|
☆★☆★2010年09月26日付 |
|
これほど相手の思うツボにはまった事例も珍しい。それは先方の役者が一枚上だったというより、リングに上がる前に戦意を喪失したこちらの不甲斐なさに問題があった▼国内法で起訴されるはずだった中国漁船の船長が検察の政治的判断≠ノよって釈放されるという奇っ怪な解決法が、多少なりとも日本の将来にプラスになるのなら別にして、まさに事なかれ主義の産物であるこの卑屈外交は今後に禍根のみを残した。船長の無罪放免は、漁船が日本の領海を侵犯したことにもならず、巡視船と乗組員の安全を脅かしたことにもならず、それはそもそも尖閣諸島の領有権が中国に属するからだと認めたに等しい▼そんな基本的な事柄を政府が弁(わきま)えていなかったとは思わないが、戦略的互恵関係やらを大事にするために、国益も放棄したということだろう。互恵どころか、相手を利するだけで一得もないこういう結末を招いた日本政府の弱腰は靖国カードの上にもう1枚外交カードを与えた▼日本は脅せば言いなりになるというこのカードは今後、あらゆる交渉の場で使われるだろう。すでに相手はカサにかかって損害賠償と謝罪を求めてくる始末。ビデオテープを世界に公開しておれば、こういう難癖(なんくせ)をつけられることはなかったのだ▼レア・アース(希土類)の輸出を滞らせたり、邦人4人を拘束したりと、目的のためには手段を問わない隣人の手の内を十分に知りながら、おめおめとその術中にはまる政権の無策にはいずれ超低支持率の判定が下されよう。 |
|
☆★☆★2010年09月25日付 |
|
いくら抗弁しようと、これは中国の恫喝(どうかつ)に屈したということである。尖閣諸島沖の日本領海で不法操業し、追跡した巡視船に体当たりして公務執行妨害容疑で逮捕された中国漁船の船長を、那覇地検が処分保留のまま釈放するという国辱的行為に怒りを覚えぬ国民はいまい▼国内法に照らして粛々と対応するという政府の方針が、地検単独の判断で反古(ほご)にされるということはあり得ず、これは政府の意向に沿って決定されたと断じてよかろう。いくら三権分立に基づく司法の独自性が尊重されるとはいえ、領有権に関わる重大な問題を地検の判断のみに委ねることはできない。公務を妨害され、船体に損害を受けたという一件だけでも立件に価するのだ▼那覇地検の「わが国国民への影響や、今後の日中関係に考慮した」という釈放理由は、まさに語るに落ちたと言えよう。国益に関わるこれほどの高度な問題を地検が法律上ではなく、政治的に判断するというのはまさに国政を冒涜(ぼうとく)するもので、越権行為どころか犯罪に等しい▼地検はまた「船長の行為は追跡を免れるために取った行動で、計画性は認められない」と述べたが、裁判によって明らかにされる前に地検によって「判決」が下されるのでは、裁判の存在理由などなきに等しい。仙石官房長官は地検独自の判断との認識を示したというが、白々しさにあきれる▼ついに日本は中国の属国と化した。主権も民族の精神もすべて放棄し、相手の言いなりになる政府など不要、有害。即解散すべし。 |
|
☆★☆★2010年09月24日付 |
|
こんな氷河期に入って果たして日本航空は再建できるのだろうか?と疑問を抱かずにおられない。氷河期とは安売り航空の登場と競争の激化を指す。これが常態化したら、国内航空運賃も引きずられて増収など困難になるからだ▼先日中国の春秋航空が、茨城空港発着上海行き片道航空券をなんと4000円で発売し話題を巻いたが、今度はマレーシアに本拠を持つアジア随一の安売り航空会社「エア・アジア」が羽田発クアラルンプール行き片道航空券を5000円で売り出し、これまた航空運賃の怪≠ノ火をつけた▼海外の航空運賃は早くから値崩れしていて、「上代」で買わぬのが常識となっているが、先日の某旅行会社の新聞広告を見ていたら、その安さには驚くというよりあきれ果ててしまった。