平成3年(1991年)は、湾岸戦争の影響を受けた数字なので特殊な傾向を示しているが、「何らかの方法で自衛隊を支援する」「武力によらない抵抗をする」の数字が、右肩上がりであるのが一目で分かる。
その一方で顕著に減っている数字がある(自衛隊・防衛問題に関する世論調査)。「分からない」とする回答率である。昭和53年度には、全体の26.6%もあったものが、平成21年度には、10.1%に減った。
「分からない」層は、そのほとんどが、有事の時に、何らかの支援や抵抗をする側になっているわけである。
日本国民に、外国からの侵略や有事の心構えが少しずつ形成されているこがこのグラフをみたら分かる。頼りない「外交」のニュースを耳にするたびに、日本国民は、少しずつ腹を決め始めてきているということなのだ。
しかし、これは危険なことではないだろうか。外国から侵略されたらどうするかという問いに、何らかの抵抗をするという単純な答えをするのではなく、「分からない」と答える国民がたくさんいることが日本という国の特徴であり、魅力であると考える。言い換えると「弱さの力」みたいなものを哲学し、逡巡している姿こそが日本そのものではないだろうか。そんな日本の精神的土壌を失うことが、一番の国益の損失である。
だからこそ、日本の政治が実行する「外交」は、強くなくてはいけないのだ。「外交」自体が弱腰になると、国民自体が「弱さの力」を捨てて、武力で強くならなくてはいけないと考える。国民に有事の腹を決めさせるような「外交」を続ける政治は、間違っている。
領土は国家の礎で、その領土の上に暮らす国民の思考の量が国家の発展を促す。「目には目を、歯には歯を」と国民に言わせないための強い政治が動かなければ、日本は「分からない」と言えない、分かりやすい国になってしまう。それって、大国の思う壺じゃないだろうか。(中村修治)
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