「ぁ、うあ、…ひぁ…!!」
ぐちゅ、と卑猥な水音だけがこの耳を犯していく。膨張した熱が自分の中へと侵入して、蹂躙していくのをただ臨也は抗うことも出来ず受け入れた。
ベッドに横になった静雄の、綺麗についた腹筋に手をついて臨也は必死に理性をかき集める為に唇を噛み締め獣染みた吐息をゆっくりと吐いた。どうせそんなちっぽけなもの、すぐに脱ぎ捨ててしまうことはわかっていたけれど。
この、内臓を圧迫されるような他人に体を暴かれる感覚は未だに慣れることが出来ない。自然と震えてしまう背中にはびっしりと汗が浮いていた。
静雄の骨張った長い指が臨也の腰を掴み、乱暴に下から突き上げる。突然の刺激に反応しきれず思い切り背を反らして喉を晒してしまう。勃ち上がった自身からは留まることのない先走りが溢れだし静雄の腹を汚していた。
「っふ、ぁああアッだめ、だめシズちゃッ、あ」
「何が、っは、駄目なんだよッ……!」
「ひぁ、ふ、あああっ!」
ぴしゃり、と尻を叩かれて、その痛みに緩みかけていた後孔がまた引き締まる。ひりひりとした痛みが後を引いて思わず涙が浮かんだ。
その涙に気付いたかどうかはわからないが、静雄は下から荒い息を吐く臨也を見上げ唇を弧の形に描くと、更に強い力でまた叩き始めた。皮膚を打つ音が淫靡な水音と共に響く。
「っあ、…いだっ、…い…叩かないで、ぇっ……!!」
「あ?何言ってやがんだ、手前のケツが緩すぎんのがいけねえんだろ?臨也くんは色んな男に抱かれるから淫売女みてえにガバガバなんだよなあ、ここが」
「ちがう、ちがうもんっ…ひあ、…っ」
静雄のものをくわえ込んだまま乱暴に何度も叩かれ、嫌でも締め付けてしまう。しつこく尻を打つ掌から逃れる為に体を捻ってみても、結果静雄のものが中で擦れて快楽に喘ぐことしか出来なかった。
痛みに涙を溢しながら、それでも器用に快感を拾っていく自分に嫌気が差す。痛い、やめてと抵抗しつつももっと叩いて欲しいとでもいうように腰を動かす自分がいた。変態、淫乱、なんて浅ましい。頭に浮かんだ雑言にさえ反応する自身が憎らしくて仕方なかった。
痴態を晒して更に興奮する臨也に、静雄はただ笑って尻を打つ手を止めた。そして臨也の手首を掴み既に痛いぐらいに勃ち上がっている臨也自身へと誘導させる。そして握り込ませると、優しく囁いてみせた。
「ほら、自分で扱いてイけよ。後ろは俺が突いてやるからよ」
「ぁ、ッア…ん、んん、シズちゃ、」
箍が外れたように、柔順に言われたまま自身を上下に扱き始める。恍惚な表情を浮かべた臨也は言われてもいないのに片手で自分の硬く主張している乳首へと手を伸ばし弄り始めた。
こうなったらもう、臨也が理性を手放したことは一目瞭然であった。ほくそ笑みながら、静雄はわざと緩く下から突き上げてやる。するともどかしいのか泣きそうに顔を歪めた臨也は、腰を揺らして自身を扱く手を強めた。
「シズちゃん、み、見て、っアア、…おれ、…」
「ああ、見てる。手前が後ろ突かれて女みてえに自分で胸弄りながらイっちまうのを見ててやるよ」
「ひぅっ、あっ、ああああっア!!シズち、ゃ、ん、あっ、ひ…」
そうだ、下らないプライドなんて捨てちまえ。全部捨てて快楽に溺れてただ喘いでいればいい、そうすれば楽になれる。理性なんて、セックスには無用なのだ。
