャンキーになってしまう。


そして---

「「ハアァアァァッ!!」」

白銀機と椿機がお互いに長刀での必殺の一撃を入れ、擦れ違う

『ブラヴォー1(白銀機)、左腕大破…戦闘続行
アルファ1(椿機)、機関部大破…機能停止』


「クッ…何だと…!?」

勝負は白銀機に軍配が上がる。
椿機の一撃は白銀機の左腕を両断するものの、白銀機は椿機の機関部を両断する。


普通ならば、剣の腕では椿少佐には適わない
だからこそ、タケルは再び『作戦』を考える。

まずは、お互いに必殺の一撃を入れる際、タケルは突撃するスピードを『抑え』ながら、椿機に突撃する

お互いの斬撃が、振り切り、相手の機体を切り裂く直前に、スピードを全開にするタケル。

タイミングが狂った椿機の一撃は、白銀機の左腕を斬り、胴体を切り裂く前に、自分の機体が切り裂かれてしまう結果になったのだ。


「椿様っ!?」

「あと一機のみ---」

椿機がやられた事に戸惑いながらも、白銀機を迎え討つ沙耶機

そして、白銀機も体制を直して突撃しようとしたその時----



「なっ!?」

突然白銀機がバランスを崩す
ガクリと左脚部の膝が曲がってしまう


「なっ、何!?
左脚部の関節部が壊れたっ!?」

突然左脚部の関節部が壊れた為、動きが止まってしまう白銀機


「隙アリッ!!」

「あ゛っ…」


その隙に白銀機に横薙の一閃を入れて、白銀機を撃破する沙耶大尉
そして大破判定を貰ったタケルは、機能停止になり、シミュレーター訓練は終了したのだった…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第五話②
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/09/24 12:36
「あちゃー…やっちまった~…」


少し落ち込み、一人反省会をしながら、シミュレーターデッキから降りて来るタケル


『お前…やりやがったなっ!!』

『九條少佐を接近戦で討ち取るなんて…凄いな…』

『教えろっ!!
あの機動の仕方を私に教えてくれっ!!』

「えっ、ええぇぇぇっ!?」


デッキから降りて来たタケルを待っていたのは、先程までタケルがコテンパンに撃破した衛士達だった。

タケルの背中や肩を強く叩きながらも、タケルの強さを認め、仲間として認めてくれた。

(前の世界でのトライアルを思い出すな…)

あの時----
前の世界で自分を認めてくれた先任衛士達を思い出すタケル
この世界でも、先任衛士達に認めてもらい、嬉しい気持ちが溢れていた。

「むぅ…今回の勝負は負けを認めるわ…
けど、次は必ず勝ってみせるわっ!!」


ビシィッ!!…と宣戦布告を椿から受けるタケル
椿の負けず嫌いの姿を見て、『速瀬水月中尉』と重ねてしまう。

(うわぁ…ヤッパリ少佐って、速瀬中尉にそっくりだよ…)

『これから大変だな…』と予感するタケルだが、
その予想が思いっきり的中してしまう事はお約束だったりする。


「ふむ、諸君ご苦労様だ」

「ぐっ、紅蓮大将に…神野大将!?」

モニター室から現れた紅蓮大将と神野大将を見て驚愕する椿達
タケルはポカンと『ええぇ…嫌な予感が…』とダラダラと嫌な汗を流す。


実はタケルは、元の世界で、二人に出逢ってたりする。
冥夜と悠陽の紹介で、師である二人に出逢っていた。


その際、紅蓮が『ハァハァ…冥夜タン…』
神野が『悠陽タン…萌え…』…と怪しい呟きを漏らしながらハァハァしてた記憶があったりする。


しかし、武術に関しては、やはり冥夜と悠陽の師だけあって、チートを超える程強かった。

特に紅蓮は胸元からビームを放ったりする摩訶不思議な必殺技を使い、タケルの度肝を抜いた記憶は新しい。

そんな奇妙な記憶がある為、この世界の二人にイヤな予感がバリバリしていた。


「さて、白銀中尉よ…」

「ハッ、なんでしょうか?」

突如、声をかけてきた紅蓮大将に敬礼するタケル。


「貴殿の戦闘を見せて貰ったが…誠に天晴れだ」

「まぁ、最後の故障についてはヌシの失敗じゃが、
よくぞ椿様を討ち取ってみせた」


「あ、ありがとうございます」

伝説の二人に誉められて、敬礼しながら礼を言うタケル。


「此度の敗因は、無理な機動と…二度の蹴り技じゃな」

「うぐっ!?」


敗因をズバリ言われてしまい、ちょっと傷つく。

「ヌシの操作技術は確かに限りなく高いが、まだまだ荒削りじゃ
もう少し機体にダメージを蓄積せんように戦わんと、戦うたんびに機体を壊しては話にならん」

「あと、あの蹴り技だが…あれが無ければ、もしかすると、沙耶殿にも勝てたかもしれん…
最初の『踵落とし』と、沙耶殿を蹴り飛ばした時…
あれが故障の原因だな」

「踵落としはまだ良いが、全力噴射しながらの水平噴射跳躍からの蹴り…
あれが一番の致命傷じゃよ。」

「ガハッ!!」


紅蓮大将と神野大将のダメ出しの言葉に致命的ダメージ(精神的に)を負うタケル。

「だが、貴殿の意表を突く攻撃や行動は満点をくれてやろう
それは神野大将も同じ意見だ」

「敵の頭部を踏みつけて視界を封じる事…
得意のアクロバットで敵を翻弄する機動…
攻撃手段の視野を広げ、相手の予想を外す手札の多さ…
そして、どんな不利な場面でも諦めずに挑み、
そして、様々な策を実行する度胸…
正に天晴れと言うしかあるまい」


「あ…有り難う御座います!!」


紅蓮大将と神野大将のお褒めの言葉を頂き、感謝するタケル。


「流石は殿下や斉御司大佐に認められる事は有る
此度の新OSの開発の件…期待してるぞ?」

「新OSの開発?」

はてな?と紅蓮大将の言葉に疑問に思う椿
その反応を見て神野大将が説明する

「白銀中尉は、此度帝国軍・極東国連軍による共同開発任務の任があってな、
この最初の開発任務として新OSの開発が進められてる
そして、その新OSの実態が…先程の白銀中尉の機動特性じゃ」


「「ええぇぇぇっ!?」」

神野大将の発言に驚愕する椿達
口をパクパクとする者や呆然と立っている者が出てくる程衝撃が強い話だった。

「誰もが白銀中尉と同じ機動特性が可能となる新OS
そうなれば、戦力の大幅アップは勿論、生存率の底上げ、新しい戦術の可能性まで現れると考えられている
その為、白銀中尉には『テストパイロット』としての任務があるのだ。」

「どうかのぅ…椿様?
もし、椿様が白銀中尉と同じ機動が出来るとなれば…?」

紅蓮大将の説明を聞き、驚き以上に歓喜が現れてくる椿達
神野大将に問われる椿は---笑みを浮かべて答える

「是非とも欲しいですね
それに白銀中尉に負けっぱなしっていうのも、嫌ですしね。」

「だそうだ、良かったな白銀中尉
既に椿様の『お気に入り』になったぞ?」

「んがっ!?」

獲物を狙う眼光を放つ椿と、タケルをいぢくる紅蓮大将の発言を聞いて『ハァ…ヤッパリこうなるのね…』とorzになるタケル。


「あと、最初は白銀中尉だけじゃが、後からお主達にもテストパイロットをしてもらう予定じゃ」

「その時は貴殿等中隊は、白銀中尉と同じく帝国代表として『次世代戦術機の開発部隊』となる事になる」


「「「!!!!」」」


「この話はかなりの機密故に他の者達には喋る事は禁ずる…いいな?」


「「「ハッ!!!」」」


自分達の重要な立場を理解し、紅蓮大将達に返答を返す椿達。


「あと、椿様
時折白銀中尉には開発の任務で国連軍の方に出向く事があります
その際は隊を一時的に抜ける事もあるので御理解頂きたい」


「ハッ、了解致しました!!」

「…そうそう、白銀中尉よ
実は国連軍の香月博士から新OSのデータを送られて来てな…
休憩が終わったら、早速テストパイロットをしてくれたまえ
終わり次第、再び香月博士の下にこのデータの結果を送りたいのだ」

「ハッ、了解しましたっ!!」


早速来た新OSのテストパイロットにウキウキするタケル
そして、その新OSのデータに興味津々の椿達。

休憩後、再びシミュレーターデッキに乗り、新OSのテストパイロットをするタケル
その新OSを装備した白銀機の瑞鶴の機動をモニター室で見て驚愕する椿達と紅蓮大将達
新OSのデータを装備したタケルの機動を見て、人類の未来に『希望』がちょっと見えてきた瞬間だった。



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第六話
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/09/25 11:49
「ハァ…今日1日は色々有り過ぎたわ…」

「まったくです」

疲れ果てた椿と沙耶
自宅である九條邸で今日1日の事を整理するが、様々な『出来事』があって、精神的に疲労がきていた


「白銀武中尉か…
まさか…彼の入隊が『母様』まで関わっていたとは…」

「由佳里様らしいと言えばそれまでですけどね…」


深く溜め息を吐く椿
そんな椿に温かいお茶を差し出す沙耶

ずずず…とお茶を飲みながら今日の事を思い出す


新OSのテストパイロットを終えたタケルは『だいぶ使い易くなってきた』と発言し、椿達中隊が驚愕する


『だいぶ…って事は…まだ『あれ以上』の機動が可能なの…?』

椿が顔を引きつりながら質問すると…

『あんなモンじゃないですよ、新OSの力は』
…とケロッとした発言をするタケルに対し、全員が『コイツ…何処の星の超人?』…などと、タケルに生暖かい目で見ていた



そして、シミュレーター訓練を終えると、神野大将から解散を命じられ、
その後タケル・椿・沙耶には『共同開発の打ち合わせをするから、シャワーを浴びた後に会議室に来るように』と命じられる


しかし---実際に会議室で話を聞くと、『共同開発の打ち合わせ』は嘘で、実際は『重要機密情報』の話だった


回想----




『重要機密情報…?』

『ウム、済まなかったな、嘘をついてしまって
…じゃが、こうでもせんと、怪しまれる故にああ言ったのだ…』


神野大将が説明した後、頭を下げて、タケル達に謝罪する。
勿論タケル達は、慌てて神野大将に頭を上げてもらおうと説得する


『さて、椿様…
此度椿様と沙耶殿には『特殊任務』を与えるのだが…
此度の特殊任務は、九條家現当主の『九條由佳里様』からの推薦故、椿様と沙耶殿が選ばれた』


『母様からの推薦…ですか?』


『ウム…』と頷く紅蓮大将
その事を知り、緊張する椿と沙耶


『此度の特殊任務の内容は…『白銀武中尉の期間限定の共同計画と護衛』です』

『『『は…ハァァァァッ!!?』』』

紅蓮大将から告げられる『特殊任務』の内容に驚愕する椿と沙耶
タケルも流石に大声で驚愕する


『ぐ、紅蓮大将っ!!
一体どういう事ですかっ!!?』

『慌てるな、白銀中尉
今ちゃんと説明する。』

慌てるタケルを落ち着かせる紅蓮大将
椿と沙耶は余りの事に未だに混乱していた

『実は白銀中尉は『オルタネイティヴ計画』の重要人物の一人でな、その事もあって、殿下や香月博士から『護衛』を付けるようにと頼まれてたのだ』


『ええっ!?』
『オルタネイティヴ…計画…!?』

驚愕した椿は思わずタケルと沙耶を見る
いきなりの展開に驚いてるタケルと…顔面蒼白している沙耶だった

『…最初はのぅ…ワシ等も椿様や沙耶殿にこの任務は酷だと言ったのだが…
丁度その場に居た由佳里様が『あの子達にこの任務を任せる』と厳しい表情で申してたのだ…』

『幾らオルタネイティヴ計画の重要人物とはいえ、『五摂家』の者に護衛させるなど大問題だと反対する声もあったのだが…
由佳里様が『五摂家だからといって、『甘えた事』はさせてはいけません
むしろ五摂家として人を導く先導者の一人として、厳しい任務を与えるべきです』…と頑固を貫くのだ…』

困り果てた紅蓮大将と神野大将を見て、『申し訳ありません』と謝罪する椿

『そして同時に時折白銀中尉が行う特殊任務に一緒に参加して貰うのも、任務内容のひとつだ』


『例えば、どのような任務でしょうか?』


説明する紅蓮大将に質問する椿、
すると紅蓮大将はその質問に対して説明する

『まだ詳細な事は知らないが…
例えば、新OSの任務で白陵基地に向かう際は、
白銀中尉の護衛と開発任務を行って貰う事になります。
戦地へ向かう際は、白銀中尉の生還を重視として任務を遂行して貰う事。
他に何かの特殊な任務な場合、護衛をしながら任務遂行を目指す事になります』

『期間は2002年頃、任務終了は…まあ、その時は三人共一時的に国連軍に出向されてる筈じゃから、香月博士から告げられる事になってます』


『こ、国連軍に…一時的に出向…?』

突然の事に精神的にゴリゴリと削られる椿
特に『一時的に国連軍に出向』という言葉に一番戸惑う



(沙耶大尉…?)


先程から何か沙耶から『親近感』があったタケル。

(沙耶大尉の『事情』…?
オルタネイティヴ計画に関係してるのか…?)

先程の事を思い出すタケル。


(さっき紅蓮大将が『オルタネイティヴ計画』って言った時、沙耶大尉の顔色が悪かったな…
それに沙耶大尉の『事情』も関係してるのか…?)


推理するタケルだが、やはり簡単には分からなかった。



(沙耶大尉ってやっぱり『誰か』に似てるんだよな~…
あの容姿…あの雰囲気…)


『何か』が引っかかるタケル
ひとつひとつキーワードを組み込むと----


(容姿…『銀色の髪』…そうかっ!!
『霞』に似てるんだっ!!)


ひとつのキーワードを解くと、解けた紐のように『謎』が解けだす。


(そうだよ、霞に似てるんだっ!!
あの髪の色といい、あの『謎めいた雰囲気』といい…アレ?)


タケルの脳裏にある『仮説』が浮かび上がってくる。

(オルタネイティヴ計画と沙耶大尉の事情…
そして、霞に似ている…まさかな…)


一度頭を振るが、やはり沙耶大尉の反応が気になるタケル。
そして、沙耶大尉もタケルをチラチラと気にしていた


(…気まずい空気だなぁ…
失礼を覚悟して聞いてみるか…)


決意を決めたタケル
罪悪感もあったが、沙耶との関係を解決する為に行動をとる。



『紅蓮大将、ひとつ質問が…』


『なんだ、白銀中尉?』


『---紅蓮大将や神野大将はオルタネイティヴ計画に詳しいのですか…?』

タケルの質問に反応する四人
特に沙耶からは大きな反応があった



『ウム、一応大体の事はな
ワシも神野大将も知っておる』


『そうでしたか、ありがとうございます』


紅蓮大将に質問を終わらせると、今度は沙耶の方を向くタケル。



『スミマセン…大尉
もし…違っていたら謝っておきます。』

『な、なんだ…?』

タケルの対応に戸惑う沙耶…


『大尉は---
『第三計画』の出身ですか…?』

『『『『-----ッ!!!』』』』

この瞬間----
空気が凍りだすっ!!


『な、何故そのような事を…?』


『いや…大尉は、オレの知り合いに似ていたもので…
そして、先程紅蓮大将が『オルタネイティヴ計画』と『沙耶大尉の事情』と口にした際、顔色が悪かったもので…
間違ってるかもしれませんが、大尉が『第三計画』の出身ではないかと思ったのです。』

『し、知り合い…?』


タケルが口にした『知り合い』に反応する沙耶。

『はい、その知り合いも『第三計画』の出身です
以前、オレが『第三計画』の事を知った時に、『彼女』が怯えるように逃げ出した時がありました
彼女にとっても、知られたくは無い事実でしたが、オレにとっては『彼女は彼女』でしたので、必死に探して、説得…というか…話し合いをして、お互いの事を理解しあった事があったんです。』

『…………そうか』

タケルの口にした内容に驚きながらも、少し落ち着きを見せる沙耶


『白銀中尉は…『怖く』はないのか…彼女とやらを…?』


『怖い………考えた事もなかったな…
ウサギみたいな可愛らしい奴だし、彼女の『能力』も慣れっこ…って言うより、内緒話したり同意を求めたりする時にも使ったりするし…正直、今は能力に関しては全然気にしてません
むしろ、ひとつの『長所』として見てますよ。』

『な…なんだと…?』


タケルの返答に驚きを隠せない沙耶
紅蓮大将や神野大将は『大した若者ぢゃ』と関心し、椿に関しては、タケルの話を聞いて、ホッと安心する



『もし違っていたら謝ります
けど、もしそうならば----怖がらないで下さい
オレは…貴女の『味方』です…!!』


『----ッ!!』


タケルの言葉に陥落する沙耶
そして、沙耶の口から告白する。



『そうだ…白銀中尉の察する通り、私は『ESP能力者』だ…
まさか…こうも簡単に見破られるとはな…』

『謎めいた雰囲気とか髪の色も同じでしたからね、
出逢った時から、なんか引っかかっていたんです』


『そうか…』


落ち着き直した沙耶
椿が『良かったわね』と沙耶の下に駆け寄ってくる。
そして、沙耶はタケルの方に顔を向けて、声をかける

『白銀中尉…ひとつ質問したいのだが…いいか?』


『なんでしょうか?』

『実は…今日、貴殿に出逢った時に、用心の為に一度『リーディング』したのだが…
その際、不可解な『記憶』を見たのだが…それに問いたいのだが、良いかな…?』


『げっ!?』

既にリーディングされて記憶を覗かれていたタケル

『ど…どのへんまで覗きましたか…?』


『今より成長している冥夜や殿下が、貴殿を囲むように仲良くしてた所とか…
貴殿が国連軍に所属していて、冥夜と一緒に訓練してた所や、ハイヴのような場所で戦っている場面とかの記憶を見たのだが…不可解過ぎて訳が分からなかったのだ』


『うわぁ………見事に致命的デスネ~…。』


重要な記憶を見られていて、落ち込んでいたタケル。
そばで『す、済まない…』と謝る沙耶


『ほ、他にも見ましたか…?』


『……………済まない』

『グフッ!!』


もう駄目だ…と諦めるタケル



『…スミマセンが、沙耶大尉…
巻き込むカンジになってしまいますけれど…覚悟OKデスカ?』


『ま、巻き込むって…引き返せないの…?』

『無理です…
例えるならば…底無し沼に全身埋まった状態?』

『ええぇぇぇぇっ!?』


不安になって、引き返せないかと訪ねる椿だが、『無理、絶対に逃げられない』と、ズバリとタケルに言われてしまう。


『ええと…ホラ、底無し沼に全身埋まった状態でも助けに行けば----』

『無理、香月夕呼という番人が存在してるから、救出不可能です
それに最近、煌武院悠陽殿下という戦力も増え、万全な防衛になってますよ?』


『ゴメンね…沙耶…力の無い私を許して…』

『椿様っ!?』


救出不可能とわかり、沙耶に詫びる椿


後々、香月博士が『アラアラ、秘密…知ったんだ…ヘェ~…』…と良いカンジにステキでドス黒い笑みで二人を巻き込んだ事は後の話だったりする…



現在----



「はふぅ…内容が濃すぎるわよね…」


「も、申し訳ありません!!」

ペコペコと椿に謝る沙耶
『良いわよ、気にしないで』と謝る沙耶を落ち着かせる


あの後、タケルには沙耶が九條家に引き取られるまでの話を伝える


沙耶は数年前、とあるハイヴ攻略の際、第三計画として、BETAの思考や意思を探る為に、彼女達『ESP発現体』は、戦術機に乗り込み、複座として衛士達に守られながら出撃した


しかし、生還率は僅か6%
そして、沙耶も本来はその6%から漏れた者だった…


しかし、其処に『奇跡』は存在していた
その時、無意識の内にSOSの信号--
自分の居る場所のイメージをプロジェクションを飛ばした所、偶々特殊任務として参加し、帰還の途中だった帝国軍特殊任務部隊の一人である『辻間英治大尉』が沙耶を発見する


衛士は無惨にも死亡していたが、複座だった事もあり、下に座ってた沙耶は無数の傷はあったものの、命には別状は無かった
即座に救出し、帰還して沙耶を治療
そして気づいた沙耶を話をすると---
沙耶の能力を知り、ESP能力者としる辻間大尉


重大な機密性を知った辻間大尉は、沙耶をそのまま日本に連れて行き、帰国
そして、かつての上官だった当時の九條家当主の『九條元泰准将』に相談し、話し合いの結果、九條准将に沙耶を預ける結果になる


そして、九條准将は第三計画の内容を知り、事の重大さと、人間としての大罪を知る


人工的にESP発現体を創り、戦場へと送り出す

狂った科学者達の生み出した大罪に九條准将は怒り、同時に沙耶を哀れんだ


『このような子供が親の愛情も知らず、そして身勝手な科学者達に創られ、自分の意思を無視し、戦場へと送り出される
--これは、人間として許される事ではない
そして、同時に彼女に償わなければならない。』
九條准将は同時の政威大将軍である『煌武院雷電』と、その側近でもあった紅蓮大将と神野大将
そして、当時の五摂家の当主達を集めて緊急会議を行い、説得していた
そして、九條准将は懸命に説得し、その姿を見て感服した煌武院雷電は、九條准将の意見を聞き取り、結果は『九條家の養子として世話をする事』になった


そして、この事は将軍家及び五摂家と紅蓮大将・神野大将の秘密という事になった


『彼女にも、『人としての幸せ』を与えねばならぬ
彼女も---『人間』なのだから』


そして、沙耶は九條家に養子として入る
妻・由佳里や娘・椿も大いに大歓迎し、沙耶を『家族』として迎える



本来は沙耶が椿より一つ年上だったが、養子だった事もあり、歳を一つごまかして『椿の妹』となる


その事に恩義を感じ、九條家に絶対の忠誠を誓う沙耶
『沙耶』という名もこの頃に付けられるのだった…



「それにしても良かったわね、沙耶
白銀中尉が沙耶の事理解してくれて。」


「ハイ…少しまだ戸惑ってますが…安心しました…」

タケルが沙耶をESP能力者と知っても変わらない態度で接してくれる事に嬉しく思う沙耶
つい、思わず笑みが浮かんでいた


「アラアラアラ~♪
沙耶が笑ってる~!!
珍しいわね~、九條家や五摂家の一部の者にしか見せた事の無いのに、沙耶が笑ってる~」


「つ、椿様っ!?」


沙耶をからかう椿
しかし、内心とても嬉しかった事で、つい沙耶をいじくってしまう



「アラアラ…沙耶ちゃん、『恋』でもしたの?」

「うわぁっ!?」

「母様っ!?」

背後から突如現れた九條家現当主・九條由佳里


「沙耶ちゃん、誰に恋したの?
お母さんに教えて頂戴♪」

「由佳里様っ!!」


からかって来る由佳里につい、怒鳴ってしまう沙耶


「『由佳里様』だなんて家では止めなさいって言ってるでしょ?
家では私は貴女の『母』なんだから」


「うっ…か、母様」


照れながら由佳里に『母様』と呼び直すと、『沙耶ちゃ~ん☆』…と沙耶を抱きしめる
…その姿は、九條家現当主とは思えない接し方をする由佳里


「…ところで、誰が沙耶ちゃんをこんなにも可愛らしい笑顔にしたの?」

「白銀武中尉よ、母様」


「椿様!!」


バラす椿に可愛らしくポカポカと叩いてしまう沙耶
そして、今日あった事を大体話す(タケルの記憶は秘密)椿…


「…そっか、少し心配してたけど、安心したわ
白銀中尉に感謝しないといけないわね…」


「…ハイ」


「けど、本当に今日は色々とあり過ぎたわ…
本当に疲れた…」


「ご苦労様…ああ、そうそう
椿・沙耶、明後日の10:00から貴女達は白銀中尉と一緒に白陵基地に向かって貰うわ
任務内容は新OSの開発よ
その際、今回は月詠真耶中尉も同行するから、ちゃんと任務をこなすのよ?」


「「ハッ!!」」


この瞬間だけ、軍人の姿に戻る椿と沙耶。


「さてと…久々に晩御飯でも作りましょうか」

「手伝います」


腕まくりをして『母の味』を振るおうと立ち上がる由佳里
その手伝いをしようと沙耶も立ち上がるが『今回はゆっくりしてなさい』と断る由佳里


台所に向かう最中、とある写真を見る由佳里


「貴方…沙耶があんなにも笑顔を出せるようになったわ…貴方も見てるかしら…?」


愛する夫の『遺影』を見ながら報告する由佳里
少し寂しそうな表情をするが、パンパンと頬を軽く叩いて台所に向かって行った



時同じくして---
帝国陸軍白陵基地---


『白銀影行大尉と白銀楓中尉、入ります』


「開いてるから入んなさい」


ウィィンと自動ドアが開き、『白銀』を名乗る2人が入ってくる
部屋に入ると、香月博士が書類を目を通していた

「博士がお呼びになってると聞いたのですが…?」

「ええ、呼んだわ
要件は一つ、明後日の午後に帝都から五摂家の九條椿少佐と九條沙耶大尉が来るわ
その護衛として、斯衛軍から月詠真耶中尉と…アンタ達の『息子』の白銀武中尉が来るわ」


「タケルがっ!!」


タケルの名前を聞いて反応する母・楓


「ええ、来るわ
表向きは視察って事になってるけど、実際は白銀がメインの共同開発よ
それにしても贅沢よね~
白銀ったら、九條家の2人と五摂家に近い名家1人を『護衛』に付けるんだから驚きよね~♪」


「「え、ええぇぇぇぇっ!?」」


香月博士の爆弾発言に驚愕する白銀夫妻
その姿を見てニヤニヤする香月博士



「まっ、その際に九條家の2人と一緒に白銀の秘密もちゃんと打ち明けるわ…
信じるか信じないかは…アンタ達次第だけどね」


「「…………」」


一応香月博士からタケルの事を聞いていた白銀夫妻

やはり信じらんない事だったが、『一本のビデオテープ』を見て、2人の心が揺らぎだす



『一本のビデオテープ』…それは、偶然、防犯用の監視カメラが、悠陽殿下と真耶と斉御司大佐が渡り廊下でタケルと出逢った場面を写していた…

そして、そのビデオテープを殿下から借り、白銀夫妻を説明する材料に使ったのだ

その際、楓が香月博士に『このビデオテープに映ってるタケルは『本物』のタケルなの…?』と訪ねる
香月博士は『確かに貴女達の息子の白銀武よ
ただ、『別の世界の白銀武』と同化してるから、肉体が18歳まで成長してるけどね』…と聞き、ポカンと唖然としていた

そして、タケルが並列世界を二度も移動し、ループしていた事を聞いて言葉が出て来なかった


しかし、やはり言葉だけでは信用出来ず、自分の目と耳で確認したかった

そんな事もあり、今回のタケルの任務は香月博士が仕掛けた任務でもあったのだ。


(さて、此処まで歴史を変えて…どう変化するかしら
白銀…全てはアンタ次第よ…)


今はそばに居ない『腐れ縁』に問いかける香月博士…
タケルが望む『未来』の為に、白銀夫妻をいじくりながら、着々と計画を進めていた…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第七話
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/09/26 06:06
1月15日・帝国陸軍白陵基地----


「「お待ちしておりました
ようこそ、白陵基地へ!!」」


ヘリで帝国陸軍白陵基地へやってきたタケル達
表向きは護衛のタケルと真耶が先に出て、椿と沙耶を先導する


そして、出迎えとして白銀夫妻が敬礼しながら待っていた


「ようこそ白陵基地へ
私は帝国陸軍第6中隊所属の白銀影行大尉であります
こちらは副官の白銀楓中尉であります。」


「白銀楓中尉です、よろしくお願いします。」


「えっ…白銀…?」


白銀夫妻の自己紹介を聞いて、思わず後ろにいるタケルを見る椿


「…オレのオヤジと母さんです。」

「まあ、そうでしたか」

タケルの両親と知ると、少し驚く三人
『また先生の仕業かよ…』と香月博士のイタズラに頭を抱えるタケル


「…タケル、話したい事は山ほどあるが…後にしとくぞ」

「わかった、オレもそのつもりだ」

少しジト目で見る父・影行だが、覚悟を決めていたタケルは、真摯な表情で父・影行に答える


「…まさか中尉とはね…
数日で母さんと同じになるとは…」

「しかも斯衛軍だなんて…なんで私達と同じ帝国陸軍に入らなかったの?」


「いや、オレの所属や階級は殿下や斉御司大佐や先生…香月博士が決めた事だから…」


歩きながら会話をする白銀親子
本来はこんな会話は出来ないのだが、椿の御好意により、許可された。


「タケル、アンタ衛士って事は戦術機に乗れるんでしょ?
ポジションは何処よ?」

「突撃前衛だよ
オヤジや母さんは何処なんだ?」


「父さんは迎撃後衛
母さんは強襲前衛だよ
まっ…母さんの場合は突撃前衛並みに突撃してBETAをミンチにするけどな」

「はっ…?」


影行の発言に唖然とするタケル

「普通、そんな事したら隊が崩れるんだが、母さんの場合は逆に合理的でな…
母さんは接近戦以外なら何でもこなせてしまってな…
なんて言うか…強襲前衛でありながら、制圧支援・砲撃支援も一流にこなし、突撃前衛並みに突撃するんだ…
接近戦以外ならば誰にも負けないよ。」


「……なんですか…そのチートっぷりは…?」

母・楓のチートっぷりに唖然とするしかないタケル
楓も顔を真っ赤にしながら『影行さんったら…恥ずかしいじゃない…』と小さな声で呟く



(…白銀中尉の戦術機の才能は此処から来てるのね…)

(親子共々『天才衛士』の血筋…ですね。)


ボソボソと小さな声で本音を語る椿と真耶
しかし、ちゃっかり白銀親子に聞こえたりするのはお約束だ



そして、香月博士の待つシミュレーター室に入ると、まだ幼い姿の社霞と、タケルの見た事の無い少女2人が居た。


「待ってたわよ、白銀~
さっさと強化装備に着替えてXM3のテストをするわよ。」

「えっ…その前に話は…?」


「あのねぇ…白銀…
一応建前は『共同開発の視察』なのよ
九條家のお二方に共同開発の視察をする『フリ』をしてもらわないと、怪しまれるでしょうに…」

「…さいですか…
せめて前もって連絡下さい」

香月博士から国連軍の強化装備を貰い、更衣室に着替えてくるタケル



「…どう?
まだ信じられないかしら…?」


「…まだ戸惑っている最中です
確かに…あれは私達のタケルだ。」


「けど…なんか違和感があるけど…何かしら?」

タケルが去った後に白銀夫妻に声をかける香月博士
影行は香月博士の話が本当だった為、戸惑っている最中
楓は『知っているタケル』とは違う違和感を気にしていた



「多分、それは『別の世界の白銀武』が同化してるせいよ
『この世界の白銀武』とは違うモノを持っているから、そう感じるのよ
例えば…この世界の白銀武は衛士じゃないけど、別の世界から来た白銀武は、ループした事によって、衛士としての経験が豊富になり、一流の衛士になったわ
そんな『アンタ達の知らない白銀武』を知った為、アンタが感じる『違和感』として現れたのよ」

「…なる程…一理あるわね」


香月博士の答えを聞いて納得する楓
そして、それから数分後に強化装備を着たタケルがやってきた


「先生、お待たせしました」


「さて、取りかかるわよ
帝都で取ったデータのバグは取り除いたわ
以前より動きは良くなってる筈だから、思いっきり動きなさい」



「思いっきり…スミマセン、先生…機体は一体…?」


「話には聴いてるから大丈夫よ
今回は不知火に搭乗して貰うから、瑞鶴よりはマシよ
…それに、不知火の方が動かし易いでしょ、アンタは」


香月博士の気遣いに感謝するタケル
冗談半分で『武御雷でも良かったのに…』と呟くが、『まだ完成されてない機体頼んでも無理よ』とキッパリと断れてしまう


「さて、始めるわよ白銀
やるんならド派手な機動を見せつけてやりなさい」


『了解!!』


そして、XM3の開発テストが始まる


「ウオォォォォッ!!」


縦横無尽に飛び回り、仮想敵(アグレッサー)の不知火や吹雪を次々と撃破していく白銀機

空中での倒立反転しながら短刀を装備し、着地と同時に短刀投擲と水平噴射跳躍をし、短刀を回避した仮想敵は接近して来る白銀機の長刀に両断される



「----なんだコレは…!?」

「コレがタケルの機動…
倒立反転しながらの短刀装備し、着地と同時に短刀投擲と水平噴射跳躍を同時にこなすなんて…」

モニター室から見たタケルの機動制御に驚愕する白銀夫妻
そして、2日前の開発テスト時より上回る機動制御を見せつけられて、驚愕と同時に真剣にモニターに食い込むように見る椿達

「フフッ…やっぱりアイツじゃなければXM3は完成しないわ
それに---フフッ…どうやらお気に入りになったようね…」


香月博士の視線の先には、椿達と一緒にタケルの機動を注目する少女2人が居た


「クリスカ・イーニァ、白銀の機動…どうかしら?」

「タケルすごい…どうやったら、あんなうごきできるの!?」

「…悔しいけど…今の私達には、出来ない機動制御です。」


香月博士が第3計画から追加で連れてきた『紅の姉妹』のクリスカ・ビャーチェノワとイーニァ・シェスチナ
イーニァは瞳を輝かせながら、タケルの機動制御の仕方を香月博士に質問し、クリスカは悔しそうにタケルの機動を見つめる


「アンタ達もアイツから機動制御を学ばせる時があるから、それまで待ちなさい。」


「うぅ~…」

(かっ、可愛い…!!)


