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リクルート SUUMOのCMについて

4年前、素晴らしいMV作品が誕生しました。
丹下紘希監督が手がけたMr.Children「箒星」です。

Youtubeで検索したところ、韓国語字幕のものしかなかったのですが、
ご参考までに、ご覧下さい。



この作品の本来の姿は約16分にわたるショートムービーです。
「箒星」の初回限定特典としてDVD化され、当時大きな話題を獲得しました。
MVはそのショートバージョン。
全編はコチラです。





丹下監督の情熱と愛情が、
これでもかというくらいにぎゅっと凝縮された力作です。

丹下監督とは約10年前に出会い、
丹下監督ならではの映像表現力について、
あるいは、映像業界全体の地位向上についてなど、
様々なディスカッションを行ってまいりました。

この作品についても取材させて頂き、
いかに丹下監督が苦心してアイデアを具現化していったか、
現場での臨場感や膨大な作業のエピソードをお聞きし、感銘を受けました。

そういった経緯を知る者として、
いや、経緯など知らずとも、
現在放映中の下記のCMには、疑問を通り越し、怒りを感じます。

■リクルート SUUMO「心の声ストーリー」ショートムービー/CM




このムービーは、丹下監督のディレクションではありません。
「箒星」をてがけた制作チームも関わっておりません。

丹下監督ご本人がびっくりされておりました。
私も腰を抜かしました。

大昔から、盗用や引用、習作とパロディーなど、
オリジナルと、その類似性を問われる他者による表現について、
様々な議論がなされて参りました。

また、大昔から、
あからさまな盗作とはいわせないようアレンジしたり、
個別の表現を上乗せして上手く別ものに仕立てたり、
著作権法上に現れる「表現」の曖昧な定義を逆手に取って訴訟を逃れる工夫をしたり、
といったせこい悪知恵をフル稼働させた広告映像は山のようにあります。

一方、アイデアとは別立てされた「手法」という観点から推測するに、
コマ撮りアニメーションや、ハイスピード撮影したスーパースロー映像、
100万人が涙するであろう家族の物語の脚本などなど、
先駆者の活躍のおかげで誰もが発想し得る古典的かつ王道の手法へと成熟した表現もある。

どこまでがアイデアか、表現か、手法か、
倫理的にも法的にもはっきりと線引きできない部分があることも事実です。

* * * * * * * * * *

さて、ここから本題です。

「箒星」と「リクルート SUUMO CM」の類似性について、
このブログを見てくださっているみなさんは、どう思われますか?


両者を見比べた私個人の意見を述べます。

「リクルート SUUMO 」のコマーシャルムービーは、
あからさまに盗用であると考えます。

丹下監督の「箒星」を見ていなかったら、
ここまで類似性の高い、というか、そのまんまの表現手段を発想し得なかったと容易に推測されるからです。

ちなみに、ここで問題にしたいのは、
「パクリか否か」ではありません。

「パクリだ」、「パクリではない」といった、
ネットでの安易な論争や単なる暇つぶしのネタまつりにこの類似案件を埋没させたくはありません。

このCMのプランナーやディレクターがどのような心境でこの作品を作ったか、
「箒星」を見ずに、いちから発想したのかどうかに関しては、
ご本人たちにご意見を伺いたいので、分かり次第、取材を申し込みたいですし、
もし、関係者の方々がこのブログを見ていらっしゃいましたらば、
ご一報いただければ幸いです。

そういった制作者の思いや事情については、リサーチ不足なのでなんともいえませんが、
私が個人的に、大問題だと思うのは
リクルートという大企業が、
CMを請け負った大手広告代理店が、
知らなかったではすまされない、
率直に「盗用」であると推測される表現を、
なぜ、TV-CMとして堂々と放映しているのか、です。

日本の著作権法の曖昧さを逆手に取り、敢えて堂々と「盗用」したのか。
「引用」の範疇と捉え、よくあることだからと安易に制作・放映したのか。
よくあることではあるが、そんなことがよくあることに、疑問を感じないのか。
なぜ、「盗用」とはいわせない工夫なりアレンジなりを加えなかったのか。

本当に「箒星」を知らずに制作されたのか。

制作者のプライドや真意については、私はご本人たちではないので分かりかねますし、
それこそご本人たち同士が話し合うべき事柄であり、
傍観者である私としては、ここに言及することは避けます。

しかし、本件が著作権法違反を問う裁判のテーブルに上がった場合、
いくら「本当に知らずに作った」と主張しても、
誰がどう見ても「知らなかったら作れない」とジャッジするほどの類似性を伺える。

そのような危険な表現をなぜ、堂々と世に放ち、
癒し&ちょっといい話オーラを醸し出す特設WEBを公開するに至ったのか。

公共のメディアでこのような、信じ難い鈍感な行為が行われていることに、改めて戦慄しています。

「日々の音色」MVPEPSIのCMもしかり。

最近の日清の広告企画の迷走ぶりもしかり。

正気の沙汰とは思えません。
改めて、広告映像界の倫理感、マナーを、大真面目に問いたいという気持にさせられました。

しかしながら、本件に関しては、
冒頭で書いたように、私には丹下監督との絆があります。
このCMを作った方々とは面識がありません。

常に映像ライターという、
制作者ではない、第三者の俯瞰の目線より日本の映像文化を見続けてきた私としては、
冷静な、ニュートラルな目で両者を見くらべ、
上記の意見を書かせて頂いておりますが、
ともすれば、丹下監督に近い者としての感情的な影響から生まれた意見なのかもしれません。

