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  幻想郷訪問録 作者:黒羽
今日は海へ行ってきました。疲れました。二年ぶりに泳いでみたのですが、浮き輪無しでブイまで泳げませんでした。ブランクって怖いね!
英国訪問録 四話
side Toya

 インテグラさんの屋敷に呼ばれ、夜まで好きにくつろいで居てくれと言われ適当にスキマを開いてみると、地下室に出た。そしてまた吸血鬼に出くわした。

...英国って吸血鬼を何匹飼ってるんだ?

「ほぉ、そちらから会いに来てくれるとはな」
「......誰だ?」

 俺にこんな知り合いは居ない。こんな少女の姿をした吸血鬼は知らない。妖力の質は俺達を監視していたあの吸血鬼に似ているが、姿があまりに違う。

「ああ、この姿ではわからんか。人間というのは存外に不便なものだな。少し姿が変化した程度で認識できぬとは...私だ。アーカードだ」
「......なるほど、道理で質が似てると思った」

 姿を変える程度の能力といったところか。目に頼っていては判別できないな。

「まあこうして会ったんだ。共に酒でも飲まないか?」

 椅子から立ち上がり、ワインの入ったグラスをこちらに渡してくる少女の姿をした吸血鬼。

「断る。これでも一応学生でな。日本では二十歳未満の飲酒は法的に禁じられている」
「そうか」

 俺が断ると一気にグラスを傾けて酒を飲み込んだ。

「それにしても、貴様のような人間は始めてみた。人でありながら化け物と契り、人でありながら異常な能力を持つ。ククク...今年ほど楽しい事が立て続けに起こるのは珍しい。ヴァチカンだけではなく日本までもが動くとはな...」
「俺達は普通の学生で、短期の留学をしに来ただけだ。退魔機関にも所属していない。勝手に想像を膨らますな化け物」

 しかし、俺の能力も使用して製作した符を使って張った結界をいとも容易く破って出てくるとは...紫でもしばらくの間閉じ込めれる結界だぞ? それを大した苦労もせずに...

「化け物。化け物か。よく言われる。だが、それと対峙するお前は何だ?」
「よく聞かれるが、一応人間だ」

 ものすごくいやな気配がしたので銀のナイフと神の槍(グングニル)炎の剣(レーヴァテイン)を空中に浮かべて待機させておく。そしてさらに結界符を指に挟んで構えておく。

「ほう、力を持っていることは知っていたが、これほどまでとは...やはり人間は素晴らしい。
 クク......いいだろう。貴様をカテゴリAの化け物と同等に扱おう。拘束制御術式、第三号、第二号、第一号、開放」

 背筋を寒いものが駆け上がる。なにをするかはわからない。だが、発動させてしまえば恐ろしいことになる。全力を出せば死は回避できるが、外の世界では能力を全力で使用することは適わない。だから、このまま発動させてしまえば死ぬ。

「状況A『クロムウェル』発動による承認認識」
「待て」

 だからその前に声をかける。

「お前はこの程度じゃ死ななくても...」

 全力を出しつくしても勝てれるかどうかどうかもわからない相手だ。全力を出せない状態で戦って勝てないことは分かりきっている。

「この屋敷が丸ごと消し飛べばお前のご主人はどうなるだろうな」

 だから、戦わずに勝つ方法を探す。グングニルとレーヴァテインをそのまま暴走させれば屋敷一つ程度潰すことは簡単。早い話が人質だ。だが、そんなことをすれば幻想の存在が外の世界にばれる事になる。だからする気はない。つまりハッタリだ。

「汚いな...」

 高まっていた妖力が霧散する。大人しく引き下がってくれたようだ。それにしても...俺がハッタリなんて使う日が来るとは思わなかった。どんな化け物だよこいつは。

「生き残るためには卑怯であるというのは重要なことだ」

 俺はまだ死にたくない。死にたくないから死なないように行動する。死が迫っているならそれを回避する方法を探す。未練から来る生への執着。これこそが人を人足らしめるものだと俺は思っている。

「勝てないとわかっていて挑むのも人。勝てないとわかっているから挑まぬのもまた人か」
「...お前に挑む人間なんて居るのか?」
「居るぞ。ヴァチカンの神父。教義のためなら教祖をも殺す」
「なんだ化け物か」
「いや違う。狂信者だ。あいつが化け物ならお前はなんだ」
「そうだな...愛妻家?」
「なぜ疑問形になる」
「まだ式を挙げてないからな」
「ああ、なるほど。だから死ねないと言ってたのか」
「そうだ」
「では式を挙げれば「挙げてからもお断りだ」...残念。貴様の血は美味そうだと思ったのだがな」