お預けを喰らったペットのように、拗ねるイーニァ
その姿を見て、楓や椿達が母性本能を動かす


「けど、あれで満足したらダメよ?
白銀の機動制御は、XM3が完成してからこそ発揮出来るの
つまり…『これ以上』の機動制御を持ってるのよ。」


「えっ…?」


全員が驚愕し、言葉を失う
イーニァは違う意味で驚愕し、キラキラと眼を輝かせながらモニターに夢中になる。


「博士…訓練が終わりました…」


「そう、それじゃこのデータの解析とバグの処理を後でするわよ、社」

「…ハイ」

香月博士の言葉に反応し、トレードマークのウサ耳の髪飾りをピョコピョコ動かす霞


「社…楽しみ?」


「……わかりません
けど、期待する自分があるのは確かです…」


「良い思い出が出来ると良いわね」


「ハイ…」


『思い出』という言葉に反応して、笑みを浮かべる霞

モニターに映るタケルを一旦見て、直ぐに香月博士の後ろについて行く



「ふぅ~…スッキリした~」


シミュレーター訓練を終えて、シャワーを浴びて汗を落とすタケル
着替えてシャワー室を出ると、クリスカが待っていた」


「あれ、キミはさっきの…」

「クリスカ・ビャーチェノワだ」

「ああ…俺は白銀武だ、宜しくな」


笑顔で握手を求めるタケル
戸惑いながらも、そっと握手に応えるクリスカ

「…タケルは私達の事を知ってるのだろう…?」

「ん?
もしかして『出身』の事か?」


コクリと頷くクリスカ
『なる程…』と思うタケルに更に質問が飛んでくる


「…怖くないのか、タケルは…?
考えを見透かされ、ヒトとは違う能力(チカラ)を持つ私達に…」

「ハァ…なんでそんな風に後ろ向きに考えるかな~…」

「なっ…にゃにふる!?」
溜め息を吐くタケル
後ろ向きなクリスカに、お仕置きの意味を込めて両側の頬を引っ張る


「ダメだなぁ~…クリスカ
そんな後ろ向きばかりになってはダメなのだよっ!!」


「は…離せっ!!」


引っ張ってた頬をさすりながらジト目で睨むクリスカ

「良いか、ESP発現体だろうと何だろうと、クリスカはクリスカだ
そして俺や先生と同じ『人間』だ
違うか?」


「えっ…?」


本心で語るタケルを見て戸惑うクリスカ

「俺にリーディングしたいなら、すればいい
ただ、他の奴には任務以外では滅多にやらないでくれ
俺は別にお前達を怖がる理由も無いし、そんな事する必要も無い
…まあ、先生みたく笑顔で黒いオーラを放つ事だけは止めてくれ…」

「そっ、そんな事するワケ無いだろう!!」


があっ!!と怒るクリスカを見てクスクス笑うタケル
そして、クリスカの頭に手を乗せて、優しく撫でる

「あっ…!!」


「だから仲良くしような、クリスカ」



優しく頭を撫でられて、頬を赤くするクリスカ
タケルをリーディングするが、『暖かい色』が見えた為、嘘偽りが無い事を知る


「わ…わかった…
宜しく…タケル…」


「宜しくな、クリスカ。」

素直な気持ちで返事を返すクリスカ
その返答に嬉しく思い、クリスカの頭を再び撫でるタケル

そして、香月博士達が居る研究室に入ると----



「随分と遅い御到着ね、白銀
…おやおやぁ…クリスカが随分と懐いてるわね…
流石は白銀、『恋愛原子核』も絶好調に発動してるって訳か…」


「な゛ぁっ!?」


入室して速攻にいじくられるタケル
香月博士の一言で、真耶・沙耶・霞の視線が『<◎><◎>』という風に睨みつけていた


「流石は白銀
女性を惹きつける事に関しては天下無双ね…
殿下には一刻も早く『一夫多妻制』を実現する事を強く言っておくわ
フフッ…ついでに『まりも』も嫁に嫁いでやってよ…アンタの下にね」


「ちょっ…先生…いきなり何を……!!」


「「「白銀(さん)…ちょっと…別の部屋て『お話』しようか(しましょう)…?」」」

「ちょっ…待って下さいっ!!」


タケルの両腕を抱きかかえて拘束する真耶と沙耶
霞も背中から抱きかかえるように拘束し、連行する


「た…た~す~け~てぇ~………!!」


そのまま三人に連行されて、隣の部屋でタケルをボコボコにフルボッコする


「……コワイヨ…コワイヨ…」


その様子を騒音で理解し、トラウマが蘇ってブルブルと部屋の隅で震えている父・影行
震えている影行を「だいじょうぶ?」と頭を撫でてるイーニァを見て、恥ずかしくも悲しくもある楓


「やっぱり白銀が居ると飽きないわねぇ~♪」


タケルをいじくって楽しんでいた香月博士だった…

「タケル…だいじょうぶ?」


「だいじょばない…」

ボロボロのタケルを心配するイーニァ
クリスカも心配してるのだが、また火の粉が降りかかりそう(主にタケルが)なので、近寄れなかった


「アンタ達、ヤキモチするのは良いけど、まだ白銀には用事があるんだから手加減しなさい。」


「むっ…」

「ヤ、ヤキモチ等では…」

「…スミマセン。」

イタズラの根源である香月博士に注意を受ける三人
素直にはなれない真耶と沙耶だが、霞1人だけは素直に謝る。


「まぁ…白銀はそのまま話を聞いてなさい
さて、白銀がボコボコにされて気を失ってる最中に、リーディングとプロジェクションで『白銀の記憶』を見た訳だけど…どうかしら?」


「……………」


香月博士から問われるが、想像を絶する事に言葉が出てこないでいた。

二度のループを繰り返し、様々な試練に巻き込まれたタケルに、慰めの言葉すらかける事が出来なかった。


並列世界を移動し地獄のような結末を迎えた一度目の世界
ループし、10月22日に戻る事が出来、歴史を変更するものの、タケルの大切な人達を失う結果になった二度目の世界

そして、元々住んでた世界で波瀾万丈な生活を楽しんでた、元の世界



その3つの世界の記憶を知り、白銀夫妻や椿達は香月博士の言う事が真実である事が証明され
真耶はタケルの言ってた事が真実と証明されたのだった



「今回白銀の記憶を見せたのは特別よ
今後誰にも見せるつもりは無いわ…例え殿下でもね
それぐらい白銀の存在は重要機密の塊とも言えるの
人類の未来が『希望と地獄』の2つに選択されるぐらいにね…」


ゴクリと息を呑む一同
タケルの重要性を今初めて理解する。


「並列処理装置の根本理論…『奇跡のOS』と呼ばれるXM3…『歴史』という情報…
後は異性だろうが同性だろうが、惹きつけまくる白銀の人徳
最初と最後のヤツは置いといても、これだけの機密を白銀は握ってるのよ?
白銀の重要性がわかったでしょう?」


コクリと無言で頷く一同…
すると、イーニァが挙手する


「ユーコ、さいしょとさいごのは、なんでなの?」


「最初の並列処理装置の根本理論は、今回は私が覚えてるから『元の世界』に取りに行く必要が無くなったからよ
白銀の人徳に関しては、結構莫迦には出来ないモノよ
現に政威大将軍・煌武院悠陽殿下を始め、五摂家の斉御司家と九條家
斯衛軍大将の紅蓮大将に神野大将
そして五摂家に近い武家の月詠家
今現在だけでもこれだけの日本の重要人物達と親しくしてるのよ?
この後には将軍家縁の御剣冥夜を始めに…
内閣総理大臣の娘の榊千鶴
帝国陸軍中将の娘の彩峰慧
国連事務次官の娘の珠瀬壬姫
帝国情報省外務二課課長の娘の鎧衣美琴
これらの豪華メンバーに出逢うのよ?
此処まで来たら、白銀の人徳も莫迦には出来ないわ。」


「タケル…お前…」

「ハハハ…今考えてみると…凄いメンバーと出逢ってるんだな…オレ。」
「凄過ぎるわよ…」


香月博士の話を聞いて驚愕すら通り越して、呆れてしまう白銀夫妻
タケル自身も『オレ…そんな人達に馴れ馴れしく接してるんだな…』と再確認する


「あとね、白銀の人徳に惹かれた人物がこの白陵基地に居るわ」


「へっ?」


「以前、アンタが月詠中尉と対決した時のデータと前回の帝都でのXM3のテストデータを見せたの…
そしたら、ソイツ興奮しちゃってさ~、仕舞いには『日本に帰化しても良い』なんて事まで言ったのよ~♪」


「だ…誰ですか…その人」


タケルに惹かれて白陵基地にやってきた人物が凄く気になるタケル…



「---米国の戦術機開発メーカー『ノースロック社』の技術開発者の『エルヴィン・ロックウェル』
あの『世界一高価な鉄屑』と呼ばれた戦術機・YF-23ブラックウィドウⅡを開発した技術開発者の一人よ」


「「「---ッ!!!」」」


噂に名高いYF-23の名前を聞いて驚愕する椿達と白銀夫妻


「白銀の変態機動見たら興奮しちゃってさ~
急にブツブツ言い出して『彼の機動特性を生かせる機体を創ってみせる!!』って言って、今現在ハンガーでブツブツ言いながら開発に取りかかってるわ」


「開発って…何を…?」

恐る恐る質問するタケル…
すると、香月博士は良いカンジに笑みを浮かべて答える。



「不知火の改良型を今開発してるのよ。
帝国軍の改良とは違うけど…此方の不知火は、アンタの機動特性やXM3を重視した機体に取りかかってるのよ。
後々A-01の主力機として目指しているわ。
そして、その機体のテストパイロットにアンタを予定してるわ。」


「ええぇぇぇぇっ!!?」




突然の爆弾発言に驚愕するタケル。
他の者達すら言葉が出て来ない状態だった…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第八話
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/09/26 06:20
「よっこいしょ…」


ベッドに腰を降ろすタケル。
香月博士から今後の日程を聞いた事を思い出す。

白陵基地での日程は2日間、
明後日の午後には帝都に帰る予定になってるので、それまでにはXM3をある程度進め、今後タケルの所属する中隊での開発を進める為に、現在香月博士と霞が急ピッチでバグの撤去や修正を急いでる。


「オヤジ達は隊に戻ったし…
ハンガーにでも寄ってみるか…?」


やる事を決めて立ち上がるタケル。
真耶の居る部屋に訪ねに向かう。


「月詠中尉、居ますか?」

「ああ、入って構わんぞ。」

「失礼します。」

ノックをしてから声をかけ、確認をするタケル。
真耶の許可を貰い、中に入る。


「どうした?」

「いや…ちょっとハンガーに寄ってみようかと思って。」

「例の…エルヴィン・ロックウェル…とやらか?」

「ハイ。」

コクリと頷くタケル。
真耶も『フム…そうだな…』と興味を示す。

「わかった、一緒に行こう。
椿様達にも伝えた方が良いだろう。」

「ありがとうございます。」

予定が決まり、部屋を出て椿達の部屋に行き、一緒にハンガーへと向かう。


「エルヴィン・ロックウェルか…どの様な者なのだろうな…」

「先生みたいなマッドな人だったりして…」

「…止めてくれ、白銀…
足が止まってしまうではないか…。」


沙耶がエルヴィン・ロックウェルの人物像を想像してると、タケルの一言で足が止まり、拒否反応を見せる真耶


ハンガーに着き、近くにいた整備兵に、エルヴィン・ロックウェルの居場所を聞きだす。

「其処の整備兵の兄さん、作業中済まないけど、エルヴィン・ロックウェルさんが何処に居るか知らないかな?」


「あ…ハッ、ハイ中尉殿。
エルヴィンさんは奥の設計室で唸ってます。」


「唸ってる?」

「なんでも、不知火の改良型を製作するとかで…
色々考え込んでるみたいですよ?」


「そっか、作業中ありがとう」


タケル達に敬礼して見送る整備兵。

「…なんか、ああも『下から目線』でかしこまれると、ムズムズするな…。」

「何、直ぐに慣れるさ。
白銀とて、いずれは昇進して自分の部下を持つようになるんだ。
その時は貴様が指示を出さねばならんのだ。」

「『形だけ』の小隊長しかやった事が無いから緊張するなぁ~…。」


いずれ上に立つ身になる自分が想像出来ない為か、戸惑うタケル。
真耶や椿達がタケルに色々とアドバイスを教えると、設計室に辿り着く。

「失礼します、エルヴィンさん居ますか?」


「………(ブツブツ)」
設計室に入ると、金髪の中年男性が、ブツブツと椅子に座りながら、考え込んでる。


「…エルヴィンさん…?」

「…うん?
誰だね、君は?
何の用かは知らないが、今私は忙しいのだ。」


「お忙しい所スミマセンでした。
俺は、帝国斯衛軍第17大隊第1中隊の白銀武中尉です。
香月博士からエルヴィンさんの事を聞き、訪ねて来ました。」

「シロガネ…タケル…
おお…オオォォォッ!!
君がっ!!君がシロガネ・タケルかっ!!」


ガバッと立ち上がり、タケルの手を握り締め、握手するエルヴィン


「君がミスター・シロガネか…。
思った以上に若いね。」

「み、みすたぁ~!?
そ、そんな…『白銀』で良いですよ、エルヴィンさん」


「ハッハッハッ!!
謙虚とは、なかなかの好青年ですな、シロガネ中尉」

タケルに出逢い、一気にテンションが上がるエルヴィン。
その後、真耶や椿達の自己紹介をすると、先程の態度を詫びるエルヴィンに驚く真耶達


「いやぁ~、スミマセンでした。
考え事が行き詰まっていて、少し機嫌が悪くなってました。
先程の暴挙をお許し下さい。」

「い、いえ…構いませんわ。
私達がタイミングの悪い時に来ただけですから。」


少し戸惑う椿
先程の機嫌の悪いエルヴィンが一気に良くなっていた。

「それでエルヴィンさん、何に行き詰まっていたのですか…?」

「フム…丁度良いかも知れないですね…。
実は、機体の機動スピードの事で色々悩んでたのですが…
シロガネ中尉に質問ですが…時速800キロを超えるスピードでの、あの機動は可能でしょうか…?」

エルヴィンの問いに対し、タケルは少し考えて答える


「可能…ですね。
但し、勿論訓練しないと駄目ですし、関節部の強化もしないといけないですね。
勿論関節部に蓄積ダメージを溜めないように、俺自身の実力を上げないと駄目ですし、一番の問題として、やはりXM3を完成しない事には駄目ですね。」


「フム…問題は山積みか…」


溜め息をしながら、考え込むエルヴィン。


「今現在、タイプ94には『肩部スラスターユニット』と『ジネラルエレトロニクス・YFE120-GE-100』を装備する予定なのだが…
私としては、君の機動を生かす為にもう一工夫が欲しいのだ。」


「背中に…ダメか。
背中にスラスターユニットを付けたら担架等が装備出来なくなる。」


『一工夫』が出て来なくて悩むエルヴィン


すると、タケルが---

「…脚部に付けたらマズいッスかね~?」


「「「はっ?」」」


「脚…部…?」

タケルの一言に全員が注目し、唖然とする

「脚部の外側の方に小さな噴射口を付けたら…ダメ?」


「無理だろ…
それこそ脚部にダメージが…」

「可能だ…」


「「「はっ?」」」


今度はエルヴィンの一言に唖然とする椿達



「別に今ある脚部を改造して、取り付けなくてもいい…。
付属パーツとして、取り外し可能にすれば、強度の問題の心配は無い…。
小型の噴射口を付ければ推進材も少なくて済むし、無くなれば軽量化の為、取り外して捨ててもいい…。」


再びブツブツと考えこむエルヴィン。


「そうだ…どうせ付けるのならば、プロテクターの役割としても作ればいい。
軽量に作れば、多少の防御力アップにも繋がるし…
膝まで作れば…推進材の燃料タンクも…フフフ…」

突然嗤いだすエルヴィンにビクッと怖がるタケル達…そして…。


「『脚部スラスターユニット』を創ってみよう。
まずは実験して試してから実用出来るかを判断すれば良い。
フフフ…流石はシロガネ中尉だ…
予想だにしない発想をするとは、流石は『天才衛士』だ!!」


『ハッハッハッ!!』と絶頂に気分が良いエルヴィン
タケルとしても、『元の世界』のロボットゲームを思い出して発言しただけであって、少し複雑な気分になる


そして、エルヴィンは『これから脚部スラスターユニットの設計図を作るので…』と言い、作業に取りかかった為、退室するタケル達…


「…違う意味で、先生と同じだったよ…」

「そうか…」


先程の予想とは違う意味で当たった事を思い出すタケルと真耶だった…


ハンガーから出て、部屋へ戻る最中、廊下の窓ガラスから夕陽の光が照らされる

「むっ…もうこんな時間か…」


真耶がチラッと腕時計を見ると、既に午後4時を過ぎていた


「おや、まだ訓練してる部隊が居ますね…」

「どうやら訓練兵のようですね。」


「えっ---」


すると、椿と沙耶がグランドで訓練で、ランニングしている訓練部隊がいたのを見つける。
それを聞いた途端、タケルの身体が自然と走りだし、グランドが良く見える窓から覗きだす。


「どうしたのだ、白銀…突然走り…白銀…?」


真耶が見たモノは---
タケルの目尻から『涙』が流れていた。


「どうしたの…白銀中尉…?」


「へへっ…情けねぇや…
このぐらいで…泣くようじゃ…まだまだ若造だな。」



タケルの見つめる先には---

恩師である『神宮司まりも軍曹』
尊敬する先任の『速瀬水月』と『涼宮遙』の訓練兵時代の頃の姿だった…。


「あれは…確か『記憶』にあった…。」


「ハイ…俺をここまで育てて下さった恩師の神宮司まりも軍曹と『伊隅ヴァルキリーズ』の先任だった速瀬中尉と涼宮中尉です…。
そっかぁ…この時代の頃は訓練兵だったのか…。」


涙を拭い、再び尊敬すべし人達を見つめるタケル。


「今度こそ--
必ず守らなきゃなっ!!」

決意を改めて決めるタケル。
オリジナルハイヴの攻略は当たり前。
それ以上にすべき事は『大切な人達を守る事』
それこそが三度目のループの目標なのだ。


「……スミマセンでした…部屋に戻りましょう。」


「…良いの…?
会って話ぐらいは構わないのよ…?」


一方的ではあるが、再び再会した事に感涙するタケルを気を使い、『会ってみないか?』と声をかける椿


「…大丈夫です、九條少佐。
今は…我慢します
でないと…今逢ったら、大泣きしますから。」


「…そうか…では行こう。」


再会を我慢するタケル。
そんな姿を見た真耶は、タケルを気使い、部屋に戻る事にした…。





「あれ、斯衛の人達帰って行くわ…」


「ハァ…ハァ…本当だねぇ…」

ランニングを終えた速瀬と涼宮
休憩しながら、タケルの去る姿を目撃する


「なんかあの男の人、泣いてたような…」

「うん…なんかあったのかな…?」


ちゃっかりと、タケルが涙を流した所を目撃していた二人


「小隊集合っ!!」


「やばっ!!
神宮司軍曹が呼んでる!!」

「急ごう、水月」


召集をかける神宮司軍曹の下に、集まる速瀬達…
その頃にはタケルの姿はもう消えていた…。





「ん…何だ?」


部屋に戻る為、エレベーターに乗る際、周囲に騒ぎが有った



「あら白銀、今まで何処に居たのよ?」


「いや、ハンガーに行って、エルヴィンさんに会ってました。」


「エルヴィンに?
そう、まあ手間が省けたわ。」


「それよりどうしたんですか、この騒ぎ?」


「ついさっきね、この基地内に侵入してた『スパイ』を捕まえた所なのよ。
社達にリーディングして貰った結果、米国のスパイだった事が判明したわ。」


「ええっ!?」


基地内に米軍のスパイが侵入してた事に驚くタケル達


「侵入した人数は捕まえた奴一人のみ
ただ、今回は九條少佐達が来観してるだけあって、重要な場所は警備を強めてるの。」


「なる程…そうでしたか…」


事の事態を察し、理解する椿。
すると、香月博士の表情が『でびるふぇいす』に変わっていた…。



「…先生…この期に及んで、何を企んでます?」

「べっつに~☆
ただ、今回の件もあって、白銀や九條少佐達には『安全』を持って、部屋を『移動』して貰っただけよ~?」



「…ま…ま さ か …」


嫌な予感がバリバリしているタケル
香月博士の話を冷静に、推理した結果-----




「も…もしかして…
『大部屋』に移動…したんですか…?」

「「「はっ!?」」」


「大正解~♪
流石は白銀、良く解ったわね~。」


香月博士の呑気な言葉と同時に、石化になるタケル達
『大部屋』に引っ越されてしまう。



「ああああ…アンタはアホか----!!
こんな時にこんなイタズラしよって!!」


「あのねぇ…表向きはアンタは、九條家の護衛として来てるのよ?
護衛が護衛対象と同じ部屋で何が都合悪いのよ?
お互いに同じ部屋で、寝泊まりしながら護衛すれば、一石二鳥じゃない?」


「いや、だからって…」

香月博士の暴走を止めようと、懸命に対抗するタケル
しかし、タケルの奮闘も虚しく、撃墜されるタケルだった。



「「「「…………」」」」


仕方無しに大部屋に入るタケル達…。
其処には、セミダブルのベッドが『3つ』横に重なるようにくっつけ、番線でぐるぐるに結束し、ベッドのそばにある棚の上にテッシュの箱を設置していた…。


その光景を見たタケルは、口から魂が抜け。
真耶は『またか……』と床にⅢorz…と落ち込み。
椿と沙耶は顔を真っ赤にしてアワアワしていた…。



そして、その夜---


「す~…す~…」


「ウン……」


「………(眠れね--!!)」



結局は四人共、ベッドに寝る事になった。
最初はタケルは『床に寝てます』とか『護衛しながら起きてます』とか言ってたが、『お前も護衛対象だから駄目だ』と却下される。


現在、ベッドの上には真耶・タケル・沙耶・椿の順に寝ている
椿を壁側に寝かせ、タケルを真耶・沙耶の間に寝かせていた



勿論タケルは反論して、『俺が端っこに寝ます』と言うが、
椿が『沙耶の隣に寝る時は気をつけてね、たまに沙耶はそばにあるモノを抱いて寝るから』と発言してしまい、真耶が『私の隣に寝るがいい』と発言する。
勿論沙耶も対抗して『私の隣は…嫌か…?』と発言。
結果、タケルには逃げ場が無くなり、真耶と沙耶の間に寝る事になった。

(フフフ…面白い事になったわ…)


悶えてるタケルを見て、こっそりと笑う椿。
案の定、沙耶はタケルを抱きながら熟睡。
真耶もタケルの頭を抱えながら眠りについていた…


(まさか真耶さんも白銀中尉の事を気になっていたとは…フフフ…
同棲してた効果かしら?)


三人の寝てる姿を見て、笑いながら眠りにつく椿…




そして夜が明け、朝を迎えると----


「……………えっ?」


一番早くに目を覚ます椿。
三人の寝相を見て硬直する。
真耶と沙耶の間に寝ているタケルに異常事態が発生していたのだ。


真耶のシャツが少し脱げ、豊満な胸に顔半分が埋まってる状態になり、そして、沙耶を抱えながら胸を鷲掴み状態のポーズになっていた…


「こ…これは…放置するしかないわねっ!!」

タケルを見捨てる選択をする椿。
今助けては、自分のイタズラと思われてもおかしくはない。
最良の案として、タケル一人が犠牲になるしかないと判断する椿。


「ご、ゴメンね…白銀中尉…」


助けない事に一応謝罪する椿。
勿論後に二人に怒られるタケルは、正座させられながら説教を喰らっていた…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第九話①
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/09/26 18:45
1998年・1月16日----

朝早くから、香月博士の研究室に集まるタケル達。
他にも白銀夫妻やクリスカ・イーニァ・霞も集まる


「おはよう、朝っぱらから面白い事やるとは、流石は白銀ね~♪」

「…ぐっ…既に知られたか…」


朝の説教が香月博士にバレて、いぢくられるタケル。


「因みに、現在は誰が本命なの?
鑑?御剣?それとも殿下?」


「「「「----ッ!!!!」」」」


香月博士の言葉にビクンと反応する真耶・沙耶・霞・クリスカ
母・楓は溜め息を吐きながら、『流石は影行さんの子ね…』と苦い思い出を思い出す



「実は…その事に関して、悩みがあるんですよ…。
母さんと先生…相談に乗ってくれませんか?」


「ナニナニ!?
教えなさい、相談に乗ってあげるわっ!!」

「…タケルも恋愛事で悩むようになったか…」


タケルの悩み事に対して、面白半分に聞く香月博士と、『我が子の恋の悩み』を複雑そうに真面目に聞く楓。


「以前言ったように、今の俺は『最初の元の世界』・『一度目・二度目の世界』・『現在の元の世界』の記憶を『全部』思い出してます…。
実は…そのせいで、複雑な問題が有って…恋愛どころではないんです。」

「…というと…?」


「『最初の元の世界』では、純夏と結ばれた『世界』があるんですけど…
違う『並列世界』では、冥夜や委員長達と結ばれてる世界もあるんです…。
そして『一度目のBETAの世界』も同じように…みんなと結ばれた記憶が複数有り…。
仕舞には、『現在の元の世界』でも、みんなの他に、更に悠陽…この世界の殿下や霞や柏木までの結ばれた世界の記憶があるんです…。」



「うわっ!?
なんか凄い事になってるわね…。」

「…難しい問題ね…」


記憶の問題のせいで、恋愛事に支障が出ていたタケル
その話を聞いた香月博士や楓は、難しそうな顔をしながら考える


「この問題解決しないと…みんなにも失礼だし…。
どうすれば良いんでしょ?」


「忘れろ…って訳にもいかないから、大変ね…。」


頭を悩ます楓。
予想以上の問題に困惑する


「そうね…解決案としては『リスタート』しましょう」

「リスタート?」


すると、香月博士が解決案を出す



「流石の私も、こればかしはどうしょうも無いわ。
だから解決案として、『リスタート』する事。
みんなの気持ちを知った上で再出発するのよ。」


「再出発…ですか…」

「そうよ。
勿論、この世界の御剣達はアンタとは出逢ってないから好意は無いわ。
けど、恋愛原子核のアンタなら、間違い無く出逢えば恋するわ。
ならば、今此処でアンタは再びスタートすれば良いの。
結果、みんなの誰かと結ばれるのか。
それとも、みんな以外の誰かと結ばれるのか。
それともヤッパリ、恋愛原子核を大爆発させて、ハーレムの道を歩むのもひとつの道よ。
そして、それを決定するのは…アンタ自身よ。」

「ハーレムって、アンタ…。」


「因みに言うと、ハーレムの道が、今現在確率が限りなく高いわ。」


「んがっ!?」


真面目に相談してた筈が、いつの間にか再びタケルをいぢくられる方向に持ってかれていた


「そういう事だから、あとは頑張りなさい。」


「ハイ……」


びみょーな終わり方をして、悲しくなってくるタケル。


(…もしかして、私も結ばれる事が出来るのか…?)


そんな事を頭の中で考えてた真耶
すると、沙耶・霞・クリスカがコクリと頷く


「えっ!?」


その姿を見て、驚く真耶
ぶっちゃけ、三人にリーディングされてたのである



「さて、本題に入るわよ。
今日の予定として、午前中はXM3のテストをするわ
今回はエース級の衛士が搭乗する旧OSの吹雪が『仮想敵』アグレッサーとして一機出るわ
その一機と1対1で戦って貰うわ」


「了解」


「それが終わって問題無いならば、此処に要る私と社以外のみんなも交えてXM3のテストを進めるわよ。
あっ、そうそう…
その時に『他にも一人追加』する事になるわ」


「……?
了解しました。」


香月博士の言葉に引っかかるタケル達…
その後、タケル達は退室すると同時に受話器を取り出す香月博士



「ああ、私よ…
済まないけど、-----を此処に呼んでくれない?
そう…急ぎの用事よ…」


ガチャリと受話器を本体に置く香月博士。


「フフッ…楽しくなって来たわ…。」

怪しい笑みを浮かべながら、呼び人を待ち続ける香月博士だった…。


それからしばらくして、強化装備を身につけてシミュレータールームに入るタケル

シミュレーターに乗り込み、準備する。


「準備完了しました、先生。」


「わかったわ、向こうも既に完了したわ
それじゃ…始めるわよ」

シミュレーターを起動し、ステージが現れる


ステージは、この柊町を戦場とした市街地。
二度目の世界の市街地跡演習場を思い出し、懐かしく思うタケル。



「さてと…どうやって敵を見つけるかな…」


相手はエース級の衛士
ちょっとした脅しには乗って来る筈は無い。
策を考えながら、静かに隠密行動を開始する。





「…キリが無いな…」


開始してから10分が経過。
しかし、未だに相手の動きを捉える事が出来ないまま、時間が過ぎていく。


「こりゃ…危険覚悟で、空に出て誘き出すしか無いか…?」


危険を承知でそばに有ったビルの屋上に連続噴射跳躍で飛び乗り、其処から飛んで移動する。



『なっ、なんだと…!?』

その行動に驚く仮想敵。
自らを空に飛び立ち、姿を晒す行為に戸惑う。

『狙撃するか…いや、恐らくは、私の位置を知る為の罠…。
仲間の居ない1対1の対戦でするとは…余程の腕前か…余程のバカか…?』


結構酷い事を言う仮想敵。
しかし、この行動に対し、どうするかを悩みだす。


『…誘いに乗るか…?』


確かにこのままではキリが無い。
それならば、見つかる危険を覚悟して狙撃するまでだ。




120mm滑空砲を構え、白銀機である不知火を狙いを定める




『----ファイヤッ!!』


滑空砲を撃ち出す仮想敵。
だが、白銀機は突然アクロバットで回避する!!


『----何っ!?』


「----アブなっ!?」

狙撃された場所を即座に捜索し、仮想敵の吹雪を発見する


「いたっ!!」


『クッ…見つかったか!!』


後退しながら突撃砲で白銀機を攻撃する仮想敵。
白銀機も仮想敵の攻撃を回避しながら突撃砲で反撃する。


『なっ!?
動きの切れ目が無いだと…!?
それに、硬直時間が…少な過ぎるッ!!』


白銀機の動きを見て驚愕する仮想敵。
経験したことの無い動きに翻弄される。
後退しながら左右にと移動しながら、狙撃をするが、白銀機の倒立反転からの三角飛びで回避され、しゃがみながら匍匐飛行で突撃しながら、長刀装備する。



『接近戦だと…良いだろう!!』

仮想敵も長刀に装備し、白銀機に突撃する。



お互いがぶつかり合う瞬間---事態は動いた。

「オオォォォッ!!」


『な、何ィィィッ!!?』


お互いがぶつかり合う瞬間。
白銀機が突然地面スレスレに『スライディング飛行』し、そのまま仮想敵の足下を横切るようにすり抜け、空に飛行しながら仮想敵の背中を斬りつける!!


『なんだと…!?』


背部が損傷を受け、動きを封じられる。
担架に装備した突撃砲が盾になる形のおかげで、大破判定は免れたものの、突撃砲を失い、同時に動きも封じられ、為す術が無い仮想敵。



『ク…ソ…動けッ!!動くんだっ!!』


操縦桿をガチャガチャと動かす仮想敵だが、鈍く動くしかない仮想敵の吹雪は、着地した白銀機に突撃砲で狙撃され、大破判定を貰う



コクピット内が暗くなり、CPから撃墜報告が告げられる


『クッ…なんなんだ…あれは…!?』


先程まで繰り広げられた戦いに困惑する仮想敵


すると、モニターが映りだし、香月博士が現れる

『お疲れ様~。
済まないけど、もう暫く其処で待っててね~♪』

妙に明るい表情をしながら報告する香月博士
『何を企んでるんだ…?』と察する仮想敵。




「ふぅ…すげーよ先生…。
もうあそこまでXM3を完成させるなんて…。」


短時間で現在のXM3の完成度に驚くタケル。
それと同時に気になる事があった。


「さっきの仮想敵…誰だろ?
けど、さっきの吹雪の動き…見た事があるような…」


「お疲れ様、白銀
どうだった、今回のテストは?」


仮想敵の事を考えてると、香月博士や他のみんながやって来る。


「かなり良いカンジでした
これならみんなと一緒に『賢く』しても大丈夫ですよ」


「そう、良かったわ。
それなら、このあとみんなで開発するわよ。」


「ハイ」


やっと先に進む事に嬉しくなるタケル達。
すると、香月博士がニヤニヤと怪しい笑いをしながら、発言する


「さて、今回の『仮想敵』アグレッサーを紹介するわ。
良いわよ~、出て来なさい」


シミュレーターデッキのハッチを開き、仮想敵を紹介する香月博士

そして、現れたのは----!!



「な゛っ!!?」

「「「-----ッ!!」」」


仮想敵の姿を見て驚愕する、タケル・真耶・沙耶・椿



「これが今回の『仮想敵』アグレッサーの『神宮司まりも軍曹』よ。
そしてまりも、そこの強化装備を着てるヤツが斯衛軍の白銀武中尉よ。」

「「…………え゛っ!?」」


お互いに対戦相手を見て驚愕するタケルとまりも…
タケルは恩師との再会に驚き。
まりもは自分を負かした相手が、自分より年下の者と知り、驚く



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第九話②
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/09/26 18:44
「こ、これは失礼しました、中尉殿。」

「い、いえ、お互い様ですから、そんな畏まらなくても…。」


先程の反応に非があると思い、陳謝するまりもだが。
尊敬する恩師に頭を下げられる事を困惑し、謝る必要は無いと、下手になりながら、タケルもペコペコと謝る。



「さて、まりも。
さっきの『賭け』は私の勝ちね。」


「あのねぇ…夕…香月博士。
『賭け』と言っても、博士の一方的に決めた事じゃないですか。」


「それでも賭けは賭けよ。
安心なさい、そんな『大した事』じゃないから。」


「……怪しいものだわ。」


タケルとの戦いの前に、香月博士の一方的な『賭け』に参加させられるまりも。
その時、タケルの脳裏には『この世界のまりもちゃんも、先生に苦労されてるんだなぁ…』と、深く同情する。


「…それで、私にどんな罰ゲームを与えるのですか…?」

既に諦めて罰ゲームを受け入れるまりも。
近くにいた、タケルや真耶はまりもの事をひたすら『お気の毒に…』と、心の中で合掌する。


そして、香月博士の出す『罰ゲーム』とは----



「今からまりもは、白銀に『まりもちゃん』と呼ばれる事よ。
他の部隊とか居る時の呼び方は、白銀に任せるけど、私達や速瀬達の前では『まりもちゃん』と呼ばれても怒らない事。
…どう?大した事じゃ無いでしょう?」


「「な゛っ!?」」


罰ゲームが『まりもちゃん』と呼ばれる事になってしまい、驚愕するタケルとまりも。
その様子を見て幸せそうな表情をする香月博士を見て、真耶達は『キツいな…それ…』と自分がされてるのを想像する。


「さあ白銀、遠慮無くまりもを『まりもちゃん』と呼びなさい。
呼ばなかったら、無い事を有る事にして、噂バラまくわよ。」


「アンタ…鬼や…。」


最早退路を断たれたタケル。
重い口を開けて呟く。


「す、スミマセン…まりもちゃん…。
先生には逆らえないモノで…。」


「はぅ~…。もう諦めてるから良いです…。」


恩師に『まりもちゃん』と呼ぶ事を詫びるタケルだが、既に諦めてるまりもの発言を聴いて『スミマセン…』と心の中で謝る。



「フフッ…。罰ゲームを見た事だし、本題に入るわ」


面白い場面を見て満足する香月博士。
其処から本題に移り出す。


「今回のまりもとの対戦は、まりもにXM3の性能を体験して貰う為よ。
そして同時にまりもにも、XM3の開発に参加して貰うわ。」


「ちょ、ちょっと待って下さい、博士。
何ですか…そのXM3とは…?」


香月博士は、まりもにXM3の事を詳しく教える。
それを聞いたまりもは、驚愕と同時に期待感を高める。


「そして、まりもがXM3をモノにする事が出来たならば、まりもは速瀬達に…そして、後々の訓練兵にXM3の慣熟訓練の教官になって貰うわ。
それが今回、まりもに『仮想敵』アグレッサーを頼んだ理由よ。」



「な、なる程…。それならば、今回の件は納得出来るわ」


やっと納得の出来る理由を聴いて少し安心するまりも。



「XM3の開発には、国連軍は白銀影行大尉を始めとして、白銀楓中尉・まりも・クリスカとイーニァよ。
帝国軍は、白銀武中尉を始めとして、其方に居る月詠真耶中尉・五摂家の九條椿少佐と九條沙耶大尉。
あとは、九條椿少佐の第1中隊よ。」


「えっ…五摂家の九條…様…?」


香月博士の一言で硬直し、ギギギ…と鈍い動きをしながら椿と沙耶を見るまりも。
そして、椿達が自分達の自己紹介をすると、大爆発するように驚愕し、土下座しながら陳謝する



「ススススス…スミマセンでしたッ!!
ままま…まさか九條様方が居るとは知らなかったとはいえ、数々の無礼を…お許し下さいッ!!」


「い、いえ、頭を上げて下さい、神宮司軍曹。
別に貴女を責めたりはしてません。」


ゴリゴリと、床に頭をこすりつけるまりもを止める椿。
その姿を見てプルプルと笑うのをこらえる香月博士を見て『悪魔だよ、この人…』と心をひとつにして思うタケル達だった…。




「ハァ…疲れたよ…。」

あの後、XM3の開発の為、まずはみんなの慣熟訓練から開始する。
ズッコケる人は居なかったが、やはり跪いたり、よろめいたりするの事を、タケルを除いた全員が体験する事となる。


『この動きをケロッとこなすアイツって、何者?』と全員が思い、香月博士がタケルの機動を『変態機動』と呟くと、全員が同意する。


その後、香月博士の提案で、シミュレーターでの複座で、タケルの変態機動を体験して、慣熟訓練の進行を早めようと提案する。
そして、タケルは香月博士から『全力機動』を許可されてヤル気満々になり、賛同する。


最初の同乗者(犠牲者?)はまりも
タケルの変態機動を、モノにしようと意気込みながら搭乗し、スタートする。



五分後-----



『う゛う゛ぅ…ウプッ!?』


『だ、大丈夫ですか、まりもちゃん…?』



『『『『!!!!!?』』』』

出て来たタケル達を見て驚愕する一同。
その理由は様々だが、一番の理由は、タケルがまりもを『お姫様抱っこ』をしながら出て来た事。
主に真耶・沙耶・霞・クリスカが注目する。


勿論これも香月博士のイタズラだったのだが、流石に親友の様子を見て『ゴメン…まりも…』と心の中で謝る。


しかし、乙女である彼女達の注目は、あくまでも『お姫様抱っこ』である。

気分を悪くし、歩けない状態になり、タケルにお姫様抱っこをしてもらう…。
…そんな可愛らしい考えをする彼女達。
すぐさま次の同乗に挙手する彼女達だが、結果は半分幸せ、半分後悔という結果だった。


因みに霞は、乗れない事に激しく落ち込むと同時に、無様な自分を見せないでホッとする結果になった。



こんな事もあり、全員がグロッキー状態になり、午後の訓練は中止になる。
そして、このタケルの全力機動が、後の訓練兵達に恐れられる『恐怖の全力変態機動』を戦術機適性検査で体験する事はまだ誰も知らない。



『あの…白銀中尉…ですよね?』


「ん…貴女は…?」

すると、タケルの背後から帝国軍の少尉が話しかけて来る。


『私は白銀大尉の部下の金田早紀少尉です。
スミマセンが、白銀大尉はどちらに…?』


「オヤジ達は訓練中に…気分悪くして…今は医務室で休んでるよ。」


『えっ…どうしようかしら…』


影行と楓が体調不良で、医務室で休んでると知ると、困った顔になる金田少尉


『スミマセンが…白銀中尉、白銀大尉の代わりに『面会者』にあって貰えませんか?
今、正門前で待ってるようなんです』


「面会者?
わかりました、オレが代わりに会って伝えておきます。」


「ありがとうございます、中尉」



影行の代わりに、面会者に会う事になったタケル。

そして、正門前に辿り着くと-----



「す、純夏?」


「タ、タケルちゃん!?」
幼なじみの鑑純夏との『再会』をするタケルだった…。



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第十話
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/09/27 23:54
「ハァ~…やっとこ終わったよ…。」


基地内に入る為、身体検査やら、講習を受けたりして、一時間程かかり、疲れる純夏。
心の中でタケルは『オレの時よりは短いから、まだ良い方だ』と呟く。


「それにしても…タケルちゃん…。
背…伸びた?」


純夏の口から、恐れていた事を呟き、内心ビビるタケル。
今、純夏と出逢って恐るべき事は、『この世界のタケル』と『元の世界から来たタケル』の外見的特徴の違い。


この頃14・5才の純夏やこの世界のタケルに比べれば、今のタケルは10センチ程違いが有る。

顔も多少幼さが消えた事により、純夏に怪しまれる危険性があった為、すぐに純夏に会う事が出来なかった。



「そ、そうか?
訓練とかしてるから、多少は背が伸びたかもな~…。」

冷や汗ダラダラと滝のように流すタケルだが、懸命に純夏を誤魔化す事に専念する。


「でも、それ以上に、その服装…タケルちゃんには似合わないよ…。」

「…言うな…純夏…。
それは、オレが一番わかってる事だ…。」


突然の致命的な一言で、グサリと心を抉られる気分のタケル。
純夏もすぐにフォローを入れるが、後の祭りだった。


「そういや、オヤジ達に何の用だったんだ?」


「おじさん達に、タケルちゃんの事聞こうとしたの。
あと、おばさんの頼まれ事を済ませたから、その報告だよ。」


「頼まれ事?」


「電気代やら水道代の支払い。
食料の補充に、掃除洗濯…。
本当なら、タケルちゃんの仕事が殆どなんだからね~!!」


「す、すまねぇ…。」



少し怒ってる純夏にビビるタケル。
いつ、あの恐怖の『どりるみるきぃぱんち』が飛んでくるか、ビクビクしていた。


「あと、香月夕呼博士って人に用事があったんだ。」


「先生に?」


「まだ早いけど、『国連軍に入らない~?』ってお誘いが有ったの。
入れば、時々だけど、タケルちゃんに会える機会が増えるって、言ってたよ?」


(先生…手打つの早いな~…。)


香月博士の早さに少し驚くタケル。
しかし、この事に関しては、タケルにとっても好都合だった。


まずは、BETAが本土上陸した際、この白陵基地にハイヴを建設されるまで、純夏の安全を確保をする必要があった。

それでなければ、先生のせっかくの『人間の状態で00ユニット化』する研究が無駄になる。
そしてタケル自身も、純夏に再びBETAに捕まる事だけは、絶対阻止するべき事だった。



それに、純夏を衛士にするにしても、そう簡単に戦場へは出さないだろうし、出しても必ず何らかの理由を付けて、護衛を付けるだろう。


それ故、今回の国連軍への誘いは都合の良い手段だった。



「そうか、それで純夏はどうするんだ?」


「受けるよ。
けどその前に、基本的な勉強とかしないといけないから、訓練兵になるのは、次の編成の時だって。」


(次の訓練兵の編成って…確か宗像中尉が居たよな…?)


