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  幻想郷訪問録 作者:黒羽
いつになくカオスになっております。完全なるギャクに挑戦した結果がこれだよ
ある執事の受難
side Wolter

 僕がこの幻想郷という世界に強制的に連れてこられて早一週間が経つ。その一週間の間に色々と驚くことがありすぎて、もう疲れてしまった。アーカードとかもうどうでもいいから、インテグラ様の下へ戻りたい。あそこの方がまだマシだった。

「ウォルター、姫を起こしてきてちょうだい。執事なんでしょう?」

 殺しても死なない。吸血鬼でもないのに不老不死。それに加えて人使いが荒い薬師、八意永琳。この一週間の間に三度も人を薬の実験台にしてくれたマッドだ。そして、姫様というのは同じく不老不死である自称月の姫、蓬莱山輝夜。姫というともっと働いているイメージがあったのだが、ここのは違うらしい。食う、寝る、遊ぶ。そして偶に同じく不老不死の焼き鳥屋と殺し合いをしているだけの駄目姫。略して駄姫か。中国の方に似たような名の妖怪がいたらしい。

「あ、姫様なら私が起こしてきましたのでウォルターさんは休んでいてください」

 そしてこちらに居るのは、紫がかった色をした髪で、ブレザーを着ている少女。と言っても僕の今の外見よりも少し年が上といったところだろうが。ここまではまあ普通だ。頭についている兎の耳さえなければ。付け根についているボタンから推測するに付けているだけなのだろうが、彼女も人ではないらしいので、おそらくその区別のためだと思われる。
 あまり友好的な雰囲気ではないが、敵意を見せればその場で殺せると思う。

「煙草煙草...っ!」

 煙草を胸ポケットから取り出して吸おうとすると、一本の矢が飛んできてフィルターだけを残して消し飛ばした。

「永遠亭は全面禁煙と最初に説明したはずよ? ああ、そうだわ。いっそ禁煙薬を作るのもいいかもしれないわね。二度と吸いたくなくなるような強力なのを」
「すみませんでした!」

 先日の新薬の実験がフラッシュバックし、ほぼ脊髄反射で頭を下げる。逃げようとして一度殺したのが拙かったのか、一日中さまざまな薬を投薬され続けて精神崩壊一歩手前に陥った。

「そう。わかったなら禁煙なさい。竹林で吸って火事になってからじゃ遅いから」
「......」
「返事は?」

 次の矢が何時の間にか取り出していた弓に番えられ、いつでも撃てるといった状態にされている。矢は糸を使っても止まらない。相手は殺しても生き返る。反抗するだけ無駄か。

「Yes,mam」

 ここは大人しく従っておく。あの黒羽という男も別の館で執事をやっているらしいので、そちらに行ってみたいとも思う。こちらよりも幾分楽そうだ。

「よろしい。あと、他のところに行きたいなんて考えるのはいいけど実行に移したら...そうね。投薬だけじゃなくて新しい拷問でも試してみましょうか」

 心が読めるのか、それとも考えればわかることか。

「ふぁぁ...おはようえーりん」

 上下ともジャージというだらしない格好をして、ようやく起きてきたのが、今僕の仕えている...否。仕えさせられている(・・・・・・・)主だ。お嬢様ならばあのようなだらしない格好は天と地がひっくり返ろうともしないだろう。ああ、だらしない。見るに耐えない。

「あら、姫様。もう昼前ですよ? こんな時間を早いと言えるのでしょうか。普通なら言いませんね」
「あ、ホントだ。もうこんな時間。で、朝ごはんは?」

 さりげなく糸を伸ばし、姫の体に刺して神経を掌握する。わけのわからない薬を投与されたせいで糸の精度が全盛期よりも格段に上がってしまった。今なら相手の生体電流から筋肉の微細な動きまで、手に取るようにわかる。

「痛っ!?」
「その前に一度鏡をご覧になってからの方がよろしいかと」

 操り人形のように糸を介して命令を送り、洗面所に強制的に向かわせる。先ほどは服装しか見ていなかったが、改めて見ると髪はボサボサで、頬には涎の跡が。仮にも姫であり、不本意とはいえ僕のマスターなのだから。もっとそれらしい格好をしてもらいたいものだ。

「異変の時にはもっと威厳があったのにねぇ...」
「過去よりも今。過去はあれでなくても、今現在はあんな状態なんだから」

 それに、僕は異変のことなど微塵も知らない。そのときに威厳があっても、今はその威厳の欠片も感じられないのだから仕方がない。

「耳が痛いわ。本当に。いっそのこと姫の世話係じゃなくて教育係に転任させましょうか?」

 どちらも勘弁願いたいというのが本音だ。いっそのこと別のところに就職したいくらいだ。元HELLSINGゴミ処理係をやっていたのだし、妖怪退治というのもできないことはないだろう。人里では手が足りていないらしいから、食い扶持に困ることはない。

