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WRC
【WRC】第14戦ツール・ド・コルス トピックス

Text by Second Wind
2004年10月18日

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Copyright(C) Ford,Citroen,STI,Peugeot,
Mitsubishi Motors
天候予測とタイヤ選択の重要性はさらに増す
 山中の曲がりくねったコースで争われるツール・ド・コルスは、そのコーナーの多さに“1万のコーナーがあるラリー”という異名を持つ。しかし、かつてのような断崖絶壁は少なくなっており、路面も再舗装が進みパンピーなコースも減っている。
 しかし、だからといってそのトリッキーな性格が変わったわけではない。コンパクト化が進むツール・ド・コルスだが、コルシカ島の県庁所在地であるアジャクシオに設置されるサービスパークから、すべてのステージまで30分程度の距離。今季は走行距離1,061kmのうち約37%にあたる387.8kmが競技区間で、ステージは6つしかなく、そのすべてリピートする。当然、ひとつのSS距離は長くなり、最短ステージであるSS10、SS12のペニテンチール・コティ・チアヴァリ〜ピエトラ・ロッサでも24.24km。最長ステージとなるSS6、SS8のペリ〜バステリカは40.94kmもある。秋のコルシカ島は変わりやすい天候で知られており、突然、激しい雨が降ることも多い。そのためミックス・コンディションへの対応が重要だが、ひとつのSS距離が長くなったため、天候予測とタイヤ選択の難度はますます高くなっている。なお、今季はセーフティカー(グラベルカー)は禁止されていたが、ツール・ド・コルスとカタルニヤの2戦ではその使用が許可されることになった。

ソルベルグ、再び奇跡を起こせるか
 ローブとシトロエンは、それぞれあと5ポイント、7ポイントを加算すれば、ドライバーズタイトルとマニュファクチャラーズタイトルが決定する。ここでタイトル決定の可能性は高いが、このカウントダウンを少しでも遅らせたいのがソルベルグ(スバル)。ローブとシトロエン得意のターマックとはいえ、このラリーで求められるものはアグレッシブなドライビングよりもタイヤマネジメントや走りのリズム。現在3連勝中のソルベルグだけに、この点はおおいに期待できるだろう。インプレッサWRC2004にとってははじめての典型的なターマックラリーとなるが、そのパフォーマンスに注目だ。
 昨季のこのラリーではシェイクダウンで大クラッシュしたものの、チームが徹夜で車を修理。そして、劇的な優勝を果たしたソルベルグ。ことし、再び奇跡を起こせるだろうか。


マーティン、ターマック初勝利で今季2勝目
 事前の予想通り、ラリーは変わりやすい天候に翻弄されることになった。木曜日、セレモニースタートを襲った激しい雨は一晩中降りつづいたが、翌朝は快晴。しかし、ステージは濡れたままで、どの時点で路面が乾いてくるのか、タイヤの選択は非常に読みづらいものとなった。ここで的確なタイヤ選択を行ったのは、フォードのマーティンとデュヴァル。レグ1の午前中のループで濡れた路面に合ったソフトタイヤを選んだふたりはラリーの主導権を握る。午後も天気予報は雨だったがSS中に雨が落ちることはなく、ハードタイヤを選んだデュヴァル、マーティンが1-2でレグ1を終えた。
 レグ2も、前夜の雨はやんでいたが、ステージは濡れたまま。断続的に雨、そして雹も降るという、さらに不安定な天候となった。しかし、セーフティカーからのアドバイスに基づいて最適のタイヤ選択をつづけたマーティンとデュヴァルは、ステージトップを競い合いながらどんどん後続を引き離す。この日のループは36.24kmのヴィコ(SS5、SS7)と40.93kmのペリ〜バステリカ(SS6、SS8)で構成され、SSとSSの間にタイヤ交換など10分間の作業が許されるRTFZが組み込まれていた。標高1,200mの山岳地帯を走るSS6に備えてSS5後のRTFZで多くのドライバーがインターミディエイトにはきかえるなか、このふたりはソフトコンパウンドのドライタイヤを選択したが、これが成功。リピートとなる午後のループでは、アジャクシオのサービスパークを出発した時点では太陽が輝いており、ミディアムコンパウンドのドライタイヤで走るドライバーも出るなか、雨を予想してインターミディエイトを選んだが、これまた成功。ことごとくタイヤチョイスが当たり、SS8でローブがステージ2位に食い込んだ以外は、すべてフォーカスRS WRC04の1-2。ラリーリーダーはマーティンに変わったが、デュヴァルとの差は20秒8。しかし、総合3位のローブは1分以上引き離されており、優勝はチームメイト同士の争いとなった。
 レグ3はまたしても前夜に降った雨の影響が残っていたが、天候は最も安定しており、熱いバトルが期待された。ところが、この日最初のSS9でデュヴァルをエンジントラブルが襲う。「スタートして1kmで水温が上昇して、オイル警告灯がついた。そして、3気筒になってしまって僕のラリーは終わってしまった」とデュヴァル。7km地点でボンネットから出火し、完全にストップ。ここでリタイアとなった。とはいえ、ラリー・ドイツでも総合2位に入っており、ターマック、しかも微妙なコンディションでの強さをおおいにアピールした一戦だった。
 マーティンはSS6でパンク、SS8ではパワステのオイル漏れから出火するなどのトラブルもあったが、7つのSSでトップに立つ速さで今季2勝目。そして、初めてのターマックラリー優勝をおさめた。「この夏は冴えかなかったからね。うれしいよ。それに、ようやくアスファルトでのフォーカスのポテンシャルを引き出すことができた。これまでも速さはあったんだけど、それをフルに発揮できたんだ」とマーティン。「ドライバーになったとき、3つの目標を決めたんだ。ひとつはフィンランドで優勝すること。もうひとつはアスファルトで勝つこと。特にコルシカみたいなね!」。最後の目標は、もちろん世界チャンピオンになることだ。