宗像美冴中尉を思い出し、少々不安になるタケル…。
『純夏が宗像中尉のように成長しませんように…』…と切実に願っていた。


「そういえば、タケルちゃん。
おじさん達はどうしたの?
それになんで、タケルちゃんが迎えに来たの?」

「オヤジ達は、訓練で具合悪くして、医務室で休んでたんだよ。
オレは代理として面会者に説明して、機密情報とかじゃなかったら、待って貰うか、オレから伝えておくって言うつもりだったんだよ。
そしたら面会者が純夏だったからビックリしてたんだよ。」


「そっかぁ…おじさん達大丈夫…?」


「ああ、さっき連絡したら、面会ぐらいなら大丈夫だって、言ってたぞ。」


「そっかぁ…良かったぁ…。」


影行達の安否を聞いてホッとする純夏
そして、影行達の待ち合わせ場所として、PXに到着する。



飲み物を飲みながら、談話をしてると、影行と楓・真耶と霞がやって来た。


「遅くなってゴメンね、純夏ちゃん。」


「おじさんとおばさん…大丈夫ですか…?」


「大丈夫よ。
…少しまだ残ってるけどね…。」


遅れて来た事に謝る影行。
具合悪そうな影行達を見て心配する純夏だが、少し強がる楓。
けど、やっぱり気分は悪い。



そして、純夏は楓に用件を伝えて、電気代等のお釣りを返す。
すると、未だに気分の悪い真耶がタケルのそばに着く。


「…大丈夫ですか、月詠さん。」


「少し…な…。
流石に先程は…強がり過ぎた。」


例の『お姫様抱っこ』の件で、真耶は少し強がりながら、タケルの全力変態機動に耐えてたのだか。
『お姫様抱っこ』されるのは嬉しいが、この悪酔いの凄まじさに少し後悔していた。


「…タケルちゃん、その人は?」


乙女センサー(アホ毛)がビンビン反応する純夏。
『コイツは強敵だ!!』と本能で悟る。


「月詠真耶中尉だよ。
オレを『保護してくれた人』であり、現在月詠さんの家に同居…ていうか、居候としてお世話になってるんだ。
…一応言っておくが、同居の件は全て先生の仕業だからな…。」


「え゛え゛ぇぇぇっ!!
どどどど…同居!?」


『同居』という言葉に驚愕する純夏。
『コレは乙女のぴんちだっ!!』と本能で悟り、警報を鳴らす。


「………月詠真耶だ、宜しくな、鑑純夏殿。」

「………宜しくお願いします、月詠さん。」


バチバチと凄まじい火花を散らす純夏と真耶。
恋のバトルに感づいた影行はテーブルの下に避難しながらブルブルと震え、楓もその光景を見て、『昔の私を思い出すわ…』と影行を巡る恋のバトルを思い出していた。


一方、タケルは----



「………(ガクガクブルブル…!!)」


激戦地の特等席に居る為、恐怖をモロに受けていた。



そして、PXの入り口付近では----




「フフフッ…鑑を中に入れて正解ね…!!
それにしても、白銀のヤツ…恋愛原子核が絶好調のようね。」


「…出遅れた」


「むぅ…」


入り口付近で隠れながらタケル達を覗き見していた、香月博士と、椿・沙耶・クリスカ・イーニァだった…。


「コワいよ…コワいよ…」


「タ…タケルちゃん…ゴメンね…。」


「済まない…白銀。」


恐怖の特等席で、ずっと脅えていたタケル。
途中から入ってきた香月博士達の登場のおかげで、解放される。



「ヨシヨシ…」


「な、泣くな…白銀中尉…」

余りの恐怖に、PXの隅っこで、しゃがみながら泣くタケルを、霞・沙耶・クリスカが慰める



しばらくして---
やっとタケルが元気を取り戻して、香月博士と共に来た椿達を純夏に紹介する。



(タケルちゃん…随分と女の人に囲まれてるよぅ…。)


紹介する人全てが女性とあって、流石の純夏も危機感を感じる

すると、香月博士が純夏の考えを察し、純夏の耳元で呟く。


(安心なさい、鑑。
今、殿下が白銀のハーレム…ぢゃなくて、幸せを与える為に動きがあるのよ。)

(ハ、ハーレムゥゥゥッ!?)


『ハーレム』と言う言葉を聞いて戸惑う純夏。
香月博士も面白がって、更にとんでもない爆弾発言を口にする。


(今、法律を改正して、一夫多妻制にする動きがあるのよ…。
そうしたら、みんなで白銀を仲良く好きになれるのよ?)


(仲良くするのは良いけど…なんか複雑だよぅ…。)


(良いぢゃない、一夫一妻制だったら、下手したら鑑が結ばれない可能性があるのよ?
それに比べたら、確実に結ばれる方を選んだ方が得よ?)


(う゛っ…確かに…。)

香月博士の甘言に段々と洗脳されていく純夏。
香月博士も『あと一歩ね』と更に追い討ちをかける。


(さっきの月詠中尉も、白銀の『第一婦人』を狙ってて、さっき鑑に対抗心ぶつけてたのよ~。)

(そっ、そうだったんだ…)


すっかり洗脳完了されてしまい、香月博士の話を信じきってしまう。




「…なんか嫌な予感が…。」


「何故だろう…さっきから、私をチラチラと見てるのは…。」


香月博士がまた何かを吹き込んでる事に不安になるタケルと真耶
この事が知るのは少し先だったりする。


「先生…いい加減純夏に変な事、吹き込まないで下さい。」

「何よ白銀~。
これからが良い所なんだから~。」


「純夏、先生に言われた事で、変な内容は全て記憶から消去しろ。」


「えっ?え゛っ?」

少し混乱する純夏の為に、話題を変える事にする

「純夏クン…キミに特殊任務を授けようではないか。」


「特殊任務~?」


突然タケルの言う事に先程の混乱が吹き飛んでしまう純夏。



「任務は簡単だ…
其処に居る霞・クリスカ・イーニァの『友達』になる事が任務だっ!!!」


グワッとした表情で任務内容を公開するタケル
すると、純夏がポカーンとした表情でタケルを見る。


「友達になる事が任務~?」


「そうだ、三人には友達が少なくてな…ちょっと寂しいのだよ。
其処で、純夏クンの持ち前の明るさで彼女達をハッピーにしたまえっ!!」

ふざけながら純夏に霞達の『友達』になる事を頼むタケル
こうする事で、三人が表情豊かになって、元気になると考え、純夏を選んだ。



すると、純夏は霞をジロジロと見る…



「----可愛いいよぅ~♪」


「…えっ?」

突然霞を抱き締める純夏。
すっかり霞を気に入ったようで、安心する



「霞ちゃんって言うんだ?
こんな可愛い子なら、タケルちゃんの頼みじゃなくても、友達になるよ~☆
むしろ、妹にしたいぐらいだよ。」


「か…可愛い…!?」


純夏の猛烈なアタックに霞が真っ赤になるのを見て、ウンウンと見守る白銀親子


「ええ…と、どっちがクリスカさんで、どっちがイーニァさんかな?」


「わ、私がクリスカ・ビャーチェノワだが…?」


「イーニァはわたしだよ、スミカ」



「そっか、私は鑑純夏って言うんだ。
これから宜しくね♪」


二人の手を掴み、握手をする純夏に戸惑うクリスカ
すると、イーニァの表情が明るくなる。


「あったかいいろ…。
タケルより、あったかいいろが、いっぱい…。
イーニァやクリスカやカスミまで、あったかくなる…。」


純夏に抱きついてくるイーニァを優しく頭を撫でる純夏。
クリスカも一緒に抱き寄せて一緒に頭を撫でる


「なっ…!?」


「私に任せなさい!!
みんな纏めて友達にしちゃうんだから♪」


戸惑うクリスカだが、純夏の好意に嫌な感じは無く、むしろイーニァと同じ気持ちで接している自分に驚いていた。




「--凄いな…彼女は…」


「コレが純夏の一番の取り柄ですよ。」


霞達と同じESP発言体の沙耶も純夏の存在に驚いてしまう。
此処まで母性愛や包容力を持つ人物に始めて出会い、孤独だった霞達の心を解放する純夏の力。
無邪気でこの場の空気すら一変してしまう程の存在感に驚愕する。

そして、それを一番知っているタケルが行った一手は、彼女達の心を開くには、まさに最良の手段だった。


しかし---此処で予想外な出来事が起こってしまう




「スミカもタケルに『おひめさまだっこ』してもらった?」


「お、お姫様抱っこっ!!?」


「ウン、クリスカもイーニァも…みんなだっこされた。
スミカはだっこされた?」


この瞬間---PXの周辺に圧倒的な殺気が充満する!!


「タケルちゃん…。
私が寂しい思いしてる時に、そんな事してたんだぁ…?」


「ちょ…ちょっと待って純夏!?
コレにはちゃんとした理由が…!!」


幽鬼のようにユラユラと歩きながら、紅い眼光を発しながら、歩いて来る純夏を必死で説得するタケルだが、既に遅し。
両拳を顎の下に構えながら、テンプシーロールを描き出す。


「ちょっ…待て---」


「どりるみるきぃ~~~~ぱ~んちッ!!!」


「ぶへらっ!!」


必殺の右を放ち、タケルを天高く飛ばす!!



「「「え゛え゛ぇぇぇっ!!!!?」」」


その光景を始めて見た真耶達。
白銀夫妻は『飛んだわねぇ…』『飛んだなぁ…』と何時ものように眺めていた。
香月博士も、大爆笑しながら転がっていたりする。


後に電離層まで到達し、落下し、無事で帰還するタケルを『やっぱり…超人?』と見たり、
そのタケルを電離層まで飛ばした純夏の事も『…BETAも飛ばせるのでは…?』と思ったりするのだった…。



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第十一話
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/09/28 00:05
1998年・1月17日
京都・帝都城----



「あ゛あ゛~…酷い目に合ったな…。」


「フフッ…お疲れ様、白銀中尉。」


京都・帝都城に戻って来たタケル達。
香月博士から預けられたXM3のデータと、搭載された不知火一機を『おみやげ』として持って帰って来た。


エルヴィンの開発に関しては、『もう少し待ってくれ』との事で、今回は新型機のテストは無かった。



そして今日の午前中に、純夏の国連軍入りは済み、今日から白陵基地での生活が始まる。



元々、この世界の純夏の両親は、父親は衛士として死亡し、また母親は白陵基地の給仕として働いてた為、都合は良かった。


純夏の母親には、香月博士から説得され、少なくとも、今年一杯は衛士としての勉学に励む事になり、来年からは、神宮司軍曹の下で訓練兵になる予定だ。



「まぁ…純夏のそばには霞やクリスカ達が居るから、大丈夫か…。」


「心配ですか?」


「そりゃあ、幼なじみですから。
いっつも一緒にオレが居たからいいけど、今は離れてるから、アイツなりに寂しい思いしている筈ですから。」


「まぁ、ちゃんとわかってるのですね。」


「うーん…わかってる…というか…。
最初の頃のオレがそんな感じでしたからね…。」

「なる程。」


椿達と話しながら、部隊のみんなの待つ部屋に入ると----





『おっかえり~~♪
おっ、コイツが噂の天才衛士様か、椿?』


『コラコラ、『孝志』落ち着かんか…。』


部屋に入ると突然見知らぬ男性に迎えられるタケル。
しかし、どうやら椿達は知っているようだ。



「九條少佐…この方達は…?」



「この方達は、同じ第17大隊の第2中隊の者でして
此方の方が第2中隊の隊長の『斉御司政弘』大尉と、此方の陽気に迎えた方が同じく第2中隊の突撃前衛長の『崇宰孝志』大尉です。
お二人共、私と同じ『五摂家』の出身の者です。」


椿から紹介された、先程の男性2人。
五摂家出身の者と判明し、驚くタケル。



「へぇ~…それにしても、五摂家の方にしては…随分と陽気な方ですね。」


「孝志は崇宰家始まって以来の『問題児』でな…
本来、五摂家の出身としての教養を、悉く抜け出して、一般人のような振る舞いをしてるのだ…ハァ…。」



「いいぢゃん、崇宰家の当主は既に『隼人』兄さんが継いでるんだ。
兄さんだって『好きに生きるがいい』って言ってるんだ、こういう性格でいくさ。」


頭を悩ます政弘と、あくまでも陽気な性格を貫く孝志
そんな2人を見てタケルは『…五摂家も色んな人居るんだな…』と納得する。



「ええと、俺はつい最近入隊した白銀武中尉です。
宜しくお願いします。」

やはり最初は礼儀正しく…と接したタケルだが…


「堅苦しい挨拶は良いよ、タケル
もっとリラックスに行こうぜ?」


「コラ、孝志!!」



「…いいの?」


「OK」


孝志の接し方に安堵して、いつもの『馴れ馴れしい』タケルに戻る。
それを見て真耶と政弘は『問題児が2人になった…ハァ…』と溜め息を吐く。


「いやぁ~…良かったぁ~…。
こう…本来の喋り方が出たら失礼だしな~…って気をつけながらしゃべってたんですよ~。」


「だよなぁ~。
けど、この隊の中やプライベートな時は普段の接し方で良いぜ、タケル」

「ありがとうございます、孝志さん。」


『仲間が出来たぁ~!!』と喜ぶ孝志を見て『ヤレヤレ…仕方ない』と苦笑いをする政弘。
その様子を椿と沙耶はクスクス笑いながら眺めていた。


「斉御司政弘大尉だ、宜しく
プライベートの時は政弘で良いが、頼むから部隊内の時は『斉御司大尉』で呼んでくれ。」


「わかりました、斉御司大尉。」


政弘と握手をするタケル。


「父から白銀中尉の話は聞いている。
『天才衛士』と呼ばれる程の腕前で、先日第1部隊を殆ど一人で撃破したらしいな。
しかも九條少佐まで撃破したと聴いている。」


「嘘ォォッ!?
タケル、椿を倒したのっ!?」


「ハハハ…沙耶大尉には負けましたけどね…。」


椿を撃破したタケルに興味津々の孝志と政弘。
当のタケルは苦笑いをするしかなかった。



「タケル、今度俺と勝負するぞっ!!」


「良いですよ、孝志さん。
けど油断してたら、突撃前衛長の座を奪っちゃいますよ?」


「面白ぇ…いい度胸だ、タケル。
あ゛あ゛っ…!!任務帰りじゃなきゃ、今すぐ挑んでるのにっ!!」


タケルとの勝負をウズウズしてる孝志を見てタケルは『この人も速瀬中尉と同じタイプか…』と悟る


「よぉしっ!!
じゃあ、今日は仕事が終わったら、タケルんちで打ち上げするぞっ!!
椿達も来いよっ!!」


「え゛っ?」


孝志の言葉を聴いて『何故私の家で…?』と心の中で呟く真耶


「あの…オレ、今月詠中尉の家で居候してる身なので…。」


「えっ、そうなのか?
それは確かに、月詠中尉に悪いな…」



(ホッ…)


『家での打ち上げを避けれた…』と安心する真耶だが----


「ヨシ…可愛いお姉さんの居るお店でも探して…」


「ちょっと待って下さい、崇宰様っ!!」


『ソイツは駄目だッ!!』と全力で阻止する真耶
結局は月詠家で『少人数だけならば』という条件で打ち上げされる事になった…


「只今帰った。」


「お帰りなさいませ~…アラアラ~?」


月詠邸に到着するタケル達。
タケル達の帰りを待っていた、やちるが迎えに来ると、数人のお客を見て少し驚く。


「真耶様、お客様ですか~?
電話の一本でも、寄越してくれれば、準備しましたのに~。」


「済まない、やちる。
急な事でな…。」


「お邪魔しま~す♪」


「「「お邪魔します」」」

「ただいま…やちるさん。」


車から買い物袋を持って来る椿達。
タケルだけ買い物袋の量が多いのは、お約束だ。

「アラアラ、タケルさん。
凄い買い物袋の量ですね~…。」


「た…助けてくれると…大変嬉しいです…。」


タケルの持つ買い物袋を少し持ち、一緒に運ぶやちる。
そして、中に入り、居間に荷物を置くと…。




『なんだ、随分と騒がしいな?』


「おや?『真那』ではないか。」


タケル達の居る居間に『月詠真那中尉』がやってきた。


「お久しぶりですね、真那さん。」


「こっ、これは…椿様に沙耶殿…。
そ、それに斉御司政弘様に…崇宰孝志様までっ!?」


「こんちや~す」


「お邪魔してます」


五摂家のメンバーに驚愕し、思わず跪いて、頭を下げる真那。


「な、何故皆様方が、この屋敷に…?」


「…打ち上げをするそうだ。
主にそこの居候のおかげでな。」

「ええっ!?
オレのせいですかっ!?」

いきなり、悪者扱いにされてしまうタケル。
真耶も疲れてる中でのドンチャン騒ぎをされる為、少し不機嫌になる。


「…貴様が噂の白銀武中尉か…
なにやら色々と『変な噂』が流れてるぞ?」


「…もしかして、例の『婚約者』の話ですか…?」


恐る恐ると真那に質問するタケル。
真耶も不安げに話を聞く。


「それも有る。
真耶や椿様を撃破した話も聞いたが、他には『殿下のお気に入り』とか、現在殿下の法の改正案の一つに『一夫多妻制』の原因が貴様に有るとか…
もう既に『嫁候補が多数居る』とか…
あと…その中に真耶が入ってるとか聞いてるぞ…?」



真那の衝撃の発言に撃沈するタケルと真耶
勿論、この噂を流したのは香月博士であり、真実だから、尚タチが悪かった。


タケルと真耶が『またか…』と…深く落ち込み、Ⅲorz状態になる。


「すっげーな…タケル。
まさかハーレムを築く気とは…さすがだぜ。」


「…タケル、一応父から話は聞いてるから、誤解はせんが…お気の毒に。」

「あはは…恋愛原子核のバカヤローーーーッ!!
先生の馬鹿ぁぁぁっ!!」

慰める政弘の言葉すら届かないタケルは、庭から見える夕陽に向かって吠えるのだった…。




そして、既に深夜になり、打ち上げもお開きになり、眠りにつく事になった。
椿達や孝志達も、迎えの車に乗り、各自自分の家に帰る。



「オヤスミな、タケル
明日から頑張ろうな~♪」


「ハイ、孝志さんもお気をつけて」


五摂家の四人の中で、一番シラフに近かった孝志を見送るタケルと真耶・真那。



「たぁけるぅ~…ヒクッ!!
まだまだぁ飲むぞぉぉっ!!」


「…大丈夫ですか、政弘さん?」


そして、五摂家の四人の中で、一番酔っ払っている政弘が、普段とは違う面を見せていた。



「政弘は酒に弱いから、いつもこうなんだよ…。」


「大変ッスね…。」


酔っ払ってる政弘を車の中に押し込んで、出発させる孝志の手際の良さを見て、『大変だなぁ…』と同情する。



「オレも帰るわ、じゃあ、明日な~♪」


「お気をつけて。」



孝志を見送り、五摂家全員の帰りを見送りを終える


「さてと…後片付けをしないと…」


スタスタとタケルが屋敷に入った後、真那が真耶に近寄る。



「…変わった男だな。
馴れ馴れしい奴ではあるが…何処か憎めない所がある。」


「あれが白銀武の持つ魅力…なのかも知れないな。」


去ったタケルの事を話し合う二人
少しだが、真那がタケルの事を興味を持つ


「魅力…か…。
そんな魅力に真耶も惹かれたのか?」


「真那っ!?」


「フフッ…何を慌ててる?
別に良いことではないか。
あの真耶が男に興味を持ったのだ…違う意味で興味が出て来る。」


『フンッ…』と拗ねる真耶を見て、真那はクスクスと笑いながら、タケルに注目する


「さて、私も明日は早い。
今日は偶々、紅蓮大将から休暇を貰い、羽を休める事が出来た。
明日から再び冥夜様の護衛をしなければならないのだ、私は眠るぞ。」


「………フン」


真耶を置いてくように、屋敷に入る真那
その姿を見て真耶は益々機嫌を損ねる。





「さてと…明日は早いから、サッサと寝るかぁ~。」

「そうだな」


「………………………ハイ?」


ガラッと襖を開けて、後は寝るだけのタケル、
布団に入ろうとすると、いつの間にか、隣に浴衣を着て眠る準備をしていた真耶の姿があった…


「…ええっ…と…ナニヲシテマスカ?」


「寝る準備だが?」


「…此方…オレの部屋デスヨネ?」


「そうだが?」


未だに何故真耶が隣に座ってるのかを判断出来ないでいるタケル。


「ここ…オレの寝る布団デスヨネ…?」


「うむ」


「真耶さんは…何処に寝るんですか…?」


「隣だが?」

「………………えっ?」


真耶の返答を聞き、『何のフラグ…これ?』と混乱する。



「さあ、寝るぞ。
明日はお互いに早いのだからな」


「えっ…?」


そのまま電気を消し、タケルを押し倒すように寝かせ、一緒に眠る真耶。
その後、正気に戻ったタケルの質問に対しての返答に、『…私の隣は嫌か…?』とか『噂の責任を取れ』とか言われ、KOされるタケル。
しかも、逃がさないように抱きながら寝てる為、退路を塞がれてしまう。


そして、朝-----





「………うわぁ…」


「…な、なんと…
ここまで進んでたとは…。」


昨夜のお酒が効いてたのか、普段起きる時間を寝過ごすタケルの部屋に来たやちると真那。
しかし、部屋の襖を開くと……浴衣が脱げて、ほぼ裸に近い格好の真耶が、タケルを抱き締めながら眠る姿を見て硬直する…



「やちる…祝言を挙げる準備をしといた方が良いようだ…」

「そうですねぇ…」


後に『婚約者』の噂が真実とされてしまい、大変な目に遭うタケルだった…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第十二話①
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/09/01 01:26
1998年・2月5日---
京都・帝都城---




「クッソ~!!
またタケルに負けた~!!」


模擬戦闘での訓練で、椿率いる第1中隊と、政弘率いる第2中隊の対戦をしていた。


タケルに負けて悔しがる孝志を政弘が宥める姿は、最早いつもの光景になっていた。


XM3が完成し、今現在は斯衛軍・帝国軍・白陵基地所属の国連軍の約二割程が搭載されていた。


XM3の存在に歓喜した帝国軍と斯衛軍の衛士達は、自分の機体に搭載されるのを、今かと待ち望んでいた。



そして、XM3の開発が帝国・極東国連軍のもので、斯衛軍の一人の衛士が発案者と情報が流れたおかげで、帝国内部の頭のお堅い連中の考えを少し変えるきっかけにもなった。



そして今、そのXM3を搭載し、タケルが教官となり、教えた第1・2中隊の模擬戦闘をしていた。


結果は第1中隊の勝利。
やはり、XM3の経験の長さと、タケルの変態機動に付き合って、メキメキ腕を上げた結果だった。


第1中隊の皆が言葉を揃えて語る…
『あれ…もはや人間技の領域を超えてるから…』

彼等もやはり、タケルの『恐怖の全力変態機動』の犠牲者であり、何度となく、エチケット袋に御世話になった事か…
そして、歩けない衛士達はタケルにオンブ(お姫様抱っこは沙耶に止められた)して降りる羽目になった。


そして、オンブして降りる際、男性衛士は別に問題は無いが、女性衛士がオンブされた際、顔が赤くなるという現象が発生した為、男性衛士達は悔し涙を流しながら訓練に励んだのは言うまでもない。



そんな事もあり、第1中隊のみんなは、メキメキと成長し、実力を上げていった。



「白銀中尉…
普通、あの一騎打ちの際に、『ジャイアントスイング』をかけるか…?」


「いや…普通に挑んでも面白くないし…。」


「そういう問題!?」


呆れる政弘の質問に、当然のように答えるタケル
そして、ジャイアントスイングをされて敗北した孝志はタケルの返答に驚く



孝志との一騎打ちの際---
タケルが、真耶戦のと同じように、タックルをかまして、孝志機の両脚を掴み、気分良くブンブンと回し、ぶん投げる。



勿論戦術機の方で、自動的に受け身をとり、体勢を立て直すが、中の孝志は目を回していた為、その隙にKOされる。


その行動を見て唖然としてた第2中隊は、その隙を突かれ、致命的な損害を受ける。

第1中隊曰わく---
『いつもの事だし、まだ優しい方だよ?』…だそうだ…。




「いやぁ…もしこれがシミュレーター訓練なら、『もず落とし』を出してたのに…残念。」


「…何…もず落としって…?」


「相手の背中に回り込んで掴み、上空に飛んでから、真下に回転しながら落ちる技」


「「…………」」



タケルの言葉を聞いて言葉を失う政弘と孝志
当の本人は、本当に残念そうにしていた。




この後、整備長にこっぴどく怒られ、スパナをナイフスルーで投げられ、タケルの頭に命中し、大きなタンコブを作り、みんなに笑われる事になる。


「しっかし、オレの時はアレだったけど、政弘の時のタケルの攻撃は凄かったな。」


「ああ…油断して部隊が危機に陥った時、白銀中尉の接近を許すとは…
まだまだ未熟だな…。」

政弘は、タケルのジャイアントスイングで茫然とした際、椿達の強襲を許してしまい、タケルから視線を逸らす。


その隙を突いたタケルは、巧みに障害物に隠れながら、噴射地表面滑走で政弘の背後に回り込み、接近する。


政弘がタケルに気づいた時は既に遅し。
長刀を構えたタケルが、すぐ其処まで接近していたのだ。


政弘も長刀を抜き、タケルの接近戦に備える。
そして、二人の長刀が鍔迫り合いになった瞬間に--勝負は決まっていた。



お互いの長刀がぶつかり合った瞬間---
白銀機の膝蹴りが政弘機の腹部に入り、動きが止まる。


その僅かな隙を突いて、腕部のナイフシースを展開し、短刀を抜き取り、コクピットに一突きし、撃破判定を貰う。



「あの流れるような入力と動作。
膝蹴りの後の素早い短刀抜刀からの一突き。
…まったく…見事と言うしかあるまい…」


グウの音も出ない程の攻撃を喰らい、タケルに『見事』と誉めるしかなかった。



「流石は紅蓮大将や神野大将に鍛えられてるだけはある。
あの方達に中破判定を与えた事の有る者は、白銀中尉以外は誰も居ない。」


「オレ達ですら、せいぜい少破判定が良い所だ。」


「…いや、あの二人は反則以上の存在だから…。」


ヒクヒクと顔が痙攣するタケル。
タケルが紅蓮大将と神野大将に鍛えられてから半月が経つが、あの二人のチートっぷりに、流石のタケルも勝てる気はしなかった。



紅蓮機は基本長刀による攻撃だが、真なる強さは『無手』になった時こそ、発揮するのだ。
タケル以上のインファイトで、正拳・回し蹴り、なんでもござれで、仕舞には、胸部から光線(整備兵の話によると、光線を放つ装置なんて付けて無いらしい…)を放ち、ビルをも破壊する威力だ


神野機も、基本は薙刀の攻撃だが、36mmの弾丸スピードでさえ、薙刀を回転させて弾いて防ぐ


タケル曰わく--
『なんで戦術機で光線放ったり、36mmを防げる回転って…おかしくね?』…と二人に文句を言った所、二人の返答は『気合いぢゃ!!』の一言で済まされたらしい…。




「…オレ…あの二人に勝てる日が来るのかな…?」


「うーん…」


「………」


タケルの一言に返答出来ないでいる孝志と政弘。



「お疲れさん、また面白い戦いをしてるわね~♪」


「せっ、先生に…エルヴィンさん!?」



すると、タケル達の前に、香月博士とエルヴィンが現れる。



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第十二話②
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/09/02 00:55
「どうしたんですか、先生?」


「私は殿下に用事が有ったのよ。
その用事を終わらせて、今ハンガーに来てアンタに会いに来たって訳。
エルヴィンは、例の不知火の改良機を持って来たのよ。
そして、そのテストパイロットとしてアンタを探してたって訳。」


「そういう事だ、シロガネ中尉。
今回は改良機をキミの機動で『イジメて』くれ
其処から得られるデータを元にして更なる改良をしたいのだ。
キミの機動に耐えられるならば、他の衛士達が使っても充分に耐えられるって事だからね。」


「あっ、ハイ、わかりました。
休憩後に早速テストします。」



「済まないね、頼むよ。」


以前話に有った不知火の改良機のテストパイロットをする事になったタケル。
そんな話を聞いて『タケルすげーな…』と尊敬する孝志と、興味津々の政弘




「あれが不知火の改良機か…」


「見ろよ政弘…
肩部が『肩部スラスターユニット』が着いてるぜ?」


「ウム、あと脚部にもなにやら付いてるぞ。」



梱包していたシートを剥ぎ取られ、注目の的になる不知火・改良機


以前話に有ったように、肩部に『肩部スラスターユニット』を装備し、脚部にも『脚部スラスターユニット』を装備していた



「あれ?随分変わったジャンプユニットですね?」


「ああ、あれは脚部スラスターユニットと同じく、新開発したモノだ。
本来、ジャンプユニットには『ジネラルエレクトロニクス・YFE120-GE-100』を使用する筈だったが、XM3が完成した際に、君の機動特性を見てから、考えを改めて、変更したのだよ。」

変更したジャンプユニットに就いて説明するエルヴィン。



「今回開発したジャンプユニットは、『二連式ジャンプユニット』の『TE180-A-01』と言ってね、扇状にスライドして使用する新しいジャンプユニットなんだ。
主機の上に半分程の長さのジャンプユニットを取り付け、扇状にして使う事により、本来の出力を上回るスピードを出す事に成功した。
勿論戦闘の邪魔にならないように、ちょっと小さくした事により、戦闘の邪魔にもならず、重量の問題もクリアした。
…とは言え、まだ『完成品』ではないのでね、それを兼ねてテストをしたいのだよ。」


『なる程…』と納得するタケル
新たな開発をウキウキする気分で待ち望んでいた。



改良機のテストプレイの準備をし、再びコクピットに搭乗するタケル。
そして、その様子を椿達も一緒に見学する。



『白銀、始めて頂戴。
アンタの機動を見せつけてやりなさい。』


「了解!!」


返答を返した後すぐにカウントが始まり、スタートの合図と共に全力噴射をする。


障害物を使った三角飛びからの倒立反転。
反転中、キャンセルを入れて、着地し、しゃがみながら噴射地表面滑走をする。


「グウ…ッ!!
まだまだァァァッ!!」


しゃがみ噴射地表面滑走から、機体を捻り、低空での反転最中にナイフシースを展開し、抜刀して短刀装備する。
着地と同時に肩部スラスターユニットと二連式ジャンプユニットを全力噴射し、右側に噴射地表面滑走をしながら急旋回する。




「…相変わらずアイツの変態機動はデタラメね…
益々進化してきてるじゃない…。」


呆れながらタケルの機動を見る香月博士
タケルの機動が益々磨きがかかってる為、もはや『凄い』を通り越して、『呆れる』しかなかった。


「まだまだァァァッ!!」


予想だに出来ない機動を繰り出す姿を見て、言葉を失う椿達




「すげぇよタケル…
チクショウ…必ずあの機動をモノにしてやる…!!」


「ブラボー!!
流石はシロガネ中尉だっ!!」


そして、予想以上の機動を見て、目を輝かせる孝志とエルヴィン。


「なかなかの結果ね…
あとは、あの機動を生かせるように、武装を強化するだけね。」


タケルのテストプレイを見て手応えを感じる香月博士。
そして、次の段階に進む事を考える。





「ふぅ~…」


少し疲れた表情を見せるタケル
そばに沙耶や孝志達が集まり、歓喜する所に香月博士が近寄って来る。


「お疲れ様~、貴重なデータをバッチリ取ったわ。」

「あれ、エルヴィンさんは…?」


香月博士のそばにエルヴィンが居なかったので、探すタケル
しかし、香月博士が指を指す方角を見ると---
またブツブツと独り言を呟くエルヴィンの姿があった。



「ふむふむ…やはり関節部の蓄積ダメージが溜まり易いか…。
脚部スラスターユニットや二連式ジャンプユニットのデータもまずまずの結果だ。
このデータを生かして、更なる改良をしなければ…!!」


テストプレイの結果のデータを見て、自分の世界に入り込むエルヴィン
その表情からは、まずまずの結果が出たと読み取れた。


「とりあえず今回はこれで終わり。
エルヴィンはこの後すぐに帰るけど、私は一泊していくわ」


『一泊する』と言った際、タケルにアイコンタクトを送る香月博士。
タケルもその意味を悟り、この後の予定が決まる。



「今日は月詠中尉の家に泊まり込むから、宜しくね、白銀。」


「…お手柔らかにお願いします、先生…」



何気ない会話をするタケルと香月博士だが、この意味を知る者は、椿と沙耶しか居なかった。



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第十二話③
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/09/02 22:57
月詠邸~


「アラアラ、美味しいじゃない。
白銀、アンタ結構贅沢してるわね~。」


月詠邸で一緒に晩御飯を頂く香月博士。
やちるの手料理が気に入り、パクパクと食が進む。

一緒に同行してた椿や沙耶も、幸せそうな表情で食事をする。



「ご馳走さま~。
本当に美味しかったわ~♪」

「ありがとうございます。」


香月博士に絶賛されて、喜ぶやちる。
その姿を見て、嬉しそうな表情になる真耶。



「先生、そろそろ『大事な話』しませんか?」


「別に良いけど、ちょっと待ちなさい、白銀。
今此処に『二人程お客』が来るから、その時に話すわ。」


「わかりました。」



『大事な話』という言葉に反応する真耶・椿・沙耶の三人。
すると、良いタイミングで、玄関から声が聞こえる。



「ハイハイ、ちょっとお待ち下さい。」


パタパタと玄関に走って行くやちる。
『来たか』と呟く香月博士を見て、『お客』が来た事を悟る。




「真耶様・香月様、お客様が来ました。」


「やちる、済まないが客を上げてくれ。」


「お願いするわ。」


「畏まりました。」



再びお客の下にパタパタと走るやちる
そして、やちるの案内と共に『お客二人』がやって来る。



「夕…香月博士…
随分と探したんですけど…?」


「ゴメンね~、まりも♪
あと、おかえり『伊隅』
無事帰って来て何よりだわ。」


月詠邸にやって来た『お客二人』---
それは、神宮司軍曹と『伊隅みちる大尉』だった。


「帰って来た途端『京都の帝都城に来い』と命じられ、来てみれば…
博士を探してる軍曹に出会い、しばらく探しましたよ…?」


「殿下との大事なお話をしてる間に、人に用事押し付けて、終わらせて戻ってみれば…いつの間にか居なくなってるし…。
ハンガーに居るとエルヴィン殿から聞いて来てみれば、今度は整備長から『伊隅大尉と一緒に、月詠邸に来て頂戴』だもの…
博士の『護衛』として来てる私の立場も考えて行動してくれませんか?」


ガミガミと香月博士に説教をするまりも
しかし、当の香月博士は反省の様子は無かった。

そして、同時にみちるが登場した事で、タケルは『光州作戦』が終了した事を理解する。



「それで伊隅、作戦はどうだった?」


「ハッ、今回の『光州作戦』は成功致しました。
かなりの犠牲者は出ましたが、それでも退却戦としては、大成功
民間人の撤退は無事終わり、任務も成功しました」


「そう、それは良かったわ。
そういえば、今回の光州作戦で『彩峰中将』などの高官達は無事なのかしら?」


「ハッ、その事に関しても、無事生還致しました。
…ただ、彩峰中将に関しては、危うかった所でした」


「というと?」


「彩峰中将の率いる部隊が突如、避難を拒む民間人を救出する為に、本来の持ち場から離れてしまい、危うく国連軍司令部が陥落する危険性がありました。
しかし、前もって待機してたオーディン隊が代わりに入り、我々が到着するまで持ちこたえました。」


「彩峰中将の事は殿下から聴いたわ。
今回の事で、彩峰中将は厳重な処分を受け、准将に降格される事になったらしいわ
降格程度に収まった理由として、避難を拒んだ民間人を救出し、尚且つ多くの大東亜連合軍の将兵達を救った事により、降格に止まったらしいわ」

みちるや香月博士の会話を聴いて、『光州作戦の歴史』を変える事に成功した事を知るタケル達
タケルの心の中で、ホッと安心する。


「…あと、今回の作戦で、オーディン隊と我々の部隊にも被害が出て、四名もの隊員が病院送りになりました…。
死亡者が出なかった事自体は喜ばしい結果でしたが…少なくとも、二人は隊復帰は無理でしょう…。」


「…そう、死ななかっただけでも、まだマシよ。」


少し暗い表情になる香月博士だが、直ぐに表情を戻し、笑顔な表情でみちるの無事の生還を喜ぶ。


「とりあえず、アンタの無事な生還を知って安心したわ。
アンタにはまだまだ働いて貰わないといけないからね。」


「博士の下に着いた時から、こき使われる事は覚悟してますよ。」


冗談交えながら、笑う二人
そして、次の話に進みだす


「伊隅に紹介するわ。
其処に居るヤツ、斯衛軍の白銀武中尉なんだけど、私達の『計画』の重要人物の1人だから、今後アンタとも付き合いがあるから、覚えておきなさい」


「ハッ、私は国連軍所属の伊隅みちる大尉だ。」

「白銀武中尉です。
お互いに先生に苦労する者同士なので、宜しくお願いします。」


「ふっ、そうだな。
お互いに頑張ろう」


お互いに自己紹介する二人
香月博士の『犠牲者』として、ガッチリと握手し、仲間意識を高める。



「ちなみに、白銀に固っ苦しい事はしなくてもいいわ
私がそういうのキライなの知ってるから、馴れ馴れしく接して来るから、伊隅も部隊内の奴等と同じように接すれば良いわ」


「は、はぁ…了解しました。」



少し呆然とするみちる。
良く見ると、タケルと香月博士の接し方を見て『なる程』と理解する。



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第十二話④
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/09/03 23:53
「ぐは~…今日は疲れた…。」


自分の部屋の真ん中で、ごろんと寝転がり、大の字になる。



みちると『再会』し、感涙しそうになるタケルだったが、涙をこらえて平然と装っていた。



その後、タケルはみちるに『温泉作戦』を教えると、滝のように感涙したみちるは、タケルに人生最大の感謝をした後、香月博士の下に行き、休暇を数日貰う
その後直ぐに電話を借りて、想い人・前島正樹に連絡を取り、秘密のデートを約束する。



その際、『みんなには内緒よ。
もし…バレたら…わかってるわね…?』とか
『必ず休みを取りなさいよ、取らなかったら…フフッ』とか、なにやら死亡フラグが満載な会話が聞こえるが、気にしてはいけないと、自分に言い聞かせるタケル。



そして、遂に香月博士や沙耶に『真耶と一緒に寝てる』事がバレてしまい、血の涙を流しながら悔やむ沙耶と、『やるわねぇ~♪
鑑達が知ったら、どう反応するかしら?』…などと、タケルに死亡フラグを立てようと企む香月博士に、素晴らしい土下座をして、『止めて下さい、まだ死にたくないです。』と説得する(結局は後々にバレる事になる)

そのせいもあって、今夜は沙耶も同伴する事になり、『どちらが先に白銀の子を宿すかしら~?』…などと香月博士が言った為、二人の闘志が燃え上がる。




「オレ…みんなを守る前に生き残れるかな…?」


違う意味で自分の将来を不安に思うタケル。
そんな事を考えると、部屋に香月博士がやって来る。


「だらしない格好で寝てるわね~…」


「誰のせいですか、誰の!!」


「アンタ自身に決まってるじゃない」


「グハッ!?」


KOされるタケル。
『やはり先生には適わないのか…』と呟く。



「真面目な話に移すわよ。
とりあえず、この部屋には誰も近づけないように、まりもと伊隅に『見張り』をさせたわ」


即ち、『まりもとみちる』には、この会話を聴かせない為の処置として、『見張り』という理由を作り上げ、自分達の下に近づけないようにする。


「光州作戦に関しては、さっき話した通りよ。
そして、『彩峰中将』の行動のおかげで、アンタの『未来の話』を信じる事に繋がったわ。」


「そうですか」



「次は『BETA本土上陸』よ
…けど、流石に今回はそう都合の良い方向に未来を変える事は出来ないわ…」


「どういう事ですか!?」


衝撃的な発言に驚愕するタケル。
そして、香月博士の口から驚愕の事実を告げられる。


「流石に今回は分が悪いわ…。
今、日本における戦力で、強襲して来るBETAの『物量』を防ぐ術は無いわ。
例え、日本全ての戦術機にXM3を搭載して戦っても、『勝てる』とは限らない。」