静雄はひたすらに自分の上で乱れる臨也に追い討ちをかけるように突き上げては言葉で辱しめていく。そんな屈辱に耐えながらも言葉さえも感じてしまう臨也は白濁を散らしながら、静雄のものをきつく締め付けては抽挿を促した。
「っは、ケツ締めろ、よっ…。イけねえだろ、俺が」
「っんア、叩か、な、いでったらぁッ!ひんっ、」
恥辱にまみれながら、静雄の甘い暴力を受けまた自身が硬度を取り戻す。散々に叩かれた尻を今度は妙に優しい手つきで揉みしだかれるともうそれだけで再び達してしまった。飛び散った精液は静雄の顔にまで飛び、途端に不機嫌そうな顔をされる。
「っ……ん」
視線に促され、精一杯体を伸ばして静雄の顔の精液を舐め取っていく。ひくついた後孔からごぷりと粟立った静雄の精液が溢れ、少し身動ぎするだけで流れ出てしまいそうだった。
口内に青臭い味が広がる。自分の精液なんて美味しい訳がないじゃないか。涙目になりながら無理矢理静雄の鼻先についたそれを犬か猫のようにちろちろと舐め取った。
は、とその動作を見て鼻で笑った静雄は、褒美とばかりに臨也の唇に噛み付いて乱暴に今しがた精液を染み込ませたばかりの咥内を蹂躙し始める。全て投げ出してしまいそうな荒々しい口付けに背筋がぞくぞくした。
「ッア、ぁ……ふぁあ」
唇を離すとどちらのものかわからない唾液が二人の間に伝って、銀色に光って零れた。どこかぼんやりとしていた臨也は、静雄が僅かに腰を揺らしただけで夢から汲み出されたようにハッと目を見張り小さく喘ぐ。そしてまた自ら腰を揺らし、奥へ奥へと厭らしく快楽を求め始めた。
「あ、あっあ、ひあっ!」
「手前ばっか気持ち良くなってんじゃねえぞ」
「ひぅん、あっご、ごめ、」
そそり立つ性器を器用になぞられては堪らない。ぶるりと背を震わせ再度吐精した臨也の腰を掴み、律動を再開させる。ごぷりと音を立てて容易に静雄のそれを呑み込んでしまう其処に物足りなさを覚えて、静雄はまた掌で白い尻を叱りつけた。
既に先程までの痛みに赤くなり始めた皮膚をまた叩いていく。臨也はその痛みに耐えきれず瞳に涙の膜を張りながら悲鳴を上げた。
「い、たいってばあ!ぁ、ダメッ…またイっ…ちゃう!」
「痛いのがいいんだろ?ドMの臨也くんよぉ。あ?こんなに叩かれて痛いのにイっちゃうのかよ?おら、ここがいいんだろ」
「ふぁ、っ、そこ、そこが、いい、のぉっ…!しっ、あ、シズちゃ、」
ず、と深いところを突いてやればそれだけで何度も断続的に精を吐き出す。そのあまりに浅ましい姿に欲情しきっている自分もまた浅ましい。そう思いながら静雄はきつくなった結合部の締め付けに短い息を繰り返して、臨也の中で果てた。そして衝撃に薄い胸を震わせ此方に倒れ込んできた臨也の瞼に小さく口付けてやる。
ようやく終わりを告げた性交に、肩で荒い息を繰り返す。深い眠気に引き摺り込まれようと瞼を閉じる臨也の中から自身を抜いて、皮膚が赤くなった尻をそっと撫でた。びくりと反応を示して睨まれる。
「っは……痛い、んだけ、ど」
「わりィ」
手前があんまりにも良い反応するからよ。言い訳にもなっていない静雄の言葉に、臨也は何か言いたげに唇を開いたが、やがて眠気には逆らえないらしく再び微睡み始めた。下ろされた瞼の奥に、瞳に恍惚の色を滲ませていたことを静雄は知っている。
染みる愛をあげよう
(君が満足するまで、さぁおやすみマゾヒスト)