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  幻想郷訪問録 作者:黒羽
ネタ暴走注意です。結構古いですから、果たしてわかる人が居るのかどうか...居るかな?
藤原&涼子暴走中
英国訪問録 六話
side Hujiwara

「困ったなー」

 銃声が聞こえたので部屋の外に出てみれば、大量の武装したゾンビみたいな奴の集団が。すぐに部屋に戻って結界を張ったら、すぐに本物の銃弾の弾幕が襲い掛かってきた。

「そーだねー」

 涼子も同じく結界の中に居るが、全く焦りを感じていない。それどころか欠伸までしている。

「さ〜っすが黒やん謹製の結界符。強力だね〜」

 ピリピリとした空気。しかしその中でもこうしていられるのは黒羽の製作した血液で文字を書き込んだ符のおかげ。これを使って結界を張った場合、なんでも通常の符の三倍の硬度を誇るらしい。赤だから? 赤だからなのか?

「うんうん。リアルの弾幕を食らっても何も問題ないみたいだし」

 そりゃ戦車の装甲に対して九バラじゃ役不足にも程があるだろ。いや、最悪核兵器でも耐えるかも。なんたって黒羽製だし。

「それにしても...」

 いい加減腹が立ってきた。絶対に弾が入ってこないとはわかっていても、ガリガリと精神を削ってくる。

「いい加減引きこもってばかりなのも、飽きてきた」

 両手を開いて前に突き出す。人の形をしててもありゃゾンビだ! 遠慮する必要はねえだろ!?

「おお、藤のんスイッチ入った? 入っちゃった?」

 涼子が俺の後ろに隠れる。やることがわかっているんだろう。

「当然入ったよ。俺はなぁ、最高に腹が立ってるんだよ。留学に来て、化け物に追い掛け回されて、ゾンビの集団に襲撃されて...俺の怒りが有頂天!」

 空間が悲鳴を上げるほどの高密度の神力と妖力が開いた両手に集まる。

「四分の一とはいえ、日本製とはいえ、神様に手を上げるたあどういう了見だゴルアァァァ!!!」

 マスパを両手から放ち、結界をぶち抜いてゾンビを消し飛ばす!

「あ、日本に帰ったら絶対ゆかりんにボコボコにされるフラグ」
「あんなババアなんて知るかボケェ! 今は心の健康が優先じゃあ!!」

 さらに出力を上げる。俺の精神を削った罰だ! 骨すらも残さん!

「アひゃひゃひゃひゃひゃひゃヒャヒャヒャ!」

 最高にハイって奴だぁ!! こんなにも気分がいいのは生まれて初めてだぜぇ!!

「どけどけー! 涼子様のお通りだ〜!」

 涼子は涼子で火符を片手に某モヒカンの人の如くゾンビを焼き尽くしている。

「わかってるじゃねえか涼子!」

 俺も通路に出て片方に向けてマスパを乱射する。狭い通路でこんなのを連射していいのか? そこは、アレだ。濃縮マスパだ。大して被害を撒き散らさない代わりに貫通力をかなり高めてある。そして、大体数が減ってきたところでいったん砲撃の手を止めて力を溜める。ゾンビ共が銃を撃ってくる。だが、

「遅い! 遅いわあ!! 銃弾が止まって見えるゼェ!!」

 本当に弾丸が止まって見える。これはいい、これは素晴らしい! 実にいい!! 最高にハイって奴だあ!!
 調子に乗って飛んでくる弾丸を一発残らず素手で叩き落す。手の先が音速を超えてソニックブームが発生したけど気にしない!!

「「ヒャッハー! 汚物は消毒だぁー!!」」

 一気に最高火力のマスパを放つ。極太のレーザーが通路を埋め尽くし、そのままゾンビ共を消し飛ばす。後ろは涼子が火炎放射器で容赦なく焼き尽くしている。

「明らかにやりすぎだろ。お前ら、人の家ってことわかってるか?」

 後ろから黒羽の冷え切った声がする。だが、今の俺に恐れるものなど何も無い!!