「理由を教えて下さい…」


ゴクリと息を呑みながら、『理由』を問う。


「アンタも知っての通り、XM3があるからと言って、BETAに『勝てる』とは限らないわ…
出来るならば、簡単にハイヴを攻略しまくってるわよ。」


香月博士の返答に賛同するタケル
『BETAを甘く見てはいけない』と知ってるからだ。


「奴等の最大の武器は『物量』よ
今回のBETAの数は、数万・数十万と考えて良いわ。
どんなに急いだって、XM3の搭載率は『良くて八割』が良い所
悔しいけど、時間が足りないわ…」



「そんな…」



絶望的な発言に唖然とするタケル
しかし香月博士の発言はまだ止まらない。


「次に『佐渡島・横浜ハイヴの問題』
…残念だけど、この2つは、変える事は出来ないわ…」

「何故ですか!?」


「勿論さっきの戦力差の問題も有るけど、あまり『未来』を変えると、今後の作戦に支障が出て来る可能性もあるわ。
理由は簡単、『未来』をホイホイと変えたら『何も』起こらないと思う?」

香月博士の問いに対しての沈黙するタケル…
それは『否定』の意味をしていた。


「答えは『NO』
変えたら、変えた分だけ『代用品』を寄越して来るのよ。
現に『一度目の世界の未来』を知ってるアンタは『二度目の世界』で歴史を変えた。
その為『代用品』として『12・5事件』等の未来を呼ぶ結果になったわ…」


「…つまり、迂闊には『未来を変える事』は出来ない…って事ですか?」


「そうよ。
だから『全て』を変えるんじゃなく『一部』を変えるのよ。
変えた分だけ『代用品』を寄越して来るなら、『一部』の方が被害は少なくすむわ
今回の彩峰中将の結果もそう。
『一部未来を変えた結果』、彩峰中将の処分も『死罪』から『降格』に変わったわ」


香月博士の言ってる意味を理解するタケル
すると、香月博士の表情がニヤリと笑みを浮かべる

「今度の『BETA本土上陸』の変更点は『鑑純夏の死守と白銀武の生還』よ。
勿論、その時はアンタは戦場に出て戦う事になるけど、絶対に生還する事。
そして、鑑を守り抜く為にも、アンタは生還し、尚且つ鑑を逃がす『時間稼ぎ』をしなければならないわ」


「なる程…わかりました、先生」


『当面の目標』が出来て、やる気を出すタケル。
絶対に純夏を助けてみせる---!!
そう、自分自身に誓いを刻み込む。



「とりあえず『BETA本土上陸』の件の話終わりよ。
何か聴きたい事や頼み事でもある?」



「はい、あります」


コクリと縦に頷くと、『何かしら?』と質問される。


「まずは、今年の『総戦技演習』の事で…」



「なる程…『涼宮遙』の件ね…。
安心なさい、既にその件に関しては対応済みよ。」

「あ…ありがとうございます!!」


ガバッと再び土下座して礼を言うタケル。


「これで涼宮も速瀬も、早い段階で衛士になれるわ。
けど、それは同時に『明星作戦』にも出撃するって事よ?」


「その時はオレが助けます!!
絶対にあの二人を死なせはしません!!」


強い決意を香月博士に見せ、納得させる。


「ついでに『鳴海孝之』や『平慎二』も救って頂戴。
あの二人も死なせるには惜しい奴等よ。
二人共オーディン隊に入隊する予定だから、オーディン隊ごと救いなさい。」


「了解」


速瀬・涼宮の想い人の『鳴海孝之』や、その親友の『平慎二』をも救う事になったタケル。



『他には無いかしら?』と問われるが、特に無い為、話は終わる




そして、同時刻---




「叔父様っ!!」


帝都にある駅のホームに夜遅く到着する電車から降りる中年男性に15・6程の若い少女が抱きつき、感動の再会をする。


「ご無事で何よりです…叔父様…」


「ハハハッ、『唯依ちゃん』の『花嫁姿』を見るまでは死なんよ。
そして、唯依ちゃんの産んだ赤ちゃんの名前を考える楽しみがあるんだ…
これをやらずに死んでは無念というものだ。」



「おおおっ、叔父様っ!!」

顔を真っ赤にしながら、ポカポカと中年男性を叩く少女・唯依。
こんな日常に帰って来れた事を喜ぶ中年男性・巌谷榮二


「良く無事に帰って来たな、巌谷君」


「こ、これは斉御司大佐!!」



二人の感動な場面に現れた斉御司兼嗣大佐。
突然の来訪に驚きながらも、敬礼する



「良く無事に帰って来た。
今回の功績を持って、明日付けで君を『中佐』に昇進する事が決まった。
是からも、日本の為に貢献してくれ、『巌谷中佐』よ」


「ハッ、有り難き御言葉です!!」


『中佐』に昇進が決まり、より一層気を引き締める巌谷中佐



「明日、大事な話があるから帝都城に来てくれ
話が終われば、そのまま休暇に入ってくれ。
…でないと、私が唯依君に恨まれてしまうからね。」


斉御司大佐の一言にアワアワと慌てる唯依を見て、大笑いをする二人



そして、巌谷中佐の帰還により、タケルとの『出会い』が待っていたのだった…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第十三話①
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/09/05 00:50
1998年・2月6日---
京都・帝都城----






「こっ…これは…!?」


「これが新しく開発された、新OS・XM3だ。」


帝都城のとある一室にて、先日帰還して来た巌谷榮二中佐と、五摂家・斉御司家当主・斉御司兼嗣大佐が、部屋を暗くして、モニターを見る。


モニターの内容は、タケル達が開発した新OS・XM3搭載機の瑞鶴の映像。



瑞鶴のテストパイロットをした巌谷中佐には良くわかる。
この瑞鶴は最早別格のモノの動きだと---



考えもした事の無い機動。
鋭く・的確なアクロバットや、予想外な肉弾戦。
戦術機でプロレス技を出すシーンを見た時は、流石に呆然とするしかなかった。


そして、次に見た映像は紅蓮大将と神野大将の搭乗する戦術機・『瑞鶴改・烈火』と『瑞鶴改・疾風』との模擬対戦の映像だった。


紅蓮・神野大将の二人と戦うのは、XM3搭載機の不知火。
そして、それに乗る衛士は、『白銀武』という斯衛中尉だった。




白銀武中尉----
彼がこのXM3の発案者であり、XM3のテストパイロットと聞いて驚く。
そして、このXM3のモデルが、この白銀中尉の機動特性だった。


愛娘より少し上程の年齢でありながら、この卓越した動きには脱帽するしかなかった。
現にこの映像では、紅蓮・神野大将の二人に押されてるとはいえ、二人に中破判定を与え、尚諦めずに戦う。



『喰らえぃっ!!我等が必殺の合体技!!』


『ハァアァァ…!!極殺----』


『するなアホォォーーーー!!』



『『ガハッ!!』』


紅蓮・神野大将の合体技をドロップキックで阻止する白銀中尉
両大将に放つ暴言に対しては『いつもの事だから気にするでない』…と斉御司大佐の苦笑しながらいう一言を聞いて、驚く。



『ヌゥ…また足技を使いよって…駄目ではないか…』


『そりゃコッチのセリフだっ!!
アンタらのその技は封印すれって言われてるだろうがっ!!
以前放ったせいで、演習場が大惨事になったの忘れたのかっ!?』


『ヌゥ…格好いい技なのじゃが…』


本気で悔しがる紅蓮・神野大将を見て、不知火ごと跪いて落ち込む白銀中尉…
まぁ…気持ちは分からんでもないが…


結果、白銀中尉は負けたものの、紅蓮・神野大将の二人に善戦し、もう少しで大破判定までいきそうだった事には感服するしかなかった。



その後、現在改良中の不知火の映像を見て絶句するしかなかった。
国連軍・帝国軍の共同開発という事だけでも、驚愕する事なのに、改良機である不知火の機動を見て絶句する。



先程のXM3搭載機の瑞鶴すら、子供騙しに見えてしまう程壮絶で、魅了されてしまうアクロバット。


あの流れるような動きを見て、つい思ってしまう



もし---これがもっと早く開発されていたら---
大陸で散った英霊達の命も救えたのでは---



悔やむ気持ちを抑えながら、映像を見る



「…どうだったかね、巌谷中佐?」



パチンと電気を着けて、部屋に光を灯す斉御司大佐。
モニターの映像を消して、質問してくる。



「…絶句するしかないですね…。
悔やむとすれば…もっと早くに開発されてればと…そんな気持ちです。」

「…彼等の死は無駄ではない。
彼等の命がけで戦ったからこそ、安心して開発をする事が出来たのだ。」


「そうですね…」


巌谷中佐の気持ちをわかり、英霊達の戦いが無駄ではない事を改めて悟る斉御司大佐。



「…此処で本題に入りたいのだが…」


「何でしょうか、大佐」


鋭い眼光で斉御司大佐を見る巌谷中佐
そして----





「君には、白銀武中尉と共に開発計画に参加して欲しい。
主に今回の不知火改良機を開発して欲しいのだ。
これがもし大成功となれば…改良機は撃震に代わる次期主力戦術機に選ばれる可能性があるのだ
これが完成すれば…救われる命も増える事と…私は信じる」


「-----ッ!!」


次期主力戦術機と聞いて、驚愕以上に心が震え上がる
この機体ならば---日本はBETAと戦えると確信する。



「巌谷中佐---
この任務…着いて貰えるかね?」


「ハッ、我が命を賭してでも、必ず成功させてみせます!!」



やる事は決まった---
この不知火の改良機を必ず完成してみせる---



瑞鶴のテストパイロット時より、心が躍り、震え上がる気持ち
そして、白銀武中尉に興味を持ち、会う事が楽しみにする巌谷中佐。



それを察してか、斉御司大佐は---



「フッ…白銀武中尉に会いたいのならば、斯衛軍第17大隊の下に向かうがいい。
今日は九條椿少佐の下でシミュレーター訓練を行ってる予定だ」


「ハッ、ありがとうございます。」



斉御司大佐に敬礼して、退室する巌谷中佐




「彼ならば…白銀中尉の力になる筈だ…
時間は…刻々と迫っているのだから…」



巌谷中佐が退室した扉を見つめながら、7月に起きる『BETA本土上陸』に不安を感じる斉御司大佐だった。



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第十三話②
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/09/05 19:11
「ぷはぁ~…なんて強さだよ…
旧OSであの強さって…反則じゃね?」



シミュレーター訓練を終え、フラフラしながら椅子に座るタケル
すると、タケルの隣に今日初めて会う巌谷中佐が座る


「見事だ、白銀中尉。
まさか負けるとは思わなかったぞ。」


「それはOSの差ですよ。
もし同じ条件ならば、確実に負けてましたよ」


今回は巌谷中佐がXM3に乗った事が無い為、巌谷中佐のみ旧OS搭載機の瑞鶴で戦っていた。

XM3に乗り慣れて無い巌谷中佐が乗っても、不利になる為、今回は旧OS搭載機で挑んだが、それでもタケル以上の衛士の腕前を披露し、タケルを苦しめていた。


「そういえば、白銀中尉は今回は肉弾戦をしなかったのは何故かね?
奇襲として出せば、私とて引っかかってたかもしれぬぞ?」


今回の戦いはタケルは純粋の戦いしかしなかった事に疑問を感じる巌谷中佐。


「いや、今回は純粋に戦ってみたいと思って…
それに、そういった事は『奇襲』じゃなければ効果は有りませんし、出しても回避されてましたよ。」


「純粋に…とはどういう事かね?」


「簡単に言えば、『男』としての意地…かな…?
真剣勝負に戦ってみたい相手が現れたから…自分の持ってる力を出してみたい…そんな気持ちになったんです
それにあまり奇襲攻撃に頼りたくないですからね。」


『フム…』とタケルの返答に納得する巌谷中佐。
すると、タケルの肩を強く叩き、笑みで返答を返す。


「それは貴様が『男』として少し成長した証拠だ。
確かに奇襲攻撃も重要な攻撃手段だが、『男』ならば、真っ向勝負で戦う事を忘れてはならん。
その気持ちは大切な事だ」

「成長…だと嬉しいな…」


疲れ果てた顔をしながら喜ぶタケル
そんなタケルを見て巌谷中佐は笑みを浮かべる。


(このような柔軟な考えを持つ者が、斯衛軍に居たとは…頼もしい事だ。)


元斯衛軍の出身の巌谷中佐にとって、タケルのような人物は『必要な人物』と考えていた


元々斯衛軍は規律が厳しく、上下関係などがハッキリしていた為か、考え方が『堅物』ばかりがいた事に対し、『柔軟』な者はあまり居なかった。


唯一、崇宰家の御子息である孝志ぐらいが柔軟な考えを持っていたが、『五摂家』という『壁』が有ったため、周りはそれに一部を除いて着いて来れなかった




しかし---
白銀武中尉の存在がそれを打ち砕いたのだ。



孝志以上の柔軟な考えを持ち、五摂家の斑鳩家以外の御子息達と親しく接し、紅蓮・神野大将に暴言まで言う事を許される程の『馴れ馴れしさ』
正に帝国・斯衛軍始まって以来の『問題児』である


接してみてわかった事だが---
彼には『忠誠心』が無い--
上官に対しても--
五摂家に対しても--
恐らくは、殿下に対しても、彼は『忠誠心』が無いのだ。


ただし、代わりに彼には『仲間意識』が非常に高く、上官だろうと、部下であろうと、『家族』のように大切にする傾向がある。
それは、彼の持ち味であり、『魅力』なのかもしれない。



平等に、身分など関係無しに彼は周りの者と接していた。



そのせいもあってか、部隊内の結束力は高く、非常に連携が繋がっていた。


まるで、周りの者達を『巻き込んで』皆が持っていた身分の『壁』を壊していたのだ。



「フフフッ…君は本当に面白い男だな…」


「そっすか?
…じゃなかった、そうですか?」


慌てて言葉を直すタケルを見て、可笑しく笑う巌谷中佐。


「構わん、君が喋りやすい喋り方で良い。
それに、既に紅蓮大将や神野大将に普段の喋り方をしてるのだろう?」


「…いや、あの人達の場合は特別で…
こっちがしっかりしないと…暴走されるから…つい」


「ハッハッハッ!!
だが、そういった接し方をするという事は、紅蓮大将も神野大将も、君に心を許してる証拠だよ
…多分、『我が子』のように感じてるのだろう。」


「うわぁ…あんなオヤジいらねぇ…」


タケルの本音を聞いて爆笑する巌谷中佐
彼もタケルに少し認めてきてた証拠だった。



「ヨシ、今日の仕事が終わったら、家に来なさい。
妹の家だが、何…食事に誘う事ぐらいは問題ない。」


「えっ、悪いですよ…
せっかくの大陸から帰って来たばかりの休日に、俺なんかが行ったら…」


「大丈夫だ、心配する事ではない
…それに、今日来たら、愛娘の唯依ちゃんの手作り料理が食べれるぞ?
今日は私に合わせて休日を取ったから、妹の家に居るのだ。
私が言うのもアレだが…唯依ちゃんの手作り料理は絶品でな…」


すっかり途中から『親バカモード』になってしまった巌谷中佐。
そしてタケルは『アレ…何かのフラグ立てちゃった…?』と嫌な予感がバリバリとしていた



すると、タケル達の前に、ドリンクを飲み歩く椿達が居た所に巌谷中佐がタケルを連れて(拘束とも言う)質問する


「椿様、白銀中尉のこの後の予定はなんですかな?」


「えっ…?
今日は訓練は午前中までですので、午後からは書類整理などの作業のみですが…?」

「書類整理…という事は、午後から抜けても支障は無いのですね?」


「ハイ…1日程度ならば…」


「それは良かった!!」



タケルの肩を再びバンバンと強く叩き、『良かったなぁ~白銀中尉』と喜ぶ巌谷中佐
『アラ…なんか悪い事したかしら…』とタケルに申し訳ない気持ちになる椿


「では、着替えて行こうではないかっ!!」

「ちょ…ちょっと待ったぁぁぁぁぁ…」


そのまま強引に連行されてしまうタケル
椿がタケルに合掌して見捨てた姿を中隊のみんなは、連携プレーを発揮して、見て見ぬフリをしていた。



「…せっかくのチャンスが…」


午後からの書類整理で、タケルとラブラブな空間を企んでた沙耶は、
巌谷中佐のせいで潰れてしまい、Ⅲorzと落ち込んでいた…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第十三話③
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/09/07 19:47
「只今帰ったぞ」


「お帰りなさい、叔父……誰ですか?」


巌谷中佐の声を聞いて、パタパタと玄関まで迎える唯依だが、タケルの存在に唖然とする。



「さあ、遠慮しないで上がりたまえ
…最も、妹の家だが。」

「お…オジャマシマス…」


強制的に連れてこられて、既に諦めモードに入るタケル。
申し訳なさそうに、上がっていく。



「……お茶です」


「……本当にスミマセンでした…」


せっかくの休暇を取って、巌谷中佐とゆっくりしようとした唯依だったが、タケルが来日した為、不機嫌になる。


「せっかくの休暇の邪魔をしてしまって…本当に済みませんでした。」


「……もういいです。」


タケルに悪気が無い事を理解し、タケルを許す唯依だが、違う理由でタケルの印象を悪く見る


(斯衛軍の中尉みたいだけど…軍人『らしくない』わ…)


ペコペコと謝るタケルを見て、『軍人らしき威厳』を感じず、少し不快感を持つ
すると、着替えた巌谷中佐がタケル達の居る居間にやってくる。


「強引に連れて来て済まなかったね、白銀中尉。」

「いっ、いえ…」


「食事の件もそうだが、色々『話』がしたくてね…」


「話?」


「ウム」


興味津々にタケルをマジマジと観察する巌谷中佐
時折鋭い視線を向けるが、怯む事無く、巌谷中佐の顔を見る。


「マジマジと見て済まないね。
色々と興味が有ったので、観察したのだ」


「興味…ですか?」


「ウム。
君は齢18でありながら、あの凄まじい戦術機の機動技術を持ち、尚且つ我々の想像を覆すモノを作り出した。
日本にとって、この上無い『起爆剤』となる存在で、喜ばしい限りだ。」

「オレが…起爆剤…ですか?」


「そうだ。
もし、君が戦場で活躍すれば、君の名は有名になるだろう。
戦術機に改革とも言える新OS・XM3を提案し、全ての衛士達の命を何時間…数日間…と生き延びさせる事の出来るモノを誕生させた。
そして君のあの凄まじい機動技術でBETAを粉砕していけば、噂は広まり、斯衛軍・帝国軍の起爆剤となり、若者達に火が点き、互いに腕を上げていくだろう。」


「そうなりますかね…?」


巌谷中佐の話を聞いてもまだ実感の湧かないタケル。
しかし、巌谷中佐のこの話は、『本心』で語り、そう思っていたのだ。



「その事に関しては、私や斉御司大佐が保証しよう。
斉御司大佐も君の成長を喜んでいたよ」


「斉御司大佐が…」


意外な人物の名を聞いて驚くタケル
しかし、巌谷中佐の話はまだ続く。



「実は、私は君のような存在を待っていたのだよ。」


「お、オレみたいな奴を…?」


「ウム、現在…帝国軍及び斯衛軍は、厳しい上下関係や規律で、思考などが固いのだ。
日本製のパーツはまだ世界から見れば、まだレベルは低い。
外国製のモノを積極に使えば、現に不知火や瑞鶴の問題点も解消されたかもしれないにも関わらず、上の連中は『純国産品』にこだわり、変なプライドを持ったりする
…もし、そんな差別や固い思考などが無くなれば…救われた命が有ったのでは…?
そして、新たな可能性が有ったのでは…そう思う事が良くあるのだ…」


「成る程…」


巌谷中佐の言いたい事を理解するタケル。

現に、不知火の問題を電力消費の少ない米国産パーツを使い、そして跳躍ユニットをジネラルエレクトロニクス製に変え、推進剤タンクと戦術機の巨大化する事で、問題点を解消し、後に『type-04不知火・弐型』が正式に撃震の後を継ぐ、次期主力戦術機に採用されたと以前香月博士が言っていた事を思い出す



「だがキミは、そんな固っくるしい現実を粉砕するかの如く現れた。
キミの柔軟な考え…そして、キミのその接し方に、今帝国や斯衛は変わろとしているのだ。」


「お、オレ?」


呆然とするタケルに首を縦に頷く巌谷中佐。



「全く…キミは軍人らしくない
だが、そのお陰で周りに良い方向に変化していく。」

「ぐ、軍人らしくないって…」


しょぼーん…とするタケルに『私も同意見です』と追い討ちを入れる唯依。
タケルのライフポイントはゴリゴリと削られてた。


「白銀中尉…
キミは上官や殿下に忠誠を持ってないだろ?」


「えっ!?」


流石にこの事に関しては驚愕する唯依。
しかし、意外にもタケルは苦笑いしながら答える。


「ハハハッ…バレました?」


「勿論、ただ、君の場合は『忠誠心』の代わりに『仲間意識』が非常に高く見えたのだが…?」

「ハイ、オレの場合、帝国や斯衛より『国連軍寄り』な人間ですから、どうしても『忠誠心』とかって持ってないんですよ。
けど、一度でも同じ部隊内になれば、大切な仲間ですから、命がけで守りたいんです
オレにとって、同じ部隊内の仲間は、『家族』みたいな大切な存在なんです。」


素直な気持ちで答えるタケルに驚く唯依
巌谷中佐も『ほほぅ…』と唸る。



「キミにとって、『戦う理由』は何かね…?」



「最初は『元の場所に帰る事』でした。
そのうち、仲間達と出会い、『人類の勝利』なんて言ってた時も有りました。」



「それで…今は…?」


再びタケルに問う巌谷中佐。


「----大切な人達を守りたい…。
自分にとって『かけがえのない人達を守り抜く』事が、今オレが見つけた戦う理由です
今のオレにとって、『全人類の命』より『大切な人達の命』の方が大切なんです。」


「----ッ!?」


タケルの戦う理由を聞いて驚愕し、絶句する唯依。
軍人を目指す唯依にとって、『全人類』より『大切な人達の命』を取ったタケルの一言に信じられなかった。


「人一人では全人類を守る事は出来ません…
どんなにオレが凄い衛士だろうと、救える命には限りがあります…。
ですから、『そばに居る大切な人達』を守る事が---より大勢の命を救う事に繋がると信じてます。」


「成る程…」

タケルの答えにそれ以上問わないでいた巌谷中佐。
ただ、そばに居た唯依は納得出来ず、タケルに質問する。


「お話の途中、口を挟んで済みませんが、何故『全人類』より『大切な人達』なのでしようか…?」


その問いに対し、タケルは---



「そうですね…例えば唯依さんが『オリジナルハイヴ』に突入作戦に参加したとします。
作戦は成功、人類に多大なる希望を繋ぐ事が出来たとします。
…しかし、その際に『愛する人』や自分にとって『かけがえのない仲間達』を失ったとしたら…貴女にとって、『納得の出来る結果』になるのでしょうか…?」

「----ッ!!」


タケルの言っていた意味を今、理解した唯依。
そして、その際答えてたタケルの表情を見て悟る巌谷中佐。


「自分は…弱い人間です。
そんな結果は…納得出来ないし、満足出来ないんです。
今、斯衛に入って、かけがえのない人達に出会いました。
そんな人達を失って世界を救っても…オレは----納得出来ないんです。」


「そうか…」


巌谷中佐も、タケルの戦う理由を知り、これ以上は聴くまいと、この話を終わらせる。


そして、時刻は夕方頃に周り、すっかり会話が先程とは違う方向に持ってかれ、賑わうタケル達。


その中でも『恋愛原子核』や殿下や香月博士の暴走話に会話が弾み、爆笑する巌谷中佐。
その話を聞きながら料理を作っていた唯依は呆れていた。


「巌谷中佐…オレ、どうすればマトモな人生を歩めるんでしょう…」


「ハッハッハッ!!良いではないかっ!!
このような愉快な波瀾万丈な人生、なかなか体験出来ないぞ?」

「巌谷中佐…変わって下さい」


「断る!!
私はまだ死にたくはないからねっ!!」


「んがっ!!」


真面目に相談した筈が、爆笑ネタになってしまい、る~る~…と悲しむタケル。


『お二方、食事の準備が出来ましたよ。』

「おおっ!!!待ってました!!」


「頂きます」



台所から、巌谷中佐の妹が現れ、唯依と一緒に料理を運んでくる


「おっ、美味しい!!」


「だろう?
妹や唯依ちゃんの料理は絶品でな、此処に居る時の楽しみのひとつなのだよ」

「成る程~…それじゃあ、娘さんをお嫁に行かせづらいのでは?」


「し、白銀中尉ッ!?」


タケルの一言に敏感に反応する唯依だが…


「そんな事は無いさ。
確かに、唯依ちゃんの手料理を手放すのは惜しいが…
唯依ちゃんの花嫁衣装を見たり、産んだ赤ちゃんの名前を考えたり
孫から『おじいちゃん♪』と可愛らしい表情で呼ばれる事を待ち望んでるぐらい期待してるのだよッ!!」


「おっ、叔父様ァァァッ!!」

巌谷中佐の発言に涙を流す程、恥ずかしい思いをする唯依
タケルも『この人…根本的にタマパパと同じだ…』と親バカッ振りを悟る。

しかし、タケルと唯依はまだ知らない…
この時既にタマパパと同じく『孫イベント』のフラグを立ててしまった事に…



「ご馳走様でした。
今日は誘って頂きありがとうございます。」


「ウム、また来たまえ。」


食事を終えて、月詠邸に帰る事にしたタケル。
玄関までタケルを見送る巌谷中佐や唯依に別れを告げ、帰っていく。



「…どうかね、唯依ちゃん。
彼の印象は?」

「最初は余り良い印象では有りませんでした…
けど、あの話を聞いた後、少し変わりました」

帰ったタケルの印象を唯依に訪ねると、辛口な返答が返ってきた。



「…先程のオリジナルハイヴの例え…
恐らく、あの話は『実話』なのだろう…」


「えっ…?」


巌谷中佐の言葉にピクリと反応する唯依


「勿論オリジナルハイヴ云々はあくまでも『例え』だろうが…
少なくとも『大切なん人達を失う』という所は…実話なのだろう…
あの時の彼の表情…深い悲しみに満ちていた表情だったよ…」


「…………」


「彼の戦う理由云々に文句は付けない…
だが、これから先、彼を救い『幸せ』に出来る者が現れなければ…彼は救われる事は無いだろう」

「そんな…」


「あのような歳で…過酷な人生を歩んだのだな…彼は…」

今は居ないタケルを思って、複雑な心境になる巌谷中佐…

(私は中尉の心の傷を抉ったのかもしれない---)

唯依もタケルの事を少し知り、先程の自分に反省をする。



(今度、中尉に謝らなければ…)

タケルの存在を少し気になる唯依だった…



「やべ…少し遅くなったな…」


速歩きで帰宅するタケル
空が暗くなり、急いで帰宅する。



「彼処を曲がれば…ぬおっ!?」

『うわっ!?』


交差点を曲がると、突然人とぶつかる



「す、スミマセンでした、急いでたも…の……えっ?」


『此方こそ申し訳有りませ……えっ?』

お互いにぶつかった事に謝罪するが、お互いの姿を見ると、沈黙する


そして、最初に沈黙を破ったのは---



『タケ…ル…?』


少し幼い姿をしていた『御剣冥夜』だった…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第十四話①
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/09/09 12:30
「タケ…ル…」


「えっ…」


涙を滲ませながら、タケルの名前を呟く冥夜。
その事に驚き、呆然としてしまう

「す、済まぬ。人違いでし…」


「いや、冥夜…か…?」

「-----ッ!!」


『冥夜』と呟いた瞬間、冥夜の瞳から涙が溢れ出し、タケルに抱きついてくる。


「タケルゥゥッ!!!」

「うわっ、ちょっ…冥夜!?」


「逢いたかったぞ…そなたに、再び…逢いたかったぞ…。」


ワンワンとタケルの胸元で泣く冥夜だが、ニブチンのタケルは、何故突然泣き出したかも解らずに戸惑い、そして周りの人達に『アラアラ…あんな可愛らしい子泣かせて…』と冷たい視線をされてしまう


「め、冥夜、泣き止もうな、
ここ…目立つし…」

「えっ…す、済まぬ。」

やっと気づき、すぐに泣き止む冥夜
そして、タケルは冥夜に『確認』をする。


「冥夜…ひとつ確認する…
オレと最後に会ったのは…『横浜基地』か…?
それとも『桜花作戦』か…?」


「…?
変な事を聞くな…
最後に会ったのは『桜花作戦』ではないか…」


冥夜の返答を聞いて『二度目の冥夜』と理解するタケル。
そして、次に取った行動は----


「冥夜、済まないが月詠邸に来てくれ。
これ以上の話はかなりヤバい話だからな」


「月詠の…?
うっ、うむ、わかった…。」


タケルの言う事を聞き、月詠邸に向かうタケル。



「ただいま~」


「白銀…随分と遅…冥夜様!?」

「久し振りだな、月詠。」


冥夜来訪に驚き、言葉を失う真耶。

「スミマセン、真耶さん。
『緊急事態』発生したので、ちょっと付き合って下さい。
あと、真那さん…居たりします…?」


「真那は任務でしばらくは帰って来ない
それより『緊急事態』とは一体…!?」


「それはオレの部屋で話します。」


「……わかった。
ささっ…冥夜様、上がって下さい。」


「うっ、うむ…失礼する。」


突然の事に戸惑う真耶だが、すぐに冷静に戻り、冥夜を部屋に案内する。



「…待たせたな、やちるには、急な用事で無い限り近づかないように言ってあるから、安心するがいい。」


「ありがとうございます。」


「…ところでタケル。
何故月詠の家に住んでるのだ…?」

「えっ…?」


拗ねた感じに質問する冥夜だが、その様子を見て、異変に気づく真耶。


「冥夜様…何故白銀中尉を御存知なのですか…?」

「白銀…中尉…?
それに何故斯衛の軍服を着てるのだ…?」


「あ゛~…今、纏めて説明するから、ちょっと落ち着け」


混乱する真耶と冥夜を落ち着かせる



「まずは…真耶さん。
実は冥夜は…オレと同じく『ループ』した可能性が有ります」


「な、なんだとっ!?」


タケルの一言に驚愕する真耶。
先程の違和感の理由にやっと気づく。


「先程確認をした所、冥夜は『二度目の世界』からループして来たようです。
…あくまでも推測ですが、冥夜のループの原因のひとつとして、『荷電粒子砲』のエネルギーが原因だと思います」

「…成る程、香月博士と同じような理由か…」


「こ、香月博士だとっ!?
私達の知る博士がこの世界に居るというのかっ!?」


「ああ、先生もこの世界にループしてる」


冥夜のループの原因を予測し、納得する真耶。
自分の知る香月博士まで、この世界に来てる事に驚愕する冥夜。


「次は冥夜の質問
何故俺が月詠邸に住んでるのかっていうと…先生の仕業だ。
因みに中尉や斯衛軍に所属してる理由は、先生や殿下達が話し合った結果…という事だ。」


「成る程…それならば分かる…」


冥夜もタケルが月詠邸に住み込んでる理由を知り、納得する。


そして、タケルは冥夜に自分が三度のループをしてる事を説明し、そして現在香月博士や殿下達と共に『歴史を変更』してる事を説明する


「…そうか…そうだったのか…
今やっとタケルの『特別』の意味を知った…
それに訓練兵時代の数々の怪しい行動は、そういう意味だったのか…」


「まあ…ネタばらししちまうと、そういう事だ。」


「道理で…訓練兵時代の兵科や座学が優秀な理由は『既に衛士だった身』とは…もしや、戦術機の機動特性もそうなのか?」


「半分正解、半分不正解。
俺の機動特性は『元の世界』のゲームで鍛えた物だ。
そこから『一度目の世界』で鍛えた結果がアレさ」


「ムゥ…なんと…」

タケルの説明を聞いて納得する冥夜だが、その瞬間、冥夜の表情が曇りだす。


「…そうか…あの時、神宮司軍曹が亡くなった時…
そういった理由で自分自身を責めてたのか…」

今やっと気づき、あの頃のタケルの苦悩と悲しみの理由がわかった冥夜。

自分の不甲斐なさ、そして自分が『歴史を変えた事』により、恩師である神宮司軍曹を死なせてしまったと、責めてたタケルの悲しみの理由を知る


「済まぬ…タケル…
あの時の…にゃ、にゃにふるっ!?」

謝る冥夜の頬を引っ張るタケル


「んな事冥夜が謝る必要なんて、ねーよ…
けど、二度と『あんな真似』はするな…
もう二度と…お前を…お前達を失う事なんて…耐えられるかよ…!!」


冥夜の頬を引っ張りながら、悲しみに落ちるタケル。
引っ張ってた手も離れ、力無く垂れ下がる。



「もう二度と…お前等を失わせたりするかよ…
もう二度と…この手で、お前の命を…奪わせるな…!!」


「タ…タケル…」


「もう…おまえ等を死なせてたまるかよ…
ゴメン…守れなくてゴメン…」


「----ッ!!」


自分が行った行為に気づき、タケルに詫びる冥夜。
タケルを抱きしめ、涙を流しながら謝罪する。



「…済まねぇ、カッコワリィ所見せちまって。」

「そのような事は無い…」

泣き止むタケルにフォローを入れる冥夜。
冥夜の涙を真耶が拭う。


「ヨシ、気持ちを切り替えて、話を進めよう」

「うむ…そうだな」

涙を拭い、話を進めるタケル

「…まず、この事は先生や殿下達に知らせる必要があるな」


「殿下にこの話を伝えるのは、明日にしよう。
今日は政務などで忙しいから、明日の午前中にでもしよう。
香月博士に関しては、白銀に任せる。」


「わかった、先生については任せてくれ。」


今後の方針を少しづつ決めていくタケル達



「私は何をすれば良いのだ、タケル。」


「…冥夜はしばらくは動けないな…」


「うむ、冥夜様が動いてしまうと、怪しまれてしまう可能性がある。
…少なくとも、冥夜様が戦場に出るのは、明星作戦以降かと…」


「ぬっ…そうか…」


満足に動けない身である事に無念を感じる冥夜だが…



「冥夜様、ご安心を…
極秘では有りますが、冥夜様の身代わりの任の件…
『変更』の方向に動いている所です」


「変更?」


「ああ、殿下の復権と冥夜様の『身代わり及び将軍職の引き継ぎをしない』という条件に解放する動きを進めてるのだ。」

「えっ!?」
「なんだとっ!?」


真耶の一言に衝撃が襲うタケルと冥夜。



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第十四話②
Name: 騎士王◆cd16c2d4 ID:decbdc3f
Date: 2010/09/09 12:28
「つ、月詠、その話一体どういう事なのだ!?」


「ハッ、此度の『光州作戦』で、見事歴史を変更する事に成功し、彩峰中将が生還した為、2001年12月5日に起きる『12・5事件』と呼ばれるクーデター事件が、高い確率で『回避する事』に成功致しました。
…しかし、その事によって、冥夜様の『身代わり』や殿下の復権の出来事も無くなったのです…」


「そっか、あのクーデター事件が有ったからこそ、殿下の復権が出来たとも言えるし、冥夜の『身代わり』が有ったからこそ、冥夜は衛士になれたんだからな…。
それが今回はクーデター事件が無くなるかもしれないって事は、殿下の復権や冥夜の『身代わり』のイベントも無くなるって事になる。」


「その通りだ、白銀。
そして、そのせいで『歴史』が大幅に変更する可能性が有るかもしれない為、対処案として殿下が復権する動きを行っているのだ。
『復権』と冥夜様の『身代わりの任務解除』を実行する事で、少しでも修正をしようと香月博士の提案でもあるのだ」


「成る程…そうだったのか…」


真耶とタケルの説明を聞いて理解する冥夜
そして、話はまだ続きがあった。


「そして、此度の作戦が成功すれば、殿下の復権により、更にクーデター事件は回避出来る可能性が高まり、
そして冥夜様が衛士になる事に問題は無くなり、衛士として戦う事が出来ます。」


「更に言うならば、冥夜が横浜基地に所属した場合、『桜花作戦』時に斯衛軍が随伴する事が出来る事になる
名目上将軍家、もしくは縁者である冥夜を『護衛する』って理由が出来て、みんなの生還率が上がる事にも繋がる。
そうすれば、真那さん達の第19警備小隊やウチらの第17大隊も参加出来る事になる。
そして、その際真那さん達が武御雷を俺達に預けて処罰を受ける事も無くなるって訳だ。」


「おおっ…凄いではないか、タケル!!」


『桜花作戦』時の帝国軍参加する問題も解決され、尚且つ真那達第19警備小隊の処分の問題も解決出来る事を知り、冥夜の表情に驚愕と共に、笑顔が出てくる。


「…けど、だからって簡単に復権とかが出来る訳じゃ無い。
だから『明星作戦以降』って長い期間を言った訳だし…」


「それに冥夜様の問題が解消されても、下手をすれば『縁を切られる』可能性も有るのです…」


「うっ、それはマズいな…」


『縁を切られる』問題に表情が曇る冥夜と真那


「あっ、その問題に関しては大丈夫だ。
つーか、先生…もしかしたら其処まで考えて『イタズラ』したのか…?」

「「ハッ?」」


タケルの一言で呆気に取られてしまう二人。


「ど、どういう事なのだ…タケル…?」


「あ~…実はな…以前、真耶さんとシミュレーター訓練で勝負した事が有ってな、
その際、オレが真耶さんにプロレス技で勝った為、真耶さんキレてオレをフルボッコにした事があったんだよ。」


「プロレス技…お主は彩峰か…?」


タケルの話を聞いて呆れる冥夜だが、真耶は話を聞いて思い出し、ピクピクと眉間に怒りマークが浮かび上がって来る


「その時先生が居てな、『負けたのはアンタの油断のせいよ
従って、逆ギレしたアンタには罰を与えなきゃね♪』って楽しそうに言ったんだよ…
その罰ってのが、オレを『月詠邸に同居させる事』だったんだよ。」


