後継者問題:封建王朝以来、世界初の三代世襲(下)

見習い段階で後継者に

 シリアのバッシャール・アサド大統領はかつて眼科医だったが、父の後を継ぐ前、6年以上にわたり軍での職務を経験し、政権を握るバーツ党の執行部から後継者として認められた。コンゴ民主共和国のジョゼフ・カビラ大統領は、父と共に内戦の最前線で戦い、戦場で前政権を倒すのにそれなりの役割を果たし、また政府よりも力のある軍閥による平和交渉も実現させた。アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領は、政権を引き継ぐ前に石油関連事業で能力を発揮している。1994年に国営石油会社(SOCAR)の副社長に就任すると、欧米企業との油田開発交渉などで力を発揮し、外交と内政の両面で後継者コースを歩んだ。しかし北朝鮮のジョンウン氏について現時点で知られているのは、「称賛する歌が作られた」「工場自動化の成果を説明するに当たり、よく名前が上がる」といった程度だ。誰もがジョンウン氏が後継者になると考えているが、今はまだ見習い段階に入ったばかりだ。

家族王朝の偶像化

 米外交専門誌の「フォーリン・フラッシュ」は、「北朝鮮では偉大な首領の後を継ぐ偉大な領導者が現れ、さらにその息子に跡を継がせることの正統性を強調するため、家族全体の偶像化に乗り出した」と分析している。金日成主席の母親の康盤石(カン・バンソク)は「朝鮮の母」とされており、また金正日総書記の生母である金正淑(キムジョンスク)は「革命の母」だ。彼女たちの大掛かりな偶像化は、国家レベルの行事や、さらにその名を取った数々のキャンペーンなどを通じて行われた。王朝の家族全員を偶像化し、統治の能力と資格を持つように仕立て上げるのは、250以上ある独裁のケースの中でも、北朝鮮でしかみられない。

さらに予測不可能で危険な状況に

 英週刊誌「エコノミスト」は、「(三代世襲により)北朝鮮はこれまで以上に、予測不可能かつ危険な国となった」と報じた。北朝鮮は金日成主席から金正日総書記への世襲作業が行われていた1980年代に、大韓航空858便爆破事件(1987)やラングーン事件(全斗煥〈チョン・ドゥファン〉当時大統領の一行がミャンマーを訪問した際、アウン・サン国立墓地で北朝鮮の工作員が起こした爆破テロ)=1983=など、大規模な事件を引き起こしたからだ。戦略国際問題研究所(CSIS)韓国室長のビクター・チャ氏は最近のインタビューで、「世襲指導者に先代のような革命指導者としての資格が足りない時には、大掛かりな事件を引き起こして正統性を獲得し、リーダーシップの神話を作り上げようとするものだ」と指摘した。

李泰勲(イ・テフン)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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