現に私は今、傍観することがしのびなさすぎて、こうしてブログを書いています。

そこで、みなさんにお願いがあります。
みなさんのご意見を私にきかせて頂けないでしょうか。

このブログのコメントでもTwitterでもDMでも、
お知り合いの方々においてはメールでもなんでも結構です。

どう思うか、率直なご意見を伺えれば幸いです。



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[C28] 箒星とスーモについて

ツイッター経由でこちらの記事を知り、興味深く読ませていただきました。

感想は、「同じ手法使っちゃってるね。」くらいです。
特に「盗作じゃねぇか!」とも思いません。

記事の中に「パクリだ、パクリではない、といった
ネットでの安易な論争」と書かれていますが、
パクり云々っていうのは、その程度の事だと思います。

あと、「知らなかったら作れない」っていう表現も
思い上がりだと思います。例え本当にそうだったとしてもです。

  • 2010-09-27 21:00
  • シモン
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  • 編集

[C30] Re: 箒星とスーモについて

シモン様

ご意見ありがとうございます。

> 感想は、「同じ手法使っちゃってるね。」くらいです。
> 特に「盗作じゃねぇか!」とも思いません。

なるほど、論じるには値しない程度のことというご意見でしょうか。

> あと、「知らなかったら作れない」っていう表現も
> 思い上がりだと思います。例え本当にそうだったとしてもです。

こちらはすいません、なぜ、そう思われますか?
もう少し詳しく教えて頂ければ幸いです。

今後ともよろしくお願い申し上げます。
  • 2010-09-27 21:20
  • nagako
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[C34] Re: Re: どうでしょう

Uさま

> ご丁寧にコメントを頂き、ありがとうございます。
> とても冷静なご意見で、参考にさせて頂きます。
>
> ユニゾン的コレオグラフの手法は確かに多様化されていますよね。
> 私も同意見です。
>
> > 「帚星」では、“完全に複製化された分身達”はそれぞれ、別の役者さんが演じているのですね。声も違うし、佇まいも違う。あくまで、“同じ格好をしている複数の同性”達。
> > そこでわたしは、あ、あれ(CF)とは、違う。と、思ったのも、正直なところでした。
> > CFの方のポイントは、ひとりの内面を複数の分身が表現する・・・のを「本人がやっている」ことにあるとは思います。
>
> 仰るとおり、その点の差異が双方の論旨になりますね。
> 双方に是非、話あって頂きたいと考えます。
>
> 私はあくまでも傍観者として上記意見を書いたので、
> 私自身も双方の意見を平等に見守り、また報告させて頂きたいと考えております。
>
> 貴重なご意見、ありがとうございました。
> 今後ともよろしくお願い致します。
  • 2010-09-27 22:22
  • nagako
  • URL
  • 編集

[C35] Re: タイトルなし

ご意見ありがとうございました。

温かく見守りたいと思います。

私自身も、
盗用か、あるいはちょっと引用したか、よくあることとしてスルーされるべき事態か、
をジャッジしたい、ということではなく、
私のような第三者が、これおかしくない? という問題意識を持つような広告が、
世に平然と流布しちゃっていいのかどうか、その良識を問いたい、ということなんです。

ジャッジするのは私じゃなく、ご本人同士の話合いや、法律でしょうから、
私にできることは、広告代理店はよくあることとしてこういった事例をいつまでよくあることの範疇に留めているのか、そこに釘を刺すまでです。

今後ともよろしくお願い致します。
  • 2010-09-27 22:35
  • nagako
  • URL
  • 編集

[C36] Re: タイトルなし

R君

ご意見ありがとう。
元気?

今までも、MVにせよCMにせよ、こんなことがたくさんあったけれど、
悪意がなかった場合がいちばん怖いんだよね。

この両作品の類似性をきっかけに、
私は、制作者の良識を問いたい。

もう、なあなあには出来ないよって、伝えたいんだよね。
僭越ながらも。


  • 2010-09-27 22:39
  • nagako
  • URL
  • 編集

[C37] 管理人のみ閲覧できます

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[C38] うーん

どうなんでしょうね。
箒星も最初見た時ミシェルゴンドリー の Chemical BrothersのPVのモロパクリじゃねーかと思いましたが。
斬新なアイデアはこういう事はよくある事だと思いますし、
いちいち気にしないというのが大半だとは思います。
まぁ日々の音色はあまりにもそのまんますぎだとは思いますが・・
  • 2010-09-27 23:17
  • mmm
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プロフィール

ながこママ

Author:ながこママ
映像ライター林永子(はやし・ながこ)。月刊コマーシャル・フォト等で日本のMVに関する記事を連載中。元Tokyo Video Magazine VISの編集長。スナック永子のながこママ。講演・講師もやってます。

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