「…成る程、それでか。」


「で、その時殿下や斉御司大佐も居たんだけど…
殿下も罰に反対だったんだけど、先生に『有る事』言われて、形成逆転し、殿下も罰に賛同したんだよ…」


「あ…ある事…?
なんだか嫌な予感がするのだが…」


恐る恐ると、返答を聞いてみると---



「…私と同居させる事で、白銀に『女心』や色々な事を学ばせて、『鈍感』も直してしまおう…と言ったのです」

「そして、その間に法律を改正して『一夫多妻制』にしたら冥夜と仲良く一緒になれますよ~…って誑かしたんだよ。」


「ななな…なんだとぉぉぉぉっ!?」


白銀ハーレム計画を知った冥夜は絶叫し、大混乱する。


「…つまりだ、例え『身代わり』の件で冥夜が縁を切られても…後々にまた縁者になっちまうんだよ。
今考えると…こういう意味でも、この『イタズラ』を計画しやがったんだと思う…
…そして、法律の改正案の方も…殿下や先生が、あの手この手使って絶ッッ対改正するだろう…」

香月博士の用意周到なイタズラに
『先生…アンタすげーよ…Ⅲorz』と落ち込むタケル。
そして、その話を聴いて、冥夜や真耶もⅢorz…と落ち込む。



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第十四話③
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:7df15b6d
Date: 2010/09/10 02:27
落ち込んでいたタケル達だが、なんとか立ち直るが、ふと時計を見ると、19時を超えていた。

「結構時間がかかったな、
御剣家の人達も心配してるんじゃないのか?」


「う、うむ…まあ、今日は紅蓮大将の下で鍛錬をしてたから、誤魔化す事は可能だが…」


「そっか、オレが家まで送ってやるよ。」


タケルが冥夜を家まで送ると言うと、嬉しくも寂しそうな気持ちになる冥夜。
すると真耶がニコリと笑みを作る。


「ご安心を、冥夜様。
既に御剣家には連絡を入れています故に、今日は『お泊まり』する事が出来ます。」

「ほ、本当か、月詠!?」

「ハイ、本当で御座います。
但し、明日はこちらで朝食を食べた後、直ぐに御剣家に戻ります故に、朝は少し早くなりますので、ご了承を。」


「ウム、月詠…そなたに心から感謝を。」


今夜は泊まる事が出来て嬉しい冥夜。
そんな冥夜を見て、『良かった』と思うタケルと真耶。
すると、廊下からパタパタと走って来る足音が聞こえる。



「真耶様、失礼します。」


「どうした、やちる?
何か急な用か?」


「ハ、ハイ、『お客様』が来まして…
…実は今此処に上がって貰ってるんです…。」


随分とアワアワと落ち着きが無いやちるを見て『余程の人物』と悟る。



「ワシじゃ、真耶。
……って冥夜様が何故此処に!?」

「ぐ、紅蓮大将!?」


やちるの隣に現れたのは、紅蓮大将だった
その事に驚く真耶だが、紅蓮大将も冥夜を見て驚き、慌てる。


「ん…まだ誰か居るんですか?」


タケルがひょいっと立ち上がり、紅蓮大将の視線の先の廊下を覗くと----


「で…殿下っ!?」


「「ええぇぇぇっ!?」」

「ホホホッ…」


苦笑いをしながら、悠陽殿下が部屋に入って来る。
どうやら、やちるの慌ててた理由は、殿下来訪のせいだった。


「な…何故殿下が我が家に…?
それに今日は政務で忙しいのでは?」


「勿論忙しかったですわ。
ですが、急遽『榊是親』殿が体調不良で倒れまして、この後する筈だった会議が中止になってしまったのです…。
それで、今日の職務が終了し、紅蓮大将を呼び出し護衛を頼み、タケル様の下に『用事』で参ったのです。」


「用事って…それだったら、俺から其方に向かったのに…」


「いえいえ、此度の『用事』はプライベートの用事も有りましたので…。
それで此方から参ったのですが…
冥夜が此方に居たとは…驚きましたわ…」


「すっ、済みませぬ!!」


悠陽殿下との鉢合わせに謝罪する冥夜だが、『そなたが悪い訳ではありませんわ』…と冥夜に寄る悠陽殿下。

「此度はお忍びで来たので、この事を知ってるのは、紅蓮大将以外には神野大将と…『鎧衣』だけですわ」


「お忍びって…」


なんとなく嫌な予感がバリバリするタケル
そして、紅蓮大将の顔がニコニコしていた為、予感が的中する事になる


「やちる、済まないが、退室してくれ」


「畏まりました。」


座布団に座り、真面目な表情になる悠陽殿下。
それを見て、すぐさま部屋から退室するやちるを確認すると、話が始まる。



「タケル様、済みませんが、何故冥夜が此処に…?」


「丁度良かった、殿下に話したい事が有りました。」


「タケル様…今は『悠陽』とお呼びになって下さい…
あと、いつものような話し方で構いませんので…」

「そ、それじゃ…
悠陽、話したい事があったんだ。」


「悠陽…悠陽…悠陽…」

タケルに『悠陽』と呼ばれて、自分の世界に入ってしまう悠陽殿下
そんな場面を見てしまった冥夜は複雑そうな気持ちになってしまう。



「……いいかな…話進めても?」


「す、スミマセン、タケル様」


正気を取り戻した所で話を進めるタケル
冥夜もタケルや香月博士と同じループして来た事に悠陽殿下と紅蓮大将は驚く


「そうでしたか…
冥夜…そなたの働き、誇りに思います。
タケル様を支え、結果オリジナルハイヴを攻略に導いたのです
…そなたが亡くなったのは、悲しく思いますが、此度の世界では、より良い運命に変え、尚且つタケル様を悲しませないようにしましょう…。」


「ハッ…承知致します。」


『タケルを悲しませない』という言葉に反応し、誓う冥夜
二度とタケルを悲しませたりはしない----



そう決意を決めた所で、悠陽殿下の話が始まった。


「それでは、お話を始めたいと思います。
此度五摂家の現当主と、煌武院家の前当主である『煌武院雷電』お爺様をお呼びになり、『復権』の事や、冥夜の件の話について、会議致しました。
最初はお爺様やが異議を言いましたが、五摂家の現当主全てが、賛同して下さった為、お爺様を説得する事が出来ました。」


「おおっ!?それじゃあ…」


「ですが、そう簡単にはいきません。
まずは、内閣総理大臣である『榊是親』殿と話し合い
そして、城内省を説得せねばなりません
本来は今日の談話で榊殿を説得する予定でしたが、日頃の激務が原因で、体調不良で倒れたのです。
しかし、容態はそれ程酷くは無く、一週間程休む程度で済みました。」

「そっか…良かった。」


ホッとするタケルと冥夜。
親友であった『榊千鶴』の父親が倒れた為、心配をしてたが、現在の容態を聞き、安心する。


「城内省の方は、今一部で不穏な動きがありまして…
鎧衣の情報によれば、米国に通じてる者が居るようなのです。
ですから、もし日本に悪影響を及ぼす事であるならば、全力で叩き潰す所存であります。
それから城内省とは少し時間はかかりますが、説得するつもりであります。」



悠陽殿下の説明を聞き、納得するタケル達。
予想以上に順調で少し驚いていた



「そして、城内省を説得する事が出来ましたら、冥夜の件は解決します。
ですが、復権の件は、後々皇室に向かい、皇帝陛下に報告し、皇帝陛下の御許可を貰い、そして後に米国が日本から撤退した時に復権は実現となります。
今現在は米国が邪魔故に復権は出来ません…
ですが、タケル様のお話通りならば、米国は今年7月中に『日米安保条約』を一方的に破棄し、在日してる米軍は撤退する筈…
その時こそが、復権するチャンスでも有るのです。」


「成る程…わかった
予想以上に早かったのは驚きだが、これで冥夜の件や12・5事件の事は大丈夫みたいだな」


「ハイ、それ故にこれからもお力を貸して下さいまし」


『勿論だ』と返事を返すタケル
悠陽殿下も喜び、周りのみんなも賛同する。
…すると、突然悠陽殿下の表情が妖しく変化する。


「此処までのお話は『用事』の件です
これからお話する『プライベートな話』をお話致します。」


「…それはわかったが、何故突然オレにくっつくんだ?」


突然タケルの隣に座りだし、ベッタリと腕を組みだす


「最近は激務故にタケル様に会う機会が少なく、寂しい想いをしましたわ…
しかし此度偶然にも冥夜と来訪してます事ですし…今日は此処に『お泊まり』致しますわ」


「なんですとぉぉぉぉっ!!?」


悠陽殿下の爆弾発言に驚愕する一同。
しかし…悠陽殿下のターンはまだ終わってなかった!!


「冥夜…今日はタケル様を挟んで一緒に寝ましょうね。
勿論真耶さんも一緒ですよ。」


「で、殿下!?」

「あ、姉上!?」

うっかり冥夜が『姉上』と呟くと、『姉上…姉上…姉上…』と、涙を滲ませながら、再び自分の世界に入ってしまう。


「紅蓮…後は頼みますよ…」


「ハッ、殿下及び、冥夜様や真耶のお元気な『赤子』を見たい所存で御座います。」

「「な゛っ!?」」


「まぁ…紅蓮たら…(ポッ)」


「オッサン、謀ったなぁぁぁぁっ!!」


暴れるタケルを悠陽殿下・冥夜・真耶が抑えてると、紅蓮大将が部屋の襖を閉めてガチャガチャ物で塞ぎ、逃げ場を塞ぐ
その際、楽しそうなやちるの声が聞こえたりするのは当然の事だったりする。


「ヌゥゥン!!必殺…『宇宙乃壁』(今命名)」


「嘘ぉぉぉっ!?
窓 が 開 か な い っ !?」


そして紅蓮大将がその場で作ったテキトーな必殺技で、窓からの退路が塞がってしまう。
すると、襖の方の小さな隙間から、テッシュの箱が入ってボトリと落ち、『頑張って下さいね~♪』…と陽気なやちるの声が聞こえてくる


「タケル様…」

「タケル…少し幼いかもしれないが…宜しく頼むぞ…」


「いつの間に布団をっ!?」


「さ…白銀…今夜はまだ長い、頑張って貰うぞ。」

「っていつの間に服をっ!?
って二人とも、服を脱いだら駄目ぇぇぇっ!!」



タケルの阻止する言葉など無視し、ジワリジワリと寄って来る冥夜・悠陽。
真耶に拘束されてる為、逃げ場無し
為す術が無いタケルだった…。



因みに翌日の朝、やちるが部屋を訪れて見ると、目をぐるぐるとしながら気を失っていた悠陽達三人と…何故かスッキリしたタケルが横たわっていた…


後に三人は語る…『タケルが獣と化したら逃げ場は無い…』
どうやら、途中から立場が逆転していたみたいだ…



そして、白陵基地では---


『ズゴォォォォォォォン!!!』

突如、白陵基地に現れる閃光と共に鳴り響く轟音。
その場所には、左の拳を天高く突き上げる少女が存在していた…



「フフフ…何故かは知らないけど…
タケルちゃんに今完成させた『ふぁんとむ』を喰らわせたい気持ちだよ…☆」


『チェ、チェリーーーッ!!』


『チェリー(男)が、あの少女のパンチで空に吹っ飛びやがった!!』


『凄い…閃光まで放つなんて…』


乙女の直感で怒り心頭の純夏の拳から、『伝説級の左』が炸裂し、チェリー(男)がタケルの代わりに空高くお星様となった…。



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第十五話①
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:7df15b6d
Date: 2010/09/10 21:27
1998年・5月9日
京都・崇宰家---


「孝志さん、起きて下さい」

「うーん…椿ぃ…あと五分…」


布団の中で良い感じに眠っている孝志を起こすタケルだが、椿と勘違いされフリーズし、タケルの隣に居た政弘は『怠け者が…喝ッ!!』と孝志の顔面に正拳をプレゼントする。



「…随分な目覚ましだな、政弘…」


「待ち合わせ場所に遅刻するならまだしも、
遅刻どころか気持ち良く布団の中とは…良い身分だな…!!」


「…………………今何時?」


「もう昼過ぎてるッス。」


「嘘ぉぉぉっ!?」


「事実上、二時間の遅刻だぞ。」



呆れた表情で孝志を見るタケルと、怒り心頭の政弘を見て『スミマセンデシタ…』と土下座して謝る孝志。


「昨日椿さんと何か良い事したんですか?」


「なななな…何故椿の名前が出て来るッ!?」


「寝ぼけながら、椿の名を呟きまくれば、誰だって気づくに決まっておろう。」


「ぐはっ!?」


墓穴を掘る孝志に突っ込む気力すら失せた二人。
そのまま孝志を連行して、城下町付近に向かう。



「全く、せっかく合わせた休日が二時間も無駄になったではないか。」


「すまねぇ、お詫びに今日はオレのオゴリだからさ。」


「まったく…」

苦笑いをしながら、孝志を許す二人。
城下町付近の店を散策しながら、買い物をする。


「タケル…珍しい物買うな…」


「ほう…裁縫道具と生地とは…何を作る気だ?」

「いやぁ~…オレ不器用だから、プレゼントとか選ぶの苦手で…
だから、不器用ながらでも、『人形』でも作ろうかと思って…」


「タケルが裁縫!?似合わねぇ…!!」


珍しい事をするタケルに関心する政弘と、驚愕する孝志。
孝志に『似合わねぇ…!!』と言われ『わかっとるわっ!!』と反論するしかなかった。


「良いではないか、お金で買ってプレゼントするより、手間暇かけて作る方が愛情籠もったプレゼントになるのは間違いない。
貰う方も嬉しいと思うぞ?」


「…思い出した。
確か以前、月詠真耶『大尉』に人形プレゼントしただろ。
あれ…もしかすると、手作りか?」


「なんで知ってるんだ、アンタ!?」


驚愕するタケル
以前、真耶が『大尉昇進』のプレゼントとして、『メイド長・真耶人形』をプレゼントした事があった

昇進する一週間程前に、悠陽殿下から話を聞いて、日頃からの恩返しと思い、休日丸々1日を使い、プレゼントする物を探したが、結果は『見つからなかった』のだ



タケルには、プレゼントを選ぶ才能がまっっったく皆無で、選ぼうにしても、ロクな物ではなかった。


唯一、マトモなモノがあったが、値札の金額が所持金よりゼロが一つ多かった為、断念するしか無かった。



万策尽き、最早これまでかと思ってたが---
頑張る者には神は救いの手を差し出した---


閉まっていく店の中で唯一開いていた店『ハローモンキー』
24時間営業の衣料専門店である。


『…何故衣料専門店が24時間営業…?』

びみょー過ぎるツッコミを入れるが、藁を縋る思いで中に入る。


しかし、中にある衣服は一般人向けの服ばかり。
勿論中には真耶に似合う物もあったが、タケルには、そんな見る眼は無かった。


『駄目かぁ…』と諦めかけたその瞬間、目の前には店員が手作りで作ったテディベア人形があった。

そして、人形のある店は、生地・裁縫道具・ボタンなどの様々なアイテムが販売していた衣料店。
そしてその瞬間、タケルに閃きが浮かんで来る!!


『欲しいプレゼントがなければ、作ればいいじゃないか?』


以前、二度目の世界で、純夏にプレゼントした木彫りのサンタウサギを思いだし、『これだぁぁぁぁぁっ!!』と思いつき、大量に衣料と本を買っていくタケル。
その日から、裁縫との戦闘で、全ての指に絆創膏を巻き付ける事になる


作る物は、元の世界のメイド長・月詠真耶をイメージして、『メイド長・真耶人形』を作る事にした。


そして、昇進した日
帝都城のとある部屋で真耶に人形をプレゼントをすると、効果は覿面(てきめん)。
人形とタケルの指の絆創膏の数を見て、好感度がぶっちぎりに上がり、今までに無いぐらいの笑顔で真耶に感謝される事になる。


それ以来、ちょっと学習したタケルは、プレゼントをする際に『手作り人形』というカードを得たのだった。



「…それで、今回は誰にプレゼントするんだ?」


「ん~?
世話になった『幼なじみ』だよ。
今まで、ずっと一緒だっただけに、今回は離れてるからな…
寝坊助なオレを毎日起こしに来て、母さんの居ない日は飯も作ってくれた。
…まあ、今回のは、今までの感謝の意味で…かな?」


照れながら説明するタケルを更に関心する政弘と、『良い奴ぢゃん…』とタケルの評価を上げる孝志。



「そういう孝志さんは、椿さんにどんなプレゼントを渡すんですか?」


「ぐっ…。
それがよ…椿の奴、そういうの無関心って言うか…
欲しい物無いかと聞いても『有りませんわ
貴方と一緒に居られるのが、一番のプレゼントですわ』…て言うんだよ…。
…嬉しいけど、何かこう…プレゼントして喜んでる笑顔がみたいって言うか…」


「大変ッスね~…」


孝志の気持ちを理解し、同情するタケルだが…
タケルの興味の視線は、そのまま政弘に向く。


「な、なんだ…タケル…」


「そういえば、政弘さんって、そういう話有るんですか?」


「無い。
政弘はそういう関連はゼロでな…。
モテるんだけど、タケル以上にウブな奴だから、まだ彼女が居ないんだよ…」


「た、孝志!?」


真っ赤になりながら孝志を叱る政弘だが、タケルに『仲間だ…!!』と認識される。


「政弘さんって、どんな女性が好みッスか?」


「好みか…むぅ…難しいな…」


唸る政弘、うーんうーん…と悩むと…



「強いて言うならば…『静中佐』だな…」


「ああ~…良いね。」

「静中佐って…誰ですか?」


政弘の言葉に納得する孝志だが、タケルに『誰…?』と首を捻られると、孝志が説明する。



「『紅蓮静中佐』、あの紅蓮大将の一人娘であり、無現鬼道流の後継者である人。
べらぼうに美人で、剣の腕も超一流
軍人としても凄腕で知られ、衛士としても紅蓮大将や神野大将の二人に迫る程の超実力者だ
けどプライベートになると、家庭的な人物らしく、『大和撫子』や『良妻賢母』の言葉が当てはまる程の人らしい…
ぶっちゃけ、外見上は100%母親似、中身の超人度は父親似…だな」



「なんつー…チートっ振りな人だ…」

『人間として、この完璧度、どうよ?』と意見を出すタケルだが、孝志と政弘は『紅蓮大将の娘さんだし…』の一言で、全て解決されてしまう。




そんな風にガヤガヤ賑わっていると----




「うしっしっ♪タケルちゃん、み~っけ☆」


建物の物影からタケル達を覗く、純夏・クリスカ・イーニァの三人組が居た…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第十五話②
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:7df15b6d
Date: 2010/09/11 23:46
「それにしても、タケルちゃん、珍しく男の人だけで街中歩くだなんて…、悪いモノでも食べたかな?」


「ス、スミカ…、タケルだって、男友達が居てもおかしくは…」


「うーん…タケルちゃんの場合、友達の割合が9:1(女:男)の割合だからな…」


「9割女性!?」


純夏の誤解ある説明で驚愕するクリスカだが…



「タケル~~!!」


「「ええっ!?」」


せっかく、隠れてたものの、イーニァの突撃で無駄になる。


「イーニァ!?」


「タケル、しばらくぶりだね♪」


「…タケル、この娘は…?」


「イーニァ・シェスチナって言って…簡単に説明すると、沙耶さんの姉妹みたいな関係だ」


「「!!?」」


タケルの説明を聞いて驚愕する孝志と政弘
しかし、イーニァの持つ、ほわわんとした雰囲気に和んでしまう。


「へぇ~…そっかぁ~…
こんにちは、イーニァちゃん。
オレは崇宰孝志って言うんだ、孝志って呼んでくれ」


「うん、わかったよ、タカシ
よろしくね♪」


「俺は斉御司政弘、政弘で構わないよ。」


「よろしく、マサヒロ♪」


イーニァに自己紹介する孝志と政弘
イーニァも礼儀正しく挨拶をすると、二人にリーディングをする。


「タカシはやさしい、ポカポカする、おひさまのひかりみたいないろ。
マサヒロは、あたたかいかぜのようないろ。
みんなをまもるように、つつんでくれる。」


「…もしかして…リーディングした?」


「うん♪」


素直に答えるイーニァを見て、叱る気すら失せてしまう政弘。
孝志は『やれやれ…』とイーニァの純真無垢な姿を見て苦笑いをする
そのあと、タケルに『あんまりリーディングしたら駄目だよ?』と注意されると、『ゴメンナサイ、タカシ・マサヒロ。』と謝る姿を見て、『くぅ…怒る事が…出来ん!!』と萌えてしまう。



「ちなみに、イーニァ…
クリスカは何処に…?」

「クリスカとスミカは、あっちにかくれてるよ?」


「…ほう」


イーニァの指差す先には、諦めて姿を見せるクリスカと、クセ毛だけピコピコ動かしながら隠れる純夏がいた。



「フッ…『頭隠して尻隠さず』とは、正にこの事よ…!!」


腰から何故かビニールスリッパを取り出し、くの字に折り曲げて----



「それで隠れたつもりか、純夏ぁぁぁぁっ!!」




「痛ぁぁぁぁっ!!?」

折り曲げたビニールスリッパを投擲し、クリスカの頭上を通過し、見事純夏にヒットする。


「ひ~ど~い~よ~!!
タケルちゃん、私の頭がバカになったら、どーするのさっ!!」


「安心するがいい、純夏。
お前の頭は元々バカで出来ている
これ以上悪くなる事は無い!!」


「ひどいよ~…タケルちゃん、気にしてるのにぃ~…。」


「「…………」」


タケルと純夏のやりとりを見て、孝志と政弘は言葉を失う。
クリスカとイーニァは、最早見慣れた光景故に、落ち着いていた。


「タケル…その二人は?」


「こちらが、イーニァのお姉ちゃんのクリスカ・ビャーチェノワ。
そして、コイツが幼なじみの鑑純夏。」


「クリスカ・ビャーチェノワです。」


「鑑純夏ですっ♪」


普段通りに自己紹介をするクリスカと、元気いっぱいに自己紹介をする純夏。
その後に、再び孝志と政弘が自己紹介をする。


「タケルちゃん、珍しく男の人だけで街中歩いてるけど、どーしたの?」

「誤解を招く事言うなっ!!」

『スパァァァン!!』


「あいた~!!」

孝志や政弘達の前で暴言を言う純夏に、必殺ビニールスリッパ攻撃でお仕置きをする。


「今日は『臨時収入』が入ったから、孝志さんと政弘さんに買い物に付き合って貰ってるんだよ!!
あと、誰がいつ何処で俺が毎日毎日女性を連れまわしてるかっ!!
強いて言うならば、純夏ぐらいだろうが。」


「ハァ…だからタケルちゃんは『鈍感』なんだよ…。
中学の頃、タケルちゃん結構人気あったんだよ?」

「…知らん。
お前が常にそばに居たから、全然知らんかったよ」


本当の事を話すタケル。
『この世界の白銀武』と同化してる為、記憶はあるが、やはりニブチンな為、気づいてない。



「臨時収入って言ってるけど、何の臨時収入なんだ?」


「XM3の発案料ですよ。
先生がXM3のライセンスを取ったから、そのライセンス料から引いて、発案者の俺に振り込んで来たんですよ」


「へえ~…そうなんだ。
ところでタケルちゃん、香月先生から、いくら貰ったの?」


「………これだけ。」



鞄から通帳を取り出して、パラリと開いて見せると…




「いち、じゅう、ひゃく、せん、まん…………へっ?」

「ゼロがいっぱいあるね、クリスカ」


「…………………目の錯覚かな…?」


イーニァとタケル以外のみんなが目をゴシゴシとこする


「錯覚…じゃないな…?」



「いち、じゅう、ひゃく、せん、まん…じゅうまん…ひゃくまん…いっせんまん…へっ?」



目をグルグルと回しながら桁を数える純夏
そして---


「三億だよ三億…
しかも、これから増える予定…」


「………どうするんだよ、この額…」


「…だから困ってるんだ…」


突然の漠然な金額を入手し、困惑してるタケル。
使い方に悩んだ所、孝志が提案してくる。



「…まず車一台買わないか?
確かタケル免許取り立てだろ?」


「まぁね、免許無いと色々困るし。」


「だな、軍で様々な車両を扱うからな…」


免許取り立てのタケルに孝志は車を購入する事を決める。
そして、政弘の案内で、車の販売店に向かい、店に入る


店員さんに、スポーツカーを勧められるが、タケルは却下し、パジェロを選ぶ
理由として『先生のような走り屋には、なりたくないから…』らしい…



「へぇ~…タケルちゃん、車の運転旨いんだね~。」



「そりゃ、一応習ったからな。」


「次は何処に行くんだ、タケル?」


「ん~…飯でも食べます?
昼飯、まだ食ってないし…」


「孝志のせいで食べてないのでな、腹を空かせてる状態だ」


「う゛っ!?」


「それじゃゴハンにしよ~♪」


政弘の道案内に従い、運転していく。



「此処で良いだろう」


「…ファミレスとは意外かも。
政弘さんなら、料亭とか案内されるかと思った」

「あのな…俺とて、周りの者に合わせたりする。
まさか、いきなり高級料亭などに連れて行ったら、それこそ鑑殿達が緊張するだろうに…」


「そうだね~…緊張してガチガチするかも…」


ホッと安心する純夏。
車から降りて、店に入ると----




「しっ、白銀、助けて…」


「ういぃ…ゆーこ、なに逃げてるのよ~?」



死屍累々とした中に、香月博士が、お酒で酔っている『狂犬』と化した神宮司軍曹に拘束されて、暴れていた。


そして本能が告げる--
此処に居ては、屍達と同じ運命を辿る事を--!!


そして、香月博士が気を失い、犠牲者の一人となる。


「にっ、逃げろーーーーッ!!」



全員が神速の速さで反転し、退却する!!


「逃~が~さ~な~い~わよ~!!」


しかし、野獣の如く追いかける神宮司軍曹
足の遅いイーニァが狙われる所を孝志がカバーに入る。


「逃げろ、タケル!!
此処はオレが殿を持つ!!」


「クッ…!!済まない!!」


そのまま車の所に向かい、脱出するタケル達


『グハッ!?』


そして、先程のファミレスから、天高く飛ぶ孝志の姿を目撃し、全員が敬礼する。



「…孝志…お前の勇姿は我々の心に刻み込んだぞ…」


「つーか、何故先生と神宮司軍曹が彼処に…?」


「夕呼先生も用事で一緒に来てたんだよ…
神宮司軍曹は護衛で来たんだけど…」


「護衛にやられちゃ、世話がねぇな…」



ウンウンと頷くタケル達…だが…





『ウフフ…し~ろ~が~ね~…♪』



「「「「え゛っ?」」」」


突然何処からもなく、声が聞こえてくる…そして---!!




『みぃ~つけたぁ…☆』

「「「「うわぁぁぁぁっ!!!!!」」」」


突然車の天井から神宮司軍曹の顔が現れ、驚愕する!!


そして、急ブレーキをして、停止すると神宮司軍曹が天井から降りて、タケルを拉致する。


「た、助け---」

「さぁ~、一緒に飲むぞぉ~☆」


そのまま先程のファミレスに連行されるタケル
残された純夏達は、自分の身の安全を重視し、ぶっちゃけ、見捨てる。


ちなみに、孝志は---


「……」


「…………孝志、何の真似をしてるのかしら?」

先程天高く飛ばされた孝志、地上に着地(落下したとも言う…)した際に、偶然椿と沙耶が居た


「神宮司…軍曹…恐るべし…ガクッ…!!」


「た、孝志?孝志!?」


それ以来、お酒を飲んだ神宮司軍曹には、絶対近づくまいと、心から誓う一同だった…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第十六話①
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:7df15b6d
Date: 2010/09/14 19:23
1998年・5月11日
京都・帝都城----


とある一室に集まったのは、普段お互いに顔を見合わせる事が出来ないメンバー。


極東国連軍・帝国軍白陵基地・オルタネイティヴ4最高責任者の香月夕呼博士

元・ノースロック社技術者・現極東国連軍・帝国軍白陵基地技術最高責任者のエルヴィン


帝国斯衛軍大将であり、最強の武人・紅蓮醍三郎


帝国陸軍中佐であり、伝説のテストパイロットと呼ばれる、巌谷榮二


そして、そんな中に我等の白銀武がポツリと存在していた。



「…なんでこの中にオレが居るんだ…?」

「アンタも上を目指すならば、こういう重要会議に参加するハメになるわよ?
それに、今回の会議は今現在開発中の戦術機関連の話よ、別にアンタが居ても大丈夫よ。」


「むしろ、居てくれると助かります。
シロガネ中尉のアイデアは、時折予想外な斬新なアイデアを出す、
そういう意味でも、私にとっては助かります。」

香月博士とエルヴィンの発言で『ウムウム…』と頷く紅蓮大将と巌谷中佐を見て、『ええ…』とうなだれるタケル。

そんなタケルを放置して、会議は始まる。



「まず今回の題は、現在開発中の不知火の改良機である『不知火・改』について、お話します。」

エルヴィンが書類を持ち、説明すると、モニターに映る不知火・改・図面が公開される。



「現在開発中の不知火・改は、通常のタイプ94(不知火)とは違い、機動力を重視した機体になっております。
勿論、接近戦・射撃能力に関しても、通常の不知火よりアップしてます。」


肩部・脚部スラスターユニットの説明や、二連式跳躍ユニットの説明をし、不知火・改の機体性能についても説明する。


「タイプ94の問題点であった、設計上余裕の無い問題については、機体自体を少し大きくし、尚且つ巨大な推進剤のタンクを取り付け、
そして、米国製ではありますが、消費電力の少ないパーツを使い、問題点をクリアしました。」


「ほぅ…従来の不知火より2mちょっと大きくなったか…
しかし、二連式跳躍ユニットとやらで、推進剤の消費が激しいのでは…?」


「それについては解決してます。
勿論二連式にするという事は、推進剤の消費が激しい事を意味します。
そこで、主機であるジャンプユニットを少し小さくし、尚且つ推進剤の消費を抑えるパーツを取り付ける事で、従来の跳躍ユニットより出力は有り、二連式にした事による推進剤の消費の問題も解決しました。
最大速度も850キロまで出す事が可能
例えシロガネ中尉が全力機動をしても、問題無い程の稼動時間を約束出来ます。」


「まっ、元々は白銀を乗せるつもりで開発した計画だから、稼動時間の問題をクリアする事は当たり前なんだけどね。
それが、帝国軍の次期主力戦術機にまで話が進むとは…
良かったわね、白銀。
アンタ、また帝国軍に貢献が出来たわよ?」


ニヤニヤする香月博士に心の中で『嘘つけっ!!』と呟くタケル。


タケルは知っている---
以前、香月博士から聞いた話ではあるが、タケルが『二度目の世界』から居なくなってから、撃震に代わる主力戦術機が現れた『タイプ04・不知火・弐型』を---


そして、その不知火・弐型を香月博士の記憶の有る限り再現したのが、この『不知火・改』なのだ

そして、エルヴィンをノースロック社から引き抜いた事により、以前から考えていた不知火改良計画を実行したのだ


勿論、香月博士の性格上、不知火・弐型の複製だけでは満足する訳なく、『超えるモノ』を創ろうと考えてた所、タケルの突然の発言とかにより、機動力に関しては超える事は出来たのだ。



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第十六話②
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:7df15b6d
Date: 2010/09/14 19:21
「そういえば…『不知火・改』が正式名称なんですか?」

「一応決定はしてないけど、ほぼ決まりよ。
やっぱり不知火は『不知火』で良いのよ」

「なんつ~…適当な理由で…」


香月博士の適当な理由にタケルは呆れながら突っ込みを入れる。
『一応、『飛燕』とか『剣舞』とか『火群』とかあったけど、パッとしないから却下したわ』と事実を追加する香月博士。

「現在、不知火・改は帝国軍だけではなく、斯衛軍の主力戦術機の一つとして考えてます。
現在、開発中の武御雷は素晴らしい性能ですが、整備性を度外視した機体な為、国外での運用は困難な問題と、ケタ違いのコストの高さ故に、年間30機程度という問題で、全ての斯衛軍には渡らないのが現実です。
そこで、そのカバーとして、不知火・改を導入する事で、斯衛軍の戦力の底上げにも繋がると考えてます。
不知火・改のコストは、まだ不知火よりは、高めですが、それでもまだ現実的なコストです。
そしてこれにより、斯衛軍の国外での運用は可能となり、尚且つ整備にも困らないという利点もありますので、わざわざ斯衛軍から帝国軍に転属して、大陸で戦う…という事もしないで済みますので、場合によっては、戦力を維持したまま大陸で戦う事も可能です。」



エルヴィンの説明を聞いて、唸る巌谷中佐。
確かにそうすれば、戦力の分散や慣れない衛士達とのチームプレーの心配は無くなる。

「…確かに良い話だが、もし不知火・改を作るとして、年間どれだけ製作出来るのだ?」


「…確かに、武御雷に比べれば多いですが、一から作るのであれば、年間200機~300機程度ですが、
現存する不知火を改造するならば、一から作るよりは、早く終わります。」


紅蓮大将の質問にエルヴィンは大凡な答えを出し、紅蓮大将を納得させる。


そんな事で、不知火・改の題だけで三時間をも時間を使い、とりあえず不知火・改の会話を終了する



その後、新兵器の電磁投射砲の開発状況を香月博士が公開すると、全員が驚愕し、唖然とする
そして---




「あと---現在、まだ開発は行ってませんが…
新しい戦術機の開発を考えてます」


「新しい…戦術機?」


「ハイ、正確に言うならば、『特別機』です。
今は--白銀専用機の『対ハイヴ突入機』と考えてくれれば良いと思います。」


「えっ!?オレ専用機!?」
突然の発言に全員がどよめきだす。
当のタケルや、同じ所属のエルヴィンすら知らない事だった。


「これは、いずれ来るであろう『オリジナルハイヴ攻略』を目的とした考えで、その際…白銀はハイヴに突入する予定です。」


「「「----ッ!!」」」


『オリジナルハイヴ攻略』の言葉に驚愕するエルヴィン・紅蓮・巌谷の三人
タケルはこの時『オルタネイティヴ4関連』の事だと悟る。


「この計画は、私が進めている、オルタネイティヴ4計画に関わっており、尚且つ白銀はこの計画に深く関わっている者。
そして、その計画の完遂には『オリジナルハイヴ攻略成功』に関わってるのです。
その際、白銀の存在は絶対不可欠であり、その白銀の完全な『全力機動』を操るには…戦術機を新開発をする必要があります。」


「ど、どういう事かね!?
先程の不知火・改はその為に創ったのでは無いのかね?」


香月博士の発言を聞き、巌谷中佐が疑問をぶつける。


すると、香月博士は白銀の隣まで近づき、説明する。



「…実は、不知火・改を開発してる最中に判明した事ですが…
現在、白銀の衛士としての成長は急上昇してます。
これも、紅蓮大将や神野大将を始め、巌谷中佐や五摂家の御子息達のおかげで急上昇してます…異常な程にね…
…このままだど、数年後には、白銀の全力機動に耐えられる戦術機は…無いのかも知れません。」

その言葉を聞き、全員が絶句する。
当のタケルや、発言している香月博士すら、驚いているのだ。


「今は不知火・改や、後々完成する武御雷でも構いませんが…
少なくとも、現在は瑞鶴・撃震の二機はもう白銀の全力機動を出す事は無理でしょう…
出せば…機体が壊れる危険性が高いからです。」

「それって、元々の問題の関節部の蓄積の問題なんですか…?」

「そんな生易しいモノじゃ無いわ。
確かにXM3を搭載し、紅蓮大将や神野大将のおかげで、機体に溜まる蓄積ダメージは減っている。
けど同時に、撃震や瑞鶴では、最早白銀の操縦に追いつけないでいるの…
無理に全力機動を行えば、機体が破損する可能性がある…それ故に、白銀には『特別機』を創る必要が出て来たって訳
しかも…武御雷や不知火・改を『超える機体』をね…」


最早誰一人言葉を発する者は居なくなり、口をパクパクとする。


「現在はまだ取りかかってませんが、今度の機体は、白銀に合った機体、『機動力に特化した機体』を目的として製作したいと思います。
勿論、接近戦闘などの方も忘れてません
…そこで今回、不知火・改が完成し、ロールアウトした際は、『特別機製作』に開発を進めたいと思います。」



香月博士の発言に全員が度肝を抜かれ、とりあえず『特別機』の開発に関しては、保留にするという事で、今回の会議は終了した…



そして、未だ尚、会議室にはタケルと香月博士と紅蓮大将の三人が残っていた。


「いやはや…まさか白銀専用機とは…流石に度肝を抜かれましたな…」


「けど、先程の話は真実。
実は、この事は『前の世界』でも、それらしいデータは有ったの。
その際は、バグだと思ってたけど…今回の世界で、それがハッキリわかりました。
コレを無視すれば、オルタネイティヴ4に影響が出て来るかも知れません…
今の内に、手を打つ事が最善かと思います。」



紅蓮大将と香月博士のやりとりを聞きながら唖然としているタケル…
未だに自分に『特別機』が与えられる予定な事に戸惑いを隠せないでいた。



「あっ、早々、白銀
速瀬達が『総戦技演習』をクリアしたわ。
勿論涼宮に怪我は無し、無事に事を進めたわ。
この調子でいけば、『本土上陸』が終わった後…大体早くても10月ぐらいには『解隊式』を迎えるわ。
そして…次は宗像・鑑と…クリスカ・イーニァにも訓練兵として受けて貰うわ。」


「クリスカとイーニァもですか!?」


涼宮遙の事故を回避した事に安堵するタケルだが、その後の次期訓練兵のメンバーにクリスカ・イーニァが入ってた為、驚く。


香月博士の話によると、『戦術機の訓練は受けてるけど、まだ体力的に問題あるから、一度訓練兵で鍛えた方が良いわ
その方が鑑の『護衛』にもなるし…』…らしい


そして---



「あっ、そうだ。
今度恋愛原子核を大爆発する時は、まりもも参加させなさいよ?
このままだどまりも、誰とも結ばれる事が出来ないから、既成事実作ってまりもを嫁に貰いなさい。」


最後の最後でとんでもない発言にズッコけるタケルと紅蓮大将だった…。



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第十七話①
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:7df15b6d
Date: 2010/09/20 19:23
1998年・6月30日

帝都・月詠邸---




いつもとは違い、騒がしい月詠邸。
すると、玄関先にてタケル達が居た。



「やちる、後は頼む。
仙台の月詠家の屋敷にて避難していてくれ」


「ハイ、真耶様・タケルさん、ご無事で…」


「やちるさんも気をつけて、オレの車好きに使って良いから、『例の件』頼む」


「ハイ…必ずお渡し致します。」


やちるはタケルの車に乗り、仙台に向けて出発する。



この頃、以前からマークしていた、重慶ハイヴから動きが有り、日本にも警戒態勢が引かれてた。

勿論、この事はタケルや香月博士の話で知っていた為、事前に九州・四国地方を重点的に防衛態勢をし、万が一を考えて、本州にも防衛態勢を引いていた。


そして、京都が陥落する事を知っているタケル達は、やちるや屋敷の使用人達を仙台にある月詠家の別邸に避難する事が決まった。



「さて…屋敷には私達しか残ってないか…」


「一応、食料は確保してますから、当分は大丈夫ですね。」


タケル達は、帝都城を守る為、残る事になった。
その為、BETAが日本上陸するまでは自宅で生活する事が許されていた。



「どうやら、皆避難したようだな。」


「真那…」

「真那中尉!?」

すると、タケル達の前に、真那が近寄って来た。

「白銀、此度は緊急の処置として、私も貴様と同じ、第17大隊に所属が決まった。
そして、真耶は聞いてるとは思うが、斑鳩家当主の所属する第16大隊に所属が決まった。」


「真那中尉がオレの隊に!?」


突然の話に驚くタケル
そしてまだ真那の話は続く。


「白銀、私の此度のポジションは突撃前衛長だ…
つまり、貴様と同じ第1中隊のB小隊だ。」


「ま、マジっすか…?」

「マジ…?また白銀語か…
本当だ、第1中隊の突撃前衛は、貴様ともう一人の少尉だけしか居ないからな。
本当ならば、戦術機の操縦が上の貴様が突撃前衛長になるという話があったが、『白銀中尉には、まだ早い』という声が有ったのだ。」


「そうですね…オレはまだ指揮を取るにはまだ勉強不足ですね。」


「そういう事だ、それ故に私が選ばれたのだ」


納得するタケルだが、真耶は『…私も同じ部隊が良かった…』と小さな声で呟く。



「そうだ…白銀。」


「なんですか?」


真那に呼ばれ、振り向こうとすると、首に腕で締めるように背後に回り込み、小太刀をタケルの首筋に突き付ける。

「冥夜様の貴様への気持ちは、知っている…
もし、冥夜様を泣かせる事が有ったなら---わかるな?」


「ハハハハ…ハイッ!!」

きゅぴーん!!と赤い眼光を放ちながら、死の宣告をする真那。
涙を流しながら、肝に銘じるタケルと、『ヤレヤレ…真那の悪い癖が出たか…』と呆れる真耶。




中に入り、茶を飲む三人、するとチャイムが鳴り響く。


「誰だ?こんな時に?」

「オレが行って来ます。」


バタバタと玄関先まで行くと…


「タケル君、あっそぼ☆」


近所の子供のようなセリフを吐く孝志に、タケルは素晴らしいヘッドスライディングで、ズッコける!!


