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倉敷で強く生きる女性描く いがらしゆみこ館の三城さん

2010年9月29日

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出版された小説「倉敷物語 はちまん」

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三城誠子さん

 倉敷市の美観地区近くにある「いがらしゆみこ美術館」(同市本町)館長の三城誠子(みつしろ・せいこ)さん(53)が小説「倉敷物語 はちまん」を出版した。明治から昭和初期の倉敷を舞台に、倉敷弁で「おてんば」を意味する架空の女性「はちまん」が、数奇な運命に翻弄(ほんろう)されながら力強く生きる物語だ。

 主人公は、今から100年と少し前に倉敷の裕福な商家に生まれた「はちまん」こと松原藤乃(ふじの)。好奇心と自立心が旺盛で、生涯一人の男性を愛し続けた藤乃が、実業家の大原孫三郎、洋画家児島虎次郎、日本初の孤児院をつくった石井十次ら実在の人物と交流。倉敷のほかパリやドイツ、デンマークを舞台に、第1次大戦や関東大震災などに遭いながら、自立した女性に成長する姿が描かれている。

 本の表紙や巻頭のカラー絵は、「キャンディ・キャンディ」で知られる漫画家いがらしゆみこさん=北海道旭川市出身=が手がけた。

 倉敷出身のグラフィックデザイナー三城さんは、2000年に自身のデザイン事務所の隣に同美術館をオープン。その際、二人で「倉敷を舞台にしたステキな物語を作ろう」と盛り上がり、大筋やいがらしさんによる登場人物のイラストもできていたが、仕事に追われ、出版化は立ち消えになっていた。

 しかし、「美術館オープン10周年の10年をめどに出版したい」と三城さんが改めて決意。昨年末から仕事後に事務所に一人でこもり執筆。半年後の6月末、ようやく脱稿した。大原美術館などの協力を得て時代考証も済ませた。

 地元政財界などの約230人を招いた7月の出版記念パーティーでは、出席者から「倉敷の歴史の勉強にもなる」「倉敷がますます好きになった」「NHKの朝ドラの原作に立候補してみては」と好評だった。

 三城さんは「今、失われつつある生命や友情、夢を持つことの大切さを伝えたかった。私が苦しい時、悲しい時に多くの方からいただいた言葉を盛り込んだ物語が、皆さんが生きていく上での勇気になれば」と話している。

 日本地域社会研究所刊。1800円。(鈴木裕)

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