「神の威厳を見せ付けてやったぜ!」
「そうか」

 肩に手を置かれ、万力のように締め上げられる。

「結界の中で大人しくしていれば何事も無く済んだのに、わざわざ力を使って大暴れしたことに何か弁解はあるか?」

 ダラダラと冷や汗が流れる。恐れるものが無い? 冗談だ。一時の気の迷いだ。

「い、いや...その、アレだ。話せばわかる」
「そうか」

 フッと拘束の手が緩む。

「まあ、目撃者はゼロだしな。今回は大目に見てやろう」

 そりゃよかっ「グヘェ!?」

 顔に時計塔がめり込んだぞ!? 俺じゃなかったら頭蓋骨陥没で死んでたぞ!?

「大目に見るんじゃなかったのか!?」
「本来なら拷問するするところを時計塔一発で済ませてやったのがそんなに不満か。そうかそうか」

 あ、やべ、地雷踏んだかも。

「足の爪と手の爪、どっちからがいい?」

 どこからか針を取り出して嗤う黒羽。その針の使用方法を俺は知っている。

「サーセン」
「わかればいい。証拠の隠滅は楽じゃないんだがな...」

 一瞬にして元通りに修復される館の内装。流石、幻想郷最強の能力保持者。楽じゃないと言いつつも一瞬で修復するとは...規格外すぎるだろ。

「ところで、涼子についてはお咎めなし?」

 あいつも俺と同じように大暴れしてたけど、それはいいのか? いいとは言わせんぞ。

「そこで霊力切れ起こして寝てる。起きたらひどい頭痛に見舞われるだろうから、罰としては丁度いいだろ」

 そりゃまあ、あれだけ派手にやれば霊力切れも起こすよな。涼子は能力持ってるだけの普通の人間だし。俺みたいにハイブリットじゃないし。

「けどな、俺と対応にひどく違いがあるような気がするんだが、それは気のせいか?」
「女に手を上げるのは趣味じゃない」

 女に手を挙げるのは趣味じゃない? いつも中国をボコボコにしてるくせに。どの口が言うか。

「部下に対して女だからという理由で罰を与えないのは、上司として示しが付かない」
「そっかそっか。執事長だもんなー。メイド長と当主とその妹様、あと幻想郷の管理者の旦那様だもんなー」

 それで毎日酒池肉林? ハーレム万歳? メイドとロリとババアを侍らせてそんなに楽しいか。リア充モゲロ。むしろ腐っちまえ。羨ましすぎるんだよ馬鹿野郎。このロリコンめ。ペドフィリア。性犯罪者予備軍。いくら合法ロリ(実年齢年上)だからって手ぇ出してんじゃねえよ。地球上の全独身男性&ロリコン共に呪われちまえ。全独身男性を代表していつかお前を成敗してくれるわ!

「百発ほど殴っていいか?」

 ...やっぱ無理。

「サーセン」

 やっぱり俺にこいつは倒せん。万が一、いや、億が一倒せたとしても確実に早苗さんとおぜう様と妹様とメイド長とゆかりんに殺される。

「それにしても、こんなゾンビがうじゃうじゃ居るなんて...イギリスは本当に化け物の巣窟だな」

 足元で呻く下半身をなくしたゾンビを、御柱で叩いて浄化する。亡霊なら何度かお目にかかったことはあるが、ゾンビは流石に見たことが無い。

「吸血鬼が連れてきた奴だからゾンビじゃなくて喰人鬼(グール)だな」
「どっちにしても似たようなもんだろ」

 どっちも動き回る死体で、人を襲って喰う。しかも襲われた奴らも動く死体になる。ただなり方が違うだけだ。

「な〜んで留学に来たのにこんなクソ厄介な事に巻き込まれんのか...」

 文句を言いながらまだ消えてないゾンビ改めグールを、次々と御柱で叩いて浄化し、灰にする。こういう作業は心が痛...まんな。四分の一妖怪だし、そっちに精神が寄ってるんだろ。