「あ…あんた…
っていうか、椿さん達や冥夜までっ!?」


「済まない…孝志が言う事を聴かなくてな…」

「あの手この手使われて…いつの間にか私達まで、此処に『泊まり込み』になってしまったの…」

「お、お邪魔します…」

「タケル…済まない…。」


政弘・椿・沙耶・冥夜まで、孝志に巻き込まれてしまった様子。



「あ…アンタ等、自分の家はどうした…?」


「ここと同じように、使用人達は避難させたよ。
今居るのは、自分達と同じように防衛戦に出る連中だけだ。
オレんちの当主の兄貴は、斑鳩家の当主と一緒に基地で寝泊まりするし、椿の家や政弘の家は、当主二人して、帝都城であれこれ忙しい為、帰れない。
冥夜ちゃんの家の御剣家は、現在民を避難させてる為、冥夜ちゃんが余った形になって、オレんちに来て預けられたって訳。
そこで、それならばみんなで月詠さんの家で寝泊まりして、タケルをいぢくろうとした訳だ。」


「アンタだけ帰れ。この元凶が」


非常識な行動をする孝志に、タケルは厳しい突っ込みを入れる。

そして、仕方無く中に入れて、居間に居る二人に説明すると、呆気に取られる真那・真耶
そして、孝志に『お仕置きという名の拷問』を入れる真耶
夜、タケルと同じ部屋で二人っきりで、いやんいやんする計画が潰れ、少しキレ気味になる。


((危なかった…))


ホッとする冥夜と沙耶。
孝志には、心の中で少し感謝をする二人だった。


「しっかし、初めてじゃないかい?
このメンバーが一緒で休暇を取るなんて?」


「仕方無い事だ、我々は家の事を任されて休暇を取る事になったのだ。
使用人達の避難や、大事な家財道具や色々と仙台に運んだのだ。」


「今、家に有るのは、少しばかりの食料と布団のみ。
後はスッカラカ~ンに無くなってるよ。」


タケルの質問に政弘と孝志が答える
最早やる事は無くなり、今日だけ暇人になったようだ。


「そういえば、ギリギリで不知火・改が完成したな!!
今、斯衛や帝国軍じゃ、大人気みたいだぜ?」


「流石に全てには渡らなかったが、我々第17大隊のみ、配置が決まったようだ。」



不知火・改が完成し、早速生産にかかったのが、つい今月の始め。
急ピッチで生産したものの、それでも40機には満たなかった。


しかし幸運な事に、元々第17大隊は不知火・改を開発していた部隊だった為、すぐに部隊分だけ完成した。
最大の理由は、不知火・改のテストパイロットはタケルだけではなく、他にもテストパイロットのメンバーも居た為、その時の機体だけでも12機は有ったのだ。

この提案は、やはり香月博士の案で、万が一の安全策の一つとして、12機は確保していたのだ。



「明日は第17大隊全員で不知火・改でのシミュレーター訓練よ。
機体を出来る限り使いこなすわよ」


「「「「了解」」」」


椿の指示に返答するタケル・真那・孝志・政弘。

(むぅ…その不知火・改、乗ってみたいものだ…。)

ウズウズする冥夜、衛士として不知火・改に興味が湧いていた。



以前、ループの事を公にした後、冥夜の衛士としての実力を知る為、極秘で一度シミュレーター訓練で、久々にタケルとエレメントを組んだ。


最初はなまっていたものの、すぐに本来の実力を発揮出来るようになり、
その後に仮想敵として、紅蓮大将と神野大将が相手にした。



勿論結果は敗北だったが、タケルとエレメントを組んだおかげで、冥夜も神野大将に少破判定を与える事が出来た。


それ以来、戦術機に乗りたくてウズウズしてたのだ。


後々の話だが、冥夜が身代わりの件で解決した後、香月博士の悪戯的な提案で仮想敵役を与えられ、第17大隊のメンバーと対戦させられる事になる。(みんなには勿論内緒で)

タケルはすぐ気付くが、他のメンバーは…
『なんだあのNPC!?
めっちゃ強えぇよ!?』だの
『まるで月詠中尉と戦ってるみたいだ…』とか、謎の仮想敵に困惑し、戸惑う姿をコッソリ楽しんでいる香月博士の姿をタケルは目撃する事になる…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第十七話②
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:7df15b6d
Date: 2010/09/16 22:00
1998年・7月1日---
シミュレータールーム---




「ふぅ…」


タオルで汗を拭きながら、降りてくるタケル。
その横で、タケルとエレメントを組んでいた同じ突撃前衛がフラフラと歩いてくる。



「あうぅ~…タケルさん、激し過ぎるよぉ…」


「お疲れ様。
あいよ、ドリンク」


「ありがとうございます~…。」


ペタリと座り込みながらドリンクをゴクゴク飲む

タケルとエレメントを組んでいた、同じ突撃前衛の一人、『五十嵐駿少尉』は、タケルが入隊した時から一緒にエレメントを組んでいた人物だが、
最初は着いて行けず、しばらく落ち込んでいたりする程、気の弱い性格だが、隊一番の頑張り屋で、良く居残りをしながら訓練をし、結果3ヶ月後にやっとタケルの機動に着いて来れるようになった。


今現在、第1中隊の中で一番タケルの動きに着いて来れる人物だが、それ以上に着いて行ける孝志にはまだまだ適わないでいた。


「タケルさん、凄いや~…。
あんな機動、ボクには思いつかないや…」

「駿も頑張って着いて来てるじゃないか…?
孝志さん以外には、なかなか着いて来れないんだぞ?」



少し落ち込む駿を励ますタケル。
事実、着いて来れる駿の腕前にはタケルも認めていた。


「そうだぞ、五十嵐少尉。
白銀中尉の変態機動に着いて来れるだけでも、凄い事だ。
それだけ、そなたの実力が上がった証拠だと思うぞ?」


「つ、月詠中尉!?」

「真那中尉?」


タケル達のそばに真那が寄って、駿を誉める。


「五十嵐少尉の事は以前から知っていた。
『斯衛一の頑張り者』と呼ばれる程有名だからな。
あの紅蓮大将や神野大将ですら、絶賛する程認められてるのだぞ?」


「アワワワッ…そんなぁ…!?」


アワアワする駿を見て、タケルは『築地やたまみたいな奴だな…』と苦笑いしながら思う。


「さて、椿隊長の所に行くぞ」


「ハ、ハイ!!」


休憩をした後、椿の下に集まり、反省会をする。様々な問題点や指摘を言い、次に繋げるように言葉を語る


「…さて、汗を流して着替えた後は、昼食にする。
昼休み後は会議室で隊の陣形の変更などの話をした後、雑務作業を行う事。
以上、解散!!」

椿の解散の号令と共に、各自自由に行動する。
その際、タケルと駿の下に孝志と政弘が寄って来る。



「お二人お疲れさん。」

「孝志さんと政弘さん」


「此度のシミュレーター訓練は、良い結果だった。
五回中三回が全員生還したのだからな。」


今回のシミュレーター訓練は、野戦でのBETA戦の訓練を行っていた
その結果、五回中三回も全員生還という結果が出たのだ。


「油断は禁物ですよ、政弘さん。
実戦はそんなに甘くは無いんですから…」


「うむ…そうだな…
流石はタケルだな、実戦が近づいてるというのに、冷静に…そして現実的に視野を見てる。」


タケルの一言で、己の油断に反省をしながら、タケルの評価を上げる政弘。


『ウム、噂に名高い戦いっ振りであった。
白銀中尉よ、見事だったぞ。』


「えっ…貴方は…」


「いっ、『斑鳩少佐』!?」


「あ、兄貴まで!?」


すると、タケルの前に、『青』の強化服姿の男性二人がやってくる。


「先程のシミュレーター訓練…素晴らしい結果だった。
特に白銀中尉…貴殿の機動技術には、驚愕する事ばかりだった。」


「君が白銀中尉か、弟の孝志からは話を聞いてるよ。」


「は、はあ…」


突然の訪問に驚くタケル。
興味津々にタケルを観察する二人



「自己紹介がまだだったな
私は帝国斯衛軍第16大隊所属の斑鳩伊織少佐である。」


「同じく帝国斯衛軍第16大隊所属の崇宰隼人だ
白銀中尉の発案したXM3…そして、今回開発した改良機不知火・改…誠に素晴らしい物ばかりだ、貴殿には感謝する。」

「い、いえ、そんな事はありません」



「タケルは知らないかもしれないが、斑鳩少佐は第16大隊の大隊長であり、崇宰少佐は副隊長のお方だ。
良く覚えておいた方がいい」


斑鳩少佐と崇宰少佐の自己紹介をされた後、政弘から二人の立場を教わる。



「此度の不知火・改…
今日我等の大隊にも8機程配置され、慣熟訓練を行ったが…
素晴らしいの一言しか、言葉が出て来ない。
…よくぞ、この不知火・改を開発してくれた…感謝する。」


「俺も乗って訓練したが、瑞鶴とは桁違いの性能だよ、コレには流石に驚いたよ。」

「其処まで誉めて下さるとは…みんなで開発した甲斐が有りました。」


二人の不知火・改の評価を絶賛され、タケルは敬礼しながら感謝する。


「…ところで白銀中尉…
君に質問が有るのだが…」


「なんでしょうか?」


突然の斑鳩少佐の質問に少し緊張するが…



「…白銀中尉、君と月詠真耶大尉の『祝言』はいつやるのかな…?
私としては、部下に月詠真耶大尉を持っている故に、お祝いの品の準備をしたいのだが…?」


「……………ハイ?」


突然の発言。
あまりにも突然な発言にフリーズするタケル。
その話を聞いていた駿が顔を真っ赤にしながらアワアワする。


「…斑鳩少佐…?
その話は一体…?」


「うん?知らないのか、斉御司大尉?
今帝都では結構有名な噂なのだか…?」


タケルの代わりに質問する政弘。
政弘の質問に対し、正直に答える

「俺も聞いたぞ、その噂。
出所は女性衛士達らしいが、白銀中尉と月詠真耶大尉は『同棲』していて、毎日お互いの事を理解しあうように接していて、
最早『婚約』まで決めて、夜の契りを頻繁にしている…という話だ。」



「…中身は同じだけど、話自体がややこしくなってるな…」


兄・隼人の話を聞いて、二人に説明する孝志
孝志の説明を聞いて納得しながら、爆笑する二人。



「クククッ…済まなかった、白銀中尉。
どうやら誤解してたようだ…」


「けど、『婚約』って意味では本当みたいだから、結果は同じか。」



二人のトドメの一言でKOされるタケル。
そして、そんなタケル達から離れた場所から、隠れるように、2つのお団子ヘヤーの頭がフルフルと動いていた


(す、既に遅かったか…)


タケル達に知られる前に誤解を解こうとしていたのだが、既に遅し
噂話を話されて、出るに出られないでいる真耶が居た。



「そうだ、お祝いの品は、花嫁衣装にしよう。
和風が良いか?
それとも洋風のが良いのか?」


「いやいや、伊織よ、二人の記念の結婚式の花嫁衣装は、二人が納得出来るように選ばせてあげねば、失礼という物だ。
贈るならば、『新婚旅行』の旅先を我々で用意してあげようではないか」

「なる程…その後は、二人の『愛の結晶』たる赤子の玩具やオムツも用意せねば…」


伊織と隼人の猛攻にタケルは追い込まれ、真耶は影でいやんいやんと様々な妄想で悶えていた。
勿論、伊織と隼人の二人はクスクスと笑いを堪えながら、いぢくっていた。


その後、伊織と隼人の二人は立ち去るが、タケルと真耶の復活には時間がかかった…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第十八話①
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:7df15b6d
Date: 2010/09/17 23:06
1998年・7月7日---

北九州沿岸部周辺---

『来たぞッ!!BETAだっ!!
各自陣形を保ちながら防衛せよッ!!』



『『『了解!!』』』


海中から醜い姿を現すBETA。
出た瞬間に帝国軍の一斉射撃が始まり、辺り周辺の海は、夥しくBETAの肉片が浮かび、血が混ざり、澄み切った海が毒々しく広がる。


上陸する要撃級や小型種は、帝国軍の放つ弾幕の餌食となり、残骸の壁が築かれていく。


タケル達が斑鳩少佐達にいぢくられてたその日--
重慶ハイヴに動きがあり、『東進』して来たとの報告が入った。
朝鮮半島を渡り、そのまま海中から日本へと進行し、7日早朝に上陸した。



『隊長、突撃級が現れて来ました!!』


『各自突撃級に備えて、防衛せよッ!!
今こそXM3の力を見せつけてやるんだッ!!』


『『『了解!!』』』



突撃級が海中から現れて全速力で進行する
突進攻撃に備え、ある程度後退してから突撃級を待つ。


『今だッ!!
突撃級の背後に回り込み、攻撃せよッ!!』


『『『了解!!』』』


帝国軍の第弐小隊--
突撃前衛達が突撃級の背後に回り込み、攻撃を開始する。


ある者は突撃砲で葬り、ある者は長刀や短刀で切り裂く


支援砲撃の雨の中、果敢にも、我が故郷・我が祖国を守護せんと奮戦する者達の姿を見て、他の者達も奮い立ち、それに応える。




同時刻・仙台---



『香月博士、北九州沿岸部周辺でBETAとの戦闘が開始されました!!』


「そう…遂に来たわね。」


既に仙台まで避難して来た香月博士。
『前回の世界』より、早めに仙台に避難して来た。


(念には念を入れないとね…。
前回と同じように歴史が進むとは限らないわ…)


『想定外』の事態に備えて、事前に先手を打っていた香月博士。
そして万が一に備え、A-01や白銀夫妻のいる帝国軍第6大隊を出撃させずに、そばに置いていた。


『香月博士、今正門前に博士宛ての『来客』が来てますが…?』


「ハァ?こんな時に来客ですって?」



突然の来客の訪問に唖然とする香月博士。


「誰よ、ソイツ?」


『ええ…と、月詠家侍従の月島やちるという者です。
なんでも白銀中尉からの預かり物を『鑑』という者に渡したいとか…』


「月島やちる…ああ~…思い出したわ。
白銀から鑑に渡し物…?
まあいいわ、今鑑を連れて其方に向かうと伝えておいて頂戴。」


『ハッ!!』


伝令が敬礼して立ち去った後、通信を入れる。


「ああ、私よ。
済まないけど鑑を私の所に連れて来て頂戴。
その際護衛に白銀影行大尉と白銀楓中尉を付けて
あと、私も正門前に向かうから、まりもを護衛に呼んで頂戴」


ガチャリと受話器を置き、通信を切る
そして、純夏・白銀夫妻・まりもが到着すると、説明をしてから正門前に向かう。



「しばらくぶりね。」

「ハイ、しばらくぶりです、香月様
そして鑑様、こちらがタケルさんからの『預かり物』で御座います。」


「タケルちゃんからの…?」


やちるから紙袋を貰い、封を開けると---
『サンタウサギと純夏人形』が入っていた

「えっ…サンタウサギと私の姿した人形…?」


「誕生日プレゼントで御座います。
…本来ならば、タケルさんから渡す予定でしたが…この様な緊急時になりまして、私がタケルさんから預かった物です
不器用ながらも、タケルさんが手造りで作った人形で御座いますよ。」

「タケルちゃんが…!!」

ギュッと強く抱き締めながら感涙する純夏。
まさか、タケルが手造りで人形を作るとは思わず、驚きながらも感動する

「そうだっ!!タケルちゃんはっ!?」


「……京都に残り、帝都防衛戦に参加すると聞いてます。」


「そんな---」


人形を貰い、感動する純夏だが、タケルが戦闘に参加すると聞いた瞬間、表情が曇り、不安感が襲ってくる。


「---信じて待つのよ、純夏ちゃん」


「おばさん…」


「タケルは生きて帰ってくるわ…」


純夏の肩に手を乗せて、説得する楓
そして、純夏の肩に乗せた楓の手が小さく震えてた事を知り、コクリと首を縦に頷く


「……うん、タケルちゃんが帰ってくるの…信じて待つよ…」


「ありがとう…純夏ちゃん…」


『信じる』と語った純夏に抱きつき、感謝する楓
そんな姿を見守る影行と、無言でタケルを信じて待つ香月博士…



(…白銀、死ぬんじゃないわよ…)


京都の方向の空を見て、心の中で呟いていた…





数時間後・京都帝都城----



『北九州沿岸部から侵攻して来たBETAが着々と進行しています!!
北九州沿岸部に防衛に出撃している戦力は、未だに約八割以上が生存しています!!
現在、光線級の確認は無し。
しかし、現在要塞級が50を超える数が上陸しています!!』



「…上陸して数時間経った現在で生存数が八割以上…
もし、XM3が無かったら、ゾッとしたわね…」

北九州沿岸部の状態を聞き、冷静に判断する椿。
現在帝国軍・斯衛軍・極東国連軍に搭載したXM3は、約七・八割程度
そして、主に九州・四国・本州・京都帝都城・白陵基地の五ヶ所にXM3搭載機を配置していた。


その結果、北九州沿岸部の生存数が約八割以上…
『もしも、旧OSのままだったら…』の事を考えると、背筋がゾクリと悪寒が走る。


しかし現在油断は出来ない状況
戦いは始まったばかりだからだ---!!



「…………」


無言で報告を聞くタケル。
今は『その時』が来るまで、静かに身体を休める。


「タケルさん…
タケルさんは怖くはないんですか…?」


少し緊張する駿が、タケルに語ってくる
緊張する駿の姿を見て、話し相手になる。


「そりゃ怖いさ。
…けど、それ以上に大切な人達や仲間達を失う方が怖い…
だから、気合いを入れて戦うのさ。」


「凄いや…タケルさん。」


「駿だって、居るだろ?
そういう人達は…」


「ハイ、一応は…」


『ハハハッ…』と苦笑いをする駿。


「…元々ひ弱な僕を、勘当当然で親が入れたもので…」


「…それはそれで凄い気はするが…」


「…だから、『大事』な人達は居るんですけど、僕を『大事』とする人は、隊以外には居ないんです。
ハハッ…情けない話…ですよね………ってイテテテッ!!?」


しゅ-ん…と暗くなる駿だが、タケルが気合い(暴力という名の)を入れ直す。

「気合い注入だ、感謝しやがれ
あと莫迦な事言うな、隊以外にだって、お前の事大事に思う奴は居るだろうに。
以前真那さん言ってただろ、『紅蓮大将や神野大将が絶賛してた』って。そういう風に評価しくれるって事は大事に思ってくれてると思うぞ?」


落ち込む駿を説得するタケル
そんな優しいタケルを見て、駿は『タケルさぁ~ん…!!』感動する。


(それに親御さんだって…)


タケルは知っている---
以前、沙耶から聞いた話だが、駿の親御さんが、時折帝都城正門前近くでうろついてた所、椿と沙耶に見つかり
話しを聞いた所、駿が大層心配でうろついてたそうだ。



(純夏にちゃんと、プレゼント渡ったかな…)


今一番心配する相手、純夏の心配をするタケル
純夏を守る意味でも--
守り抜かねばならない。


(今度は絶対に---
BETAから守ってやるからな…!!)


掌をギュッと握り締めて、決意を固めるタケルだった…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ 第十八話②
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:7df15b6d
Date: 2010/09/18 21:56
1998年・7月10日
四国日本海沿岸部周辺---


『来たぞ、BETAだっ!!』

『本州と結ぶ巨大橋群を爆破するのだっ!!』


『了解!!』


素早い通信を入れて、巨大橋群を中国地方の爆破班に通信を入れて、爆破する。


『…これで此方側のBETA共が本州に向かい、挟撃する危険性は低くなった…
あとは、背水の陣となった我々がBETA共を始末するだけだっ!!』


『『『了解!!』』』



死を覚悟して、背水の陣となる戦場で、力の限り戦う四国防衛線の衛士達。


中国地方から支援砲撃はあるものの、逃げ場は四国から少し離れた場所に待機してる戦艦のみ。
全ての衛士達を救える事は出来ないのを覚悟し、死地へ向かう。


『BETA共に我等日本人の魂を見せつけてやれっ!!』


隊長機の号令と共に総攻撃が始まる。
死を恐れず、抜刀し突撃する者
突撃した仲間達を支える為に強襲や援護射撃をする者
そして、祖国を守り抜く為、特攻し、散って逝く者


今---この四国で地獄のような防衛戦が始まっていた。





同時刻・下関沿岸部周辺---


『済まない…九州は奪われた…』


『奪われた物は奪い返せば良い。
それより、よくあの激戦にこれだけの生存者が居たものだ…』


『ああ…このXM3のおかげだ…』


中国・下関沿岸部周辺では、九州での激戦の中、生き延びた部隊達が中国地方第1防衛線の部隊と合流する。


九州はBETAに制圧されたものの、市民達は既に東へと避難済み。
しかし、九州を防衛していた多くの兵士及び衛士達が散っていった。


下関に生き延びた九州の部隊は、約半数近い部隊が生存する事が出来た。
そして、散って逝った衛士達の殆どが旧OS搭載機の撃震や陽炎であり
XM3搭載機の戦術機は一割強程度の被害だった。


『我々は、このXM3を創った者に感謝せねばならないな…』


『そうか…ならば生き延びろ
その為にも、貴殿達は補給所まで退却し、一時でも身体を休めるんだ。』

『今はBETA共も進行を止めています。
早く補給を完了しつつ、身体を止めて下さい。』

『ありがとう…感謝する。
みんな、聞いたな?
我々は補給所まで退却し、補給や修復をしつつ、この恩を返す為にも、身体を休めるんだ。』


『『『了解!!』』』



補給所まで退却する九州防衛線の衛士達…



『…美冴…生き延びる事が出来たよ…』


退却する部隊の中、ぶら下げていたロケットの中の女性を見て、生還した喜びと、九州を守り抜けれなかった悔しさが混じっていた。



奇しくも、タケル達の知らない所で歴史は変わっていた。
この男性こそが、『二度目の世界』のイスミヴァルキリーズの隊員の『宗像美冴中尉』の想い人である。


『二度目の世界』では、九州防衛の際、怪我を負い内地送還した筈だが、今回はXM3搭載機に搭乗していた為、無事に退却する事が出来た。



『京都は---
あの嵐山の光景は必ず守ってみせるから…見守ってくれ…!!』


パチンとロケットの蓋を閉じ、握り締める。
そして補給所へと向かっていった…



同日・仙台---



「--という事で、お願いしますわ。」


ガチャリと受話器を置く香月博士
フゥ…と溜め息を漏らしながら、椅子に深々と座る。


「これでなんとか出来る限りの手を打った。
あとは…白銀に託すしか無い…か…」



天井を見上げながら、何も考えずに、ただじっと見つめる。
そして視線を元に戻し、何かしようと立ち上がった時--



『『博士ッ!!』』


「何よ、騒がしいわね~…
速瀬・『鳴海』、何の用かしら?」


香月博士の下に、訓練兵の速瀬水月と『鳴海孝之』が入室して来た。


後から涼宮遙と『平慎二』もやって来て、二人退室させようと努力する。


「博士、何故私達は仙台に避難して来たんですか!?」


「俺達だって、戦術機を操縦出来ます。
今は白陵基地に戻って防衛するべきでは!?」


「そんなの決まってるでしょう?
今のアンタ達じゃ、『足手纏い』だからよ。」

「「---ッ!!」」


香月博士のキツい一言に愕然とする水月と孝之
二人の後ろで羽交い締めしながら抑えてる遙と慎二も、その言葉に悔しく思う。


「アンタ達だけが死ぬならまだ良いけども、そのせいで、巻き込まれて死んでいく衛士達の事も考えた事がある?
彼等だって、守りたいモノや生き延びたい望みだって有るのよ?
それをアンタ達のせいで死なせたら、それこそ『無駄死』になるわ。」


「それは……」

「クッ…!!」


「アンタ達の故郷である柊町を守りたい気持ちはわかる。
けど、今のアンタ達に出来る事は何も無いわ。」


ギリリッ…と歯を食いしばり、悔しむ孝之
悔しい思いと己の無力さに涙を滲ませる水月。



「コラァッ!!貴様等何をしてるかっ!!」


其処に鬼軍曹・神宮司軍曹が強化装備を着たまま入室する。


「良いわよ、まりも。
別に気にして無いから、今回の事はお咎め無しよ。
まあ、一応罰として、白銀の全力変態機動を『3セット』して貰うわ。」


「「「「………え゛っ?」」」」


この時、水月達が硬直する。
実は彼女達は、『戦術機適性検査』の時、タケルと面識していた。


その際、水月と遙は『あっ、あの時の斯衛の人!?』と、以前タケルを見かけた時の事を思い出す。
そして、香月博士の提案(イタズラ)で、タケルの全力変態機動を体験する羽目になる。


結果は…………語る事すら可哀想な結果となる。
孝之・慎二達男性陣は悉く全滅。
生ける屍と化したのは当然の事
水月・遙達女性陣も、女のプライドすら打ち砕く全力変態機動に太刀打ち出来ず、ポリバケツの中の酸っぱい臭いお構い無しに吐く。
勿論女性陣全員がタケルにオンブされ、真っ赤に頬が染まった姿を見た男性陣は悔し涙をする事になる



この時から---後に受け継がれる横浜基地新たな『伝統』が誕生した瞬間だった--!!


「………博士、速瀬達を殺す気…?」


「冗談に決まってるじゃない?」



全員がこの時、心をひとつにする
『この人は本気で殺る気だ…』と…


「……随分落ち着いてますね、博士。」


「そんな事無いわよ、さっきまで忙しかったんだから。」


「…けど、こんな事態な割には冷静過ぎるわ…
…何を企んでるの…?」

友人であり、香月博士を一番知るまりもが何やら疑う。


「単に今出来る事を尽くしただけよ。
あとは…BETAの動きに警戒し続けるだけよ」


冷静にまりもに返事を返す。
すると、再び孝之が問いかける。


「九州は…防衛出来ますよね…?」


「残念だけど、無理よ
先程報告が有って、九州がBETAに制圧されたわ。」


「「「!!!!」」」


全員が絶句する。
九州が墜ち、制圧された事に衝撃を受ける



「たった3日で…?」


「むしろ上出来よ、3日間も防衛出来、尚且つ戦力の半数近くが生存出来たんだもの。
そのおかげで、下関付近の防衛線が更に強化が出来たわ
そして、今四国でも戦闘始まってるわ
巨大橋群を爆破して、下関付近の防衛線がBETA共から挟撃される危険性も低くなった…
今は、現地で戦ってる者達を信じるしか無いわ…」


ギィ…と再び深々と椅子に座る香月博士

「ねぇ…博士…
白銀は…どうしてるのかしら…?」


「あら、気になる?
随分と白銀の事心配してるわね~?」


「ゆっ、夕呼ッ!!」


香月博士のイタズラに顔を真っ赤にするまりも。
速瀬達もその姿を見て驚く


「安心なさい、今白銀は京都の帝都防衛線に参加してるから、まだ戦ってないわ
…それにしても、まりもも白銀の虜になるとは…
あれこれ仕込んだ甲斐があったわ~♪」


「わっ、私はただ、白銀程の腕前ならば…と思って聞いただけよっ!!」


アワアワと慌てて言い訳するまりも
彼女もタケルの恋愛原子核に引き寄せられてしまった一人だった。


「まあ、からかうのは此処までにして…
どちらにせよ、現地で戦ってる者達にしろ、白銀にしろ、今は彼等を信じるしか無いわ」

「そうね…」


友人の言葉に賛同するまりも
そして、今はただじっと、タケルの無事を祈るしか出来なかった…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ 第十八話③
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:7df15b6d
Date: 2010/09/20 19:31
1998年・7月20日


京都・帝都防衛線付近---




「すげぇな…あんなにも傷だらけで戦ってたのか…」



タケル達の目の前には、九州・四国・中国地方の生き残った戦術機と衛士達がゆっくりと退避する。


現在BETA達は岡山県付近で待機中、どうやら大半のBETAが活動エネルギーが尽きかけて来たようだ。


その隙を突き、四国・出雲側の海から戦艦の砲撃と、京都・大阪の防衛線の支援砲撃車両などのおかげで、大半のBETAを始末する事に成功。


そして四国での地獄のような戦いに勝利し、四国防衛線の衛士達は、約四割近い生存者が出た
これには、名古屋・大阪の防衛線の戦力が支援に向かい、奇跡的とも言える確率で四国を死守する事に成功する。



そして、四国からの横撃と、戦艦や支援車両のおかげで、第一波のBETA群を壊滅する。


だが、その後第二波・第三波のBETA群が上陸、現在は岡山県付近で待機していた。



「岡山県付近のBETA群の総数が約十万か…
けど、高い確率で援軍が来るから、長期戦は確実か…。」


タケルの記憶と香月博士の記憶を辿れば、京都での防衛戦は1ヶ月間に及ぶ戦いの末、陥落する事になる。


しかし、現在タケル達は、XM3と不知火・改という手札(カード)がある
そして、今回は四国・九州・中国地方の生き残りの部隊、合わせて約四割強が防衛してくれる為、戦力的には京都防衛の可能性が高まって来た。



そして、香月博士がただ単に傍観する訳が無い。
必ず何らかの動きは有る。



そう考えていたら、タケルに突如ぶつかって来る者がいた。



「す、スミマセン中尉…。」


「大丈夫か?」


激戦の中、見事に生還した帝国少尉がふらついてタケルにぶつかってしまう



「良く戦った。貴官等の戦いのおかげで、多くの民が救われました。
誇って良いですよ」


「ありがとう…ございます…」


所属は違えども、上官に誉められ、感涙する少尉


そして、仲間達に肩を貸してもらい、医務室に向かう。



「ん…これは…ロケット?」


先程ぶつかった際に少尉が落とした物と判断し、拾うタケル
そして、落ちた際にロケットの蓋が開いてたので、中の写真を覗き、驚愕する。



「これは…宗像中尉…!?
まさか…あの人が宗像中尉の想い人!?」


突然の出逢いに驚くタケル。
そして、先程の少尉の下に向かう。



「少尉、落とし物たが…」


「えっ…ああっ!?
す、スミマセン、ありがとうございます!!」


ロケットを無くして慌ててた所にタケルが届けに来て、ホッと安堵する。


「良かった…」


「済まないと思いますが…拾った際に中の写真を見てしまった。」


「いえ、構いません。
それに蓋の金具がおかしくなってたので、開き易くなってたんです。」


「そうでしたか、申し上げない」


謝罪するタケルに慌てて反応する少尉


そして、用が済んだので退室するタケル
先程の少尉を見てふと思う


「名前聞いとけば良かったな…
そしたら宗像中尉を反撃するネタになったのに…」


『まっ、いっか』と簡単に断念するタケル。
しかし意外にも、このネタが宗像中尉の反撃するネタとなる事を後々体験する。




そして、数時間後----




「各自戦術機にて待機せよ、以上解散!!」


椿の号令と共に解散し、自分の不知火・改へと向かうタケル


「白…いやタケル」


「真耶さんに…沙耶さん?」


不知火・改へ搭乗する際、真耶と沙耶がタケルの下に訪ねて来る。



「恐らく、この数日以内に事は起きるだろう…
だから…必ず生き残るのだぞ。」


「ハイ」


不安そうに告げる真耶を安心させるように、笑顔で答える


「タケルには生き残って貰わねばならぬ。
勿論計画等もそうだが…
我等を『娶って』貰わねばならぬのだからな。」


「め、娶る!?」


「当たり前だ、私や真耶を此処まで変えたのだ…
責任を取って貰うぞ?」


突然の真耶の『娶る発言』により慌てるタケルだが
沙耶の『責任を取れ』との発言で、タケルは陥落する。



そして---



「タケル…」



そっと真耶がタケルに近づき、タケルの頭を絡めるように抱きしめながら、接吻をする
そして、その後に沙耶も同じように接吻をする


「…タケル、私が貴方の背後を守る事を誓うわ…
だから---力の限り、暴れなさい」


「ハイ、ありがとうございます。」



真っ赤な表情の真耶と沙耶
タケルの背後を死守すると沙耶の誓いをタケルは受け止める。



「それでは、私は行く…
沙耶殿…タケルを頼みます。」


「ああ…任せておけ。」

タケルを守る事を誓う沙耶を見て、安心する真耶
そのまま惜しむように立ち去り、自分の部隊の下に向かう。



「さあ…タケル…
必ずこの京都を守りきるわよ…」


「…了解!!」



タケルの返答を聞いて、笑みを浮かべる沙耶
そして、自分の不知火・改の下に向かう




「…負けれない理由が増えたな…」


ポツリと呟きながら、不知火・改に搭乗するタケル。



そして、この時から翌日…
動きはあった…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ 第十九話①
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:7df15b6d
Date: 2010/09/21 00:03
1998年・7月21日

京都防衛線---



『これ以上、先へ進ませるかっ!!』


『我等の…日本から立ち去れっ!!』


岡山県付近に居たBETAが再び侵攻し、帝都に迫っていた

そして現在京都防衛線で、生き残った九州・中国・四国の部隊を交えて、激戦を繰り広げていた。


『来るな…来るなァァァァァァァッ!!』


その時、とある部隊の戦術機が、戦車級の群れに捕まり、戦術機の至る所を喰われていく。


---最早、助かる見込みは無い
部隊の仲間達が、その女性衛士の悲鳴を聞きながら助けれずに、歯を食いしばり、口元から血を流す。



そして、戦車級に群れに喰われるかというその時--!!



『------えっ…?』


--奇跡は起きた。



「諦めるなっ!!今助けてやるっ!!」


群がる戦車級を短刀で斬り落とし、そばに居た戦車級達を突撃砲でミンチにする




「大丈夫かっ!!」


『は…ハイ…』


「ヨシッ!!
こちらイグニス10、戦車級から救出する事が出来た。
同じ部隊の者達が彼女を救出しに来てくれっ!!」

『りょ、了解、感謝する。』


被害に遭った女性衛士の部隊の者に通信を入れ、その間は護衛として、女性衛士を守護する。



『し、『白銀』の不知火・改…?』


女性衛士は見とれてしまう。
『白銀』に輝く不知火・改が自分を守護するように戦う姿を--


見た事の無い機動
息を呑む激しい攻撃
瞬く間にBETAを殲滅する姿は、何故か魅了されてしまう。


後に彼女は知る
あの『白銀』の不知火・改に乗る者こそ、今注目されてる白銀武中尉だという事を--



『救出完了した、援護感謝する。』


「了解、では我々は先で戦う!!」


白銀の不知火・改と一緒に『赤』と『黒』の不知火・改が前へと進む。



『あれが…不知火・改…』


不知火・改の性能を見て、ゴクリと息を呑む。
そして、後ろに振り向き、後退する



「イグニス5(真那)・イグニス25(駿)、援護感謝します。」


「当然の事だ、気にするな。」


「そうですよ、逆にお役に立てれて良かったです。」


笑みを浮かべて、返答を返す真那と駿。
タケルはそんな返答に苦笑いをしながらBETA達を殲滅していく


「イグニス1(椿)から大隊各機へ。
我が国に土足で踏み入ったBETA達に裁きを与えてやれっ!!」


「「「了解!!」」」


椿の号令と共に第17大隊の不知火・改達が、噴射地表面滑走で機体を更に前進させた


「イグニス2(沙耶)フォックス1!!
コンテナ、パージ!!」


沙耶の攻撃開始の号令と共に放たれる92式多目的自立誘導システムが、前方にいるBETA群を直撃し、肉片と体液が大量に飛び散る!!


「要塞級の存在位置確定!!
要塞級…60!?」

「なんて量だ…!!」


政弘が要塞級の存在を発見するが、その量に驚愕し、沙耶も唖然とする。


「イグニス10(タケル)からイグニス3(孝志)へ。
大尉--どちらが多く撃破をするか、競いませんか?」


「「「えっ!?」」」


突然のタケルの発言に驚愕する大隊一同
あの大量の要塞級を『狩ろう』と孝志にふっかけて来る。


「面白れぇ…その勝負乗った!!」

「負けたら、戦いが終わったあと、腕立て300でどうです?」

「良いねぇ、スクワット200も追加だっ!!」


彼等の会話に要塞級への恐怖は無い
有るのは、『生』への強い意思と誓い。


--必ず生き残ってみせる

そんな姿を見せる為にタケルは孝志にふっかけ、孝志もタケルの考えを悟り、話に乗る。


「--全く、仕方ない…許可する。
だが、罰ゲームに首に『私は勝負に負けた敗北者です』と書かれたプラカードをぶら下げて、腕立て・スクワットをやって貰うぞっ!!」


「「うわっ、鬼だっ!?」」

椿の罰ゲーム追加に怯えるタケルと孝志
その姿を見て、笑いを誘い、緊張と恐怖を解す。

「突撃前衛達は要塞級を殲滅せよっ!!
罰ゲームは二人だけだから、安心して倒しに行けっ!!
あとの者達は、要塞級の周りにいるBETA共の相手をしてやれ、勿論突撃前衛達の援護も忘れるなっ!!」


「「「了解!!」」」



椿の号令と共に突撃する第弐小隊達
突撃前衛の誇りを掲げて要塞級に向かって行く!!