アジアはむろんのこと、欧米行きでも国内旅行よりはるかに安いのである。まさか損をしてまで催行すまいから、これまでの運賃は割高だったと証明しているようなものだ▼安売り航空は機内食も有料、掃除は乗務員が担当などの徹底した合理化で経費を削り、中にはイス席以外に一部立席を設ける会社もあるほど。まさに「天井桟敷」が機内にも登場する時代とはなった。しかしサービスが犠牲になっても、安全まで犠牲になっては元も子もない▼日航も全日空もこれからはこうした時代背景を考慮しなければならず、値下げした分機内サービスの有料化などで経費をまかなうようになろうが、安売りというこの向かい風に立ち向かうには相当の苦労は避けられまい。 |
|
☆★☆★2010年09月23日付 |
|
何とも理解できないのが、障害者団体割引制度を悪用した郵便不正事件である。濡れ衣を着せられた厚労省の女性局長が、結局は無罪と認められたのは喜ばしい限りだが、一時にせよ無実の罪によって逮捕され仕事だけでなく、名誉まで失わせた検察の責任は重大だ▼郵便料金割引制度を利用して、家電量販会社のダイレクトメールなどを格安発送していた障害者団体に対して、制度の適用を認める偽証明書を作成したとして村木厚子局長ら4人が虚偽有印公文書作成、同行使罪に問われて逮捕、起訴されたこの事件は、村木局長から指示されたという部下の証言がウソだったことが分かり、同局長の無罪が確定した▼この事件の謎は、なぜ部下が偽証したのかという1点にある。本人は後に単独でやったと証言、村木局長の関与を否定したから、苦しまぎれの責任転嫁と一応理解はできるが、偽証明書を作成した動機と過程が不透明すぎる▼こういう場合、収賄、恐喝、上からの強制などさまざまな原因が考えられるが、検察当局の強引な取り調べやずさんな裏付け捜査、データを改ざんした特捜検事の逮捕など、検察に対する信頼が損なわれた点だけは注視されても、解決の仕方が何か奥歯にモノがはさまったような印象を否めないのだ▼当方は、村木局長の逮捕が報じられた時点から彼女の無実を信じていた。この顔は悪事ができる顔ではないと判断してのことだ。その通りだったが、それだけにこの事件の裏に潜んでいる真実を知りたい希求に駆られてならない。 |
|
☆★☆★2010年09月22日付 |
|
衝突事件で逮捕された船長の釈放を要求する中国政府は、露骨な揺さぶり作戦で波状攻撃をかけてきているが、それに乗せられて日本政府が妥協するようなことはあってなるまい。特に自戒すべきはまずメディアが動揺しないことだろう▼上海万博青年団の受け入れ延期、1万人の観光団訪日中止、両国高官の相互訪問延期などなど中国政府は矢継ぎ早に日本側への対抗策を打ち出している。民間の自然発生的なデモはあるにしても、官製デモが組織されているのも否定できないだろう。いわば日本に脅しをかける常套手段だが、それによって「日本の法に照らして粛々と進める」方針が崩れたら相手の思うつぼ▼それは今後に必ず禍根を残すことになるから、断固として一歩も退かぬ姿勢を示すことである。尖閣諸島は日本の領土であり、その領海を侵犯して操業することは許されない。まして停船命令も無視し巡視船に体当たりするなど二重の罪であり、船長が起訴されるのは当然である。以上の基本が守られないと日本は主権を持たない精神的最貧国に成り下がるだろう▼ところが融和円満を旨とするわが日本人は、このままでは両国の友好関係が損なわれかねないと「杞憂(きゆう)」し、オタオタとする。中国の教授に「起訴なら深刻になる」と言わせている新聞もあるが、なんの参考になるだろう▼さいわい「毅然とした対応をせよ」というのが国内世論だが、それが常識というものだろう。ともに対等な土俵に上がってこそ、真の信頼関係が築かれるのである。 |