 まさかとは思うが...俺を食う気だったのか? ...もし俺が食われてたら、ここがイギリスごと壊滅するところしか思い浮かばんな。

side out

side Hujiwara

 ......前略、日本に居るお父様、お母様、イギリスは幻想郷でもないのに化け物がウジャウジャいるようです。夕食まで好きにくつろいで居てくれと言われたので適当に広い屋敷の中を散策していると、巨乳の美人なオネーサンの吸血鬼がいました。

「ハハハ...イギリスってのは幻想郷でもないのに化け物がウジャウジャだぜ...」

 乾いた笑いが浮かぶ。どうして俺ばっかりこんな目に...畜生。

「ううぅ...一目で吸血鬼って見破られたのは初めて...私ってそんなに吸血鬼っぽいんですか!?」

 肩をつかまれてガクガクと前後に揺らされる。痛い痛い! 鞭打ちになる!

「痛っ!」
「見りゃわかるわ! そんなにはっきりあの吸血鬼とのラインが見えりゃ一発でわかるっつの!」

 力をこめて突き放す。少し目に霊力を集めて見ればわかる。あの吸血鬼とのラインが首からハッキリとつながっているのが見える。

「っていうかそれを言ったらあなたも似たようなもんじゃないですか!」
「俺はまだ半分人間じゃボケ!!」

 残り半分は神と妖怪が混じってるけどな! だけど俺は『まだ』人間だ。人を襲ってもないし信仰を集めなくても存在できる。

「でももう半分は同類じゃないですか!」
「四分の一じゃボケ!」
「でもそれだけ一緒じゃないですか。っていうか親が人間じゃなかったりします?」

 ...親? ...お袋は化け物みたいな強さだけど、純粋な人間だし、親父は論外。完璧な人間だ。

「いや、両親はフッツーの人間だけど?」
「だったらどうして半分は人間じゃなくなってるんですか?」

 ...痛いところを突きやがって。でもな〜、隠し事は好きじゃないしな〜...でも幻想郷のことなんて話したら黒羽とゆかりんにフルボッコにされるだろうし...当たり障りのないところだけ話しとくか。

「化け物の住処に放り出されて逃げようとしたら見つかって、化け物に殺されかけて反撃したらそいつの血を飲んでそのまま適応した」
「.....同士!」
「違うわボケ!」
「だって私も似たような感じで吸血鬼になりましたから。ある村の調査に向かって吸血鬼に会い仲間は全滅。犯されて殺されそうになって、人質に捕まってマスターに殺されて血を吸われて吸血鬼になりましたから」

 ...重っ!! その話重すぎる! 婦警さんあんたどんだけ不幸なんですか!?

「ね? だから同士じゃないですか」
「俺は吸血鬼じゃない。花の妖怪の血を一滴だけ飲んだからな」
「...ずいぶんとメルヘンチックな妖怪さんですね」
「名前だけはな〜...」

 中身はえげつないほどのドSだからな。人間友好度最悪だし、危険度も他の妖怪と比べて群を抜く。そして純粋な妖力と身体能力では幻想郷最強とも言われるほどだ。花の妖怪と聞いてそんなメルヘンチックな妖怪を思い浮かべたら...ああ恐ろしい...

「......」

 しかし、俺ってそんなのに噛み付いたんだよな? 

「よく生きてたな。俺...」
「死んでないのがおかしいですよ」

 婦警さんの言うとおりだ。死んでないのがおかしいぜ。生きてるのがまさに奇跡だ。ああ、生きてるって素晴らしい!

「で、残りは何なんですか?」
「風神様」
「え?」
「風神様。風の神様だよ。それに気に入られた」 
「いや、神様なんて実際にいるわけ...ましてや気に入られるだなんて...」

 お箸サイズの御柱を一本、手のひらの中に作り出す。この程度なら負担もかなり少ない。

「こいつをどう思う?」
「すごく、神々しいです...」

 まあ、少量とはいえ神力の宿った一品だからな。持ってるだけで低級の妖怪は近寄れない。

「もしかして、本物の神様とか居るんですか?」
「居るぞ。厄神様に豊穣の神様に紅葉の神様に、土地神様と風神様。実際に会ったことがある神様だけで五柱は居る」

 外の世界じゃ全くと言っていいほど見ないが、きちんと存在している。

「仏様とかキリストとか、宗教の神様は見たことがないけどな」
「へ〜...っていうかあなた私より化け物じゃないですか!」
「だから俺は半分は人間だっつの!」

(以下無限ループなので略)

side out