そして、タケルと孝志の不知火・改を先頭にし、真那・駿・第二・第三中隊の突撃前衛達がついて行く。



「ウオォォォッ!!
お前等如きにやられる訳にはいかねぇんだよっ!!」

「くたばりやがれっ!!」

『白銀』と『青』の不知火・改が舞い、要塞級を切り裂く
触角の攻撃をひらりと回避し、時には両断してから胸部や頭部を切り裂く!!



「倒した要塞級に注意しろ!!
場合によっては体内から光線級が出て来る場合が有るから、慎重に撃破せよっ!!」


真那が各突撃前衛達に指示を出し、光線級への対処をする。


『18…19…20…凄い…!!』


そして、その戦いを見て居た者達が居た--



『あれが噂に聞く、不知火・改…
いや、それにしても、あれは…異常だ…!!』


タケル達から、少し離れていた場所から眺めていた者がいた…
帝国本土防衛軍帝都守備連隊所属・『沙霧尚哉中尉』だった


『白銀』の不知火・改に注目し、異常なるスピードで要塞級を撃破していく事に唖然とする。



『--尚哉、余所見とは関心せんぞ?』

「ス、スミマセン『彩峰准将』!!」



タケルに魅了されてた沙霧に、注意をかける彩峰准将
だが、彩峰准将も沙霧の気持ちを察する。


「--尚哉、確かにお前の気持ちも良く解る。
あれを見て魅了されない方がおかしいが、今は目の前の戦いに集中せよ。」


「了解!!」


彩峰准将の言葉で気持ちを切り替える沙霧
そして目の前の戦いに集中し、BETAを葬る。



(あのような者が、この帝都に居るとは…まだまだ日本も捨てた物では無いな…)


あのような衛士が居るならば、必ずや日本を守る礎となる--
そう思い、笑みを浮かべる彩峰准将


「私は後の若者達の為に、道を築くまで。
BETA共よ…この私を簡単に倒せると思うなよ…!!」


気迫を見せた彩峰准将がBETA共を次々と肉片と変えていく。



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ 第十九話②
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:7df15b6d
Date: 2010/09/23 09:17
「ヨッシャァァッー!!
オレの勝ちィィィッ!!」

勝利の雄叫びをするタケル
結果は26対19でタケルが勝利した。
敗北して、ずーん…と落ち込む孝志。
そして、勝負の要因は----



「あはは…スミマセン、崇宰大尉…」


「偶然ですので、恨まないで下さい。」

なんと駿と真那の2人が要塞級を合計9体撃破していた為、偶然孝志の邪魔する形で勝負が決まってしまったのだ。


「そういう事で孝志さん…
BETAとの戦いが一区切りついたら、基地で罰ゲームお願いします。」


なんとも爽やかなスマイルで、ある意味死刑宣告するタケルに『見逃してくだせぇ~…』と乞う孝志だが、『駄目よ♪
隊長命令で罰ゲームを受ける事を命じます♪』…と椿にトドメを刺される。



「それよりイグニス2
どうやら、BETAの数がだいぶ減ってるようだけど…?」


「ハイ…今回侵攻して来た数は十万と聴きます。
しかし、現在の数と、今まで撃破した数を数えても、約五万程度…
しかも、今回は光線級の存在が有ったとの報告も有りません。」


嫌な予感がする椿と沙耶…
椿達の会話を聞き、不安になる部隊のみんな。
すると---



「まさか…
イグニス2ッ!!今日戦闘開始してから現在までに岡山~京都の間に震源があったか調べて下さい!!」


「えっ…?了解…」


タケルに言われた通りに震源があったか調べてみる沙耶、すると---




「…あった。
西方から20キロ程先ではあるが、小さな震源を観測してる。」


「いつですか!?」


「40分程前だが…?」


「---ッ!!」



タケルに嫌な予感が一気に襲いかかって来る。


「今現在は!?」

「……小さな震源が徐々に大きくなって来る…えっ!?」


すると、タケル達周辺に徐々に大きな震源が起きる
そしてタケルは叫ぶように通信する。



「ぜっ、全機後退して下さい!!
BETAが『下』からやって来ます!!」


「な、なんだと!?」


タケルの通信と共に反応し、全機が後退する。
すると、先程居た場所辺りから、轟音と共に、土煙の柱が無数に現れる!!

そして、土煙の中からBETA達が出現する!!



(やっぱり『母艦級』かっ!!)


嫌な予感が的中するタケル
『桜花作戦』時に会得した情報の中に、母艦級の存在の情報があった事を思い出す。

00ユニットであった純夏が、情報を収集してた中に、美琴やたまの武御雷のデータも有り、その中の母艦級の情報を得て持ち帰っていたのだ。


地中を移動し、要塞級すら楽に運べる程の巨大なBETA--母艦級


その体内に数万ものBETAを運ぶ事が出来、長距離を移動する事が可能な非戦闘のBETA


幾多の震源の謎のひとつが、この母艦級だという事を、以前に香月博士から聞いていた。


「…イグニス4から、イグニス10…
何故下からBETAが奇襲をする事がわかったのだ…?」


政弘がタケルに質問する。
内心『やべー…』と思ったが、冷静に答える。


「以前、先生から聞いたんです…
『もしかすると、地中を移動してBETA達を運ぶ新種』が居るのかも知れない…と」


「なんだと…」


上手く誤魔化すタケルだが、質問した政弘を始め、部隊全員が驚愕する。


「---ッ!!
イグニス2から大隊各機へっ!!
光線級の存在を確認!!
数は…30!!」


沙耶が光線級の存在を確認すると同時に、光線級のレーザー照射が始まる。


「イグニス1から部隊各機へっ!!
BETAの残骸を利用して、レーザー照射から、身を守れっ!!」


「「「りょ、了解!!」」」


全機BETAの残骸に隠れ、レーザー照射から逃れる。



「クッ…このままでは---」


このままでは、部隊は全滅する
そう判断する椿。


出て行けば、レーザー照射の餌食
しかし、このままで居れば、他のBETA達にやられてしまう
他の部隊達は先程の奇襲で、他のBETA達に足止めされて、援護が遅れてる状態
例え出ても、光線級は他のBETA達に守護されて近づく事すら容易では無い
正に四面楚歌
そんな時に---




「--オレが出ます。
オレが出て、光線級を始末しますから、その後の援護を宜しくお願いします。」


「「「!!!?」」」


「莫迦なッ!!無駄死になるぞっ!!」

「無茶だっ!!」


タケルの一言に驚愕し、孝志と政弘が反論する。

「だからといって、このままで居れば、全滅する事すら、容易に考えられる!!
何もやらない内に『出来ない』と決めつけたら、先には進めないんだっ!!」


「「----ッ!!」」


タケルの痛烈な一言に反論出来ないでいる孝志と政弘
その真剣な眼差しに、隊長の椿が折れる。


「…ふぅ…わかったわ。
イグニス10、行きなさい
そして必ず光線級を撃破し、生還する事を命じます。
---死んだら、貴方を一生怨みますよ…覚悟して下さい。」


最後の一言---
タケルを死地に向かわせる自分の不甲斐なさに歯を食いしばり、自分自身を責める椿。


「---了解。
必ず帰って来ます!!」

「行ってこい、白銀ェェッ!!」


椿の号令と共に、BETAの残骸から飛び出すタケル。
空を舞い、光線級の下へと飛翔する


そして、待ち受けるは、光線級のレーザー照射
何重の光の帯の中を、自動回避モードを切り、手動回避モードに切り替え、レーザーを回避しながら突撃する。

途中、新たに現れた要塞級や要撃級を、突撃砲や滑空砲で最小限で殲滅しながら、光線級のレーザー照射を回避しながら先に進む。


「オオォォォォッ!!
こんな所で…やられる訳にはいかねぇんだよっ!!」

レーザーが止まり、再照射までのインターバルを活用し、一気に全力噴射して近づく!!




「嘘…光線級のレーザー照射を飛行しながら…回避した…」


「ハハハ…すげぇよ…
まったく…なんて奴だっ!!」


『光線級の存在で制空権はBETAに有る』
その考えを覆すタケルの機動に唖然とする駿
唖然としながら笑うしかない孝志。
そして、白銀機がレーザー照射を全て回避した事により、部隊の士気が上がりだす!!


そしてタケルは、光線級のインターバルギリギリに到着し、光線級の殲滅を開始する。


「喰らいやがれぇぇぇっ!!」


突撃砲で光線級達がミンチと化し、殲滅を完了する。
しかし、他の要撃級や戦車級などが白銀機に近寄って来る


「邪魔だぁぁっ!!」


次々と駆逐していく白銀機
BETAの残骸の山を徐々に築き上げていく



---だが無情にも、数の暴力は、そんな抵抗に反して更に増え続ける
白銀機の周りには、様々なBETA達が囲いだす。



「イグニス10を救出するんだっ!!急げっ!!」


光線級が居なくなった為、再び突撃する椿達第17大隊
しかし、それを邪魔するようにBETA達が道を塞ぐ。


「クッ…退けろッ!!」


「この…このっ!!」


真那や駿が懸命に道を作るが、次々と現れるBETAに先が進めないでいた。



「タケルッ!!」


ただ一機、沙耶機だけが白銀機に近づく事が出来ていた。
そして、沙耶の瞳が、蒼から紅に変化する。


沙耶機の通る道全てのBETAが、突如動きを止め、沙耶機に長刀で切り裂かれていく。
しかし、沙耶の表情が苦痛に変わり、苦しみながらも、白銀機に到着する。


「さ、沙耶さん!?」


「言っただろう…そなたの背中は…私が守ると…」


瞳の色が蒼に戻るが、沙耶に疲労感が現れていた。


「大丈夫ですか!?」

「無論だ…早く椿様達の下に戻るぞ…」


息を切らす沙耶を心配するタケルだが、沙耶は強がりながらも、タケルに心配かけまいと強がる。



沙耶機と合流する事で、徐々に椿達に近づくタケル達だが、BETA達の数が更に増え続ける。



「このままじゃ、弾数が尽きちまう…!!」


突撃砲の残り弾数は、あと500発未満
滑空砲は使い切り、長刀の耐久力も半分を切り始めた。




このままでは拙い---
そう危機に直面した時---!!




『白銀ェェッ!!二機共左へ避けろッ!!』



「---えっ!?
イグニス2、左へ回避しますよっ!!」

「りょ、了解!?」


突然の通信に反応するタケル
沙耶も驚きながらも、タケルと共に左へ回避すると---


突如、蒼白い閃光二本が放たれ、BETA達を一掃しだす!!



「これは…!?」


貫通なんて生易しいモノではない
まるで、果物を弾丸で貫くと同じように、BETA達が肉片と化す!!
そして、タケル達の『道』が出来る。

そして、白銀機と沙耶機が椿達と合流し、生還する。



『ふう…なんとか間に合ったな…』


すると、タケル達のモニターに現れる画像を見て驚愕する


「まっ、まりもちゃん!?」


「こっ、コラァ!!
こんな所で『まりもちゃん』と呼ぶなっ!!」


「タケル~、イーニァもきたよ~♪」


「イ、イーニァ!?」


「クリスカにイーニァまで!?」


突如援軍に現れたまりもとクリスカ・イーニァに驚くタケル達。
まりもは顔を赤らめて、ガァーッ!!と怒鳴り、
ハシャぐイーニァを落ち着かせるクリスカが恥ずかしそうに登場する。



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ 第十九話③
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:7df15b6d
Date: 2010/09/23 09:21
椿達と合流したタケル達は、一端まりも達と合流し、体勢を立て直す。


「じ、神宮司軍曹…その兵器は一体…?」


「白銀中尉、現在の私は『軍曹』では無い
現在の階級は『臨時大尉』だ。
あと、この兵器は、香月博士が開発した新兵器の『120mm電磁投射砲』だ、まだテストの段階ではあるがな…」


「で、電磁投射砲!?
もう作ったのか、あの人は…」


香月博士のデタラメさに唖然とするタケル達…


まりも機やクリスカ&イーニァ機の不知火・改の後ろには、大型トラックの荷台には『外付け大型弾倉』が乗せてあり、給弾ベルトが120mm電磁投射砲に接続し、BETA達に電磁投射砲の威力を示していた



あの強固な突撃級の装甲殻ですら、脆く貫かれ、肉片の塊と化す。
その威力にタケル達は絶句していた。


「すげぇよ…すげぇよ…先生…」


「…実際、私も驚いてるわ…
まさか、これほどの威力とは思わなかったもの…」


流石に電磁投射砲を使用していた、まりも達すら驚愕していた
すると、クリスカから通信が入る

「大尉、また後続のBETAが現れた。」

「了解、これより再び電磁投射砲で駆逐する。
…スミマセンが九條少佐、その間我等を護衛して頂けないでしょうか?」

「わかりました、我々としても助かります。
イグニス1から第17大隊各機へ、これより援軍に参った国連軍と新兵器の護衛に着く。
各中隊の第弐小隊達は、電磁投射砲の範囲外で戦闘せよ。
第参小隊達は、第弐小隊達のサポートに付け
残りの第壱小隊達は国連軍及び新兵器の護衛だ。」


「「「了解!!」」」


「白銀、貴方は補給コンテナで補充した後参加しなさい
沙耶…貴女もよ。」

「「了解」」


各隊に指示を出す椿。
沙耶に指示を出す際、心配そうな表情で見ていた。


「では各機作戦を遂行せよ。
必ずこの京都を守りきるのだ!!」


「「了解!!」」


突撃する各中隊の第弐・第参小隊達
タケルと沙耶は後退し、補給コンテナで補充する。
そして、再びまりも達が電磁投射砲でBETA達を駆逐する!!


「…大丈夫ですか…沙耶さん?」


「大丈夫です、心配かけてスミマセン。」


息を整える沙耶
その疲労感は普通じゃないと悟るタケル。
すると、秘匿回線で、タケルと沙耶に入ってくる


「沙耶…まったく…心配したわよ…?
まさかあの『能力』チカラを使うとは思わなかったわ…」


「あのチカラ…?」


沙耶の一言に質問するタケル。


「沙耶はね、本来の『能力』以外にも『別な能力』があるの。
そのひとつが先程のあれよ」


「…そういえば、先程の沙耶さんの瞳の色が変わってたような…」


「あれはね、沙耶だけが持つ『能力』なの。
そして、先程沙耶が行ったのが『ブレインクラッシュ』…つまり、相手の『脳にダメージ』を与える能力なの
…主に敵の動きを一時的に封じる為の能力なんだけど…
けど、本来はこれは人間に使う能力で、BETAに使う能力じゃないの…
小型種以外に使えば…今の沙耶みたくなるのよ。」


「そうだったんですか…
スミマセン、沙耶さん」

椿から説明を聞き、自分のせいで沙耶が無茶をしたと知り、謝るタケル。


「謝らなくてもいいのだ、タケル
これは私が勝手に行った責任だ。
それに、私にはタケルを守る命もあるのだ、当然の事だ。
…それに、真耶からも託されたしな…この約束を破る訳にもいかない。」

タケルを少しでも心配させまいと、冷静に説明する沙耶
育ての『母』である、現当主・由佳里の命と、友でもある真耶との約束を守る為、遂行したまでと語る。


「…ホンット『愛されてる』わね~、白銀中尉
沙耶がそういう言い方をする時は、『大切な人に心配をかけさせたくない』って時よ?」


「えっ!?」

「椿様ッ!?」

しかし、椿の暴露で真っ赤になるタケルと沙耶
特に沙耶はアワアワと普段見せない慌てようを見せる。


「白銀中尉に命じます。
今日無事に帰還したら、沙耶をとても『可愛がって』あげる事
勿論、それで『赤ちゃん』が出来るなら尚良し。
勿論九條家現当主である母からも許可は得てますからご安心を♪」


「「な゛ぁっ!?」」


「これは隊長命令です。必ず行う事、以上通信終わる」


「椿様、お待ちをッ!!」

とんでもない命令を受け、慌てる沙耶だが、ナイスなタイミングで秘匿回線が切れる椿
そして、真っ赤になった沙耶が『…宜しくお願いします』…とタケルに頭を下げる姿を見て、タケルは最早拒否権が無い事に落ち込んでいた…



「こちらイグニス10からイグニス1へ
イグニス2と共に補給を完了しました。」


「イグニス1からイグニス2・イグニス10へ
現在、北方の防衛線が押され気味な事から、我々の部隊が援護に向かう事になった
イグニス2・イグニス10は北方の防衛線に向かい、その際第1中隊第弐・第参小隊達と合流し、援護せよ!!」


「「了解!!」」


タケルと沙耶が北方の防衛線に向かう事になり、操縦桿を倒して発進する。
途中、第弐小隊と第参小隊と合流し、北方の防衛線に向かう。



「タケルさん、凄かったです!!
光線級のレーザー照射を全部回避するなんて♪」

「いやぁ~…そんな事ないぞぉ~」


「正に変態機動極まり、だな。」


「んがっ!?」


駿に尊敬される目で褒められ、嬉しい気持ちの所を、真那の一言に撃墜される。
そのやり取りを見て、沙耶達第参小隊から笑い声が響く。


『もう少しで、目的地の防衛線に着きます
其処では、帝国本土防衛軍帝都守備連隊が防衛をしています。』

「帝国本土防衛軍帝都守備連隊か…」


通信を聞いて、思い出すタケル
そして、小さな声で呟く。

(沙霧大尉…アンタもこの戦場に居るんだろ…?)


思い出す記憶は『二度目の世界』の『12・5事件』

あのような人間同士の争いをさせまいと、タケルは強く決意する。


(--今はアンタを好きにはなれない。
理由はどうであれ、アンタは委員長のオヤジさんを暗殺し、彩峰を心配させ、泣かした…)


あの時の委員長(榊)や彩峰の悲しみと苦しみを思い出すタケル


(--もし、アンタがあんな事件を起こそうモノならば---
俺がブン殴ってでも阻止してみせる…!!)


いつもより強く操縦桿を握り締め、戦場へと向かうタケル




そして戦場では、BETAの物量に押されてる帝都守備連隊か奮戦していた。


『クッ…なんて数だ…!?』


『今斯衛軍が援軍に来る、それまで持ちこたえるのだっ!!』


『『『了解!!』』』


帝都守備連隊が一丸となり、BETA達をこれ以上侵攻させまいと奮戦する


「立ち去れ、BETAァァッ!!」


一閃、迫り来る要撃級を次々と長刀で葬る沙霧中尉


「中尉、此方側は一掃しました。
今から合流します。」


「済まない、駒木少尉
これ以上侵攻されてはならぬ。
あの美しい京都を…そして帝都には、未だ我等や民を思い、残っている殿下が居るのだ!!」


--そう、現在京都は民の避難が最終段階まで進んでいた。
残るは約一割程度の民間人と…そして、断固として、民より先に避難する事を断り続けていた、煌武院悠陽殿下が残っていたのだ。


悠陽殿下が残ってたのは、他にも理由がある。
勿論民より先に避難する事を断っていた事も事実だが、他の理由として『復権』の時期が刻々と迫っていたのだ


8月未明に米軍の援護を最後に、それからまもなくに米国は一方的に日米安保理を破棄して来るのだ
---そして、その時こそが、悠陽殿下の『復権』する絶好のタイミングであった。


その為、悠陽殿下は戦場である京都から離れずに、ただ、じっとその時を待っていたのだ。



「中尉、再び西方からBETAがっ!!」


「クッ…!!」


駒木少尉からの通信を聞いてデータマップを調べると、大群のBETAのマーカーが赤く染まっていた。




「えっ…?
中尉、BETAのマーカーの南方から、味方のマーカーが北上し、BETAに接近してます。
数は…2小隊分…斯衛軍第17大隊の第1中隊第弐小隊・第参小隊です!!」



「なんだとっ!?
たった2小隊だけでBETAの大群に突撃だと!?」


駒木少尉の報告に驚愕する沙霧中尉
万単位のBETAの大群に2小隊のみで接近する事に驚きを隠せない



しかし--その驚きは、更に続く事になる!!



「えっ…何この数字…?
異常な速度でBETA達が撃破されていく…?」


「な…なんだと…?」


データリンクの情報を見て驚愕する二人
突入すると同時に、加速的にBETA達が撃破されていく。



「これは一体…あっ!!中尉!?」


情報に驚く駒木少尉だったが、その瞬間、沙霧中尉が飛び出す姿を見て追いかける。



本能が告げる---
彼処で戦っているのは、『あの機体』だという事を--



突進攻撃をしてくる突撃級を回避し、背後から突撃砲で葬り、更に前へと近づく。



すると--




「あれは---!!」



白銀に輝く不知火・改が、縦横無尽に空を舞い、光線級のレーザー照射すら回避し、BETA達を駆逐する姿を目撃する…!!



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ 第二十話①
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:7df15b6d
Date: 2010/09/25 00:11
1998年・8月未明


琵琶湖運河--



『ジョリーロジャース1より各機へ
現在京都では、インペリアルロイヤルガードを中心に京都防衛線にて防衛中だ。
我々は敵側面を強襲、民間人の避難の時間稼ぎを行う。』


『『『ラジャー!!』』』

琵琶湖運河を進軍する戦術機母艦セオドラ・ルーズヴェルトの甲板上に、アメリカ海軍の精鋭部隊・ジョリーロジャース隊が姿を現し、夜がまだ暗い中、出撃する。



『俺達が着くまでにジャップ達生き残ってるのか?』

『なにやら新型の戦術機を開発したらしいわよ?
確か…『タイプ98シラヌイ・カスタム』とか言ったかしら…?』


『へぇ~…使えるのかい、その戦術機?』


『さあ?』と答える女性衛士
それに対し、下品な笑い声で不知火・改を侮辱する男性衛士達。



『呑気な話は其処までだ。
--そろそろ戦場に到着するぞっ!!』


隊長に注意を言われ、笑い声は止まり、『衛士』としての顔になる。


---そして彼等は目撃する。
彼等が侮辱していた日本の衛士達の強さを--
不知火・改の性能を見て、絶句する。



『---これは夢…なのか?』


ポツリと隊長が口を漏らす。
しかし、目の前で繰り広げられてるのは、自分達より遥か上を行く戦術機の技術
見た事の無いアクロバットな機動を行い、目の前のBETA達を殲滅する姿は、ゾクリとする程勇ましく、実用的な戦い方だった。


自分達とは全く異なる戦い方を見て、ジョリーロジャース隊達は唖然とするしかなかった。


『な…なんだよ、この動き…本当にジャップ達の動きなのか?』


『F-4Jですら、あの動き…
我々のF-14D(トムキャット)すら上回ると言うのかっ!?』


先程の侮辱してた時とは違い、その高い戦術機機動を見て、自分達の日本人に対する考えが、木っ端微塵に打ち砕かれる。


そして---




『な、なんだあの戦術機は!?』


『あれはタイプ94…いや違う…』


そこで見たモノは、激戦地で縦横無尽に舞う戦術機
不知火とは違う似た機体を見て、ふと気付く。



『あれがタイプ98…シラヌイ・カスタム…!!』


その一言で全機が沈黙する。
先程使い物になるのかと莫迦にしていた自分達が恥ずかしくなる程高性能で、『自分達の搭乗するF-14Dでは足元に及ばないのでは?』とまで、見てわかる程だった。
その中、白銀に輝く不知火・改を見て、更に驚愕する。



『ウソだろ…ウソだと言ってくれよ…
光線級がレーザー照射をしてるのに関わらす…すべてかわして、大空を飛んでやがる…』


光線級のレーザー照射をすべて回避し、光線級達を殲滅する白銀の不知火・改
開いた口が塞がらずに、唖然としていた。



『馬鹿野郎ッ!!
ボケッとしてないで、戦闘に集中しやがれっ!!』


『『『ラ、ラジャー!!』』』


隊長に怒鳴られ、戦闘に集中するジョリーロジャース隊


(…我々は日本という国を見誤っていた…
日本は弱小国では無い…我等が考えてる以上に技術が進化している!!)


先程まで日本に暴言を言っていた自分達が恥ずかしく思い、同時に日本に対する考えを改めている隊長



(もしかすると…この防衛戦…勝てるかも知れない…)


そして、この日京都防衛線は、最後まで持ちこたえ、京都帝都城を防衛する事に成功する。



しかし、同時にこの数日後、米国は日本から全軍撤退し、日米安保条約を一方的に破棄する事になる。


その最大の理由は--
佐渡島が陥落し、佐渡島ハイヴが建設された事が理由だった。



タケル達が重慶ハイヴから来るBETA達と戦ってた時、鉄原ハイヴから進軍して来たBETA達が佐渡島を落とし、ハイヴを建設したのだ。


重慶ハイヴのBETA群程ではないにしろ、数万規模のBETA群により、佐渡島は善戦虚しく敗北し、撤退するしかなかった



そしてその事から、京都帝都城を一度離れ、仙台の第二帝都に移る事を決定する。


そして、同時に政威大将軍としての『復権』を宣言し、より一丸と結束力を強める事になる。


1998年・8月10日


仙台・第二帝都城---
「…これで先に進む事になりましたね…」


「ハイ、殿下の復権に伴い、御剣の『身代わり』の件も解決しました。
後は、横浜での戦いにどれだけBETA群を削る事が出来るか…これで『明星作戦』の成否に関わります」


謁見の間にて、悠陽殿下を始めとして、紅蓮大将・神野大将・斉御司大佐の他に、香月博士が密談していた。


予定より早く、冥夜の『身代わり』の件は解決し、身分も『御剣』のままだが、事実上『煌武院悠陽の双子の妹』と名乗る事が出来るのだ。
勿論、契約上将軍職にはなる事は出来ないが、衛士として戦う事は出来るのだ。


「しかし…冥夜の件は良いのですが…
明星作戦時に、G弾を撃ち込まれるのは…気分的にも良い感じはしません」

「其方の件に関しては…此方にお任せを…
それより殿下…例の『一夫多妻制』の法案については…?」


「えっ…?
そちらなら、問題無く何時でも改正する事が出来ますわ、
ただ、このような時でしたから、出来なかったのですが…」


「なら、今が丁度良い時期でしょう
直ぐに改正しましょう。」


ウキウキ気分の香月博士だが、何故か複雑そうな顔の悠陽殿下



「どうか致しましたか、殿下?」


「…実は、一夫多妻制に改正する事自体は問題無いのですが…
改正するには『条件』がありまして…」


「条件?」



「改正と同時に誰かを『複数婚』をしないといけないのです。
つまり、タケル様を『婿』として結婚させるならば…私や冥夜はまだ16才を迎えて無い為、『結婚が出来ない』のです。」


「ああ~…そういう事ですか…」


納得する香月博士
悠陽殿下の考えでは、一夫多妻制の初の夫婦としては『自分や冥夜を含めて、タケルと婚儀する事』だったのだが、改正の条件として、誰かを複数婚をさせる事に成ったのだ
しかし、自分や冥夜はまだ結婚が可能になる16才には至っておらず、泣く泣く来年の16才の誕生日辺りを狙おうと考えてたのだ。



そして、出た結論は--

「我慢して下さい、殿下
すべては白銀の為です。」


ガーン!!と衝撃を受ける悠陽殿下
『そんな…』と落ち込む殿下を慰める紅蓮大将


「何故其処までして、一夫多妻制を急がれるのですか…?」

「--実は…」


理由を述べる香月博士
その内容に驚愕し、何故其処まで『白銀ハーレム計画』に力を入れるかを知る。


「…そうでしたか…てっきりワシは香月博士のイタズラかと思ってました…」

「同じ意見じゃ」


「…さすがにへこむわね…」


斉御司大佐と神野大将の一言に、さすがにへこむ香月博士。


「致し方ありません。
タケル様に関わる事でしたら…我慢するしか無いのですね…」

「その代わりに、『許嫁』とか『婚約者』と名乗ってはどうでしょうか?」


「まあ…香月博士ったら…(ポッ)」


「一応、此度の戦いが終わった後辺りにでも改正しましょう。
幸い、結婚可能な者が『二人』がいますし、丁度良いかと」



『でびるふぇいす』になる香月博士
『二人』について心当たりがある紅蓮大将は、二人に対して、同情するしかなかった。



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ 第二十話②
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:7df15b6d
Date: 2010/09/25 01:15
1998年・10月31日

仙台・第二帝都---


「失礼します。」


「待ったわよ、白銀。」

香月博士が待つ臨時研究所にタケル・真耶・椿・沙耶の四人が入室する。

「アンタも知っての通り、本土侵攻戦が終わったわ…『横浜ハイヴ』が建設される形でね。」


沈黙するタケル達
わかってたとはいえ、『ハイヴ建設阻止』を変えれなかった事に歯を食いしばる真耶・椿・沙耶


「とはいえ、むしろ佐渡島ハイヴ・横浜ハイヴに関しては、絶対必須だったから、少なくとも、佐渡島ハイヴ・横浜ハイヴ建設は阻止出来なかったわ。
勿論、『人として、日本人として』の感情や気持ちはわかる。
けど、その結果オルタネイティヴ5や『BETAによる人類滅亡』なんて未来の危険性もある訳だから、ゴロッと変える訳にもいかないの。」


「ハイ…その事は身を持って知りましたから…。」


『二度目の世界』の事を思い出すタケル
しかし、覚悟を決めた表情で話を聞いていた為『…良い覚悟よ、白銀』と、香月博士に感心される。


「…けど、やはり白陵基地の防衛戦に『参加出来なかった』のは痛かったですね…」


「仕方無いわよ、アンタ等は1ヶ月以上戦い続けたんだもの。
搭乗してた不知火・改だって、この仙台に運び込まれた時点で、もう戦えないぐらいダメージを蓄積してたんだから…
それに、不知火・改は愚か、不知火や陽炎すら、余分な戦術機も無いもの…
それ以前にアンタは今の所、不知火・改じゃないと全力で戦う事も出来ないわ
不知火だって、せいぜい八割程度よ
そんなのに乗せて、アンタを失う訳にはいかないのよ。」


…そう、タケル達第17大隊や第16大隊は愚か、九州・四国・中国の部隊は、関東防衛戦には参加出来なかった。



京都での防衛戦で、1ヶ月以上の防衛を続けた為、機体の蓄積ダメージが深刻な程負っていた。

それでも長野県での戦闘には参加したが、1日防衛したのち、戦闘不可能と判断し、第16大隊と第17大隊は、仙台に退却したのだ。

九州・四国・中国の部隊は、元々京都防衛成功の時点で戦闘不可能だった為、タケル達が長野県に向かう時に東京に退却した。


他の京都・大阪・名古屋等の帝国軍や、岩国・三沢・白陵基地の国連軍は、関東の防衛戦に参加するが、大半以上のBETAを殲滅するものの、防衛は失敗。
生き残った部隊達は東関東の防衛線に着く。
斯衛軍は、仙台で防衛の為、参加はしなかった。

「今回の被害状況は、犠牲者600万人、日本の全人口の5%で済んだわ。
『二度目の世界』に比べれば、六分の一に減ったから、それに比べればまだマシな数字よ。
帝国・斯衛・極東国連軍の犠牲者は、全体の40%を失ったわ
民間人に関しては、避難を拒否した者達や逃げ遅れた者が殆ど
他には、自殺志願者・避難を拒否した者達を説得してた民間人
あと、さっき言った逃げ遅れた民間人っていうのは、大半が中国地方の民間人よ
…さすがに数日間だけじゃ、中国地方の民間人全てを避難させるには足りなかったわ…」


『二度目の世界』に比べて犠牲者が少なくなったとはいえ、600万人もの犠牲者が出た事に悔やむタケル達…



「戦術機などに関しては、撃震は問題無し、ただし不知火・改や不知火・吹雪はまだ生産中でまだ足りない状況
陽炎や瑞鶴に関しては、絶望的
陽炎は生産はしてないし、瑞鶴はおいそれと簡単に作れる物ではない
支援車両や戦車などに関しては問題無し
明星作戦迄には揃えるわ。」


「痛いですね…」


「まったくよ。」


深い溜め息を吐くタケルと香月博士


「あと、御剣の身分だけど…
今回の本土侵攻戦が終わった事で、特例として斯衛軍に所属するわ」


「冥夜様がっ!?」


冥夜の斯衛軍入隊に驚くタケル達
特に真耶は驚愕を隠せないでいた。


「一応、御剣入隊の改竄として、紅蓮大将や神野大将が秘密裏に教育してた事になってるわ
そして、白銀も戦術機の教育に関わってる事にもなってるから、話を合わせておきなさいよ
ちなみに所属は第17大隊第1中隊第弐小隊…つまり、白銀と同じ小隊よ。」


「ハイ、わかりました!!」

嬉しそうに返事を返すタケル
再び一緒に戦える事に喜ぶ。



「…白銀、嬉しい?
『207B小隊』の仲間と再び戦える事に…?」


「勿論一緒に戦える事に喜びはあります。
けど、それ以上に『再び仲間として』歩める事の方が嬉しいですね。」


「フフッ…そうね…
207B小隊の中じゃ、御剣がアンタを良く見てたし、理解してたし、一番支えてたにも見えたわ。
それに、『白銀武』にとって、『鑑純夏と御剣冥夜』は、切っても切れない『縁』だしね。」


「先生との『腐れ縁』も切れませんよ。」

「ま~ね♪
その事に関しては、私も同感だわ。」


「「………」」

クスクスと笑う二人を見て、羨ましく思う真耶と沙耶
その様子を見て、イタズラ心が騒ぎ出す椿は---




「お二方、それまでにしないと、『誰かさん達』が嫉妬しちゃいますよ♪」


「えっ!?」

「「椿様ッ!!」」


「アラアラ、ゴメンナサイね~♪」


驚くタケル
椿に怒鳴る真耶と沙耶
それを見てクスクス笑う香月博士
その様子を見て、椿は笑いながら満足すると…


「そうそう、白銀…コレにサインして。」


「わかりました。
ええ…と…名前と生年月日………ってこれ…………『婚姻届』ってナニ?」


「「「ハッ?」」」


この瞬間、時間が止まる!!



「ええ……と…『複重婚姻届』…?
ナニコレ…?」


「白銀~…喜びなさい。
遂に改正したのよ…『一夫多妻制』の法律が実現したのよっ!!
そして、アンタが、その第一号よっ!!」


「なんですとぉぉぉぉっ!!!」


衝撃の事実に驚愕するタケル
そして、真耶と沙耶がビクンッと反応する。


「ホラ、妻の欄の名前…見て御覧なさい。」


椿に婚姻届を見せると…クスクスと笑い出す。


「妻の欄は未記入だけど…
立会人の欄には、九條由佳里と白銀影行と白銀楓…と書いてるわ。」


「「見せて下さいっ!!」」


シュパッと凄まじいスピードで婚姻届をマジマジと見る真耶と沙耶
タケルは未だに衝撃で石化していた。


「あとは、白銀とアンタ達二人の名前と拇印だけ。
それだけで、アンタ等三人は『夫婦』になれるのよ~
そうすれば、子供をポンポン産んでも問題無し
いつもラブラブな関係になれるわよ~」


正にあくまの囁き
しかし、そんな囁きより、既に妻の欄に名前を記入し、拇印を押す真耶と沙耶を見て爆笑する椿。


そして、石化するタケルを正気に戻し、逃げれないように腰を真耶と沙耶の二人で拘束する。



「「さあ、タケル…名前と拇印を…」」


天使のような微笑みでタケルにペンを持たし、説得する真耶と沙耶



(ハァ…やっと覚悟を決めたか…)

(タケル…お前も同じ道を歩むか…)


隣の部屋で、その様子を見ていた白銀夫妻
タケルがサインをするのを見て、一安心する楓だが、影行は昔の自分と同じ状態になってるタケルを見て、シクシクと涙していた。



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~ 三度目のループ 外伝①ネタボケに走った『もしも』の世界~
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:7df15b6d
Date: 2010/09/25 11:25
※注意・このお話はMUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ のストーリーとは無関係…なのかもしれない。
ネタボケに走ったお話なので、様々な苦情はご遠慮下さい。




1998年・11月1日


仙台・月詠別邸---



『タ~ケ~ル…ちゅわぁぁぁん……!!
けっこんって…何の事かなぁぁ…?』


ドス…ドス…と地面を砕きながら歩み寄ってくる恐怖の大魔王
その恐怖を例えると、BETAすら大群で逃げて、宇宙へと帰る程
暗黒のオーラを放つ恐怖の大魔王・鑑純夏を見て、ガクガクブルブルと震えるタケル
涙を滝のように流し、産まれた小鹿以上に弱々しい程、恐怖で震えていた。



そして、純夏の構えが、ピーカーブスタイルに変わり、ユラユラとステップをしながら、タケルに近づく。



そして---





『どりる………みるきぃーーーーー!!!』


ギュッとタケルの右足を踏みつけ、逃げる事は不可能
そして、タケルの右足を踏みつけた本当の理由は----



「あぶっ!?あぶぶぶぶっ!!?」


---猛攻
『ぱんち』級のラッシュがタケルの全身に右・左と拳を刻んでいき、そして、踏みつけてた右足を放し、力を溜めるように構える。
そして--放たれるのは、最早、伝説すら凌駕する『左』---!!



『じ・えぇぇんどっ!!!』


「ふぇいぶるっ!?」


キラーンと輝く閃光と共に星と化すタケル





ラグランジュ点・巨大宇宙船---



『グハァ!?
な、なんだ、この衝撃は!?』


『大変です!!エンジン部に突如謎の物体が衝突し、メインエンジンが破壊されました!!』


『なんだとっ!?』


『今、火災の消化作業に取り掛かってます!!』


『なんとしても、直ぐに消すんだ!!』


突如、謎の物体(タケルちゃん)が製作中の巨大宇宙船のメインエンジンを貫き、火災発生していた
全力で消化作業を行うが、次々と爆発は発生していく。





とある宇宙空間---

※BETAの言葉を通訳してます


とある宇宙空間の中、謎の宇宙船が飛来していた。


『メデュ男さん、どうしたんだい、こんな所で?』

『ルク助君にヴェナ太郎君じゃないか?
いやね、これから現場に向かう地球を見てたんだよ。』


地球を宇宙船で見ていた要撃級のメデュ男
そのそばに、後輩の光線級のルク助と兵士級のヴェナ太郎が近寄って来る。

『綺麗な星ですね~…
故郷のヴェナ子(妹)にこの光景見せてあげたかったな~…』

『確かに綺麗だなぁ~…』


地球の美しさにウットリするヴェナ太郎とルク助

『俺さ…今までおっ母に迷惑ばかりかけてたからさ…
その恩返しって言うか…罪滅ぼしって言うか…何かしたくて、今回の出張に参加したんだ。』

『偉いじゃないか、ヴェナ太郎君
今頃おっ母さんも喜んでるに違いない。』


ヴェナ太郎の今回の出張の理由を聞き、感動するメデュ男
そばで聞いていたルク助のつぶらな瞳から、感動で涙が溢れていた。



しかし、そんな彼等(?)に悲劇が襲う!!