|
☆★☆★2010年09月21日付 |
|
「インセンティブ」を辞書で引くと「誘因、動機、刺激」などの意がある。経済用語としては、社員のやる気を引き出すための奨励金や特別ボーナス、成功歩合などを意味するようになったが、さて、菅改造内閣は国民にどんなインセンティブを用意しているのだろうか?▼手っ取り早く菅さんの掲げる「雇用」創出のためのそれを考えてみたい。「ネコの手も借りたい」ほどの忙しさという状況設定のためには、まずモノが売れなければならない。不況下でも必要な物は買う、売れるのが通常だからそれは除き、生活のグレードを上げるための出費が増えるような刺激が必要だろう▼いわば「ちょっぴり贅沢」の欲求を起こさせることだが、それには可処分所得を増やすことが条件になる。しかし現役はともかく、非就労層の所得が増えることはごく一部をのぞいてあり得ない。だからこそ、まず企業を儲けさせ、給料を上げさせて税収を増やすことが大前提だ▼可処分所得が増えれば金を使う。景気が良くなる。雇用も増える。するとさらに景気が良くなる。こうして勢いがついたところで、おまちどおさま、年金も預金利息も上がり、OB、OGたちにも分け前がもたらされる。こういう設計書があれば、まず政府は何をすべきか自ずから解答は出よう▼究極の景気浮揚は時限的でもいいからあらゆる税を減免することである。一時的に減収にはなるが、やがて逆転する。そういう意味でもたばこの値上げなど愚策もいいところだろう。緊急避難的税制が必要な秋である。 |
|
☆★☆★2010年09月19日付 |
|
「ご予算に応じていかようにもご調製いたします」という文言が忘・新年会シーズにはかならず登場するが、尖閣諸島近海における中国漁船衝突事件報道も、中国国内では政府の予算≠ノ応じて調製≠ウれたのだろう▼というのも、北京の日本大使館前で抗議デモをしていた民間団体の1人が「わが国の漁船にわざと衝突させながら船長を逮捕するとはけしからん」と息巻いていたからである。そう信じ込んでいるのならそれは抗議したくもなろうというものである。われわれだって、中国漁船が突っ込んできたという報道を信じるからこそ憤るのだから▼なにせこの事件には一部始終を映した映像がテレビなどを通じて配信されたこともなく、日本側は日本のメディアが報じたとおり信じている。だから逮捕された船長自身が自分の方から衝突したと認めているという点も信じて中国側の非を鳴らしているのだが、中国では巡視船の方からぶつかったことに統一≠ウれているという▼おそらく海上保安庁は当時の様子を逐一ビデオに収めているはずだから、それを公開し、国際的に公平な判断をしてもらうことが望ましい。でなければ「やはり日本人は○○だ」といった負のレッテルをべたべたと貼られるだろう▼この手の情報操作は中国に限らず、非民主主義国家得意の詐術(さじゅつ)≠セが、それを信じるのも、信じたふりをするのも勝手としても、一緒になって「船長を帰せ」と叫ぶあたり、羨ましい一面ではある。 |
|
☆★☆★2010年09月18日付 |
|
菅改造内閣の外相に前原誠司国交相を充てたのは、尖閣諸島近海で起きた中国漁船衝突問題で中国側とのタフネゴシエーション(強硬交渉)を念頭に置いたものだとしたら、菅首相の人事考課に座布団1枚を進呈したい▼この問題で丹羽中国大使を真夜中に呼びつけて抗議するという中国政府の非礼、非常識、傲慢無礼な態度に国民の多くは憤りを覚えたはずだが、仙石官房長官が述べた言葉が「遺憾」というのだから、相手はさらにカサにかかるのである。