「藤原」
「んだよ...」

 軽く欝になりながら返事をする。黒羽も俺と同じ心境だろう。

「不老不死についてどう思う」
「あ? 不老不死?」

 あのNEETとマッドな薬師に焼き鳥屋が確か不老不死だったはず。
 毎回顔を合わせるたびに殺し合いを始めて、それでどっちかが死ぬまで続けて、死んだら終わり。そして死んでも死ねないからまたそれを繰り返す。

「なりたいとは思わんな」

 気を逸らしながら浄化を続けていく。人の姿をしたものを灰にしていくのはあんまり気が良いものではない。わざわざ話しかけてくれたのは黒羽なりの気遣いだろう。

「俺もだ。不老長寿ならどうだ」
「周りの人が同じなら、まあいいだろう。というか俺らとっくに不老長寿じゃねーか」

 黒羽は老い(過程)と、それによる(結果)を捨てた。俺は神と妖怪の要素を、事故みたいな形で取り入れて人間とはあきらかに違う長寿を手に入れてる。つーか死んでも信仰があれば純粋な神になって蘇るかも。

「で、それとこれと何の関係がある」
「日本でこそ、不死といえば月人の持ってきた蓬莱(不死)の薬だ」
「ああ、授業でやったな」

 確か竹取物語のかぐや姫の昇天のところで、『天人の中に持たせたる箱あり。天の羽衣入れり。またあるは、不死の薬入れり。』ってのが古典の授業であった。

「それじゃあ、ここヨーロッパ諸国で不死の象徴といえばなんだ?」
「そりゃ、吸血鬼だろ」

 ここで飼われている、俺たちを監視していた吸血鬼。あれがまさにそうだ。不死の象徴と言っても過言じゃないだろう。

「で、もっぺん聞くけど何の関係がある」
「ここまで言ってわからんとは、鈍いにも程があるぞ」

 鈍くて悪かったな。生憎俺はお前みたいなチートじゃないんだよ。

「不老不死を求めた馬鹿が、人の手で不老不死を作り出そうとした。これでわかったな」
「......それってむしろ天才じゃね?」

 確かに馬鹿だけど、逆にものすげー天才じゃねえか。ありえないことを追い求めてそれを実現するなんて、馬鹿みたいな天才にしかできないことだろ。

「馬鹿と天才は紙一重の代表格だな。天才の前に狂った、が付くが」
「でも普通に死ぬし、不死には程遠いよな」

 かなり頑丈なのは認めるけど、あの三人に比べると脆すぎる。

「当たり前だ。頭か心臓を叩き潰せば死ぬようなのは不死とは言わん」

 まあ、こんなものをあの永琳さんの開発した技術と同じにしちゃいけないよな。

「で、これからどうするよ。まさかこの事件に介入するとか言わないよな」
「するわけないだろ。誰が好き好んであんな化け物に接近するか」

 そりゃよかった。流石の黒羽も命は惜しいよな。うん。

「それに、これにはでかい組織が関わってる」
「へー、そーなのかー」

 まったくわからなかった。つーか考えてすらなかった。さすが黒羽。

「藤原、まさかわからなかったのか?」
「考えてすらなかったし」
「......とりあえず落ちてる武器を見ろ」

 落ちてる武器? 銃だな。どっからどう見ても。

「わかったか?」
「全然」

 ただ銃ってことしかわからん。

「鈍いにも程があるぞ。これだけの量を個人で用意できると思うか?」
「なるほど、そういうことか。無理だな」

 ど素人でもわかる。こんだけの銃器を個人で買えるかと聞かれれば、それはNOだ。

「で、これからについてだが......俺達はただの留学生。普通に勉学に励めばそれでいい。そして、降りかかる火の粉は最小限だけ払う。俺達は一般人だ。いいな?」
「当然。馬鹿でもわかる」

 『普通』に過ごせばそれでいいか。化け物にビクビク怯えながら普通に過ごせるか心配だが、なんとかなるだろ。

「とりあえず、涼子が起きたらもう一度話をするぞ」
「賛成」

 とりあえず俺達は留学生。普通の留学生だ。のんびり勉学に励めばいい。平和な幻想郷が恋しいぜ...

side out

この英国訪問録は十話で終わる予定です。