2010 年
9 月
23 日
「気にかける」下町の暮らしに、行方不明高齢者はいない
〜暑さ寒さも彼岸まで。さぁ!活動の秋に突入です〜
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今年の夏のあまりの暑さに、濡れタオルを首に巻いて気化熱を利用した「涼」を身にまとって自転車で走り回っていたある日、新兵器のネッククーラーとやらを見つけました。便利なものがあるじゃないか、とばかりに買い求め、こりゃ爽快!とばかりに首に巻いてまちを走り回っていた(写真右)ある日、すれちがった犬が同じものを首に巻いているではないか!(;一_一) 翌日から濡れタオルに戻りました。 しかし、本当に季節というものは不思議です。昨日までのあの暑さはどこへやら。急などしゃ降りの中、浅草にあるお寺さんにお墓参りに出かけましたが、なんと涼しい!雨でも嬉しーい! その帰りに、この6月から新たな暮らしを始めた市橋の義姉の家に寄りました。その暮らしふりを見ていろいろ考えるところがありました。
20歳で呉服屋の家に嫁いできた義姉は、店と従業員、賄いの方たちに目を配り、のちには高齢になって同時進行で倒れた市橋の両親、そして脳梗塞で下半身不随、嚥下障害になった夫を抱えて切り盛りをしてきました。一時期、一つ屋根の下に3人の介護を必要とする病人を抱えていました。市橋の両親を看とり、夫の介護も16年間。その間に、店を閉じ、店兼住居を売って近くのマンションに移り住みました。そして兄が亡くなった後、一人暮らしには広すぎるとマンションを処分し、以前店の倉庫として使っていた家屋を手直ししてこの6月に移ったところです。
下町でよく見かける道路に垂直に面した3階建て。つまり、家からドアを開けて一歩足を踏み出したところが即公道、といった造りです。1階はガレージのみ。その脇のドアを開けると寺田屋の階段状態。2階はトイレ、お風呂、台所と食堂、そして仏間の和室。そこからまた階段で3階に。タンスなどの収納家具を置く板の間と寝室。これまで広々としたところに暮らしていた義姉にとって、階段と格闘する毎日はさぞかし大変かと思ったら、「この夏は暑くて、日課の上野のお山のお散歩はやめにしたのよ。その代わり、荷物の整理に明け暮れて階段の上り下りで力がついたわ」と元気な70歳。それこそ、健康づくりに余念がありません。階段に手すりがついていました。元気なものだから介護保険のお世話にはなら(れ?)ず、お風呂や階段の手すりは自前でつけたとか。「何かあってからでは遅いから。ここで暮らせなくなったら、もうその時はその時よ。それまではこの階段をリハビリだと思って暮らすわ」と。
マンションと比べてどうか尋ねると、「朝、お洗濯に3階のベランダに出るでしょ。お向かいとお隣りと洗濯しながら話ができるのよ。下の玄関開ければだれかしら顔をあわせるし、植木の水やりもお互いさまなのよ。シャコバにも毎日水まいてくれて笑っちゃうんだけど、嫌なら鉢をひっこめておけばいいから。お向かいやお隣りが何とはなしに、気に掛けてくれてね。ありがたいわ」と月島生まれの義姉はうれしそうに新しい暮らしを楽しんでいました。 そう、この「気に掛ける」というのがいいのでしょうね。「気に掛ける」― この町ならではの流儀です。「ここは、行方不明の高齢者は…」と言いかけるや否や、「あーや子さん、あるわけがないじゃない。代がわりするとわからないけど、こういう家の造りが続く限り大丈夫!」と。そうか、やっぱり住まいかぁ、と考えたお彼岸でした。
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