ローブ、2位で初のチャンピオンに。シトロエンはマニュファクチャラーズタイトル連覇
 プレッシャーのかかるローブは慎重にラリーをスタートしたが、レグ1を総合3位で終える。ソルベルグのペースがまったく上がらなかったため、「少しはリラックスしてきたかな」と笑顔も見えた。レグ2ではSS6でインターミディエイト、SS7でミディアムタイヤを選ぶなど、タイヤ選択はややはずしたものの、大きなミスはなく総合3位を堅持。「タイトルのことはフィニッシュするまで聞かないでくれ」とは言うものの、「タイヤ(適当な温度まで発熱させないとパフォーマンスを得られない)をうまく使うにはできるだけプッシュしないと」と萎縮したところはなく、デュヴァルのリタイアによって総合2位でフィニッシュし、初のWRC制覇を達成した。ローブの優勝回数は5回でソルベグと同じだが、総合2位は今季6回目。たとえ勝てなくても、リスクを冒すことなく着実に上位をねらう走りが今季の圧倒的強さを呼んだ。
「チームは最高のコンディションを整えてくれていたけど、やっぱりプレッシャーはきつかったからね。ほっとしたよ。みんなが喜んでくれているのを目にするのはほんとうにうれしいよ」というローブは、フィニッシュランプで見事な宙返りを披露(ラリードライバーになる前は体操選手だった)して、さらに喝采を浴びていた。
 ローブの総合2位でシトロエンはマニュファクチャラーズタイトル防衛も決定。サインツも表彰台を獲得し華を添えた。フレクラン監督は「私は1981年にタイトルを逃がしているが、20年後に目標を達成できた気分だよ。すばらしいチーム、クサラ、そしてドライバーのおかげだ」と感極まった様子。チーム、そしてローブを自らの手で育て上げてきただけに当然か。ラリー・フランスでのフランス人ドライバー、フランスのマニュファクチャラーの栄冠にシトロエン陣営、そしてフランス人ファンは歓喜に包まれていた。

ソルベルグ&インプレッサ、ターマックで力負け
 ソルベルグは完全にタイヤチョイスに失敗。レグ1では、午前中のループにハードタイヤでのぞんだものの路面の乾きぐあいが遅くペースが上がらない。午後のループにはウェットコンディションを予測してソフトタイヤを選んでいたが、雨が降りはじめたのはSS終了後。完全に選択をはずしてしまったソルベルグ。フォード、シトロエンはおろか、セットアップが決まらず「車に自信が持てない」と苦悩するグロンホルム(プジョー)にも遅れ、この日を終えトップから2分以上離された総合7位。「タフなイベントになるとはわかっていたが、予想以上だ」とソルベルグのコメントからは苛立ちが伝わってくる。
 レグ2はさらに不安定な天候と予報されており、まだチャンスは残されているかに見えた。だが、ミックス・コンディションのターマックでインプレッサWRC2004のパフォーマンスは発揮されず、「できることはすべて試したけど・・・。強い雨が降ったほうがいいよ」とソルベルグはお手上げ状態。それでもレグ3最初のSS9でステージウィンを獲得するなど意地を見せ、総合5位でフィニッシュした。ローブは笑顔で祝福したものの、「スムースな路面でもペースをつかむためには、やることが山積みであることがはっきりした」 ときびしい表情だった。

フランスの次世代エースに明暗
 今季ラリーに転向した元F1ドライバーのサラザン。インプレッサを駆り、フランスラリー選手権のタイトル争いでトップを行く強さを発揮しているが、WRCでもポテンシャルを披露。ワークスチームのヒルヴォネンが総合10位と苦戦したのに対し、総合6位でフィニッシュし、見事ポイントを獲得した。
 プジョーはセカンドドライバーにフランスのスーパー1600チャンピオンを獲得したばかりのロベールを起用したが、SS5で路面に流れる水に乗りスピンし壁にヒット。ラジエターを破損しリタイアした。ロベールにけがはなかったが、このアクシデントで307WRCがコースを塞いでしまったため、後続のグロンホルムとサインツは徐行を余儀なくされ、ふたりにはそこまでのパフォーマンスを反映させたタイムが与えられた。SSは25分間中断した。3台目の307WRCをドライブするロイクスは総合7位に入った。
 スコダは、シュヴァルツがSS6でハイドロ系トラブルのためいったんはポイント圏外になったが、上位の脱落で総合8位を得た。ガルデマイスターは総合9位に終わった。


