後継者問題:一族の権力で「ジョンウン氏保護」(下)

金敬姫&張成沢の「夫婦パワー」

金敬姫氏、初の女性大将として完全再起

 金敬姫氏は03年9月の最高人民会議(国会に相当)第11期代議員記念撮影を最後に姿を見せなくなった。その後、金敬姫氏は夫・張成沢氏との不和、長女・張琴松(チャン・グムソン)さんの自殺(06年)などが重なり、アルコール依存症になったと伝えられた。うつ病の治療も受けたという。

 ところが、金敬姫氏は09年6月、金総書記の咸鏡南道咸州郡協同農場視察の際に随行、6年間の空白期間を経て、再び姿を見せた。それからまもなく「党部長」という役職名で呼ばれ始め、政治の表舞台に正式に復帰した。そして、今回は北朝鮮で初の「女性大将」になった。

 北朝鮮消息筋は「金敬姫氏の再起は、故・金日成(キム・イルソン)主席一族を意味する『白頭山血統』が後継者ジョンウン氏を全面的に支持しているということを知らしめようとの意図」と話している。金総書記が7歳、金敬姫氏が3歳だった1949年、実母・金正淑(キム・ジョンスク)氏が出産中に死亡して以来、互いに支え合い、継母・金聖愛(キム・ソンエ)氏による実子の後継者擁立に対抗した。

 日本の北朝鮮関係消息筋は、「金敬姫氏はパーティーで酔うと、ふざけて兄(金総書記)にキスするほど、兄妹仲がいい」と話している。

張成沢氏、「摂政」になる可能性も

 張成沢氏は08年に金総書記が倒れた時、非常事態に陥った政局を収拾するのに中心的な役割を果たした。07年末に公安・司法機関を総括する党行政部長になり、北朝鮮当局が現在、力を入れている平壌市現代化事業を主導している。平壌市を一新するこの事業は、今後ジョンウン氏の業績として利用される可能性が高いと見られている。金総書記自身も後継者に指名された後、平壌の人民大学習堂・人民文化宮殿・氷上館などを自ら設計、完成させ、金日成主席を喜ばせた、と北朝鮮は宣伝している。

 張成沢氏は04年に側近の過度に豪華な結婚式に出席、一時失脚した経験があるため、最近は慎重に振る舞っている。しかし、「金総書記が早期に死去すれば、張成沢氏が『摂政』になる可能性もある」(政府当局者)との見方もある。まだ20代後半のジョンウン氏が金総書記の死後、権力を握りきれなければ、支持勢力がある張成沢氏に力が集中するかもしれないということだ。

 一方、常に金総書記に寄り添っているキム・オク氏も注目すべき対象だ。このほど脱北した北朝鮮上層部の人物は、「キム・オク氏は幹部らを怒鳴りつけたり、自ら指示したりするなど、影響力を行使している」と話す。キム・オク氏は昨年8月、玄貞恩(ヒョン・ジョンウン)現代グループ会長が金総書記と面談した際も同席していたという。

アン・ヨンヒョン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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