2010年9月29日1時3分
世界に誇る我が国の製造業も、金融や流通、建設や運輸など多くの産業に支えられてここまできた。製造業の中にあっても素材、機械、加工、組み立てなど各業種がお互いのニーズをくみ上げ、お金も時間も人手も掛けて製品を開発し、技術を磨きお互いの成長を支えてきた。要するにどの業種、企業にとっても顧客、取引先が掛け替えの無いパートナーであった。それが今はどうか。市場のグローバル化に株主至上主義、それに株式持ち合いや系列化の解消なども加わって、自分さえ良ければいい、今だけ良ければいい、という経営に落ち果ててしまったように見える。
例えば、製造業各社は材料や機械の海外調達に血眼になっている。国内の仕入れ先との付き合いをやめ、その競争相手になる海外企業を育てているのである。揚げ句の果てに工場の海外移転である。それも国として需要喚起、雇用創出のために国民の税金を投入しようかというときに。もちろんここまでの政治の無策ぶりは責められる。だがそれはそれとして産業界自身が自分たちの戦略を振り返って見るべき時ではないだろうか。そして企業同士が協力、連携することで世界が再び目を見張るような我が国らしいビジネスモデルを実現し、コスト勝負ばかりではない強い産業構造を作り上げてほしいと思う。
同時に産業界には、国のとるべき産業政策を提言し、大型プロジェクトを企画立案するなど政治行政に対して今以上の強力なリーダーシップの発揮を期待したい。企業が強くなり、国が活力を取り戻すことは我々の子々孫々の繁栄に不可欠であり、そのためにお金や人手をかけるのは我が国の企業として当然の責務である。(啄木鳥)
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「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。