違法な手段で得た証拠、認定判断にばらつき(下)

捜査機関による違法な手段での証拠収集は厳しく制限

 一方、裁判所は、検察や警察などの捜査機関が違法な手段で集めた証拠は、個人が収集した場合とは違い、ほとんど証拠として認定していない。

 2007年に改正された刑事訴訟法では、「適法な手続きによらずに収集した証拠は、証拠として認めることはできない(第308条の2)という規定が追加された。これは、捜査機関を念頭に置いた規定だが、これにより、捜査機関が違法な手段で集めた証拠は、証拠能力がさらに厳しく制限されることとなった。

 その代表的なケースが、金泰煥(キム・テファン)前済州道知事による選挙違反事件だ。

 検察は2006年、済州道庁に対する家宅捜索を行った際、令状に記載されていない事務室でも捜索を行い、これを根拠として金前知事を起訴した。

 これに対し、大法院大法廷は、「正当な手続きによらずに収集した証拠は、有罪を認めるための証拠と見なすことはできない」として、無罪判決を言い渡した。これは、「毒のある木(違法な手段で集めた証拠)に実った果実にも毒がある」という理論を尊重した結論だ。

 しかし、国家機関が違法な手段で集めた証拠を、完全に排除すべきか否かについては、法曹界でも意見が分かれる。金前知事の裁判でも、大法院の一部の裁判官は、「違法性の程度を十分に見極め、証拠能力を認めるか否かを判断すべきだ」という意見を述べた。

 違法な手段で集めた証拠を排除するという原則は、米国では1914年に連邦最高裁判所が示した判例が、現在も厳格に適用されている。一方、イギリスやカナダ、ドイツ、日本などでは、こうした原則を受け入れながらも、具体的な適用の範囲にはばらつきがある。米国でも昨年、連邦最高裁が、「警察官の違法行為や不注意によって収集された証拠であれば、すべての証拠を排除してはならない」という、例外を認める判決を下している。

孫振碩(ソン・ジンソク)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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