「おっと、そろそろ洗面所に着いたか」

 糸を引き戻し、グローブの中にしまう。鏡を見れば自分の顔がどれだけひどいことになっているかわかるだろう。いい加減に姫らしい態度をとってもらいたいものだ。

「フフッ...」

 突如笑いを漏らす永琳に思わず身構える。一体今度は何をたくらんでいる。

「いえ、別になんでもないわ。嫌と言いながらもきちんと仕事をしてくれる。嫌と言いながらもきちんと姫様の世話をしてくれる。そんなあなたが面白くてつい笑っちゃったの。気を悪くしたかしら?」
「いや、特には」

 もともと執事としてやっていた仕事の量を増やしただけなので決して無理ではない。大して苦にはならないし、きちんと休憩の時間も設けてある。給金は未だに貰っていないので不明だが...それ以前にここで生きていくうえで金が必要なのかどうかすらもわからない。

「ああ、そうそう。ウドンゲは人間相手だと誰に対してもああだから気にする必要は無いわよ」

 ウドンゲ? ああ、付け耳の彼女か。誰が相手でもあそこまで警戒するのだろうか。四六時中警戒していて何が楽しいのやら。ただ疲れるだけだろう。

「ちなみにウドンゲの名前は、鈴仙・優曇華院・因幡。いい名前でしょう?」

 長くて覚えにくい上に変な名前だ。名付け親の顔が見てみたい。

「ちなみに名付けたのは私よ」
「かわいそうに」

 ハッと口を塞ぐ。咄嗟に出たひところだが、今のは明らかに失言だった。触れてはいけない一線に触れてしまった。
 弁明するか? いや、今更何を言っても聞かないだろう。既に注射器を指の間に挟んで恐ろしい表情で笑っている。もう手遅れだ。
 戦うか? 無謀だ。相手は不死。アーカードを相手にするようなものだ。
 逃げるか? それが一番だ。無事とまではいかないだろうが、竹林に逃げ込んでもう一人の不死に保護してもらえばなんとか!

「フフ...私の考えた名前が変? かわいそう?? いい度胸ねぇ......」

 何故だろう。とてつもなく大きな地雷を踏み抜いたような気がする。今すぐにこの場を逃げなければ、取り返しのつかないことになる。

「(精神的に)コロシテアゲル!」

 咄嗟に糸を編み込んで盾を作り出す。そして注射器がいくつも銃弾並みのスピードで着弾し、中身が散乱する。落ちた薬品が畳を煙を立てて溶かしている時点で、当たったら死ぬ。冗談ではなく本気で殺す気か。

「えーりn」

 回避した注射器が、顔を洗って入ってきた姫の額に見事に命中して、泡を吐きながら倒れる。今ので十分に人間に対しての有害性が確認できた。一刻も早く逃げるべきだろう。

「キャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

 効能としては、精神に以上をきたす薬品か。絶対に当たりたくない。

「フフ...ウフフ......よく避けたわねぇ...反応速度は上々。なら、これはどうかしら!? 薬膳『DCSドーピングコンソメスープ』!! 経口摂取でなく血管から直接摂取することでより強い効果を発揮するわよ!!」

 締まるところは締まっていて、出ているところは出ている女性にとっては非常に理想的な体形が、何かを注射器で血管に注入すると一気に...醜い上半身のみ筋肉ダルマに変貌した。下半身はそのままだ。非常に醜悪極まる。どうしたらあの美女がこんな怪物になるのかさっぱりわからない。

「姫様! 何事...って師匠何やってるんですか!?」

 救いの手が来たか?

「どいてウドンゲ! そいつ殺せない!!」
「何があったかは知りませんけど殺しちゃだめでしょう!?」
「そう...あなたも、あなたもそうなのね」
「ちょ、何がで「五月蝿い(やかましい)!! 少し...アタマヒヤシマショウカ...」
「キャラが混ざってる上に違いますよ!」
「やらないか?」
「いや、ちょっ!」

 ...今のうちに屋敷から一目散に逃げ出す。恥も外聞も知ったことか。命の方が大事だ。

「アッーーーーーーーーーーーー!!」

 とてつもない悲鳴が聞こえたような気がするが、竹を切り倒しながら逃げればいずれは竹林から抜けられるだろう。僕を生かすための尊い犠牲だ。仕方ない。

side out
久々の本編更新。あと数話ほどこれと似たようなのを書いてから、小5ロリ編に移行します。
次は大尉あたりでしょうか。

あと、少々報告があります。小5ロリ編終了後に、また番外編を書かせていただこうと考えています。またか! とお思いの方も居るのでしょうが、今回は少し違います。笑う男様の東方紅魔郷~Again meet you~とクロスをすることが決定いたしました。

あと余談ですが、最近サバゲーにはまってしまいまして...三万という大金を払ってスナイパーライフルを注文してしまいました。正直...すごく、大きいです。というよりも長いです。