後継者問題:金正日体制は当面維持か

 北朝鮮は28日、金正日(キム・ジョンイル)総書記の三男ジョンウン氏に朝鮮人民軍大将の称号を与え、後継体制を公式化したが、専門家は金総書記中心の国家運営に当面は大きな変化がないとみている。北朝鮮は非核化と改革開放ではなく、核を盾として、米国と交渉を行うこれまでの政策を固守するとみられるが、北朝鮮住民の生活苦を改善するため、米国、韓国との関係改善に乗り出す微調整の可能性も示されている。

 北朝鮮はジョンウン氏への安定的な世襲に向け、当面は急進的な変化ではなく、北朝鮮内部の引き締めを重視するとの見方が有力だ。北朝鮮内部の消息筋によれば、北朝鮮は過去の金総書記への世襲時期に比べ、内部も外部も不安定な状況にあるとされる。

 南柱洪(ナム・ジュホン)外交通商部国際安全保障大使は「金日成(キム・イルソン)主席とは異なり、現在の金正日氏は病気を患っており、外交的孤立も深刻化している。経済が没落し、住民の忠誠度も金正日氏への権力継承時より低下している」と指摘した。

 ナム・ソンウク国家安保戦略研究所長は「金氏ファミリーの安定と体制維持を図るため、下手に改革開放といった話を切り出せない状況だ」と分析した。

 このため、北朝鮮は「先軍政治」を強化する可能性が高い。世宗研究所の宋大晟(ソン・デソン)所長は、「北朝鮮は戦術的にはだましの手を使うかもしれないが、先軍政治という国政哲学は変わらないだろう。軍事第一主義の原則が続く限り、非核化と開放の可能性は低い」と述べた。

 また、ジョンウン氏への安定的な世襲に向けては、不満勢力を抑え込む金総書記の強力な国政掌握力が必要となるため、金正日中心主義も強化されるとみられる。西江大のキム・ヨンス教授は「今回ジョンウン氏に大将という称号を付与すると同時に、金敬姫(キム・ギョンヒ)氏(金総書記の妹)の名前を強調したのも、ジョンウン氏をまだ前面には立てないという意思だ」と読み解く。

 三代世襲の成否は、金総書記の死後にならないと分からないとの指摘もある。しかし、「ジョンウン神話」をつくり、北朝鮮住民の不満を抑え込むためには、一時的でも対外戦略で柔軟性を見せる可能性がある。東国大のキム・ヨンヒョン教授は「キム・ジョンウン体制が北朝鮮住民に何かを示さなければならないという点で、住民生活の改善に向け、徐々に対米、対南関係の改善に乗り出す可能性がある」との考えを示した。6カ国協議の再開、南北関係改善に乗り出せば、一時的にはエネルギー、食糧問題の改善につながるためだ。国家安保戦略研究所のイ・スソク南北関係研究室長は「大規模支援を受けるため、限定的でも対外戦略に柔軟性を見せ、市場統制政策を一時的に緩和し、住民の支持を得ようとすることもあり得る」と述べた。

 南北関係の見通しについては、意見が分かれた。体制安定のため、韓国に対する挑発を自制する可能性もあるが、内部の統制が弱まることを防ぐため、「天安」爆沈事件のような強引な手段に訴えるのではないかとの見方もある。高麗大の柳浩烈(ユ・ホヨル)教授は「後継体制の安定に向け、住民に分け与える生活必需品が必要であり、そのために南北関係の改善に乗り出す可能性がある」と指摘した。しかし、イ・スソク室長は「1960年代末の金正日氏への後継作業当時のように、韓国に対する挑発で内部の不満を抑え込む可能性も否定できない」とした。

鄭佑相(チョン・ウサン)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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