Monday, September 27, 2010

尖閣諸島の問題で思うこと

尖閣諸島を巡る問題で、民主党議員73人が抗議声明を出したり、超党派議員による「国家主権を守るために行動する議員連盟」が発足したり、船長を釈放したことに対するナショナリズム的反応ばかりが目立つ。 

正直、言葉は悪いけど「アホか」と思う。同時に、日本にとって極めて危険な傾向だと思う。 

孫崎享氏などによれば、そもそもあの辺の海域は日本・中国・台湾それぞれが異なる見解を有しているセンシティブなエリアだから、各国はこれまで、何かあっても公権力の発動を極力控え、なるべく曖昧に対応してきたという。 
http://www.ustream.tv/recorded/9830995 

つまり、中国や台湾の漁船や活動家の船は同海域にこれまでもよく入ってきたわけだけど、そういう場合には日本の巡視船が直接取り締まるのではなく、相手国側に取り締まってくれと要請したり、拿捕するのではなく追い返したりと、そういう穏便なやり方をしてきたわけだ。戦争の多くが国境紛争から生じることを考えれば、それは無用な摩擦を避ける上で、賢明な「事なかれ主義」的対応だったといえよう。そして、中国や台湾もそういうやり方を共有してきた。 

ところが今回日本政府は、これまでの慣例を破って、中国の漁船をいきなり拿捕し、船長を逮捕・勾留した。それは本来、国際関係上大きな路線変更であり、それをやるなら日本政府は相当の覚悟と理由を持ってやらなければならないことだったはずだ。 

しかし、その後中国の抗議を受けて船長を早々に釈放した経緯を眺めていると、どうも日本政府にそういう意識はなくて、「え?なんで中国は怒ってるの?アソコはうちの領海だって聞いてたよ?」という雰囲気だ。要するに、重大な政治判断だという認識がないまま、それをやらかしてしまったのだろう。こういうのを、本当の平和ボケというのだ。 

こないだ映画祭のために出掛けた韓国と北朝鮮の国境線には、小競り合いとそこから生じ得る戦争の勃発を避けるため、幅2キロの非武装の緩衝地帯がわざわざ設けられていた。そのくらい、国境というものは注意深く取り扱わないと危ない地域なのである。でないと、しょっちゅう戦争の危険にさらされて、普通の生活を営むどころじゃなくなってしまう。 

だから議員や日本国民が真に問題にすべきは、「なぜ日本政府は安易に中国漁船を拿捕して、日中関係を不用意にぎくしゃくさせたのか」という点なのであり、「なぜ船長を釈放したのか」を問題にすることは、思い切りピントがずれているのである。 

そりゃあ、日本側からすれば菅さんや閣僚がお題目のごとく連呼するように「尖閣諸島は日本の領土であり、領土問題は存在しない」という立場なんだろうし、だから逮捕や勾留は当然だと言いたいのだろう。僕だって日本人だから、感情的にはその説に肩入れしたいところだ。 

でも、自分を観察して言えることは、僕も尖閣諸島が日本の領土だという確固たる証拠を持っているわけではないのに、日本人だからそう信じたがる傾向にあるということだ。実際、大半の日本人はそうではないか?たぶん中国人も同じだろう。つまり帰属意識は事実をまっすぐに観る目を曇らせる。 

だいたい、冷静に考えてみれば、日本ではみんながみんな日本の領有権を主張し、中国ではみんながみんな中国の領有権を主張するというのは、おかしな話なのだ。本当に両国の人々が事実をまっすぐに観ているだけなら、もっと国内でも意見が分かれるはずだから。 

そして、実際には中国や台湾は日本とは異なる見解を有していて、外交というのは相手のあることなんだから、日本がこっちの主張を駄々っ子のように唱えるだけじゃ埒があかないことも、中学生以上なら理解できるんじゃないか?実際、いままでは日本もあの辺の海域で「大人の対応」をしてきたわけだろう。 

そのことすら菅政権や国会議員が理解していないように見えること。それこそが本当に僕が危機感を覚えることであり、そんなお子さま連中に国の舵取りをされたのでは危なくてたまらない、意味の無い戦争もすぐ目の前だと、本気で恐怖心を憶えざるを得ないし、多少ブチ切れ気味にこんな文章も書きたくなってしまうのである。 

6 comments:

Anonymous said...
This post has been removed by a blog administrator.
Anonymous said...
This post has been removed by a blog administrator.
Kazuhiro SODA said...
This post has been removed by the author.
4:12 PM said...
This post has been removed by a blog administrator.
Kazuhiro SODA said...

コメントをくださるのはいいのですが、この記事に関するコメントは、本名を名乗っていただけますでしょうか。そうでないと、フェアでないし、不毛なので。

本名を名乗っていただけない場合は、申し訳ありませんが、こちらで削除させていただきます。

渡部一幸 said...

4:12PMと7:22PMにコメントを投稿したものです。
記憶を頼りにコメントを再現したいと思います。

〜〜〜

・4:12PMのコメント

重大な事実を見落としています。
今回の対応が通常と異なったのは、
中国漁船が海保の巡視船に「体当たり」をしたからですよ。
事態の経緯に関する「観察」がなっていないと指摘せざるを得ません。
それから、
尖閣諸島が日本の領土だという確固たる根拠を学んだ人は少なからずいるでしょう。

・7:22PMのコメント

(6:59PMの、
「貴殿はする中国漁船を観察したのか?
私は見ていないから何ともいえない。
海保は中国漁船がをしたと主張しているが、
現時点で100%信じることは出来ない(大意)」
という想田さんのコメントを受けて)

想田さん、冷静になって下さい。
想田さんの主張は、
「体当たり」がなかったことを前提しないと妥当性を持ち得ません。
「何ともいえない」はずなのに、

>これまでの慣例を破って、中国の漁船をいきなり拿捕し、

などと見て来たように言い放ってしまうのは、どう考えても迂闊です。
「ブチ切れ気味に」書き殴る前に、
やはりもう少し「観察」をするべきでした。

〜〜〜

以上、そっくりそのままかどうかはわかりませんが、
少なくとも主旨はこの通りです。
想田さんの対応には不信感が募ります。
この記事、そして6:59PMのコメントにおいて、
想田さんは致命的なミスを犯しています。
「体当たり」があったかも知れないという可能性を完全に排除した上で記事を書きながら、
しかしコメント欄では、「見ていないから何ともいえない」、
つまり「体当たり」はあったかも知れないし、
なかったかも知れない、という認識を披瀝する。
整合性が欠如しています。
それを糊塗するために、
ご自分のコメントを含めて削除したのではないのでしょうか。
匿名だから「フェアではない」というのは、
単なる言い訳のように思えてしまいます。

Post a Comment