抗議するのは大切な巡視船にキズをつけられたわが国の方なのである▼もっとも外務省も型通りの抗議はしたし、丹羽大使も中国政府に対して、この問題は日本の国内法で対処すべきものであり、ガス田開発の交渉も別個に切り離して進めるべきと申し入れたが、国内から弱腰として攻撃の矛先が自らに向かうことをおそれる中国政府は、さらに攻撃の手を緩めないだろう▼こういう時、相手に対して堂々と自国の立場を主張し、一歩もひるまない態度が必要であることは言うまでもない。だが、戦後の日本外交はひたすら相手のご機嫌取りに終始し、国益というものを二の次に追いやってきた。それが習い性になってしまい、「遺憾」ですますのは「いかん」のだ▼前原さんは民主党代表時代、中国の軍事的脅威を指摘して中国政府から抗議されると「率直にモノを言わない友好は砂上の楼閣となる」とはねつけた。これだけ骨のある閣僚が他にいるだろうかと思うからこのキャスティングの妙に拍手を贈ったという次第。 |
|
☆★☆★2010年09月17日付 |
|
「介入」とうう文字はいい印象を与えない。「文句をつける」「口を出す」「ちゃちゃを入れる」といった、不愉快ではた迷惑な行為が歓迎されるわけがないのだが、この介入だけは違った▼政府が15日、6年半ぶりに踏み切った「為替介」がそれで、目的はむろんこれ以上の円高を阻止するためだ。代表選が終わった翌日のタイミングを狙った演出効果もあって、サプライズと受けとめられている。投入額は1兆円とも2兆円とも言われるが、思い切った決断に市場も反応し、一時82円台まで上がった円は85円台に振れた▼野田財務相の指示を受けて日銀が動き、日米欧で円売りドル買いを単独で展開した結果、円は急騰から一転して円安基調となった。これが輸出産業の追い風になるという期待も出て、株価上昇の効果もあった。やはり崖っぷちに立てばこそ決断も固まるようだ▼ただ、この介入がどれほど効力を保つかは不透明である。日本が円安を望むのと同様、欧米もドル安やユーロ安を利用して輸出による景気回復を目指しているだけに、日本単独のこの措置には抵抗があるはずだからだ。そういう背景を抜きに、流れがどう変わるか予想するのは難しい▼この介入を産業界は「恵みの雨」と受けとめているが、なにせ「人工降雨」だから持続性に問題がある。実際、円安は市場が一服後小幅ながら円高に戻った。こういう神経質な動きは、政府日銀の「お手並み拝見」というところだろう。なまなかな対応は逆効果になるから、毅然と行うべし。 |
|
☆★☆★2010年09月16日付 |
|
東京で開かれた柔道の世界選手権で日本が「本家」の復権を強く印象づけた。男女合わせて過去最多の金メダル10個を獲得、男子が金メダルゼロに終わった前回大会とは対照的な大躍進を見せたからである▼開会前は日本人選手の活躍を正直まったく期待していなかった。下馬評と異なって裏切られる場面がこれまで実に多かったからである。特に重量級において。確かに東京五輪で神永がヘーシンクに敗れこそしたものの、以後も本家の面目はずっと保ち続けられた。しかし次第に最強と同義の無差別級で勝てぬようになり「それだけ柔道が国際化した証」という自己弁護を聞くのが辛くなったのも事実▼国内の大会では圧倒的に強いのに、国際舞台となると十分に力量を発揮できない選手がなぜか重量級に多く、今大会もそのクラスに出場する選手の顔ぶれを見て、不安の方が先にたっていた。だが、まったく「無印」の選手が金を次々と手にしたのにはビックリ▼まさに「金星」と言っていい、無名選手たちの予想外の活躍を見て、連日テレビにかじりついた。こんなことは絶えて久しいことである。合計23個のメダルを獲得するというこの躍進は、ルール改正で正攻法が有利になったことと、同じ階級に2人を出せるようになったことが追い風となったらしい▼注目や研究をされなかった分だけ、無名選手たちがのびのびと戦えたのもプラスとなった。実力はあっても「試合度胸」という精神力に欠けると、実力は十分に発揮できないもので、本家の今後は精神力の鍛え方が試金石になるだろう。 |
|