「めぼっ!?」


突如地球から飛来して来た謎の物体(タケルちゃん)により、宇宙船は爆破
その衝撃で、謎の物体(タケルちゃん)は跳ね返り、地球へと戻るが、その際、宇宙船に乗っていたメデュ男・ルク助・ヴェナ太郎、そして他のBETA達も一緒に地球へと飛ぶ。




ラグランジュ点・巨大宇宙船---



『ふう…なんとか火災を止める事が出来たか…』

『危なかった…キャァァッ!?』


『な、なにぃぃぃっ!?』

突如再び謎の物体(タケルちゃん)が巨大宇宙を貫き、再び宇宙船に被害を与える
しかも今回は飛来してくるBETA達も一緒なものだから、数隻の巨大宇宙船が大破する。



地球・大気圏----



『熱いよっ!!熱いよっ!!
助け---』


『ルク助ェェェェッ!!』


大気圏突入でルク助が灰と化し、燃え尽きる姿を見て、叫ぶヴェナ太郎


『ヴェナ太郎…お前だけでも生き残るんだ…
お前は必ず妹の所に帰るんだ…!!』


『メデュ男さんっ…!!』

後輩であるヴェナ太郎を守るように、己の体を盾にするメデュ男
そして、大気圏を突破した時には--前腕部以外はメデュ男の姿は無かった。


『ルク助…メデュ男さん…!!』


そして、残ったメデュ男の前腕部を盾にして、地上へと落下するが、その際、軌道を変えて、海へと落下する。




一方、タケルちゃんは、無事(?)に落下し、5m程のクレーターの中心で、相も変わらず擦り傷程度で生還する。



そして、千葉県・九十九里浜周辺では----



『此処が…地球…?』


唯一生還したヴェナ太郎が九十九里浜の砂浜に上陸したのだった。






あとがき

スミマセン…朝起きたら、なんとなくこのネタ思いつきました。
面白くなかったら、ゴメンナサイです。m(_ _)m



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ 第二十一話①
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:7df15b6d
Date: 2010/09/25 22:26
1998年・11月2日

仙台・月詠別邸---



「うーん…」


チュンチュン…と小鳥の鳴き声が響く爽やかな朝に目を覚ますタケル

「おはよう、タケル
もうすぐ朝ご飯だぞ。」

「おはよう、おや?
ずいぶんと寝癖が…」


目を開くと、タケルの両側から、真耶と沙耶が声をかけてくる。


「何だろうね…このパターンは…」


嫌な予感がビシビシすると…


『おはようございま~す♪
タケルちゃん、起こしに来たよ~♪』


「やばっ!!
やっぱり純夏の奴、来やがったか!!
真耶さん、沙耶さん早く起きて---」


ガバッと起き上がるタケル
振り返って真耶と沙耶に声をかけてると---


2人共、寝間着として着ていた浴衣がはだけて、豊満な胸をさらけ出していた


「タケルちゃん、朝だ……よぉ~…」


ガラッと襖を開く純夏。
しかし、豊満な胸をさらけ出している真耶と沙耶
そしてタケルが入れば、純夏のする事はひとつ。


「タ~ケ~ル~ちゅわぁぁぁん……!!」


「まっ…まて、純---」




「タケルちゃんの……バカァァッ!!」



「アルゴスッ!!」


キラーンッ!!と『どりるみるきぃぱんち』で、星になるタケル
真耶も沙耶も冷静に『朝から飛んだな…』『ああ…』と星になったタケルを見つめる。



「おはよう、純夏。
朝から良いパンチを放つな」


「お、おはようございます…
2人共…胸出てるよ…?」

純夏に挨拶する真耶
純夏も挨拶をするが、さらけ出している胸を2人に教えてると…


「ああ…これか…」


「タケルの『寝相』で脱げただけよ。
純夏もそのうち、同じ事されるから、覚えておいた方が良いわよ?」


「ええぇぇぇっ!?
タケルちゃん…なんてスケベな寝相してるんだよ…」

沙耶の話を聞いて、驚く純夏
その際、顔を真っ赤にする。



一昨日---
タケルが香月博士のイタズラによって、真耶・沙耶と籍を入れて夫婦になった話を聞いて、驚愕する純夏。
霞・クリスカ・イーニァは『白銀ハーレム計画』の『真実』を知っている為、驚かないが、一応純夏にフォローを入れる



一応、『香月博士のイタズラ』という説明を受けて、納得はするものの、やはり乙女の怒りは収まらない。


しかし、誕生日プレゼントの手作り人形の件もあり、一応『ふぁんとむ』は止めてあげようと考えていた。

しかし、霞が『……純夏さんは、私やクリスカさんと一緒で『許嫁』扱いらしいですよ…?』と一言を放つと、真っ赤っかになり、『ぱんち』も回避する事になった。



しかし、やはり神様はイタズラ好きらしく、
結局はタケルにレバーブローをお見舞いし、横に100m程吹っ飛び、川にプカプカと土左衛門になっていたタケルを見て許した。


「純夏…頼むから、朝から『どりるみるきぃぱんち』は止めてくれ…」


「じゃあ、『ふぁんとむ』にするね♪」

「尚更だっ!!」


居間に集まり、朝ご飯を食べるタケル達。
白銀夫妻も一緒に住み、賑やかになっていた。


「タケルちゃん、実は来年の1月頃には『訓練学校』に入隊する事になったんだ♪」

「ああ、知ってる。
昨日先生から聞いてるぞ
今の訓練兵が順調良くいってるから、来月の末には卒業する事になってるんだよ。」


「タケルちゃん、良く知ってるね~…」


「当たり前だ、戦術機の訓練に、偶に『教官』として行ってるからな。
今の訓練兵も俺の教え子だよ。」


「ええぇぇぇっ!?
タケルちゃんが教官!?」

タケルが偶に教官をしてた事に驚く純夏。


「そうだ、だから純夏が訓練兵に入隊して、『総戦技演習』をクリアしたら、オレが偶に教官として教える事になる予定だ。」

「うう…なんか目の敵に狙われそうだよ…」


「バ~カ、そんな事するわけ無いだろ
教官は教え子に『平等』に扱わなければならないんだ。
…そんな事より、今の内に覚悟しとけよ…?
まりもちゃんは、教官としては『優秀』だけど、『鬼軍曹』として有名なんだ…
お前がしっかりしないと、周りの連中も連帯責任で一緒に罰を受ける事になるから気をつけろよ?」


「うう…プレッシャーだよ…」


アワアワする純夏だが、そんな事構わずに朝ご飯を食べるタケル


「今の内にランニングぐらいはしとけよ?
体力作りは基本中の基本だぞ?」


「わかったよぉ…」


ウルウルと涙を流す純夏を見て『仕方ねぇな…』と救いの手を差し伸べる


「明日からするんなら、オレも付き合ってやるよ。
だけど、甘くはしないから、覚悟しとけよ」


「あ、ありがとうタケルちゃん!!」


タケルも一緒にランニングに付き合ってくれる事になり、元気を取り戻す純夏
そんな姿を見て『やれやれ…不器用ね。』と微笑む楓


「純夏ちゃんは、今何をしてるんだい?」


「香月先生に言われて『CPの訓練』もしてるんだ。
香月先生の言うには、『衛士になっても、当分はCPして働いて貰うから、今の内に勉強しておきなさい』って、言われてるんだ。
『イリーナ・ピアティフ少尉』ってポーランド人の人に、今教わってるんだよ」


「へぇ…純夏ちゃんがCPか…」


純夏がCPの訓練をしてる事に意外な反応をする影行
だが、タケルは香月博士から話を聞いていたので、驚かないでいた


香月博士曰わく---
『凄乃皇に搭乗するまでは、CPで働いて貰うわ、その方が安全だしね。
それに、CPの技術を持っていれば、凄乃皇や色々な所で役立つ筈よ。』---らしい。



「タケルちゃんは、今日は何するの?」


「午前中はシミュレーター訓練
午後から、訓練兵の教官だよ」


「忙しそうだね~…」


タケルのスケジュールを聞いて『うわぁ…』と驚く純夏
そんな事をしている内にタケルは『ごちそうさま』と朝ご飯を食べ終わる。


「早ッ!!
早いよタケルちゃん!?」


「早飯は衛士としては当たり前だぞ?」


タケルの一言を聞いて周りを見ると、純夏とやちる以外は『ごちそうさま』と朝ご飯を食べ終わる。


「早く食べろよ、支度したら基地に行くぞ」


「わわわっ!?
待ってよ、タケルちゃ~ん!!」


慌てながら朝ご飯をガツガツ食べる純夏


(こんな時がずっと続くと良いですね~…)


クスリと笑いながら、今の生活に満足するやちるだった。



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ 第二十一話②
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:7df15b6d
Date: 2010/09/26 10:33
タケル達は車で純夏や白銀影行夫妻を基地まで入構し、基地内で別れる。
その際、基地内の廊下をタケル・真耶・沙耶の三人で歩いていると、なにやら騒がしかった。



「随分と騒がしいな…」

「…というより、騒ぎの原因は…私達のようだな?」


「ハハハ…どうせ『一夫多妻制』の件でしょう…ハァ…」


騒ぎの原因---

擦れ違うたんびに、視線を此方に向け、ガヤガヤと騒ぐ事に気付く。
タケルは『一夫多妻制』の件だと予想し、納得する真耶・沙耶だが…



「しかし、おかしいな…」


「どうしました、沙耶さん?」


「一夫多妻制の件ならば、女性は…わかるとして、男性までがタケルに好意的な視線を送るのはおかしい。
寧ろ、タケルに殺意の視線を送るのが当然では?」


「そういえば…」


ふと違和感に気付く沙耶
その内容に『そういえば…』と納得する



「あら、夫婦揃って今来たの?」

「おはようございます、タケルさん、真耶大尉・沙耶大尉。」


「先生に駿…?
珍しい組み合わせっすね。」


すると前方に香月博士と駿がタケル達と出会う。

「別に特別な事じゃないわよ
新婚アツアツの白銀『夫妻』を探してた時に、五十嵐少尉に話しかけてただけよ。」


なるほどと納得するタケル達。
そして、二人にこの騒ぎの事を聞く。


「この騒ぎは一体何なんですか?
『一夫多妻制』の件とは思ってましたけど…?」


「勿論それもあるわ。
けど他にも理由があるのよ」


「大半がタケルさんにありますからね~♪」


「オレ?
何なんだ駿、その理由って?」


タケル達の反応を見て、呆れるように溜め息をする香月博士


「アンタ…あれだけ暴れまわって活躍した癖に…
この騒ぎの大半の理由はね、『本土侵攻戦』の時にアンタが京都防衛線で活躍したのが原因なのよ。」


「今、基地内では有名ですよ?
タケルさんの事『白銀の守護者』って呼び名で呼ばれてるんですよ~?」

「し、白銀の守護者ぁぁ?
先生ぇ…また変な噂流して…」


「今回は私じゃないわよ?
勿論殿下でも紅蓮大将達でも無いわ
この噂を流したのは、京都防衛線に参加してた衛士達が流したのよ。」


騒ぎの理由がタケルに有り、『白銀の守護者』と呼ばれてた事に驚くタケル。
最初はまた香月博士の仕業かと思ったが、真実は現場の衛士達にあった。


「しょうがないですよ~。
光線級のレーザー照射を全て回避しながら、大空を飛ぶ、白銀色の不知火・改
そして要塞級を単騎で挑み、京都防衛戦だけで合計60体以上撃破し、大型種(要塞・要撃・重光線・突撃級)だけでも合計3000体にも届いた凄腕衛士が、タケルさんだと知られたんですから。」


「それで、尊敬の意味を込めて『白銀の守護者』って呼び名が付いた訳よ。」


「たはぁ~…
…なんか凄く恥ずかしい気がしてきた。」


騒ぎの原因を知り、だんだん恥ずかしい気持ちになってきたタケル
男性までがタケルに好意的な視線で見てた理由をわかり、納得する。


「みんなタケルさんに『憧れ』たり、『尊敬』してるんですよ
…そんな事で、最近はタケルさんとエレメントを組んでる事で、ちょっとした自慢出来てるんです♪」


「そして、『英雄、色を好む』って言葉が有るように、『一夫多妻制』の件も加わり、話題になってるって訳よ。」

「……それはアンタのせいでしょうが…」


香月博士の一言で、恥ずかしさが一気に消えて、テンションが落ちるタケル。



そして、香月博士と駿と共に廊下を進み、大きな会議室に入る


「伊隅、『碓氷』、待たせたわね。」


会議室に入ると、椿達第17大隊・斑鳩達第16大隊と国連軍オルタネイティヴ第4計画特殊部隊のA-01が居た。
その中には、紅蓮大将・巌谷中佐も参加していた

「ホラ、白銀達も席に着きなさい
ブリーフィングを始めるわよ。」


「あ、ハイ」


席に着き、タケル達の前方には、香月博士・紅蓮大将・巌谷中佐が立っていた
そして香月博士がタケル達に語ってくる


「今日はこの会議室に集まったのは他でも無いわ。
今回のBETAによる本土侵攻戦で日本は2つのハイヴを建設されてしまったわ。
そして、多くの同朋達を失い、戦う術も半分も奪われる結果になった…
けど、私達は黙って指をくわえて待ってる訳には行かない…
そして、先日私は国連軍司令部に『横浜ハイヴ攻略作戦』を提案したわ。
そして国連軍司令部は即時承認し、大東亜連合・そして帝国軍との大規模反攻作戦を打診したわ
そして、帝国軍の方は政威大将軍・煌武院悠陽殿下の承認を貰い、帝国軍及び斯衛軍の参加が決まったわ。」


香月博士の説明を受けて、会議室にいる全衛士達に衝撃が襲う!!


「大東亜連合の返答はまだだけど、恐らくは参加する筈よ。
其処で今回の作戦『明星作戦』は此処に居る全ての部隊がハイヴ内突入部隊に決定したわ
そして、他の帝国軍や大東亜連合、そして国連軍が外で制圧を目的で戦うわ。
そして、横浜ハイヴを落とし、攻略に成功したら、そのまま本州奪還を目的とした、大反攻作戦に移るわ。
その際、防衛に成功した、京都・四国を利用して一気に叩くわ!!」


大規模な作戦に開いた口が塞がらないタケル達。
その時、第16大隊の一人が質問する。



『スミマセン、質問…良いでしょうか?』


「良いわよ、何?」


『作戦の内容はわかりました…
けど、ハイヴ突入する際…本当に我々の部隊や第17大隊も参加するのでしょうか…?
我々の第16大隊や椿様達居る第17大隊は、五摂家の方々が居ます。
特に、我々の部隊の伊織様や隼人様は斑鳩家と崇宰家の現当主
第17大隊には、斉御司家と九條家の次期当主の椿様や政弘様、そして隼人様の弟君の孝志様まで居ます…
特に、崇宰家に関しては、隼人様や孝志様のお二人が万が一にも失ってしまっては、五摂家の一角である、崇宰家が事実上無くなってしまいます…
…幾らなんでも、これは拙いのでは…?』


会議室に居る全衛士達が、今の意見に同意する。
すると、香月博士の口から驚きの言葉が出た。



「そうね、けどその問題に関しては、殿下や五摂家の現当主達が集まって話し合った結果、全員賛同した結果なの
だから、今回の話は第16大隊の大隊長と副隊長の伊織様や隼人様は全て知ってる事なのよ。」


『そ、そんな…!?』


「それにね、その問題を解決するには、『全員生還』すれば良い事なのよ。
だから、精鋭中の精鋭の部隊を集めて話したのよ
今回の『本土侵攻戦』の戦いを見て、選ばれた部隊
ウチの国連軍は別としても、少なくとも、第16大隊と第17大隊は、斯衛軍の『最強の一角』の部隊だと、私は確信して言うわ。」


香月博士の言葉に沈黙するしか無い衛士達
そして、香月博士が一旦下がると、紅蓮大将が代わりに説明する。


「とはいえ、今の戦力では作戦に成功する事は出来ない。
それ故に、今作戦『明星作戦』は来年の夏頃を予定してる。
そして、今作戦には、ワシ・紅蓮醍三郎と、帝国陸軍中佐の巌谷榮二中佐も参加する事が決まった。」


『『『なっ!!!』』』


「ワシはハイヴ突入部隊に入り、五摂家の方々を護衛する事になっておる。
そして巌谷中佐は、外での制圧部隊に入り、指揮を執る事になった。」


『紅蓮大将が参加するだって…!?』


『すげぇ…』


武人・紅蓮大将の参加を聞いて、一気に士気が上がる

「それに…ホレ、今噂の『白銀の守護者』で有名な白銀中尉も居る。
これならば、五摂家の方々の護衛には不満はあるまい?」


「おっ、オッサン…」


紅蓮大将の言葉に一斉にタケルに注目する衛士達。
内心『勘弁してくれよ~…』と呟く。



「まあ、そういう事で、今日より、この部屋に居る斯衛軍・国連軍の合同訓練を取り組む。
決戦の日まで、各々の腕を精進せよっ!!」


そして、最後に巌谷中佐が今日のスケジュールを伝え、解散の号令を言い放つ。



「大変な事になったな…」

「ああ、責任重大な任務だ。」

「やるしかない…か…」

タケル・政弘・孝志の三人が揃って、シミュレータールームに向かう…


そして、強化装備に着替え、シミュレーターに搭乗し、訓練を開始すると---
香月博士の顔がニヤニヤと笑っていた…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ 第二十一話③
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:7df15b6d
Date: 2010/09/29 15:18
「なっ、何だ!?…このNPC強えぇっ!?」


「まるで、月詠中尉と戦ってるみたいだっ…!!」

シミュレーター訓練で『対人戦闘訓練』が行われていた。
シミュレーター訓練に参加してない者も『何故対人戦闘訓練を?』と頭を傾げていたが、訓練が開始すると、驚愕の表情に変わる。

訓練内容はシミュレーター訓練による対人戦闘訓練
そして、相手はNPCの不知火・改(XM3搭載機)率いる大隊規模の戦い。


開始当初は幾ら不知火・改の大隊とはいえ、精鋭の第17大隊には力不足だった


しかし、第3中隊の方で、被害が広がる事になる。


第3中隊の相手する不知火・改が、次々と撃破していき、部隊の半数を撃破された時点で、孝志機と駿機が相手する。


異例のエレメントとなったが、問題の不知火・改を抑える二人
しかし、決して楽な事ではなかった。



まるでタケルのような機動を描き、孝志機・駿機は翻弄されつつも、当初は『タケルと戦ってるつもり』で挑んでいた
だが、それは間違いと判断する事になる。


鋭く重い一撃、そして疾い剣速、無骨にも地道に積み重ねられた剣術を操る不知火・改に、遂に駿機が撃破される。


「コイツ---NPCなんかじゃねぇ!!
この一機だけ、相当な腕を持った『衛士』が操ってやがる!!」


それに気付く孝志機
そこで孝志の闘志に火か付いた!!


「面白ぇ…本気で相手してやるよっ!!」

担架からもう一本長刀を取り出し、二刀流になる孝志機


「椿やタケル以外に二刀流にさせた奴は居ねぇ…自慢して良いぜっ!!」


翼を広げるような構えをしながら、突撃する孝志機。
それに応えてか、相手の不知火・改も、長刀一本で挑む!!


孝志機の初撃を相手の一閃で弾き、孝志機の二撃目を懐に入って、ショルダーチャージを喰らわし、二撃目を阻止する相手側の不知火・改

しかし、孝志機も体勢を立て直し、すかさず連撃を入れるが、一歩後退したのち、バックジャンプから反転をして回避する。

無論孝志機は前進して追撃するが、相手側の不知火・改は、着地と共に横へと倒立反転しながら回避し、途中有る障害物を蹴り上げ、三角飛びをして、孝志機の背後に回り、一撃を放つ。

しかし、タケルとの戦いで成長している孝志は即座に反応し、その一撃を×字にして防ぐ!!


「…やれやれ、先生も人が悪いな…」


「…という事は…やはりそうか…」


他のNPCの不知火・改を全て撃破し、後は孝志機と戦ってる不知火・改のみ
その為、他の者達は警戒態勢をしきつつも、二人の戦いを見学していた。

本来ならば、訓練故に全機で挑むべきだが、香月博士のイタズラと、孝志の我が儘の為、全員が観戦していた。(勿論香月博士もこの事を咎めないつもり)


そして、タケルは既に誰なのかは見抜いており、それ故に修行の意味で、駿機に挑ませていた

そして真那や椿・沙耶も途中で気付き、そのまま様子見をしていた。



「どういう事だ、白銀中尉?
アレが誰なのか知ってるのか?」


「つーか、オレ以外にも真那さんや椿さん・沙耶さんも気付いてますよ。」


「なる程…やはりか…」

政弘の質問に対して答えるタケル
そして、タケルの返答に椿は確信を持つ。


「政弘様、あの不知火・改の操る剣術は『無現鬼道流』です。
それ故に私や椿様や沙耶殿は気付いて当然なのです。」


「無現鬼道流を習ってるのは、私や沙耶・真那中尉や真耶大尉の他に…あと『二人』だけ
白銀中尉もちょっと習ってるけど、まだ基本のみ。」


「僅かではありますが、見慣れた剣の癖などを見れば、結論は簡単。
…まあ、本人は癖を隠してたおかげで気付くのが遅れましたけどね…」


そんな会話をしてるウチに、孝志機の一閃で、相手の不知火・改を撃破する。
そして、椿が状況を報告して、シミュレーター訓練を終了する。



「お疲れ様~…どうだった?」


「先生…イタズラは止めて下さい。」


良いカンジに笑顔で迎える香月博士に、呆れ顔になるタケル。


「…まさかこういう形で『入隊の歓迎』をするとは思いませんでした…」

「に、入隊!?」


椿の一言に反応する孝志達。
そして、香月博士が『出て来て良いわよ~♪』と呼び出す。



「……香月博士、趣味が悪いですぞ?」


「いいぢゃない、偶にはこういうのも♪」


『ハア…』と呆れ顔で溜め息を吐く衛士
そして、その正体を見て全員が驚愕する。


『『冥夜!?』』


孝志や政弘は驚いて唖然とし、駿や他の隊員までアワアワと慌てて敬礼する。
勿論見学していた他の斯衛達も驚愕し見学するが、伊織や隼人は苦笑していた。


「今日付けで帝国斯衛軍第17大隊に所属する事になりました、御剣冥夜少尉です
今後共、宜しくお願い致します。」

敬礼しながらみんなに自己紹介する冥夜だったが、他の者達は様々な反応をしながら困惑していた…


シミュレーター訓練を終えて、昼飯を食べた後、演習場で速瀬達訓練兵の戦術機の訓練を行っていた


「速瀬!!この程度の機動も出来ないのかっ!!」

「出来ますっ!!次こそ必ずッ!!」


タケルが水月を連れて、戦術機機動の技術を鍛える為にワンツーマンで鍛えていた


タケルの後に、水月が付いて様々なアクロバットを繰り出していく。


「ふえぇぇ…凄すぎるよ…」


「最早水月も白銀中尉の弟子だな…」


二人の訓練を見て、唖然とする遙達
慎二は成長した水月の機動を見て『白銀二号』と決めつける。


この訓練兵の中で一番成長してるのが、やはり水月
未来のヴァルキリーズの突撃前衛長を約束されてるだけあって、メキメキと著しく成長をしていた。


その次に孝之、ポジション的には強襲前衛なので、機動力では水月の次に高い
やはり水月には負けまいと頑張り、著しい成長を遂げている。


慎二も孝之と同じ強襲前衛で、孝之とは違い、機動力では無く、広い視野と状況判断に長けていた。

その為、慎二はまりもに任せ、ビシビシとしごかれていた(狂犬の意味でも)


そして、問題の遙
やはり彼女はCPの才能が長けていた為か、指揮能力に長けていた。
しかし、接近能力には乏しく、機動力も中の上程度。
射撃能力も上の下程


その為、ポジションは制圧支援か砲撃支援のどちらかとタケルとまりもは判断する。



「速瀬、次は恒例の『鬼ごっこ』だ
俺が鬼になるから、10分間全力で逃げ切れっ!!」


「ハイッ!!
絶対に捕まるものかっ!!」


演習場の障害物に逃げ込む水月機
それから10秒後に鬼のタケルが追いかける。



「ホラホラ、どうした?
もう捕まる気か?」


「ぐぬぬっ…何よっ!?この変態機動っぷりはっ!!」


「速瀬…良い度胸だ
上官侮辱罪で、訓練後100mダッシュ10本×3セットな♪
勿論休憩時間は1セット30秒だ。」


「お、鬼ぃぃっ!!」


「当たり前だ、今『鬼』やってるんだからな。」

水月の悲鳴を聞きながら、ジワジワと追い込むタケル
勿論やろうと思えば、すぐに捕まえられるのだが、それでは訓練にならない為、いたぶる事にした。

「ふむ、これはなかなか…よし、今度から私もしよう。」


「「「ええぇっ!?」」」

タケルの訓練方法を見て、自分もやろうと呟くまりも
その一言を聞いて、驚愕し、ブルブルと産まれた小鹿のように震える遙達。
…なんせ、追いかけて来るのは『鬼』でもあり『狂犬』
ある意味恐怖度で言うならば、タケル以上なのだから。



「ホラホラ、まだ6分もあるぞ?
もう捕まる気か?
わざわざハンデに俺が撃震で速瀬は吹雪使ってるんだぞ?
もし、あと一分以内に捕まったら、明日から昼飯3日間奢りだぞ?」


「な゛あっ!!?」


いきなりの昼飯3日間の奢りを賭けて、必死で逃げる速瀬機
しかし結局は捕まり、明日から昼飯3日間を奢らされる事になる…



この後、孝之と代わり、孝之もタケルにしごかれ、水月・孝之と共に体力を使い切る事になる。



「なんだ…これしきのしごきでへばるとは…情けない。」


するとタケルは、鞄から大量の『栄養ドリンク』を出す。


「うげぇっ!!」


「こ、このドリンクは…!!」


「フフフ…この酸味の付いたプリンのような味のドリンクを飲ませてあげようではないか…♪」


ジワジワと二人に近寄るタケル。
水月も孝之も、このドリンクは嫌いで、避けていた程である(因みに遙は大好物)



「速瀬君…これを飲む事を決意するならば、先程の上官侮辱罪も忘れよう…
100mダッシュ10本×3セットをするか…
このドリンク10本一気飲みをするか…
さあ、選びたまえっ!!」


「お、鬼ーーーッ!!」


結局は100mダッシュ10本×3セットを選び、最後には灰になった水月を孝之に『お姫様抱っこ』で運ばせるように命じるタケル。

遙から痛い視線を受けるが、逃げるように退散する。



「やれやれ、少しやり過ぎたか?」


苦笑いをしながら、まりもと共に書類整理をする。
最初は慣れない作業故に苦戦したが、沙耶の教育により、現在は少しは出来るようになった。


「ええ…と…これが明日の戦術機使用許可書で…これが今日の整備の報告書と弾使用報告書…」


「あとは明日の演習場の使用許可書もお願いします。
時間帯は今日と同じ午後からで。」



「は~い…」


せっせと書類と格闘するタケルに、更に追加を出すまりも
あまり得意ではないデスクワークに悪戦苦闘する。


「この調子だと、来年の1月には卒業出来ますね。」


「ええ…けど、あの騒がしい問題児どもが居なくなると思うと、寂しくなりますね…」


水月達が卒業する事で、寂しく思うまりも
その目は、母親のような慈愛に満ちていた。


「安心して下さい。
来年の訓練兵は、更に問題児が入って騒がしくなる予定ですから」


「…もしかして、鑑純夏さんの事かしら…?」


「アイツが居る限り、『静けさ』という言葉は存在しません。
むしろ、速瀬達より騒がしくなる可能性が大?」

「頭が痛いわ…」


先程の寂しさが吹っ飛び、頭を痛めるまりも
それに『アハハ…頑張って下さい』と声をかけるタケルだった。



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ 第二十二話
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:7df15b6d
Date: 2010/09/29 06:55
1998年・『12月16日』


仙台・第二帝都市街地周辺---


「うぅ…寒っ!!」


防寒着を着ながら車から降りるタケル



今日は『12月16日』---
自分の誕生日であり、冥夜・悠陽の誕生日でもある。


タケルは今日休日を貰い、午前中は冥夜と悠陽のプレゼントを買いに来たのだ。


例の如く、『人形』のプレゼントは用意してはいるが、タケル自身『このままじゃ駄目だ』と、やっと気づき、プレゼントを選ぶ為、休日を取ったのだ。

「洋服…も良いけど、今回は止めとこう…
買ったら、純夏辺りが五月蝿く騒ぐからな…」


洋服を買う事を諦めるタケル。
『来年はみんなに買えるように努力しよう…』と決意する。



「出来るならば、二人して仲良く使えるようなプレゼントが良いな…」


店を入って色々と探すが、やはり中々見つからず、困り果てる。



「おや?白銀中尉ではないか…」


「巌谷中佐に…唯依さん?」


すると、タケルの目の前には、巌谷中佐が買い物袋を両手に持ちながら、唯依と一緒に買い物をしていた。


「奇遇だね、こんな所で会うとは。」


「ハイ、今日は休日を貰って買い物をしてたんですよ。」


「買い物…?
何もお持ちでは無いようですが…?」


「探してる最中ですので…」


『ハハハ…』と苦笑いをするタケル
唯依はタケルから事情を聞くと、『なる程…』と納得する。


「難しいね…。
殿下と冥夜様のプレゼントとなると…」


「二人が仲良く使えるようなプレゼントを探してるんです。」


「確かに、それならばお二人にとって、良いプレゼントになりますね」


「ハイ、けど…何をプレゼントをしようかと…悩んでる最中なんです。」

『ふむぅ…』と腕を組み、悩むタケルと巌谷中佐

すると---




「あら叔父様、マフラーが落ちそうですよ?」


「ん…ああ、済まない。」


巌谷中佐の首元に巻いているマフラーが緩んでた為、落ちそうになってた所、唯依が見つけ、巻き直す。


「マフラーか…オレも欲しい…か…な……----ッ!!」


その時、タケルの頭に『ある物』が浮かび上がってくる!!


「唯依さん、ちょっと聞きたいんだけど…」


「何でしょうか…?」



タケルは唯依から『ある物』を何処かで見てないかと質問する。


「それならば…向こうに『東友』というデパートで見かけましたよ?」


「サンキュー!!
ありがとう、『唯依ちゃん』!!」


「唯依ちゃん!?」


タケルから『唯依ちゃん』と呼ばれて、真っ赤になる唯依
その際、赤くなった唯依を見て、巌谷中佐は『ふむ…それも有りか…』と何やら良からぬ考えをする。
当のタケルは『東友』に向かい、全力疾走で走り去っていく…




そして陽が落ち、月詠別邸では、『タケル&悠陽殿下&冥夜様の誕生日パーティー』の準備を着々と進められていた。



本来ならば、悠陽殿下は帝都城などでパーティーが始める予定だったが、今回の本土侵攻戦で、そのような余裕はなかったので、今年は断念していた。


しかし、それを聞いたタケルが、『お忍びでウチで誕生日パーティーしようぜ!!』と発言し、悠陽殿下と冥夜の好感度はキュンキュンと上昇しまくった。



そして、紅蓮大将や他の高官達も、『日頃の激務で頑張ってるのだから、今日ぐらいは羽目を外してもいい』と考え、今回の誕生日パーティーに参加する事が決定された。(というより、勝手にお忍びされて、慌てる羽目になるぐらいならば、公認で行って貰った方がまだマシだから)


今回の誕生日パーティーには、様々な人達が参加をする事になり、大人数のパーティーになった。
その為、パーティーのご馳走を作る為、やちるや他の使用人達は、朝から大忙しだった。


「タケル~、来てやったぞ~☆」


すると、玄関には孝志を始め、政弘・椿・沙耶・駿・第17大隊のみんながやって来た。


「打ち上げは道場でやりますから、庭から入って下さい。」


「わかった、
みんな~、庭の道場に移動するぞ~!!」



何故か孝志が指揮をとり、みんなを案内する。
するとタケルは、冥夜と真那・真耶が居ない事に気付く。



「沙耶さん、冥夜と真那さん・真耶さんは?」


「冥夜様と真那はプレゼントを買う為、別行動を取りました。
時間までには来るそうですよ
あと真耶は殿下や紅蓮大将・あと第16大隊の伊織様や隼人様と一緒に来るそうです。」


『そっか』と納得するタケル
すると、今度は香月博士達がやって来る。



「誕生日おめでとう~♪
来てやったからには感謝しなさいよ~?」


「タケルちゃん、誕生日おめでとう♪」


「…おめでとうございます。」


香月博士・純夏・霞の順にタケルを祝ってくれる。
その後ろでは、クリスカ&イーニァ・まりも・伊隅・白銀影行夫妻・速瀬達率いる訓練兵達までもがやって来た。


「タケル、たんじょうびおめでとう♪」


「お…おめでとう」


「白銀教官、誕生日おめでとうございます。
コレは私達のプレゼントです。」


「あ…ありがとう…みんな…!!」



ジーン…と感動するタケル
クリスカ達はまだしも、日頃厳しくしごいていた訓練兵達からも誕生日プレゼントを貰い、嬉しさが溢れだす。


「ホラホラ、お客様を案内しなさいよ、白銀。」

「ハイハイ、こちらですよ。」


「お邪魔しま~す♪」



香月博士達を連れて、道場まで案内するタケルと沙耶。




それからしばらくした後、冥夜と悠陽殿下達が来て、やっと誕生日パーティーが始まる。



そして何故か、香月博士が酒瓶をマイク代わりに持ちながら、司会役を演じ、武・冥夜・悠陽殿下に、みんなからのプレゼントを渡すイベントになる。


「さて、次は御剣と殿下が、お互いにプレゼントをする番。
さあ~、お互いにプレゼントを交換して下さい♪」

冥夜と悠陽殿下が向かい合って、お互いにプレゼントをする。
そして、最初にプレゼントを開いた冥夜は---



「これは…?」


「それは、私達の母親の『形見』の髪留めで、昔母親が髪を纏める際に使ってた物です。
私も幾つか持っていますので、冥夜にも…と思いまして…」


「---ッ!!
母上が使っていた…髪留め…!!」


「冥夜は生まれてすぐに袂を別れた故に、私達の母上を知りません…
しかし、母上は常に私達二人の身を案じていました…
そして、命果てるその瞬間まで…冥夜…そなたの事も愛し続けておりました。
ですから、その想いが籠もった形見である髪留めを渡そうと思ったのです。」


「姉上…ありがとうございます。」


感涙しながら、プレゼントしてくれた悠陽殿下に感謝する冥夜。

そして次に、悠陽殿下が冥夜から貰ったプレゼントの包みを開けると----


「これは…」


「姉上ほど立派な物では有りませぬが、姉上に似合いそうな『洋服』を選びました。
これでお忍びの際にでも、着てくださればと思いまして…」


「冥夜…」


ジーン…と感動する悠陽殿下
しかも、冥夜が選んだ洋服という事もあり、嬉しさが倍増する。


「さて、姉妹同士のプレゼントの交換も終わった所で…
メインイベントの白銀と殿下・御剣のプレゼント交換よっ!!」


『おおっ!!』とみんなの声が響く中、ノリノリで進行を進める香月博士。
やはりみんなはタケルが送るプレゼントに注目しているようだ。


「まずは、私達からタケル様にプレゼントを贈りますわ…」


「受け取ってくれ、タケル」


「二人共、ありがとう」

二人に感謝しながら、プレゼントの包みを開けると…



「冥夜のは…日本刀?」

「それは『飛燕神楽』という刀でな、私の持つ『皆琉神威』の『影打ち』にあたる物なのだ。
それをタケルにプレゼントしようと思ったのだ。」


「影打ち…?」


「『影打ち』というのは、本来刀を打つ際必ず数本打ちまして、出来上がった物の中から、最も状態の良いのが『真打ち』と申します。
そして、残った物が『影打ち』となるのです。」

「『真打ち』は、本来護身刀として祭り上げられたりする物だが、『影打ち』は一般の者達に市販とかされたりする物なのだ。
しかし、この『飛燕神楽』は、影打ちでありながら、真打ちの皆琉神威とほぼ同じ完成度の出来故に、当時はどちらを真打ちにするか悩む程の物だそうだ。」


「そんなすげー物、貰って良いのか…?」


「無論だ、安心して受け取るが良い。」


「ありがとう…冥夜」


冥夜に深く感謝するタケル
そして、次に悠陽殿下のプレゼントを開くと---



「コレは…指輪?」


「それは煌武院家に伝わる指輪のレプリカでして、それ程の力は有りませぬが、少なくとも帝都城内何処でも移動出来る『程度』の力しか有りません。」

「いや…それだけでも凄いから…」


びみょーな気分でツッコミを入れるタケルだが、やはり自分の為に作ってくれた事に感謝する。



「さて…最後に白銀のプレゼントは…?」


何故かゴクリと緊張感が高まる一同
『なんでそんなに緊張するの?』と心の中でツッコミを入れる。


そして、ゆっくりと紙袋を開くと---



「私達の姿をした…人形?」

皆琉神威を持った『元の世界の服装をした冥夜』と『二度目の世界で『12・5事件』の際、着ていた服装の悠陽殿下』の人形が入っていた。


「これは一体何処で…?」

「ん?俺の手作りだ。」

「「えっ!?」」


『タケルの手作り』と聞いた瞬間、一気に好感度が鰻登りに上昇する冥夜と悠陽殿下。
それを見て、香月博士は『流石は恋愛原子核ね~♪』と呟きながら笑う


「おや…?紙袋の中にまだ入ってますね…?」


ガサガサと紙袋から包みを取り出す二人
すると---





「これは…マフラー?」

「随分と長いようですが…」


包みの中は、長めのマフラーで、冥夜は黒、悠陽は白のカラーのやつをプレゼントする。


「コレはこういう風に使うんだよ。」

「タ、タケル!?」


冥夜のマフラーを取り、冥夜・悠陽殿下の首元に巻いてあげる。


「これで良し。
このマフラーはこういう風に使うんだよ、覚えておけよ?」


「タケル様…これは一体?」


タケルに質問すると---



「『二人がずっと、仲良く一緒にいれますように』って意味で買ったんだよ。
もう離れ離れにならないようにと願を掛けて選んだんだ」


「「----ッ!!」」


タケルの『想い』が二人に通じ、ポロポロと涙を流す
『姉妹』と名乗れなかった日々がもう来ない事を願い、このマフラーを選んだ事を知り、涙する二人


『か、感動して…前が見えぬわっ!!』と紅蓮大将が滝のような涙を流す
そして、他の者達も目尻に涙を溜めていた。


「タケル…本当に…本当に…心から感謝を…」


「ありがとう…ございます…タケル様
このマフラーは、大切に使わせて貰います…」


涙を流しながらタケルに礼を言う冥夜と悠陽殿下だった…



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Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:7df15b6d
Date: 2010/09/29 16:24
1998年・12月、


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