北朝鮮は今年6月から金正日（キム・ジョンイル）総書記の三男、ジョンウン氏への権力継承作業を加速したことは28日までに分かった。

　北朝鮮内部の高官筋によると、朝鮮労働党は今年6月、「党代表者会を9月上旬に招集することを決めた」と発表して以降、ジョンウン氏が突然浮上したという。同筋は「4月までジョンウン氏に関する講演が全面的に中断されていたが、再び本格化したのは、金総書記の健康に問題が生じたためだ」と述べた。2008年に脳卒中で倒れた金総書記の健康状態が不安定なため、後継体制の公式化を前倒しせざるを得なかったとの見方だ。北朝鮮内部でも、金総書記が70歳を迎え、金日成（キム・イルソン）主席の生誕100周年に当たる2012年が「強盛大国の年」と位置付けられており、それに合わせて後継体制が公式化されるとの見方が大勢だった。しかし、金総書記の健康問題という不確定要素のため、権力継承のプロセスを短縮し、加速化する必要が生じたのではないかと分析されている。

　同筋は「北朝鮮内部ではジョンウン氏が唯一の後継者として公式化され、金総書記が行うのと同様に、『キム・ジョンウン同志のお言葉と方針』まで下達されるようになった」と話した。ジョンウン氏が示した指針には、人民軍内部の無秩序を是正しろとか、人民保安部は交通マナーの取り締まりを徹底すべきだといった内容が含まれている。ジョンウン氏は金総書記の誕生日にちなむ「216」というナンバーが付いた自分のベンツが軍の車に追い越され、前方を遮られたことに腹を立て、そうした指示を出したという。同筋は「国家保衛部と人民軍の最高幹部の家にはジョンウン氏の肖像画が掲げられ始めた。徐々に中堅幹部にもジョンウン氏の姿が公開される予定だ」と語った。

　別の消息筋によると、北朝鮮ではジョンウン氏が7月に親衛隊を引き連れ、国家保衛部を訪れ、同部の最高幹部会議を主導し、金永春（キム・ヨンチュン）人民武力相と緊密に連携し、金総書記に代わり、最高司令官の業務を代行しているとの説もある。また、今回の党代表者会を控え、ジョンウン氏が後継者格の「組織書記」に内定したとの説も出ている。

　最近、交通事故で死亡した李済剛（イ・ジェガン）党組織指導部第1副部長の後任には、50代前半の党幹部出身の重要人物が内定し、今後党内でジョンウン氏を補佐するという。また、かつて金総書記擁立に尽力した元人民武力相、呉振宇（オ・ジンウ）、崔賢（チェ・ヒョン）両氏の子女が金総書記とジョンウン氏の前で代を継いで忠誠を尽くすと宣誓したとの話もある。

　ジョンウン氏が大将の称号を付与されたという28日の発表は、北朝鮮内部では新しい話ではないという。今年8月、金総書記が党代表者に推戴された際、ジョンウン氏も同時に推戴され、翌月に金総書記の後継者として、ジョンウン氏を公式指名するという指示文書が党中央から党組織に伝達されたことで、後継体制は一般に公表されたとされる。

姜哲煥（カン・チョルファン）記者