来季のカレンダーが決定、ラリー・ジャパンでPCWRCを併催
 10月13日に行われたFIAの世界モータースポーツ評議会で来季のカレンダーが決定した。JWRCとPCWRCは8戦に拡大。JWRCは任意の7戦に、PCWRCは任意の6戦に参戦することになった(PCWRCは全戦がグラベルとなった)。スーパーラリーの導入も決定され、出走できなかったステージごとにステージベストプラス5分のペナルティが課せられることになった。SS距離は最低340km、最高360kmとコンパクトになった。
 また、コスト削減を実現させるためテクニカルレギュレーションの変更を行うことも決定。新しいレギュレーション案は12月の世界モータースポーツ評議会に提出され、その承認後、2006年シーズンから導入されることになる。なお、昨季、違約金(出場をとりやめると一戦ごとに違約金を支払わなければならない)を支払わないまま残り4戦を欠場したヒュンダイが召還され、12月1日までに100万ドルを支払うことを命じられた。

1/21〜23モンテカルロ(J)
2/11〜13スウェーデン(P)
3/11〜13メキシコ(J)
4/8〜10ニュージーランド(P)
4/29〜5/1サルデーニャ(J)
5/13〜15キプロス(P)
5/27〜29トルコ(P)
6/17〜19アクロポリス(J)
7/8〜10アルゼンチン(P)
8/5〜7フィンランド(J)
8/26〜28ドイツ(J)
9/10〜18グレートブリテン(P)
9/30〜10/2日本(P)
10/14〜16コルシカ(J)
10/28〜30カタルニヤ(J)
11/11〜13オーストラリア(P)

※JはJWRC併催、PはPCWRC併催。

PCWRCリポート

パーソネンと新井はスキップ。タイトル争いの行方は?

 ここまで5戦を終えて、チャンピオンの可能性を残しているのは、パーソネン(三菱)29、マクレー(スバル)20、新井敏弘(スバル)20、マクシェア(スバル)19、ソラ(三菱)16、アル・アティヤ(スバル)10。ただし、パーソネンと新井はこのツール・ド・コルスをスキップイベント(PCWRCでは全7戦中、任意の1戦は欠場しなければならない)に選んでいるので、マクレー、マクシェア、ソラはギャップを埋めるチャンスだ。
 特に注目したいのはソラ。三菱のWRCワークスチームのドライバーであり、ターマックラリーを得意としている実力者であり、しかも、今季はここまでランサーエボリューションが5連勝とPCWRCを席巻しており、ソラも第2戦メキシコで優勝と、大逆転もありうるのだ。

ポンス、パーフェクト・ウィンで今季2勝目。ランエボは6連勝
 ポンス(三菱)がターマックでの強さを発揮し、ラリー・ドイツ同様圧勝した。レグ2まですべてのSSを制し、後続に3分近いマージンを築いていたポンスは、レグ3はペースを落とす余裕。最後のSS12、残り10kmでギアが5速にスタックしヒヤリとするシーンもあったが、大量リードに守られ、総合2位のマクシェアに58秒8という大差をつけた。これで今季2勝目、ランサーエボリューションは今季負けなしの6連勝だ。
「ドイツで勝ったことで車のパフォーマンスと自分のドライビングに自信を持てるようになり、ここでもイメージどおりの走りができた」というポンス。同じランサーエボリューションを駆るガリが冷却水漏れ、ソラがギアボックストラブルのため、SS1で早々にリタイアしたことも有利に働いたが、滑りやすい舗装路面での速さと安定性は群を抜いている。

マクシェア、マクレーとの2位争いを制する
 マクシェアとマクレー、インプレッサ同士の2位争いは、ステージごとに順位を入れかえる場面があったほど激しかった。しかし、レグ3でマクシェアが3つのステージウィン。マクレーを突き放した。ポイントを27と伸しランキング2位に浮上したポンスだが、最終戦はスキップイベント。オーストラリアでタイトル獲得の可能性が残っているのは、29ポイントのパーソネン、27ポイントのマクシェア、26ポイントのマクレー、そして20ポイントの新井となった。

奴田原、初めてのコルシカで5位と健闘
 奴田原文雄(三菱)はまったく経験のないラリー、しかも難易度の極めて高いコルシカで自己ベストとなる5位でフィニッシュした。「ことしは学習の年。できるだけプッシュすると同時に、ペースを守り、絶対にミスをしないようにしています。これが良かったのかもしれないですね」と話した。全日本ラリー王者は確実にPCWRCを自分のものにしてきている。

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